• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1216645
審判番号 不服2007-13346  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-07 
確定日 2010-05-12 
事件の表示 特願2002-343152「照明変化に強い映像検索方法、照明変化に強い映像検索装置、コンピュータにて読取り可能な記録媒体およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月31日出願公開、特開2003-216612〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願の手続の経緯は次に示すとおりである。

平成14年11月27日 特許出願(パリ優先権主張2001年11月27日 米国、2002年2月26日 米国、2002年9月26日 大韓民国)。
平成18年 5月 2日 拒絶理由通知(起案日)。
平成18年11月10日 手続補正。
平成18年11月30日 拒絶査定(起案日)。
平成19年 5月 7日 拒絶査定不服審判請求。
平成19年 6月 5日 手続補正。


第2 平成19年6月5日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成19年6月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由1] (主位的理由) 補正の目的の適否について

1. 本件補正

本件補正は、補正前の請求項1を補正後の請求項1に補正することを含むものであって、

「 【請求項1】 ・・・(中略)・・・
検索しようとする色々な映像を標準照明色に予め変換した後に、その色情報を抽出してデータベースに記憶する記憶段階と、
前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報と前記データベースに記憶された色々な映像に対する色情報を比較検索して類似映像を探し出す検索段階と、
・・・(後略)・・・」を、

「 【請求項1】 ・・・(中略)・・・
前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報と検索しようとする色々な映像を標準照明色に予め変換した後に、その色情報を抽出して記憶しているデータベースに記憶された色々な映像に対する色情報とを比較検索して類似映像を探し出す検索段階とを含み、
・・・(後略)・・・」
と補正するものである。

2. 記憶段階を省く補正について

補正前の請求項1には「検索しようとする色々な映像を標準照明色に予め変換した後に、その色情報を抽出してデータベースに記憶する記憶段階」が存在しているのに対し、補正後の請求項1ではこの記憶段階が省かれている。したがって本件補正は、この点において特許請求の範囲の減縮には当たらない。また本件補正のこの記憶段階を省いたことが、請求項の削除にも、誤記の訂正にも、明瞭でない記載の釈明にも当てはまらないことは明らかである。

3. むすび

以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。


[理由2] (予備的理由) 独立特許要件違反について

1. 本件補正

仮に、本件補正が、補正前の記憶段階と検索段階とを単にまとめて補正後の検索段階として記載するとともに、色記述子の詳細を、主要色記述子、又は、色構造記述子、又は、色配置記述子、又は、スケーラブルな色記述子のいずれかに限定するものであって、補正前の請求項1に記載されていた発明を特定するために必要な事項をもとに、補正後の請求項1を作成したものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当するものであるとしても、以下に述べるとおり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものではない。(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たさない。)

2. 補正発明

補正発明は、平成19年6月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

<補正発明>
「クエリ映像を入力される入力段階と、
前記クエリ映像から照明色を検出する検出段階と、
前記検出された照明色を標準照明色に変換する変換段階と、
色記述子を用いて前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報を抽出する抽出段階と、
前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報と検索しようとする色々な映像を標準照明色に予め変換した後に、その色情報を抽出して記憶しているデータベースに記憶された色々な映像に対する色情報とを比較検索して類似映像を探し出す検索段階とを含み、
前記抽出段階は、主要色記述子、又は、色構造記述子、又は、色配置記述子、又は、スケーラブルな色記述子のいずれかを用いてクエリ映像の色情報を抽出することを特徴とする照明変化に強い映像検索方法。」


3. 引用例

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前である2000年11月2日に頒布された刊行物である、国際公開第00/65535号パンフレット(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

(1a) 「 METHOD FOR AUTOMATICALLY EXTRACTING IMAGE EFFECT COLOR AND RECOVERING ORIGINAL IMAGE COLOR

BACKGROUND OF THE INVENTION

1. Field of the Invention
The present invention relates to an image color extracting and recovering method, and a database generation and image searching method which are capable of automatically extracting an effect color of an image (which affects an original image color) pictured by a camera in accordance with an illumination condition and a color lens (or color filter) and a feature of the camera and processing the extracted effect color for thereby recovering an original image color.

2. Description of the Background Art
Generally, an image color of an object pictured using a certain camera (for example a digital camera. a video camera, etc.) may have an original color of an object and different image colors in accordance with a surrounding environment of the object and and a feature of the camera.
Namely, in the case that an object is pictured under an artificial illumination or pictured using a color filter mounted at the camera, an image color of an object pictured using the camera having different features according to a manufacturing company of the camera has a different color due to an effect with respect to the pictured image color. For example, if a white color clothes (for example, a wedding dress) under a yellow illumination is pictured using the camera, the white color clothes has a yellow-white color. Namely, the image color pictured using the camera has different image colors from those of the original image colors in accordance with the surrounding environment and the feature of the camera.
However, in the conventional image searching method, it is impossible to recover the original image color by correcting the image color which is different in accordance with the surrounding environment and the feature of the camera.

SUMMARY OF THE INVENTION

Accordingly, it is an object of the present invention to provide an image color recovering method for extracting an effect color which affects a pictured image color and correcting the extracted color irrespective of a surrounding environment of an object and a feature of a camera for thereby recovering an original color of the image.
It is another object of the present invention to provide an image color automatic extracting method which is capable of extracting an effect color which affects a pictured image color irrespective of a surrounding environment of an object and a feature of a camera.
It is still another object of the present invention to provide an image database formation method which is capable of extracting an effect color which affects a pictured image color irrespective of a surrounding environment of an object and a feature of a camera, correcting the extracted color for thereby storing the image as an original color image.
It is still another object of the present invention to provide an image searching method which is capable of comparing an image obtained by extracting an effect color which affects a pictured image color irrespective of a surrounding environment of an object and a feature of a camera correcting the extracted color and an image stored in an image database and searching a generated image.
To achieve the above object, there is provided an image color recovering method in a method for recovering an image color pictured based on a certain effect of an original color or other colors or an effect color in accordance with a feature of a camera and a surrounding environment of an object, which method includes the steps of comparing all pixels of a frame of the image and a first critical value, obtaining an average hue value Hue_Ave with respect to the hues of the pixels each having a crominance smaller than the first critical value, computing a hue corresponding to the average hue value Hue_Ave, and determining the computed hue as an effect color, and compensating the image color affected by the effect color using the computed hue and adjusting the image color to an original color. 」 (第1頁第1行?第3頁第14行)
(訳)
「 画像の効果色を自動的に抽出する方法、及び、画像の元の色を復元する方法

発明の背景

1.発明の属する技術分野
本発明は、画像の色抽出方法及び色復元方法および、所定の照明条件、色レンズ(色フィルタ)、カメラの特性に従ってカメラによって撮影された画像の(撮影された画像の色に影響を与える)効果色を自動的に抽出し、かつその抽出された効果色を元々の色に復元させる処理ができるデータベース生成と画像検索方法に関する。

2.背景技術の記述
一般に、所定のカメラ(例えば、デジタルカメラ、ビデオカメラ等)により撮影された被写体の色は、被写体の置かれた環境やカメラの特性に伴ってその被写体の元々の色とは異なる色に現れることもある。
即ち、被写体が人工的な照明の下で撮影されたか、色フィルタを装着したカメラで撮影されたような場合、あるいは製造元によって異なる特性を持つカメラで撮影した場合、それらによって影響されて被写体の色は、被写体の元々の色とは異なる色となる。例えば、黄色い照明の下にある白い色の着物(例えば、ウェディングドレス)をカメラで撮影した場合、着物の色は、黄色い色を帯びた白い色に映される。即ち、カメラで撮影された画像の色は、被写体の置かれた周囲の環境及びカメラの特性によって、それらの元々の色とは異なる色となる。
然るに、従来の画像検出方法においては、被写体の周囲の環境及びカメラの特性によって異なった色を修正して被写体の元々の色に復元することはできないという不都合な点があった。

本発明の概要

そこで、本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、撮影したい被写体が存在する環境及びカメラの特性にかかわらず、撮影された被写体の色に影響を及ぼす色(効果色)を抽出し、画像を修正して被写体の元々の色を復元し得る画像の色の復元方法を提供することである。
本発明の他の目的は、被写体の置かれた周囲の環境及びカメラの特性にかかわらず、撮影された画像の色に影響を及ぼした色(効果色)を抽出し得る画像の色の自動抽出方法を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、被写体の置かれた周囲の環境及びカメラの特性にかかわらず、撮影された画像の色に影響を及ぼした色(効果色)を抽出し、画像を修正して元々の色を有する画像として格納する画像データベース生成方法を提供することである。
更に、本発明の他の目的は、被写体の置かれた周囲の環境及びカメラの特性にかかわらず、撮影された画像の色に影響を及ぼす色(効果色)を抽出し、それを修正して生成された画像と、画像データベースに格納された画像とを比較して、生成された画像を検索する画像検索方法を提供することである。
このような目的を達成するため、本発明に係る画像の色の復元方法は、カメラの特性及び被写体が置かれた周囲の環境に応じて、元の色とは異なるさまざまな色や効果色に影響されて撮影された画像の元の色を復元する方法であって、
画像フレームの全ての画素を所定の第1しきい値と比較して、第1しきい値より小さいクロミナンス値を有する各画素の色相の平均色相値(Hue_Ave)を求めた後、平均色相値(Hue_Ave)に対応する色相を算出し、その算出された色相を前記効果色と決定する効果色抽出段階と、
前記算出された色相を利用して、この効果色に影響された画像の色を補償することで画像を元の色に調整する段階とを順次行う。」

(1b) 「 In the image database formation method according to the present invention, a certain image is received, and the inputted image is processed to have an original color by an image color recovering method or an image color automatic extracting method according to the present invention.
In the present invention, the image searching method includes the steps of receiving a certain image and generating an image database for processing the inputted image to have an original color or storing the same based on a certain process, processing the currently inputted image by a certain process and generating an image having an original color, and comparing the current image processed to have an original color and an image stored in the image database. 」 (第4頁第7?16行)
(訳)
「 本発明に係る画像データベース生成方法においては、所定の画像を入力し、本発明に係る画像の色の復元方法又は画像の効果色の自動抽出方法により、入力された画像の元の色を復元処理する。
本発明に係る画像検索方法においては、所定の画像を入力し、前述した段階のそれぞれの対応する段階を行って入力画像の元の色を復元処理して格納した画像データベースを生成する段階と、
現在入力する画像に対し、対応する段階を行って元の色を有する画像を生成する段階と、
元の色を有するように処理された現在の画像と、画像データベースに格納された画像とを比較する段階とを順次行う。」

(1c) 「 Figure 1 illustrates a method for generating a database by recovering an original image color according to the present invention which includes a step ST100 for inputting an image frame pictured by an image display apparatus, a step ST200 for extracting an effect color which affects an image color from the inputted image frame, a step ST300 for compensating the thusly extracted effect color to the image color, and a step ST400 for generating an image having an original image color and processing the same as a data and recording the data onto a certain recording medium. 」 (第5頁第7?14行)
(訳)
「 本発明に係る画像の元の本来の色を復元し、データベースを生成する方法は、図1に示したように、画像入力機器により撮影された一つの画像フレームを入力し(ST100)、入力された画像フレームから画像の色に影響を及ぼす効果色を抽出し(ST200)、その抽出された効果色を利用して画像の色を補償することで(ST300)、元の色に復元された画像を生成し、その画像をデータベースとして作成して所定の記録媒体に格納する(ST400)。」 (引用例のimage display apparatus は、前後の記載から見て、撮影された画像フレームを入力するための機器であるから、このdisplayは誤記であって、画像を入力するための機器を意味しようとした記載と認められる。)

(1d) 「 Therefore, in the effect color automatic extracting method of an image according to the present invention, it is possible to automatically extract an effect color of the inputted image. 」 (第7頁第3?5行)
(訳)
「 このようにして、本発明では、入力された画像の効果色を自動的に抽出する。」

(1e) 「 In addition, it is possible to search an image which is currently inputted from a previously formed database without a certain error using a method for extracting an effect color of an image, correcting the extracted color and recovering an original image color according to the present invention. 」 (第8頁第1?4行)
(訳)
「 又、本発明では、画像の効果色を抽出し、それを修正して画像の元の色を復元することで、予め生成されたデータベースから現在の入力画像を正確に検索することができる。」

(1f) 「 12. An image search method comprising the steps of ;
receiving a certain image, obtaining an effect hue of the inputted image, storing the effect hue of each image as an image information and generating an image database ;
processing the currently inputted image and generating an effect color ;
compensating an original color of the currently inputted image using the generated effect color ; and
comparing the inputted image which is compensated to the original color and the image stored in the image database. 」 (第12頁第17?25行)
(訳)
「 12. 画像検索方法であって、
所定の画像を入力し、それら画像の色相効果を抽出して、各画像情報として画像の色相効果をそれぞれ格納することで画像データベースを生成する段階と、
現在入力する画像を処理して効果色を生成する段階と、
前記生成された効果色を利用して、現在入力する画像の元の色を補償する段階と、
元の色の補償された前記入力画像と、前記画像データベースに格納された画像とを比較する段階と、
を順次行う画像検索方法。」

そして、引用例の上記(1a)?(1f)の記載事項、及び、関連するFIG.1から、引用例には、次の事項が記載されているといえる。

・ 引用例には、画像検索方法(An image search method)が記載されている。
・ 引用例のものは、撮影された画像における被写体の色が、所定の照明条件や人工的な照明によっては、被写体の元々の色とは異なる色になる場合があることを考慮して、照明が画像の色に与える影響を補償するものであるから、引用例の画像検索方法は、照明変化に強い画像検索方法である。
・ 引用例において現在入力する画像(the currently inputted image)は、画像データベースに格納された画像と比較されて、画像データベースに格納された画像を検索するために用いられる画像であるから、引用例におけるこの現在入力する画像は、検索するための画像であり、引用例のものは、検索するための画像を入力される入力段階を有するものである。
・ 引用例のものは、現在入力する画像上での被写体の色が、照明条件によって、被写体の元々の色に対して、どの色相方向への影響を受けているのかを表すための情報として、現在入力する画像の全ての画素を所定の第1閾値と比較して、第1閾値より小さいクロミナンス値を有する各画素の色相の平均色相値(Hue_Ave)を検出しているものであるから、引用例のものは、現在入力する画像から、照明条件によって、被写体の色がその元々の色に対して、どの色相方向への影響を受けているのかを表す平均色相値(Hue_Ave)を検出する検出段階を有するものである。
・ 引用例のものは、検出された平均色相値(Hue_Ave)に対応する色相(効果色)を算出し、その算出された色相(効果色)を利用して、この効果色に影響された画像の色を補償することで、現在入力する画像を元の色に調整する調整段階を有するものである。
・ 引用例のものにおいて、元の色に調整された画像は、色を調整した画像であるから当然のことながらカラー画像であり、色情報を有している画像であって、この色情報をその後、画像データベースに格納されている画像との比較・検索に用いるものであるから、引用例のものは、元の色に調整された画像の色情報を抽出する抽出段階を有するものである。
・ 引用例のものは、撮影されたときの照明条件によって画像の色に影響を及ぼした色(効果色)を抽出し、画像の色を修正して元々の色を有する画像として画像データベースに格納するものであり、現在入力する画像に対してもその画像の色に及ぼす色(効果色)を抽出し、画像の色を修正して元々の色を有する画像を生成し、現在入力する画像を元々の色を有するように修正したこの画像と、画像データベースに格納された画像とを比較することによって、現在入力する画像に対応する画像を画像データベースから検索するものである。つまり、引用例のものにおいて検索の際に比較されている、現在入力する画像、及び、画像データベースに格納された画像は双方ともに、効果色の影響を補償して元々の色を有する画像に修正された画像である。

そうしてみると、引用例の上記(1a)?(1f)の記載事項、及び、関連するFIG.1からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明>
「 検索するための画像を入力される入力段階と、
前記検索するための画像から、照明条件によって、被写体の色がその元々の色に対して、どの色相方向への影響を受けているのかを表す平均色相値(Hue_Ave)を検出する検出段階と、
前記検出された平均色相値(Hue_Ave)に対応する色相(効果色)を算出し、その算出された色相(効果色)を利用して、この効果色に影響された画像の色を補償することで、検索するための画像を元の色に調整する調整段階と、
元の色に調整された、検索するための画像の色情報を抽出する抽出段階と、
この元の色に調整された、検索するための画像の色情報と、
画像データベースに格納された画像の色情報であって、撮影されたときの照明条件によって画像の色に影響を及ぼした色(効果色)を抽出し、効果色の影響を補償して元々の色を有するように色を修正した画像の色情報とを比較して、現在入力する画像に対応する画像を画像データベースから検索する検索段階と、
を含む照明変化に強い画像検索方法。」


4. 対比

補正発明と引用発明とを比較すると、次のことがいえる。

(1) 技術用語として、「クエリ」とは検索するための情報を意味する表現であって、本願発明における「クエリ映像」とは、検索するための映像を表しているから、引用発明における「検索するための画像」は、補正発明における「クエリ映像」に相当する。
(2) 引用発明における「照明条件によって、被写体の色がその元々の色に対して、どの色相方向への影響を受けているのかを表す平均色相値(Hue_Ave)」は、補正発明における「照明色」に相当する。
(3) 引用発明における「検出された平均色相値(Hue_Ave)に対応する色相(効果色)を算出し、その算出された色相(効果色)を利用して、この効果色に影響された画像の色を補償することで、検索するための画像を元の色に調整する調整段階」は、検出された照明色に基づいて、前記照明色の影響を受けているクエリ映像を、前記照明色の影響を受けていない映像に変換する変換段階であるという意味において、補正発明における「前記検出された照明色を標準照明色に変換する変換段階」と共通している段階であり、引用発明における前記調整段階は、検索するための画像を調整した結果として得られている画像が、補正発明にいう標準照明色に変換したものに必ずしもなってはいないという意味においては、補正発明の変換段階とは異なっている。
(4) 引用発明における「元の色に調整された、検索するための画像の色情報を抽出する抽出段階」は、照明色の影響を受けていない画像に変換されたクエリ映像の色情報を抽出する抽出段階であるという意味において、補正発明における「変換されたクエリ映像の色情報を抽出する抽出段階」に相当する。
(5) 引用発明における「画像データベースに格納された画像」は、補正発明における「データベースに記憶された色々な映像」に相当する。
(6) 引用発明における「撮影されたときの照明条件によって画像の色に影響を及ぼした色(効果色)を抽出し、効果色の影響を補償して元々の色を有するように色を修正した画像」は、補正発明において、検索しようとする色々な映像を照明色の影響を受けていない映像に予め変換した映像に相当する。
(7) 引用発明における、画像の色情報を比較して、現在入力する画像に対応する画像を画像データベースから検索する検索段階は、補正発明における、映像の色情報を比較検索して類似映像を探し出す検索段階に相当する。
(8) 引用発明における「照明変化に強い画像検索方法」は、補正発明における「照明変化に強い映像検索方法」に相当する。

してみると、補正発明と引用発明とは次の点で一致する。

<一致点>
「 クエリ映像を入力される入力段階と、
前記クエリ映像から照明色を検出する検出段階と、
前記検出された照明色に基づいて、前記照明色の影響を受けている前記クエリ映像を、前記照明色の影響を受けていない映像に変換する変換段階と、
前記照明色の影響を受けていない画像に変換されたクエリ映像の色情報を抽出する抽出段階と、
前記照明色の影響を受けていない映像に変換されたクエリ映像の色情報と、
検索しようとする色々な映像を照明色の影響を受けていない映像に予め変換した後に、その色情報を抽出して記憶しているデータベースに記憶された色々な映像に対する色情報とを比較検索して類似映像を探し出す検索段階とを含む、
照明変化に強い映像検索方法。」

一方で、補正発明と引用発明とは次の点で相違する。

<相違点1> 標準照明色
本願発明は、クエリ映像及び検索しようとする色々な映像を、標準照明色の映像に変換するものであるのに対し、引用発明は、これらの映像を、照明色の影響を受けていない映像に変換するものではあるものの、その変換後の映像を標準照明色の映像とすることが引用発明には示されていない点。

<相違点2> 色記述子
本願発明は、映像の色情報を抽出する際に、主要色記述子、又は、色構造記述子、又は、色配置記述子、又は、スケーラブルな色記述子のいずれかの色記述子を用いているのに対し、引用発明には、これらの色記述子を用いることが示されていない点。


5. 判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
引用例のものが、照明色の影響を受けている画像を、前記照明色の影響を受けていない画像に変換しているのは、現在入力する画像と、過去に画像データベースに格納された画像とを比較する際に、それぞれの画像を元々の色に修正して、撮影時の照明色の違いに関わらず比較し検索することができるようにするためであり、引用例のものはそのために、それぞれの画像をあたかもある同一の照明色で撮影されたかのような画像に復元しているものである。したがって、引用発明を実施する際には、このある同一の照明色として、何らかの照明色を設定することが技術常識であって、当業者は引用発明におけるこのある照明色として、例えば標準照明色の一つである周知の白色の照明色を設定することを想到するといえる。してみると、引用発明において、照明色の影響を受けているクエリ映像及び検索しようとする色々な映像を、標準照明色の映像に変換することは、当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>
本願発明に係る色記述子とは、本願の当初明細書の段落【0004】?段落【0008】及び【図7】に記載されていたように、ISO/IECにおいて標準として採択されたMPEG-7の色記述子であって、さらに具体的に挙げられている「主要色記述子」、「色構造記述子」、「色配置記述子」、「スケーラブルな色記述子」とは、原文では順に「Dominant Color Descriptor」、「Color Structure Descriptor」、「Color Layout Descriptor」、「Scalable Color」と記載されていた記述子(Descriptor)である。
そして、映像の色情報を抽出する際に、これらの色記述子を用いることは、映像を含むマルチメディアデータを表記する国際標準化規格であるMPEG-7に規定されているとおり、本願の優先日前に周知な技術事項である。これらの色記述子を映像検索のために用いることも本願の優先日前に周知な技術事項である。この点は、本願の当初明細書の段落【0004】にて、請求人自らも認めているところである。
(例えば、2001年9月14日に開催された「オーディオビジュアル複合情報処理シンポジウム2001」にて、NECマルチメディア研究所の山田昭雄氏が発表した「MPEG-7 Visualチュートリアル」(http://www.itscj.ipsj.or.jp/mpeg7/MPEG-7Visual.pdf)の、「主要なMPEG-7ツール」の項目の「映像信号特徴記述 -色(色構成・色配置)-」の項目に、前述の各色記述子「Dominant Color」、「Scalable Color」、「Color Structure」、「Color Layout」が示されていることを参照されたい。)
このような状況に鑑みれば、引用発明の画像の色情報を表す情報として、国際標準化規格に規定されているMPEG-7の周知の前記各種の色記述子を用いることには、何ら技術的な困難性は認められない。また、画像の色情報を、国際標準化規格に規定されている色記述子を用いて表現することは、引用発明に汎用性を持たせて実施するために、むしろ当業者が積極的に行ってみることであるとさえいえる。してみると、引用発明において、映像の色情報を抽出する際に、主要色記述子、又は、色構造記述子、又は、色配置記述子、又は、スケーラブルな色記述子のいずれかの色記述子を用いることは、当業者が容易になし得たことである。

また、補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測することができた程度のものであって、格別のものとは認められない。

したがって、補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6. むすび

以上のとおり、補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものである。


[理由1及び理由2についてのまとめ]

本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、仮に前記規定に違反しないとしても、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 補正却下の決定を踏まえた検討

1. 本願発明

平成19年6月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成18年11月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至22に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

<本願発明>
「 クエリ映像を入力される入力段階と、
前記クエリ映像から照明色を検出する検出段階と、
前記検出された照明色を標準照明色に変換する変換段階と、
色記述子を用いて前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報を抽出する抽出段階と、
検索しようとする色々な映像を標準照明色に予め変換した後に、その色情報を抽出してデータベースに記憶する記憶段階と、
前記標準照明色に変換されたクエリ映像の色情報と前記データベースに記憶された色々な映像に対する色情報を比較検索して類似映像を探し出す検索段階と、
を含むことを特徴とする照明変化に強い映像検索方法。」


2. 引用例

上記「第2」の「理由2」の「3.引用例」の項目に記載したとおりである。


3. 対比・判断

本願発明は、まず補正発明から、本件補正によって追加されようとしていた限定を解除したものに、変換した後の色情報をデータベースに記憶する記憶段階も有するとの限定を付加したものに相当する。
この付加された、前記記憶段階を有するとの限定を除いては、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する補正発明が、上記 「第2」 の[理由2]の項目にて述べたとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明から前記記憶段階を省いたものも、同様な理由により引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、この付加された前記記憶段階について検討すると、色変換した後の画像を記憶する際に、その変換後の色情報を記憶することは、画像処理の分野において、通常行われていることであるから、引用発明において変換した後の色情報を記憶する記憶段階、すなわち本願発明に係る前記記憶段階を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことである。



4. むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-10 
結審通知日 2009-12-15 
審決日 2009-12-28 
出願番号 特願2002-343152(P2002-343152)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 昇小池 正彦  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 真木 健彦
長島 孝志
発明の名称 照明変化に強い映像検索方法、照明変化に強い映像検索装置、コンピュータにて読取り可能な記録媒体およびプログラム  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ