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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1216727
審判番号 不服2007-11159  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-18 
確定日 2010-05-13 
事件の表示 特願2000-379287「燃料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月26日出願公開、特開2002-180073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年12月13日の出願であって、平成18年12月14日付けで拒絶理由が通知され、平成19年2月16日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年3月14日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年4月18日に拒絶査定不服審判が請求され、同年5月18日に手続補正書が提出され、同年7月25日に審判請求書の手続補正書が提出され、平成21年9月1日付けで審尋がされ、同年11月5日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成19年2月16日付け及び同年5月18日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。

【請求項1】 平均長径3?200mmの大きさの繊維強化プラスチック破砕物100重量部及び20℃における蒸気圧が2.3kPa以下で且つ粘度5000mPa・s以下である可燃性液体1?200重量部よりなることを特徴とする燃料組成物。
【請求項2】 繊維強化プラスチック成形体を、20℃における蒸気圧が2.3kPa以下で且つ粘度5000mPa・s以下である可燃性液体の存在下に破砕することを特徴とする請求項1記載の燃料組成物の製造方法。
【請求項3】 セメント原料予熱装置及びセメント原料焼成用キルンを備えたセメント製造設備を用いたセメントの製造方法において、請求項1に記載の燃料組成物を該予熱装置に供給して該セメント製造設備内で燃焼させることを特徴とするセメントの製造方法。
【請求項4】 繊維強化プラスチック破砕物100重量部に対して前記可燃性液体の割合が60重量部以上の燃料組成物は、セメント予熱装置の原料シュートより、また、前記可燃性液体の割合が上記割合より少ない該燃料組成物は、セメント原料と共にセメント予熱装置に供給する、請求項3記載のセメントの製造方法。
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明」という。)

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

第4 刊行物及び記載事項
原査定の拒絶の理由で挙げられた刊行物及び記載事項は、以下のとおりである。

刊行物1:特開平4-359092号公報
(原査定における「引用例1」に同じ。)
刊行物2:特開平6-8247号公報
(同「引用例3」に同じ。)

刊行物1:
(1a)「【請求項1】 燃料油に、該燃料油との比重差が0.05以下のプラスチックス粉末を分散して成る燃料油組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)

(1b)「【請求項3】 プラスチックスの粉末の粒径が2,000μm以下である請求項1または2記載の燃料油組成物。」(特許請求の範囲の請求項3)

(1c)「燃料に利用されている産業系プラスチックス廃棄物はポリオレフィン系樹脂(PE,PP)、ポリスチレン樹脂、PET樹脂などである。これらのプラスチックスが混合して排出されたり、紙や繊維と複合化している場合に再生原料に利用できないので、これらの廃棄物が燃料として用いられている。これらのプラスチックス廃棄物は熱可塑性樹脂が多く、加熱溶解してブリケットやペレット状の固形燃料として利用されている。」(段落【0005】)

(1d)「この発明は、燃料油にプラスチックス粉末を、高濃度でも長期間にわたって安定に分散させた流動性が良好な液体燃料として取扱うことができる燃料油組成物を提供するためになされたものである。
即ちこの発明は、燃料油に、該燃料油との比重差が0.05以下のプラスチックス粉末を分散して成る燃料油組成物に関する。
」(段落【0009】?段落【0010】)

(1e)「従って本発明においては、可燃性の熱可塑性プラスチックス粉末および熱硬化性プラスチックス粉末のいずれも使用可能であるが、使用する燃料油との比重差が0.05以下になるものを選定する。一般に燃料油の比重は0.8?1.0であるので、例えば、以下の表1に示すものが挙げられる。
【表1】

」(段落【0012】?【0013】)

(1f)「本発明に用いる燃料油としては、中重質油、例えば、灯油、軽油、重油、原油、タール油、クレオソート油、石炭液化油、廃油および動植物油等が挙げられる。」(段落【0015】)

(1g)「本発明に用いるプラスチックスは、種々のプラスチックス成型体が一時的または長期間使用された後に廃棄された廃プラスチックス、あるいは種々のプラスチックス成型時に発生するオフ成型品、バリ部分、裁断残部または耳部分などであればよい。また一般ごみから分別されたプラスチックスの減容固化物(ブリケットやペレット)なども使用できる。そしてこれらのプラスチックスは破砕または粉砕により、一般に粒径2,000μm以下、好ましくは1,000μm以下、さらに好ましくは500μm以下の粉末にして使用される。プラスチックス粉末の形状は球状、楕円状、キュービック状が望ましく、長径と短径の比が10以上の棒状または短冊状の粒子は本発明にとって好ましくない。これらのプラスチックス粉末の配合量は特に限定的ではないが、通常は30?60重量%である。」(段落【0016】)

(1h)「実施例1
約5mm以下に破砕した比重0.95の高密度ポリエチレンを粉砕し、平均粒径45ミクロンのプラスチックス微粉末を得た。これを比重0.932(60℃)のC重油にボールミルを使用して混合し、ポリエチレン38重量%、発熱量10,500kcal/kgの混合流体燃料を得た。この粘度をハーケ社レオメータで60℃で測定したところ670cpであった。またこの混合流体燃料300gを500mlの容器に60℃にて14日間静置後容器を逆様にし、5分後の液出量を測定したところ283gが流出し、沈殿凝集は全くなかった。」(段落【0025】)

刊行物2:
(2a)「【請求項1】 廃FRPを50mm以下の塊に破砕し、この塊状破砕物をセメント製造工程のプレヒータに投入し、補助燃料として使用することを特徴とする繊維強化プラスチックの処理方法。」(特許請求の範囲の請求項1)

(2b)「廃FRPは従来埋立等廃棄物として処理されており、腐らないために、捨場に困っている実情にある。従来、廃FRPを建設機械又は大型シュレッダを用いて破壊し、さらに大きさ50mm程度に2次破砕シュレッダ等により破砕することは知られている。しかし、この破砕品を有効利用することについては知られていない。
さらに、廃FRPの微粉砕は非常に困難であるとの認識があり、例えば特開昭63-39684号公報には、廃FRPを微粉砕することができる唯一の粉砕機を開発したことが強調されている。
本発明者らは、このような実情に鑑み廃FRPの燃料としての回収について研究し、セメント製造工程の各段階において適切な補助エネルギーとして、十分利用可能であることを確認した。本発明はこのような新規技術を提供することを目的とするものである。」(段落【0003】?【0005】)

(2c)「本発明者は、セメント焼成工程では、多数の工程中の適切な位置に多種の補助燃料を供給することにより、塊状又は粉状の固体燃料を有効に利用することができることに着目した。図2はセメントクリンカー焼成工程を簡略化して示した概略工程図である。」(段落【0007】)

(2d)「本発明によれば埋立処理等によって処理されている廃FRPをセメント焼成工程において補助燃料として燃焼することにより熱回収を図り、有効利用することができる。また、廃FRPの燃焼により発生する灰はセメントの原料としてクリンカ中に取り込まれてしまうため廃FRP使用により廃棄物は発生しない。」(段落【0015】)

(2e)「

」(【図2】)

第5 当審の判断
1 引用発明
刊行物1には、「燃料油に、該燃料油との比重差が0.05以下のプラスチックス粉末を分散して成る燃料油組成物」(摘記(1a))が記載されている。
ここで、燃料油とプラスチックス粉末の配合量について、「これらのプラスチックス粉末の配合量は特に限定的ではないが、通常は30?60重量%である」(摘記(1g))なる記載からすると、「燃料油70?40重量%、プラスチックス30?60重量%」の場合の組成物を包含しているといえる。
そうすると、刊行物1には、
「70?40重量%の燃料油に、該燃料油との比重差が0.05以下のプラスチックス粉末30?60重量%を分散して成る燃料油組成物」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

2 対比
(1)引用発明における「燃料油」について
引用発明における燃料油としては、(1f)に摘記したように、「中重質油、例えば、灯油、軽油、重油、原油、タール油、クレオソート油、石炭液化油、廃油および動植物油等」が用いられるところ、具体的に実施例1においては、「比重0.932(60℃)のC重油」を用いている(摘記(1h))。
ところで、C重油の50℃での動粘度が250cSt以下あるいは1000cSt以下であることは当業者に周知であり(必要なら、日本規格協会編、「JISハンドブック 石油」1984年4月12日、財団法人日本規格協会発行、27?28頁;日石三菱株式会社編、「石油便覧2000」平成12年3月1日、2000年版新版、株式会社燃料油脂新聞社発行、328頁等の、参考文献を参照のこと。)、粘度と動粘度の関係が、
粘度(mPa・s)=動粘度(cSt)×密度(g/cm^(3))
であることも当業者に周知である。
引用発明の実施例1で用いられたC重油の密度は、比重が0.932であるから0.932g/cm^(3)といえ、この密度の値と「250cSt以下」の動粘度からC重油の粘度を計算すると、「233mPa・s以下」となる。また、C重油の動粘度が「1000cSt以下」の場合でも粘度は、「932mPa・s以下」となる。
上記した参考文献中の動粘度の値は50℃でのものであり、引用発明の実施例1における比重は60℃でのものではあるが、例え20℃においても、C重油の粘度が5000mPa・s以下であることは明らかといえる。
また、燃料油として本願発明においては本願明細書の段落【0025】にO-キシレンが好ましいとされており、C重油の蒸気圧がO-キシレンよりも高くないことは明らかであるから、実施例1で用いているC重油の蒸気圧は本願発明で限定するところの2.3kPa以下であることは明らかといえる。
そして、燃料油とは可燃性液体であるから、引用発明における「燃料油」は、「20℃における蒸気圧が2.3kPa以下で且つ粘度5000mPa・s以下である可燃性液体」のものを包含しているといえる。

(2)引用発明における「プラスチックス粉末」について
引用発明における「プラスチックス粉末」とは、(1c)に摘記したように「紙や繊維と複合化している場合に再生原料に利用できないので、これらの廃棄物が燃料として用いられている」ものであり、また、(1g)に摘記したように「破砕または粉砕により」得ているから、「繊維強化プラスチック破砕物」を包含するものといえる。

(3)燃料油とプラスチックの組成割合について
引用発明において「70?40重量%の燃料油」に「プラスチックス粉末30?60重量%」とは、プラスチックスを「100重量部」とすると、燃料油は「(40/60)×100重量部?(70/30)×100重量部」、すなわち、「67?233重量部」となる。

(4)引用発明と本願発明との一致点及び相違点
以上のことを踏まえて両者を対比すると、両者は、
「繊維強化プラスチック破砕物100重量部及び20℃における蒸気圧が2.3kPa以下で且つ粘度5000mPa・s以下である可燃性液体67?200重量部よりなることを特徴とする燃料組成物」
の点で一致し、
(i)プラスチック破砕物が、本願発明においては、「平均長径3?200mmの大きさ」のものであるのに対し、引用発明においては「粉末」である点、
(ii)可燃性液体とプラスチックとの比重差について、引用発明においては、「0.05以下」と特定しているのに対し、本願発明においては特定していない点、
で相違する。

3 判断
(1)相違点(i)について
引用発明は、(1d)に摘記したように「燃料油にプラスチックス粉末を、高濃度でも長期間にわたって安定に分散させた流動性が良好な液体燃料として取扱うことができる燃料油組成物を提供する」ものであるが、そのために、(1a)、(1d)に摘記したように「燃料油に、該燃料油との比重差が0.05以下のプラスチックス粉末を分散」したものであって、プラスチックス粉末の粒径については、摘記(1b)に「粒径が2,000μm以下」とあり、摘記(1g)に「本発明に用いるプラスチックスは、種々のプラスチックス成型体が一時的または長期間使用された後に廃棄された廃プラスチックス、あるいは種々のプラスチックス成型時に発生するオフ成型品、バリ部分、裁断残部または耳部分などであればよい。また一般ごみから分別されたプラスチックスの減容固化物(ブリケットやペレット)なども使用できる。そしてこれらのプラスチックスは破砕または粉砕により、一般に粒径2,000μm以下、好ましくは1,000μm以下、さらに好ましくは500μm以下の粉末にして使用される。プラスチックス粉末の形状は球状、楕円状、キュービック状が望ましく、長径と短径の比が10以上の棒状または短冊状の粒子は本発明にとって好ましくない。」とされるものの、何故この粒径のものがよいのか、引用発明の課題である分散性の改良(摘記(1d))にどの程度寄与するものであるのか、等については記載されておらず、2,000μm以下の粒径、すなわち2mm以下の粉末にして使用される、ということが記載されるにとどまる。
ところで、引用発明は、プラスチックとして繊維強化プラスチック以外のプラスチックをも包含する発明といえるところ、刊行物2には、(2a)に摘記したように、「廃FRPを50mm以下の塊に破砕し、この塊状破砕物をセメント製造工程のプレヒータに投入し、補助燃料として使用する」ものについて記載されるとともに、「従来、廃FRPを建設機械又は大型シュレッダを用いて破壊し、さらに大きさ50mm程度に2次破砕シュレッダ等により破砕することは知られている」こと、「廃FRPの微粉砕は非常に困難である」こと(いずれも摘記(2b))が記載されている。
すなわち、刊行物2には、廃FRPの微粉砕は非常に困難であるが、セメント製造工程における補助燃料かつセメント原料として使用するには、廃FRPは、微粉砕を要せず、50mm以下の塊に破砕したものであれば使用できることが記載されている(摘記(2a)?(2e))。
そうすると、繊維強化プラスチックを破砕して燃料組成物とする際に、これは刊行物2に記載されるようにセメント原料としても使用できるのであるから、セメント原料にも用いることを前提に、困難な微粉砕をわざわざすることなく、また粉砕に費やすエネルギーを節約するためにも、引用発明よりも若干大きめの例えば平均長径3mm以上のものに破砕し、刊行物2に記載の50mm程度のものを包含する、例えば、3?200mmのものとすることは、刊行物2に記載されたものから当業者が容易になしうる範囲内のものといえる。また、粒子の大きさを表すのに「平均長径」を用いることも普通といえる。
したがって、引用発明において、プラスチック破砕物として、「平均長径3?200mmの大きさ」のものを用いることは、当業者にとって容易である。

(2)相違点(ii)について
本願発明におけるFRPは、「ガラス繊維、炭素繊維等の繊維状充填材と熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の樹脂とより基本的に構成される複合体であり、本発明ではこれらのFRPが好適に使用される。具体的には、上記熱硬化性樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が例示される。また、熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が例示される。」(本願明細書の段落【0012】?【0013】)ものであり、可燃性液体は、「本発明において、可燃性液体は上記特性を満足するものであれば特に制限されず、公知の可燃性液体としては、、粘度5000mPa・s以下、常温で液体である性質を持つものであれば公知のものが特に制限無く使用される。上記可燃性液体は、本発明においてはFRPが燃料として使用できれば良く、爆発性が低いものであれば、使用することができる。例えば、20℃における蒸気圧が1.33kPa、粘度0.83mPa・s(20℃)のO-キシレン等が好ましい。しかし、FRP破砕物は廃棄物であり、その処理における経済性を考慮した場合、かかる可燃性液体も廃棄物を利用することが好ましい。例えば、本発明に好適に用いられる可燃性液体としては、各種工場等より廃棄される油類が好適に使用される。より具体的には、食品製造工場、その他の化学工場等から発生する油類や有機化合物等が例示される。」(同段落【0025】?【0026】)というものである。
ところで、引用発明においては、燃料油とプラスチックとの比重差が特定されてはいるものの、それぞれについては、燃料油としては「中重質油、例えば、灯油、軽油、重油、原油、タール油、クレオソート油、石炭液化油、廃油および動植物油等」(摘記(1f))であり、プラスチックとしては、その表1に示されているように(摘記(1e))、本願発明におけるのと同じ、ポリプロピレン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂も、適したものとして挙げられている。
そうしてみると、本願発明も、引用発明における比重差が0.05以下の場合の態様を包含しているといえ、この点において、本願発明と引用発明とは実質的に相違していない。

(3)本願発明の効果について
本願発明の効果は、本願明細書の段落【0044】?【0046】に記載されるように、「以上の説明より理解されるように、本発明の燃料組成物は、FRP破砕物中の粉塵の発生を極めて効果的に防止することができ、また、良好なハンドリング性を有すると共に、安定した燃焼性を発揮するという、優れた特性を有する。
そして、本発明の可燃性液体は、各種燃焼設備の燃料として、工業的に極めて有効に使用することができる。
特に、セメントの製造設備に燃料として使用し、セメントを製造する場合には、埋立場の問題、焼却に伴う排ガスの問題など環境への負荷を少なくし、焼却時の熱をセメント製造用のエネルギーとして有効に利用できる一方、焼却残渣はセメントの原料として使用することができ、よって、資源の有効利用を図ることができる。」というものである。
このような効果は、本願明細書の段落【0010】に、「FRP破砕物を特定の可燃性液体と混合することにより、上記課題を解決し得ることを見い出し」とあるように、FRP破砕物を特定の可燃性液体と混合することにより奏されるものであって、具体的実験結果が記載される【表3】をみても、運搬性、飛散性、運転性の効果は、可燃性液体として「液体1」?「液体4」で表されるものを使用したことによるものであって、本願発明を特定する他の事項である「平均長径3?200mmの大きさ」のものを用いたことによるものとはいえない。
そうしてみると、FRP破砕物中の粉塵の発生を防止できることや良好なハンドリング性で安定した燃焼性を発揮できるのは、引用発明においても当然に奏しているものといえ、また、セメントの製造設備に燃料として使用し、かつ、セメントの原料としても使用できることは刊行物2に記載されたものから当業者が予測しうるものといえる。
したがって、本願発明の効果が格別に優れたものであるとすることはできない。

4 請求人の主張
請求人は、平成21年11月5日付け回答書において、
「上記本発明の燃料組成物は、・・・「固体状」の形態で取扱われるものです。そのため、上記燃料組成物を構成する繊維強化プラスチック破砕物は、その大きさに対応して「固体状」で存在するために必要な可燃性液体の使用割合を限定しているのです。
因みに、繊維強化プラスチック破砕物100重量部に対して可燃性液体が200重量部以下の割合で混合された状態は、スラリー状或いは液状を呈すること無く、繊維強化プラスチック破砕物に可燃性液体が付着した状態を呈します。
・・・
しかしながら、前記固液割合と、繊維強化プラスチック破砕物の大きさの限定とは、燃料組成物を「固体状」として取り扱うために重要な要件であり、それぞれ独立して議論することはできません。」
と主張する。
しかしながら、本願発明の燃料組成物が固体であることも、繊維強化プラスチック破砕物の大きさが、燃料組成物が固体状であるために必要であることも、また、繊維強化プラスチック破砕物と可燃性液体との量割合の範囲が、燃料組成物が固体状であるために必要であることも、本願明細書には何ら説明されておらず、また、そのことが当業者に自明であるともいえない。
そうしてみると、上記請求人の主張は明細書の記載に基づかないものであって、採用することはできない。

5 まとめ
したがって、本願発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-12 
結審通知日 2010-03-16 
審決日 2010-03-29 
出願番号 特願2000-379287(P2000-379287)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 橋本 栄和
松本 直子
発明の名称 燃料組成物  

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