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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1216661
審判番号 不服2009-5487  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-12 
確定日 2010-05-12 
事件の表示 特願2005-372561号「逆止弁取付構造」拒絶査定不服審判事件〔平成19年7月5日出願公開、特開2007-170630号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成17年12月26日の出願であって、平成21年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年4月13日付けで明細書及び特許請求の範囲についての手続補正がなされたものである。

II.平成21年4月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年4月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。
「逆止弁を内部に備えた筒状の逆止弁ユニットを、配管の途中において交換可能に取り付ける逆止弁の取付構造であって、
前記逆止弁ユニットの一方端部の外側面に設けたOリングを介して前記一方端部に冠着する固定管と、
前記逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を該固定管と一体的に引き出し可能に収容し、且つ、上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するナットを設けた収容管とを備え、
前記収容管と前記固定管は互いに接合して固定可能とし、さらに前記逆止弁ユニットは互いに固定された前記収容管と前記固定管の内側に保持されることを特徴とする逆止弁取付構造。」(なお、下線部は補正箇所を示す。)
上記補正は、補正前の請求項1(平成20年12月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された発明を特定するために必要な事項である「固定管」について、「前記逆止弁ユニットの一方端部に冠着する」を「前記逆止弁ユニットの一方端部の外側面に設けたOリングを介して前記一方端部に冠着する」と限定して減縮するとともに、「収容管」について、「前記逆止弁ユニットの他方端部を収容し」を「前記逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を該固定管と一体的に引き出し可能に収容し」と限定して減縮したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-94104号公報(以下、「引用例」という。)には、「逆止弁用カートリッジ」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「弁座部材23は、例えばステンレス鋼やりん青銅等の材料で作られた金属製のリング43と、これに一体に被覆成形されたゴム製の被覆体即ちパッキン45とで構成されている。この被覆体45は、弁体27が離着座する封止部47と、金属リング43の内径部を被覆する内径被覆部49と、金属リング43の外側側面を覆う外端面被覆部51とを備え、図示の如く金属リング43を抱き込むように形成されている。・・・(中略)・・・なお、外端面被覆部51を形成する代わりに、Oリング或いは平パッキンを配置する構成も可能である。」(段落【0005】)
イ.「従来の逆止弁用カートリッジ21においては、カートリッジ21のメンテナンスを行う為にソケット5を外しても、パッキン45あるいはOリング、平パッキン等がきつく本体に嵌まっており、また、パッキン等の本体2の端面4からの突出している部分も封止時の圧縮代だけであるのできわめて短く、このカートリッジ21を外そうとしても容易に外すことが出来ない。」(段落【0007】)
ウ.「本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、取り付けた配管或いは機器から容易に取り外しの出来る逆止弁用カートリッジを提供することを目的とする。」(段落【0008】)
エ.「図1は、本発明の具体的実施の形態にかかる逆止弁用カートリッジ71を使用して構成した単式逆止弁61の断面図である。なお、図2の従来例と同様の部材には同じ参照番号を使用し、その詳細な説明は省略する。
このカートリッジ71は、図2の従来例のカートリッジ21と同様の部材を備えている。即ちカートリッジ71は、ハブ29、アーム31、底部円環部33、リブ35、弁座部材取付け部37、ポスト39等を備えてハウジング25と、このハウジング25の弁座部材取付け部37に取り付けられる、金属リング43と、封止部47、内径被覆部49、外端被覆部51とを備えた被覆体45とから構成される弁座部材23と、ポスト39に案内される弁体27と、付勢手段としてのバネ41とを備えている。
本実施の形態におけるカートリッジ71は、さらに、取付け部材としての大略リング状のカバー体73を備えている。カバー体73は、第1の円環部75を備え、その中心部の孔76は弁座部材23の開口24に通じている。第2の円環部79が第1の円環部75に連接して設けられている。この第2の円環部79の内周80の寸法は、孔76のそれよりも大きい。カバー体73はさらに、第1の円環部75から第2の円環部79と反対側の側面側で外方へ広がるフランジ83を備えている。そして図示のように、第2の円環部79の内周80は、弁座部材23の外端被覆部51の外周部から金属リング43の外周部を越えて被覆体45或いは弁座部材23の外周部に嵌合している。他方、第1の円環部75の第2の円環部79側の側面は、外端被覆部51の外側面に当接する当接面77となる。」(段落【0013】?【0015】)
オ.「上記のように構成されたカートリッジ71を、従来例と同じように本体2内に挿入する。その際、カバー体73の第1円環部と第2円環部の外周に形成された雄ねじ88と、本体2の内周側に形成された雌ねじ89を螺合させて、カートリッジ71を本体2内に進入させる。そして、ハウジング25の底部円環部33を本体2内部の肩部3に当接させ、また、弁座部材の被覆体45の外端被覆部51を圧縮する。これにより、カバー体73の第2円環部79の内周部80と、第1円環部75の当接面77は封止される。フランジ83はその内側面84が本体2の端面4に当接して、カートリッジ71の本体2内への進入を制限する。」(段落【0016】)
カ.「なお、図1に示される弁座部材23の被覆体45の外端被覆部51の外径を更に大きく拡大し、この部分に対応するカバー体73の内周部分に円周方向に延びる溝を形成し、この溝に外端被覆部51の拡大した部分を嵌め込むようにすることもでき、これにより、カバー体73と弁座部材23との結合がより確かなものとなり、取付け或いは取り外し作業中の相互の脱落がより確実に防止できる。」(段落【0018】)
キ.「【発明の効果】以上説明したとおり、本願発明に係る逆止弁用カートリッジにおいては、従来のカートリッジとは異なり、弁座部材のシール部の外周及び外端面部を封止するように機能するカバー体を設け、このカバー体を以て例えば配管端部に取り付けるようにしたので、カートリッジの取り外しが容易にでき、メンテナンス作業或いはカートリッジの交換作業を行う上できわめて便利である。」(段落【0019】)
ク.図1には、逆止弁用カートリッジ71のカバー体73から露出する部分を本体2に収容した状態が図示されている。
ケ.図1には、逆止弁用カートリッジ71の一方端部に設けた封止部47、内径被覆部49、外端被覆部51とを備えた被覆体45を介して前記一方端部にカバー体73を冠着した状態が図示されている。
コ.図1には、本体2の上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するための雄ネジが形成されている点が図示されている。
サ.図1には、逆止弁用カートリッジ71は互いに螺合された本体2とカバー体73の内側に保持されている様子が図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「逆止弁を内部に備えた筒状の逆止弁用カートリッジ71を、配管の途中において交換可能に取り付ける逆止弁の取付構造であって、
前記逆止弁用カートリッジ71の一方端部に設けた封止部47、内径被覆部49、外端面被覆部51とを備えた被覆体45を介して前記一方端部に冠着するカバー体73と、
前記逆止弁用カートリッジ71の前記カバー体73から露出する部分を収容し、且つ、上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結する雄ネジを設けた本体2とを備え、
前記本体2と前記カバー体73は互いに螺合可能とし、さらに前記逆止弁用カートリッジ71は互いに螺合された前記本体2と前記カバー体73の内側に保持される逆止弁取付構造。」

3.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、構造または機能からみて、引用発明の「逆止弁用カートリッジ71」は本願補正発明の「逆止弁ユニット」に相当し、以下同様に、「カバー体73」は「固定管」に、「本体2」は「収容管」に、「螺合可能」は「接合して固定可能」、「螺合」は「固定」に、それぞれ相当する。
引用発明の「封止部47、内径被覆部49、外端面被覆部51とを備えた被覆体45」と本願補正発明の「Oリング」とは、どちらも逆止弁ユニットの一方端部に設けた「封止手段」である点で共通する。
また、引用発明の「雄ネジ」と本願補正発明の「ナット」とは、どちらも収容管の上流側および下流側のそれぞれ外側面に設けられものであって、収容管を上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するための「連結手段」である点で共通する。
したがって、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
[一致点]
「逆止弁を内部に備えた筒状の逆止弁ユニットを、配管の途中において交換可能に取り付ける逆止弁の取付構造であって、
前記逆止弁ユニットの一方端部に設けた封止手段を介して前記一方端部に冠着する固定管と、
前記逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を収容し、且つ、上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結する連結手段を設けた収容管とを備え、
前記収容管と前記固定管は互いに接合して固定可能とし、さらに前記逆止弁ユニットは互いに固定された前記収容管と前記固定管の内側に保持される逆止弁取付構造。」

そして、両者は次の点で相違する(かっこ内は対応する引用発明の用語を示す。)。
[相違点]
相違点1:封止手段に関して、本願補正発明は、逆止弁ユニットの一方端部の外側面にOリングを設けているのに対し、引用発明は、逆止弁ユニット(逆止弁用カートリッジ71)の一方端部に封止部47、内径被覆部49、外端被覆部51とを備えた被覆体45を設けている点。
相違点2:連結手段に関して、本願補正発明は、収容管の上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するナットを設けているのに対し、引用発明は、収容管(本体2)の上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結する雄ネジを設けている点。
相違点3:本願補正発明は、逆止弁ユニットの固定管から露出する部分を「該固定管と一体的に引き出し可能に」収容管に収容しているのに対して、引用発明は、逆止弁ユニット(逆止弁用カートリッジ71)の固定管(カバー体73)から露出する部分を収容管(本体2)に収容しているものの、固定管と一体的に引き出し可能に収容しているかどうか明らかでない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用例には、「ハウジング25の底部円環部33を本体2内部の肩部3に当接させ、また、弁座部材の被覆体45の外端被覆部51を圧縮する。これにより、カバー体73の第2円環部79の内周部80と、第1円環部75の当接面77は封止される。フランジ83はその内側面84が本体2の端面4に当接して、カートリッジ71の本体2内への進入を制限する。」(摘記事項オ.参照)と記載されており、この記載からみて、外端被覆部51はカバー体73の第2円環部79の内周部80を封止する機能を有することが把握できる。
また、引用例には、「なお、外端面被覆部51を形成する代わりに、Oリング或いは平パッキンを配置する構成も可能である。」(摘記事項ア.参照)と記載されており、外端被覆部51に代えてOリングを採用することが示唆されている。
してみると、引用例には、カバー体73の第2円環部79の内周部80に外端被覆部51に代えてOリングを採用すること、即ち、逆止弁ユニット(逆止弁用カートリッジ71)の一方端部の外側面にOリングを設けることが示唆されているということができる。
しかも、逆止弁ユニットの一方端部の外側面にOリングを設けることは、例えば、実願平1-6163号(実開平2-98276号)のマイクロフィルム(「Oリング7」を参照)や実願平3-50120号(実開平5-3767号)のCD-ROM(「Oリング26」を参照)などに見られるように従来周知の技術にすぎないから、引用発明において、外端被覆部51の代わりに、逆止弁ユニット(逆止弁用カートリッジ71)の一方端部の外側面にOリングを設けることにより、相違点1に係る本願補正発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到できたことである。
(2)相違点2について
引用発明は、収容管を上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結する連結手段として、収容管の上流側および下流側のそれぞれ外側面に雄ネジを設けたものである。
ところで、逆止弁取付構造において、収容管を上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するための「連結手段」として、収容管の上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するナットを設けることは、例えば、特開2001-59578号公報(「ジョイントナット45、袋ナット47」を参照)や実願平2-81834号(実開平4-39473号)のマイクロフィルム(「伸縮管固定用ナット44、配管接続用ナット48」を参照)などに見られるように従来周知の技術にすぎない。
そして、引用発明に上記周知技術を適用することを妨げるような特段の事情があるとも認められない。
してみると、引用発明の収容管(本体2)に上記周知技術を適用し、相違点2に係る本願補正発明のように構成する程度のことは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることであり容易である。
(3)相違点3について
引用例には、「図1に示される弁座部材23の被覆体45の外端被覆部51の外径を更に大きく拡大し、この部分に対応するカバー体73の内周部分に円周方向に延びる溝を形成し、この溝に外端被覆部51の拡大した部分を嵌め込むようにすることもでき、これにより、カバー体73と弁座部材23との結合がより確かなものとなり、取付け或いは取り外し作業中の相互の脱落がより確実に防止できる」(上記カ.参照)と記載されている。
そして、「結合がより確か」「脱落がより確実に防止できる」などと記載されているところをみると、たとえ溝に外端被覆部51の拡大した部分を嵌め込む構成を採用しなくても、カバー体73と弁座部材23との結合が確かなものであり、取り外し作業中の相互の脱落が確実に防止できるものであることは明らかである。
そうすると、引用発明においても、逆止弁ユニットの固定管から露出する部分を「該固定管と一体的に引き出し可能に」収容管に収容しているということができる。
また、引用例には、「従来の逆止弁用カートリッジ21においては、カートリッジ21のメンテナンスを行う為にソケット5を外しても、パッキン45あるいはOリング、平パッキン等がきつく本体に嵌まっており、また、パッキン等の本体2の端面4からの突出している部分も封止時の圧縮代だけであるのできわめて短く、このカートリッジ21を外そうとしても容易に外すことが出来ない。」(上記イ.参照)という問題点があったところ、この問題点を解決するために、「弁座部材のシール部の外周及び外端面部を封止するように機能するカバー体を設け、このカバー体を以て例えば配管端部に取り付けるようにしたので、カートリッジの取り外しが容易にでき、メンテナンス作業或いはカートリッジの交換作業を行う上できわめて便利」(上記キ.参照)になった、と記載されている。
これは、カバー体73に弁座部材23のシール部がきつく嵌って結合され、カートリッジ71をカバー体73と一体的に本体2から取り外すことができることを意味するものであり、そして、カバー体73から露出する部分を長くしたので、本体2からカバー体73を取り外した後、カバー体73からカートリッジ71を簡単に取り外すことができることを意味するものと解される。逆に、このように解さなければ、引用発明について「カートリッジの取り外しが容易にでき、メンテナンス作業或いはカートリッジの交換作業を行う上できわめて便利」(上記キ.参照)とはいえないはずである。
したがって、この点から見ても、引用発明は、逆止弁ユニットの固定管から露出する部分を「該固定管と一体的に引き出し可能に」収容管に収容しているということができるので、相違点3は実質的に相違点とはいえない。

そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。

なお、審判請求人は、請求の理由の3.(d)において、「そこで、検討すると、引用発明1の収容管に伸縮ユニオンを適用することは当業者の通常有する創作能力を超えていると考える。なぜならば、引用発明1を単独で見ると、上記相違点2で述べたように、固定管に対して逆止弁ユニットは弁座部材23の被覆体45等によって嵌合するが、この嵌合構造を得るには、逆止弁ユニットの弁座部材23を当該外端被覆部51が圧縮されるまで固定管の端面77に当接させることを必要とするのであって、この当接は収容管の締め込みに完全に依存していることから、収容管に伸縮ユニオンを適用する余地はないからである。言い換えると、収容管を伸縮ユニオンとした場合は、外端被覆部51の圧縮が不十分あるいは未圧縮の状態となり、この状態では上記嵌合構造をなすことができない」(審決注:「引用発明1」は本審決の「引用発明」に対応する。以下同様。)と主張している。しかしながら、外端被覆部51の圧縮は、収容管(本体2)とその上流側および下流側の配管(ソケット5)との締め込み具合に直接的には依存せず、主として収容管(本体2)の雌ねじ89と固定管(カバー体73)の雄ねじ88との締め込み具合によって定まるものである。してみれば、引用発明において、収容管(本体2)の上流側の配管および下流側の配管との接続にナットを適用することを妨げるような特段の事情があるとも認められないから、審判請求人の上記主張は、採用できない。
また、審判請求人は、審尋に対する平成22年1月25日付け回答書の中で、「収容管に『逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を該固定管と一体的に引き出し可能に収容』することまで引用文献1から示唆を受けるものではありません。」(審決注:「引用文献1」は本審決の「引用例」に対応する。以下同様。)(回答の内容(4)の項参照)と主張するとともに、「逆止弁ユニットの一方端部の外側面にOリングが設けられるか否かの相違点2についても、本願発明では逆止弁ユニットを固定管と一体的に引き出すために、当該Oリングによって積極的に逆止弁ユニットの固定管に対する嵌合強度を高めているのに対して、引用文献1では、その従来の技術の欄に『なお、外端面被覆部51を形成する代わりに、Oリング或るは平パッキンを配置する構成も可能である』と記載されるとともに、『カートリッジ21のメンテナンスを行う為にソケット5を外しても、パッキン45あるいはOリング、平パッキン等がきつく本体に嵌まっており、・・・(中略)・・・このカートリッジ21を外そうとしても容易に外すことが出来ない。』ことを解決課題として掲げているように、引用発明は逆止弁ユニットのOリングによる緊密な嵌合を暗に否定するものと理解するのが妥当であり、実際、引用文献1における実施の形態においても、引用発明へのOリングの採用については積極的な記載が見あたりません。」(審決注:「相違点2」は本審決の「相違点1」に対応し、「本願発明」は本審決の「本願補正発明」に対応する。)(回答の内容(5)の項参照)と主張している。しかしながら、この点については、「4.(3)相違点3について」及び「4.(1)相違点1について」の判断において示したとおりであるから、審判請求人の上記主張は採用できない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成20年12月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「逆止弁を内部に備えた筒状の逆止弁ユニットを、配管の途中において交換可能に取り付ける逆止弁の取付構造であって、
前記逆止弁ユニットの一方端部に冠着する固定管と、
前記逆止弁ユニットの他方端部を収容し、且つ、上流側および下流側のそれぞれ外側面に上流側の配管および下流側の配管に着脱可能に連結するナットを設けた収容管とを備え、
前記収容管と前記固定管は互いに接合して固定可能とし、さらに前記逆止弁ユニットは互いに固定された前記収容管と前記固定管の内側に保持されることを特徴とする逆止弁取付構造。」

2.引用例の記載事項
引用例の記載事項、並びに引用発明は、前記II.2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記II.1.の本願補正発明における「固定管」についての限定事項である「前記逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を該固定管と一体的に引き出し可能に収容し」を「前記逆止弁ユニットの一方端部に冠着する」と拡張するとともに、「収容管」についての限定事項である「前記逆止弁ユニットの前記固定管から露出する部分を該固定管と一体的に引き出し可能に収容し」を「前記逆止弁ユニットの他方端部を収容し」と拡張したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が、前記II.3.及び4.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-02 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2005-372561(P2005-372561)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 熊谷 健治齊藤 公志郎  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 大山 健
常盤 務
発明の名称 逆止弁取付構造  
代理人 濱田 俊明  

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