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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2007800236 | 審決 | 特許 |
不服2006724 | 審決 | 特許 |
不服20045852 | 審決 | 特許 |
不服200627347 | 審決 | 特許 |
不服20056940 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1216628 |
審判番号 | 不服2005-21514 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-11-07 |
確定日 | 2010-05-12 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第137282号「置換フェネチルアミン類を用いた医薬組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 4月 4日出願公開、特開平 7- 89851〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成6年6月20日(優先権主張1993年6月28日、米国)の出願であって、平成17年8月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年11月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月7日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成17年12月7日付けの手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成17年12月7日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、 「有効量の式: 【化1】 (式中、Aは、式: 【化2】 (式中、点線は必要に応じて不飽和を表し;R_(1) は水素または炭素数1?6のアルキル;R_(2)は炭素数1?6のアルキル;R_(4)は水素、炭素数1?6のアルキル、ホルミル、または炭素数2?7のアルカノイル;R_(5) およびR_(6) は、独立して、水素、ヒドロキシル、炭素数1?6のアルキル、炭素数1?6のアルコキシ、炭素数2?7のアルカノイルオキシ、シアノ、ニトロ、炭素数1?6のアルキルメルカプト、アミノ、炭素数1?6のアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は炭素数1?6)、炭素数2?7のアルカンアミド、ハロ、トリフルオロメチル、または一緒になってメチレンジオキシを表し;R_(7) は水素または炭素数1?6のアルキル;および、nは0、1、2、3、または4を意味する)で示される部分である)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を含有することからなる、哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害を治療するのに有用な医薬組成物。」 と補正された。 上記補正は、請求項1の医薬用途の内、「肥満症、黄体後期不快性障害、場合によっては活動高進状態を伴う注意欠陥障害、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、神経性過食症、シャイ・ドレーガー症候群」を削除するものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)判断 特許法第36条第4項は、「発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。」と規定されている。 そこで、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者が容易に本願補正発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されているか否かを検討する。 本願明細書の記載によれば、本願の請求項1に記載された化合物は抗うつ薬として有用であることは公知であるところ、本願補正発明は、哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療に有用な医薬組成物を提供することを解決すべき課題とするものである(段落【0001】、【0002】)。 そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者が容易に本願補正発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果が記載されているといえるためには、本願補正発明の医薬組成物が、哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療に有用であることが当業者が認識できるように記載したものでなくてはならない。 ところで、一般に,物質の物質名や化学構造だけから,その医薬としての有用性を予測することは困難であり、薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をすることにより,その医薬としての有用性が裏付けられている必要がある。 本願においても、請求項1に記載された化合物の化学構造だけから、この化合物が哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療に有用であることは予測できないものであるから、薬理データまたはそれと同視すべき程度の記載により、哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療のいずれにおいても医薬として有用であることが裏付けられている必要がある。 そこで、本願明細書の発明の詳細な説明において、本願補正発明の医薬として有用性が、薬理データまたはそれと同視すべき程度の記載により裏付けられているかどうかについて検討する。 本願明細書には、請求項1に記載された有効成分の代表例としてベンラファキシンを挙げて、ベンラファキシンについて説明が記載されている。 薬理データとして記載されているのは、ベンラファキシンの非抑うつ状態の肥満症患者を対象とする任意二重盲験の試験方法及びその結果(【0038】?【0041】)だけである。哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療に関する薬理データは記載されていない。 次に、本願明細書には、ベンラファキシンの哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療における有用性に関連して以下の記載がある。 (ア) ベンラファキシンの作用機序は、モノアミン神経伝達物質であるセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン、5-HT)およびノルエピネフリンの摂取の有効な阻害に関連すると考えられている。(【0004】) (イ) 汎発性不安性障害は、生活環境のうちの2種またはそれ以上に関する過度または慢性の不安または懸念によって特徴付けられる症候群である。この障害の徴候および症状には、震え、呼吸困難、動悸、めまいおよび悪心などの身体的な病訴が挙げられることが多い。(【0013】) (ウ) 急性の不安発作(恐慌性障害)は、不安神経症を定める症状であり、はっきりしない理由によって生じる自覚的な恐れを経験する患者にとっては、極めて不快である。この恐れは、合理的な推論を妨げるある種の切迫した破局の恐れである場合がある。……恐慌発作は、ベンラファキシンおよび他のセロトニン再摂取阻害剤を含む抗うつ薬、三環系抗うつ薬またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤の治療的投与量によって、予防したり、発病度を低減させることができる。(【0014】?【0015】) (エ) ベンラファキシンおよびその類似体を用いれば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を治療することもできる。……PTSDの治療は、主として、過覚醒および不安症候群を和らげるように設計された弛緩技術からなるが、セロトニン摂取阻害薬を含む抗うつ薬は患者の回復を助ける。(【0016】?【0017】) これらの記載は、ベンラファキシンの作用機序が、セロトニンおよびノルエピネフリンの摂取の阻害に関連すると考えられているとのベンラファキシンの作用機序に関する一般的な説明(上記(ア))、汎発性不安性障害、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害の症状の説明(上記(イ)?(エ))、「ベンラファキシンおよび他のセロトニン再摂取阻害剤を含む抗うつ薬、三環系抗うつ薬またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤の治療的投与量によって、予防したり、発病度を低減させることができる。」(上記(ウ))、「セロトニン摂取阻害薬を含む抗うつ薬は患者の回復を助ける。」(上記(エ))との客観的な根拠を示さない主観的見解であり、いずれも、ベンラファキシンが、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害のいずれの治療においても有用であることを当業者が認識できるような理論的な説明といえるものではない。 次に、本願明細書には、「 動物を用いた研究から、セロトニンが摂食行動の制御において阻害の役割を有することを示す証拠がますます増えており、現代の薬物治療はセロトニンが食欲や気分に関係していることを示唆している。……セロトニン再摂取を阻害することによって、ベンラファキシンおよびその類似体はシナプスのセロトニンを増加させ、拒食症を誘発することができる。この作用は、肥満症の治療として役に立つ。」(【0007】)との、ベンラファキシンはセレトニンの再摂取を阻害することにより肥満の治療に役立つとの記載があり、肥満治療薬としての有用性に関する薬理データが記載されている(【0038】?【0041】)。 しかしながら、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害、汎発性不安性障害と肥満とは異なる疾患であり、その原因や発症のメカニズムも解明されていない中で、「現代の薬物治療は、セレトニンが食欲や気分に関係していると示唆している」としても、ベンラファキシンの肥満治療薬としての有用性に関する薬理データをもって、ベンラファキシンの恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害及び汎発性不安性障害の治療薬としての有用性を裏付ける薬理データと同視することはできない。 なお、請求人は、平成16年12月12日付け上申書において、ベンラファキシンが心的外傷後ストレス障害に有効である旨の参考資料2(2002年)及び平成21年1月5日付け上申書においてSNRIであるシブトラミンが肥満症の治療に有効である旨の参考資料1(1998年)を提出し、記載要件の不備は解消していると主張しているが、本願の出願後に頒布された文献をもって、上記の本願明細書の不備を補うことはできない。 以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、薬理データまたはそれと同視すべき程度の記載により、哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害の治療のいずれにおいても医薬として有用であることが裏づけられていないので、本願補正発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものであるとはいえない。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易に本願補正発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものではなく、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしてないので、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成17年12月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。 「有効量の式: 【化1】 (式中、Aは、式: 【化2】 (式中、点線は必要に応じて不飽和を表し;R_(1)は水素または炭素数1?6のアルキル;R_(2)は炭素数1?6のアルキル;R_(4)は水素、炭素数1?6のアルキル、ホルミル、または炭素数2?7のアルカノイル;R_(5)およびR_(6)は、独立して、水素、ヒドロキシル、炭素数1?6のアルキル、炭素数1?6のアルコキシ、炭素数2?7のアルカノイルオキシ、シアノ、ニトロ、炭素数1?6のアルキルメルカプト、アミノ、炭素数1?6のアルキルアミノ、ジアルキルアミノ(各アルキル基は炭素数1?6)、炭素数2?7のアルカンアミド、ハロ、トリフルオロメチル、または一緒になってメチレンジオキシを表し;R_(7)は水素または炭素数1?6のアルキル;および、nは0、1、2、3、または4を意味する)で示される部分である)で示される化合物またはその医薬上許容される塩を含有することからなる、哺乳類における、肥満症、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害、黄体後期不快性障害、場合によっては活動高進状態を伴う注意欠陥障害、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、神経性過食症、汎発性不安性障害、またはシャイ・ドレーガー症候群を治療するのに有用な医薬組成物。」 (1)拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないという理由を含み、次の点を指摘している。 請求項1に記載された式で示される化合物について、肥満症の治療に有効であることを示す薬理試験結果が示されているが、該化合物が恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害、汎発性不安障害等の治療に有効であることを示す薬理試験は一切記載されてなく、出願時の当業者の技術常識を考慮しても、肥満症の試験結果をもって、該化合物が、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害又は汎発性不安障害等の治療に使用することが出来るとは、推認できない。 (2)判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の治療の対象疾患に、「哺乳類における、恐慌性障害、心的外傷後ストレス障害または汎発性不安性障害」に、「哺乳類における、黄体後期不快性障害、場合によっては活動高進状態を伴う注意欠陥障害、ジル・ド・ラ・トゥレット症候群、神経性過食症、またはシャイ・ドレーガー症候群」を追加するものであるから、本願発明についても、前記「2.(2)」にした記載した理由と同様の理由により、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載したものではない。 (3)むすび したがって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-07 |
結審通知日 | 2009-12-08 |
審決日 | 2009-12-21 |
出願番号 | 特願平6-137282 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 伊藤 幸司、田名部 拓也 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
内田 淳子 弘實 謙二 |
発明の名称 | 置換フェネチルアミン類を用いた医薬組成物 |
代理人 | 冨田 憲史 |
代理人 | 田中 光雄 |
代理人 | 元山 忠行 |
代理人 | 青山 葆 |