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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1216729
審判番号 不服2007-15313  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-31 
確定日 2010-05-13 
事件の表示 特願2003-309880「半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月24日出願公開、特開2005- 79431〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成15年9月2日の出願であって,平成18年2月8日付けで手続補正がされ,同年9月29日付けで最後の拒絶理由通知が出され,同年11月28日付けで手続補正がされ,平成19年4月26日付けで,平成18年11月28日付けの手続補正が却下されるとともに,拒絶査定がされた。
さらに,上記拒絶査定に対して平成19年5月31日に審判請求がされるとともに,同年6月29日付けで手続補正がされ,その後当審において,平成21年10月30日付けで審尋がされたものである。


第2 平成19年6月29日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)の却下について

[補正却下の決定の結論]

本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正による補正前後の本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は,それぞれ,次のとおりである。

・ 補正前
「 【請求項1】
半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された有機絶縁膜と,前記有機絶縁膜の開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極とを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは第2の電極を有し,前記複数の配線あるいは第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の開口部と同等以上のサイズであることを特徴とする半導体装置。 」

・ 補正後
「 【請求項1】
半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,前記第1の電極の上に前記開口部を有し,前記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜と,前記有機絶縁膜の前記開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,前記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは複数の第2の電極を有し,前記複数の配線あるいは前記複数の第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の前記開口部と同等以上のサイズであり,前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在し,前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在していることを特徴とする半導体装置。 」

2 補正事項の整理
補正後の本願の請求項1についての補正事項は,以下のとおりである。(下線は補正箇所を示し,当審で付加したもの。)

ア 補正事項1
補正前の請求項1の「前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された有機絶縁膜」を,補正後の請求項1の「前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,前記第1の電極の上に前記開口部を有し,前記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜」と補正すること。

イ 補正事項2
補正前の請求項1の「外部接続用電極とを備えた半導体装置であって,」を,補正後の請求項1の「外部接続用電極と,前記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた半導体装置であって,」と補正すること。

ウ 補正事項3
補正前の請求項1の「複数の配線あるいは第2の電極」を,補正後の請求項1の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」と補正すること。

エ 補正事項4
補正前の請求項1の「前記複数の配線あるいは第2の電極」を,補正後の請求項1の「前記複数の配線あるいは前記複数の第2の電極」と補正すること。

オ 補正事項5
補正前の請求項1の「前記有機絶縁膜の開口部と同等以上のサイズであること」を,補正後の請求項1の「前記有機絶縁膜の前記開口部と同等以上のサイズであり,前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在し,前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在していること」と補正すること。

3 補正目的の適否
(1) 補正事項についての検討
ア 補正事項1について
補正事項1は,補正前の請求項1に,「絶縁性保護膜」を発明特定事項として付加するとともに,上記「絶縁性保護膜」と,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「有機絶縁膜」との位置関係を発明特定事項として付加する補正である。
しかしながら,上記補正事項1における補正前の請求項1に「絶縁性保護膜」を発明特定事項として付加する補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項のいずれを限定するものであるともいえない。
また,補正前の請求項1には,上記「絶縁性保護膜」と上記「有機絶縁膜」との位置関係についても記載されていないため,上記補正事項1における上記両者の位置関係を補正前の請求項1に付加する補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものであるとはいえない。
そうすると,上記補正事項1は,特許法第17条の2第4項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。
また,上記補正事項1は,特許法第17条の2第4項第1号,第3号又は第4号に掲げる,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

イ 補正事項2について
補正事項2は,補正前の請求項1に,「バンプ」が発明特定事項として付加するとともに,上記「バンプ」と,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「外部接続用電極」との位置関係も発明特定事項として付加する補正である。
しかしながら,上記補正事項2における補正前の請求項1に「バンプ」を発明特定事項として付加する補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項のいずれを限定するものであるともいえない。
また,補正前の請求項1には,上記「バンプ」と上記「外部接続用電極」との位置関係についても記載されていないため,上記補正事項2における上記両者の位置関係を補正前の請求項1に付加する補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものであるとはいえない。
そうすると,上記補正事項2は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。
また,上記補正事項2は,特許法第17条の2第4項第1号,第3号又は第4号に掲げる,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

ウ 補正事項3及び補正事項4について
補正事項3及び補正事項4は,いずれも,補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「第2の電極」の構成を明確にすることを目的とした補正であるから,特許法第17条の2第4項第4号に掲げる,明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

エ 補正事項5について
(ア) 補正事項5は,その内容からみて,次の補正事項5-1?5-3の補正事項からなるものである。

・ 補正事項5-1
補正前の請求項1に,「前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在し,」を付加する補正。
・ 補正事項5-2
補正前の請求項1に,「前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,」を付加する補正。
・ 補正事項5-3
補正前の請求項1に,「前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在している」を付加する補正。

(イ) 上記補正事項5-1は,いずれも補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「開口部」と「第2の電極」との位置関係を限定する補正である。
また,上記補正事項5-2は,いずれも補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「外部接続用電極」と「開口部」及び「有機絶縁膜」との位置関係を限定する補正である。
そうすると,上記補正事項5-1及び補正事項5-2は,いずれも,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当する。

(ウ) 上記補正事項5-3は,補正前の請求項1には,上記補正事項1で付加された発明特定事項である「絶縁性保護膜」と,いずれも補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「第1の電極」,「有機絶縁膜」及び「外部接続用電極」との位置関係を付加する補正である。
しかしながら,上記アで検討したとおり,上記補正事項1における補正前の請求項1に「絶縁性保護膜」を発明特定事項として付加する補正は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項のいずれを限定するものであるともいえず,また,補正前の請求項1には,上記「絶縁性保護膜」と上記「第1の電極」,上記「有機絶縁膜」及び上記「外部接続用電極」との位置関係についても記載されていないため,上記各発明特定事項の位置関係を補正前の請求項1に付加する上記補正事項5-3は,補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものであるとはいえない。
さらに,平成19年5月31日に提出され,同年6月29日付け手続補正書により補正された審判請求書において,審判請求人は,「また,外部接続用電極が絶縁性保護膜上ではなく,有機絶縁膜の開口部から有機絶縁膜の上面にかけて形成されることにより,外部接続用電極の金属膜の膜応力による絶縁性保護膜にクラックが入ることを防止する効果がある。」と主張しているが,もしそうであれば,上記補正事項5-3で,上記「絶縁性保護膜」と上記「第1の電極」,上記「有機絶縁膜」及び上記「外部接続用電極」との位置関係を補正前の請求項1に付加することにより,新たな効果が奏されることになる。
そうすると,上記補正事項5-3は,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当しない。
また,上記補正事項5-3は,特許法第17条の2第4項第1号,第3号又は第4号に掲げる,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

(エ) 上記(ア)?(ウ)から,上記補正事項5-3を含む上記補正事項5は,特許法第17条の2第4項各号に掲げる,いずれの事項を目的とするものにも該当しない。

(2) まとめ
以上のとおり,本件補正における上記補正事項1,補正事項2及び補正事項5は,特許法第17条の2第4項各号に掲げる,いずれの事項を目的とするものにも該当しないから,上記補正事項1,補正事項2及び補正事項5を含む本件補正は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

4 独立特許要件についての検討
(1) 検討の前提
上記3で検討したとおり,本件補正は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないが,仮に,上記補正事項1,補正事項2及び補正事項5による補正が,特許法第17条の2第4項第2号に掲げる,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものに該当し,本件補正が特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとした場合において,補正後の特許請求の範囲に記載された事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かにつき,以下に検討する。

(2) 本願補正発明
補正後の本願の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は,次のとおりである。

「 【請求項1】
半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,前記第1の電極の上に前記開口部を有し,前記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜と,前記有機絶縁膜の前記開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,前記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは複数の第2の電極を有し,前記複数の配線あるいは前記複数の第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の前記開口部と同等以上のサイズであり,前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在し,前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在していることを特徴とする半導体装置。 」

(3) 引用例の記載と引用発明
(3-1) 引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内で頒布された特開平03-038043号公報(以下「引用例1」という。)には,第1図?第4図及び第6図とともに次の記載がある。(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)

ア 半導体チップと半田バンプとの接続について
「 [実施例1]
本実施例1の半導体集積回路装置は,例えばAl4層配線構造を有するECL(Emitter Coupled Logic)ゲートアレイである。
第3図は,このECLゲートアレイを形成した半導体チップ1を示している。チップ1は,例えばp^(-)形シリコン単結晶により構成されている。
チップ1の表面のほぼ全域には,外部回路との接続を行う端子を構成する多数の半田バンプ2が形成されている。半田バンプ2は,ECLゲートアレイの内部回路に電源(V_(EE),V_(TT),V_(CC)など)を供給するための電源供給用半田バンプ2と,信号を入出力するための信号用半田バンプ2とで構成されている。
第4図は,一つの電源供給用半田バンプ2とその下方の第4層Al配線3とを拡大して示している。最上層配線である第4層Al配線3は,ECLゲートアレイの内部回路に電源を供給する電源用配線を構成しており,その線幅は,例えば数十?百数十μmである。半田バンプ2と第4層Al配線3とは,コンタクトホール4を通じて電気的に接続されている。コンタクトホール4は,チップ1の表面を保護するパッシベーション膜5をエッチングで開孔して形成したものである。半田バンプ2は,コンタクトホール4の底部に露出した第4層Al配線3,すなわち電極パッド6上に形成されている。一方,信号用半田バンプ2は,第4層Al配線のうち,ECLゲートアレイの信号用配線を構成する配線(図示せず)の電極パッド上に形成されている。 」(第3頁右下欄第18行?第4頁右上欄第7行)

イ 半田バンプの下方の領域における配線のレイアウトについて
「 第1図は,上記電源供給用半田バンプ2の下方の領域における配線のレイアウトを示している。半田バンプ2は,図の実線で囲まれた領域Bに配置されており,その下方には,前記第4層Al配線3が図の左右方向に延在している。第4層Al配線3のさらに下方には,第3層Al配線7a?7dが所定の間隔を置いて図の上下方向に延在している。第3層Al配線7a?7dは,ECLゲートアレイの信号用配線を構成しており,その線幅は,例えば数μmである。第4層Al配線3と第3層Al配線7a?7dとの間には,第1図では図示しない層間絶縁膜29が設けられている。
第3層Al配線7a?7dと同一の配線層の余領域のうち,半田バンプ2の下方領域には,例えば第3層Al配線7a?7dと同一の材料で構成され,かつ同一の線幅を有するダミーパターン8が所定の間隔を置いて設けられている。ダミーパターン8は,第3層Al配線の配線チャネルのうち,配線が形成されていない配線チャネル上に形成されている。ダミーパターン8は,例えば第3層Al配線7a?7dと同一のマスクを用いて同一の工程で作成される。
上記ダミーパターン8は,第3層Al配線7a?7dと同一の材料で構成されているが,フローティング状態となっているので,配線としての機能は有していない。また,半田バンプ2の下方領域とその近傍にのみ設けられ,他の領域には設けられていないので,ダミーパターン8を設けたことによる第3層Al配線7a?7dの寄生容量の増加は,最小限に抑えられている。 」(第4頁右上欄第8行?左下欄第17行)

ウ 半田バンプの下方領域におけるチップの断面について
・「 第2図は,上記電源供給用半田バンプ2の下方領域におけるチップ1の断面を示している。 」(第4頁左下欄第18行?第19行)

・「 第2層Al配線25a?25bの上層には,例えば前記第1の層間絶縁膜24と同様の構成からなる第2の層間絶縁膜27が形成されている。層間絶縁膜27の上層には,例えばAl-Si-Cu合金からなる第3層Al配線7a?7eが設けられている。例えばAl配線7aは,層間絶縁膜27に開孔されたスルーホール28を通じて第2層Al配線25aに接続されている。
第3層Al配線7a?7eと同一の配線層の余領域のうち,半田バンプ2の下方領域とその近傍には,前記した複数本のダミーパターン8が設けられている。ダミーパターン8は,例えば半田バンプ2の下方領域とその近傍に位置する第3層Al配線7b,7c,7dの各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて配置されている。その結果,バンプ2の下方領域とその近傍とは,同一配線層の他の領域に比べて配線(ダミーパターンを含む)が高密度,かつ,均一になっている。
第3層Al配線7a?7eおよびダミーパターン8の上層には,前記第1の層間絶縁膜24や第2の層間絶縁膜27と同様の構成からなる第3の層間絶縁膜29が形成されている。そして,半田バンプ2の下方領域とその近傍の層間絶縁膜29は,その下層にダミーパターン8を含む配線が高密度,かつ,均一に設けられているため,その表面がほぼ完全に平坦化されている。
層間絶縁膜29の上層には,例えばAl-Si-Cu合金からなる電源供給用の第4層Al配線3が設けられている。第4層Al配線3は,大電流を流すことができるよう,その線幅および厚さが下層(第1層?第3層)のAl配線よりも大きく構成されている。そして,半田バンプ2の下方領域およびその近傍では,第4層Al配線3の下地となる層間絶縁膜29の表面がほぼ完全に平坦化されているので,第4層Al配線3もその表面がほぼ完全に平坦化されている。
第4層Al配線3の上層には,例えばバイアススパッタ法で形成したSiO_(2)からなるパッシベーション膜5が設けられており,このパッシベーション膜5でチップ1の表面が保護されている。
パッシベーション膜5の一部には,コンタクトホール4が形成されており,その底部には,電極パッド6を構成する第4層Al配線3の一部が露出している。電極パッド6は,前記した理由から,その表面がほぼ完全に平坦化されている。
電極パッド6上には,例えば下層から順次Cr,CuおよびAuの薄膜を蒸着法で積層してなる薄い半田下地層30が形成されている。半田下地層30は,段差のない平坦な電極パッド6上に形成されているので,そのカバレージが極めて良好となっており,コンタクトホール4の底部,側壁および上縁部をほぼ均一な膜厚で覆っている。
半田下地層30の上には,例えばSn/Pb合金からなる半球状の半田バンプ2が接続されている。 」(第5頁左下欄第4行?第6頁左上欄第18行)

エ 作用効果について
「 以上の構成からなる本実施例1によれば,下記のような効果を得ることができる。
(1).第3層Al配線3a?3e(審決注:「第3層Al配線7a?7e」の誤記である。)と同一の配線層の余領域のうち,半田バンプ2の下方とその近傍にダミーパターン5(審決注:「ダミーパターン8」の誤記である。)を配設したことにより,この領域の配線(ダミーパターンを含む)密度が高くなり,その上層に形成される層間絶縁膜29の表面が平坦化されるので,層間絶縁膜29の上に形成される第4層Al配線3(電極パッド6)が平坦化される。その結果,電極パッド6上に形成される半田下地層30のカバレージが良好になり,半田バンプ2の接続信頼性が向上する。 」(第6頁左下欄第7行?第18行)

オ 第1図,第2図及び第4図について
(ア) 上記ア?ウと相俟って,第1図,第2図及び第4図から,半導体チップ1上に形成された層間絶縁膜27の上層であって,半田バンプ2の下方領域とその近傍で,第4層Al配線3が構成する電極パッド6と相対する位置に,複数の第3層Al配線7b,7cが配置されるとともに,上記第3層Al配線7b,7cの各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて,複数のダミーパターン8が配置された構成がみてとれる。

(イ) 上記ア?ウと相俟って,第1図,第2図及び第4図から,半導体チップ1上に形成された層間絶縁膜27の上層の半田バンプ2の下方領域とその近傍で,第4層Al配線3が構成する電極パッド6と相対する位置に配置された複数の第3層Al配線7b,7c,及び複数のダミーパターン8が,上記第4層Al配線3の延在方向と直交する方向(第1図及び第4図の上下方向)に延在する構成がみてとれる。

(ウ) 上記ア?ウと相俟って,第1図,第2図及び第4図から,半田下地層30が,SiO_(2)からなるパッシベーション膜5のコンタクトホール4から上記SiO_(2)からなるパッシベーション膜5の上面にかけて形成された構成,及び上記半田下地層30上に半田バンプ2が形成され,それによって,上記半田下地層30上に上記半田バンプ2が接続されている構成がみてとれる。

(3-2) 上記(3-1)ウから,引用例1には,「半導体チップ1」上に形成された「層間絶縁膜27」,該「層間絶縁膜27」の上層に形成された「複数の第3層Al配線7a?7e」及び「複数のダミーパターン8」,該「複数の第3層Al配線7a?7e」及び該「複数のダミーパターン8」の上層に形成された「層間絶縁膜29」,並びに該「層間絶縁膜29」の上層に形成された,最上層配線である「第4層Al配線3」及び該「第4層Al配線3」が構成する「電極パッド6」とを備えた構成が記載されており,上記の構成は,換言すると,「半導体チップ1」上に形成された最上層配線である「第4層Al配線3」及び該「第4層Al配線3」が構成する「電極パッド6」を備えた構成であるといえる。

(3-3) 上記(3-1)ア及びウから,引用例1には,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の一部には「コンタクトホール4」が形成されており,当該「コンタクトホール4」の底部に露出した「第4層Al配線3」が「電極パッド6」であること,及び上記「コンタクトホール4」の底部には,「電極パッド6」を構成する「第4層Al配線3」の一部が露出していることが記載されており,上記の構成は,換言すると,上記「第4層Al配線3」及び上記「電極パッド6」の上層に設けられた,「コンタクトホール4」を有する「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」を備えた構成であるといえる。

(3-4) 以上によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「半導体チップ1上に形成された,最上層配線である第4層Al配線3及び該第4層Al配線3が構成する電極パッド6と,上記第4層Al配線3及び上記電極パッド6の上層に設けられた,コンタクトホール4を有するSiO_(2)からなるパッシベーション膜5と,上記コンタクトホール4の底部に露出した上記第4層Al配線3である上記電極パッド6上に積層された半田下地層30と,上記半田下地層30上に形成され,上記第4層Al配線3と上記コンタクトホール4を通じて電気的に接続される半田バンプ2とを備えた半導体集積回路装置であって,
上記半田バンプ2の下方領域とその近傍で,上記電極パッド6と相対する位置に,複数の第3層Al配線7b,7cが配置されるとともに,上記複数の第3層Al配線7b,7cの各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて,上記複数のダミーパターン8が配置され,上記複数の第3層Al配線7b,7c,及び上記複数のダミーパターン8は,上記第4層Al配線3の延在方向と直交する方向(引用例1第1図及び第4図における上下方向)に延在し,上記半田下地層30が,上記SiO_(2)からなるパッシベーション膜5の上記コンタクトホール4から上記SiO_(2)からなるパッシベーション膜5の上面にかけて形成された半導体集積回路装置。」

(4) 対比
(4-1) 次に本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「半導体チップ1」,「コンタクトホール4」,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」,「半田下地層30」,「半田バンプ2」及び「半導体集積回路装置」は,それぞれ,本願補正発明の「半導体チップ」,「開口部」,「絶縁性保護膜」,「外部接続用電極」,「バンプ」及び「半導体装置」に相当する。


(イ-1) 上記(3)の(3-4)で認定したとおり,引用発明において,「電極パッド6」の上に「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)が積層され,該「半田下地層30」に「半田バンプ2」(本願補正発明の「バンプ」に相当。)が接続されることにより,上記「半田バンプ2」と上記「電極パッド6」を構成する上記「第4層Al配線3」とが,上記「コンタクトホール4」を通じて電気的に接続されているから,引用発明の上記「電極パッド6」は,本願補正発明の「第1の電極」に相当する。

(イ-2) 上記(2)で認定したとおり,本願補正発明の「半導体チップの上面に形成された第1の電極」の下には「複数の配線あるいは複数の第2の電極」が形成されており,本願補正発明の「半導体チップの上面に形成された第1の電極」は,「半導体チップ」の上面に他の構成部材を介在させて「第1の電極」が形成されていることを意味すると解される。
一方,上記(3)の(3-4)で認定したとおり,引用発明において,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)上に形成された「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)を構成する「第4層Al配線3」は最上層配線であるから,「半田バンプ2」(本願補正発明の「バンプ」に相当。)の下方領域とその近傍で,上記「電極パッド6」と相対する位置に配置される,「複数の第3層Al配線7b,7c」及び該「複数の第3層Al配線7b,7c」の各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて配置される「複数のダミーパターン8」が,いずれも,上記「電極パッド6」の下の配線層であることは明らかである。
そうすると,引用発明において,「半導体チップ1」上に他の構成部材を介在させて「電極パッド6」が形成されていることは明らかであり,引用発明の「半導体チップ1上に形成された」「電極パッド6」は,本願補正発明の「半導体チップの上面に形成された第1の電極」に相当する。

ウ 上記イで検討したとおり,引用発明において,「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)の上に「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)が積層され,該「半田下地層30」に「半田バンプ2」(本願補正発明の「バンプ」に相当。)が接続されることにより,上記「半田バンプ2」と上記「電極パッド6」を構成する「第4層Al配線3」とが,上記「コンタクトホール4」を通じて電気的に接続されているから,引用発明の「上記コンタクトホール4の底部に露出した上記第4層Al配線3である上記電極パッド6上に積層された半田下地層30と,」は,本願補正発明の「前記開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,」に相当する。
また,引用発明の「半田下地層30上に形成され,上記第4層Al配線3と上記コンタクトホール4を通じて電気的に接続される半田バンプ2」は,本願補正発明の「前記外部接続用電極上に形成されたバンプ」に相当する。

エ 上記(イ)の(イ-2)で検討したとおり,引用発明の「複数の第3層Al配線7b,7c」及び該「複数の第3層Al配線7b,7c」の各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて配置される「複数のダミーパターン8」が,いずれも,「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)の下の配線層であることは明らかである。
また,引用発明の「上記半田バンプ2の下方領域とその近傍で,上記電極パッド6と相対する位置」は,本願補正発明の「前記第1の電極と相対する位置」に相当するから,上記「第4層Al配線3」の下の配線層であり,かつ,「上記半田バンプ2の下方領域とその近傍で,上記電極パッド6と相対する位置」に配置される,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」は,本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当する。
そうすると,引用発明の「上記半田バンプ2の下方領域とその近傍で,上記電極パッド6と相対する位置に,複数の第3層Al配線7b,7cが配置されるとともに,上記複数の第3層Al配線7b,7cの各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて,上記複数のダミーパターン8が配置され,」は,本願補正発明の「前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは複数の第2の電極を有し,」に相当する。

(4-2) 以上によれば,本願補正発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。

< 一致点 >
「半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,前記開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,前記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは複数の第2の電極を有する半導体装置。」

< 相違点 >
・ 相違点1
本願補正発明は,「前記第1の電極の上に前記開口部を有し,前記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜」を備えているのに対し,引用発明は上記の構成を備えていない点。

・ 相違点2
本願補正発明は,「外部接続用電極」を「前記有機絶縁膜の前記開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した」ものであるのに対し,引用発明は,本願補正発明の「有機絶縁膜」を備えておらず,引用発明の「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)は,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)の「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)の底部に露出した「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)上に積層されたものである点。

・ 相違点3
本願補正発明は,「前記複数の配線あるいは前記複数の第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の前記開口部と同等以上のサイズ」である構成を備えているのに対し,引用発明は,本願補正発明の「有機絶縁膜」を備えておらず,また,引用発明において,「半田バンプ2」(本願補正発明の「バンプ」に相当。)の下方領域とその近傍で,「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)と相対する位置に配置される,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)及び「複数のダミーパターン8」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)の最外側のエッジ間のサイズについて,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)の「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)と関連づけた特定はされていない点。

・ 相違点4
本願補正発明は,「(「絶縁性保護膜」及び「有機絶縁膜」の)前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在」するものであるのに対し,引用発明は,本願補正発明の「有機絶縁膜」を備えておらず,また,引用発明では,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)及び「複数のダミーパターン8」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)の配置について,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)の「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)のエッジと関連づけた特定はされていない点。

・ 相違点5
本願補正発明は,「前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在している」という構成を備えているのに対し,引用発明は,本願補正発明の「有機絶縁膜」を備えておらず,引用発明の「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)は,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)の「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)から上記パッシベーション膜5の上面にかけて形成されたものである点。

(5) 相違点についての判断
(5-1) 相違点1について
ア 本願の出願前に日本国内で頒布された,特開2002-057152号公報(以下「周知例1」という。)には,図2とともに次の記載がある。

・ 「 【0003】(前略)このうち前者に対しては,相対的に柔らかいパッシベーション膜を耐熱性高分子樹脂であるポリイミド樹脂膜(以下,PIQ膜と称す)で構成することで対策されている。(後略) 」

・ 「 【0020】図2は,本実施の形態1である半導体チップ上の最終絶縁膜を示す半導体基板の要部断面図である。
(中略)
【0022】このような金属層8a?8cによって構成された下地金属BLMは,表面保護膜9に穿孔されたスルーホール10を通じて,半導体チップ6の最上層配線である引き出し電極11と電気的に接続されている。
【0023】表面保護膜9は,半導体チップ6上に形成された絶縁膜のうちの最終絶縁膜である。表面保護膜9は,下層から順に無機絶縁膜9aおよびPIQ膜9bが積層されて構成されている。無機絶縁膜9aの厚さは,たとえば0.5?3μm程度であり,PIQ膜9bの厚さは,その接着性および段差緩和等から決められるが,2?10μm程度である。
【0024】ここで,前記下地金属BLMが形成されていない表面保護膜9の表面には,フッ化物層12が形成されている。疎水性のフッ化物層12を設けることにより,周囲からの水分や湿気がアンダーフィル樹脂7中を浸透しても,PIQ膜9bへ浸透するのを防ぐことができる。
(中略)
【0027】下層金属BLM上には,リフトオフ法,メタルマスク蒸着法または印刷法などによって形成されたCCBバンプ5が接合されている。なお,パッケージ基板2の電極パッド3,4にCCBバンプ5を接合しておき,このCCBバンプ5と下地金属BLMとを接続してもよい。 」

・ 上記摘記と相俟って,図2からは,半導体装置において,半導体チップの最上層に形成された引き出し電極11,上記引き出し電極11の上にスルーホール10を有し,上記半導体チップの上面に形成された無機絶縁膜9a,上記引き出し電極11の上にスルーホール10を有し,無機絶縁膜9aの上面に形成されたPIQ膜(ポリイミド樹脂膜)9b,上記引き出し電極11と電気的に接続されるように形成された下地金属BLM,及び上記下地金属BLM上に接合されたCCBバンプ5を備えた構成とすること,上記下地金属BLMは,上記PIQ膜9bの上記スルーホール10から上記PIQ膜9bの上面にかけて形成された構成とすること,並びに上記PIQ膜9bの上面の上記下地金属BLMと上記引き出し電極11の上面の上記無機絶縁膜9aの間に上記PIQ膜9bが存在するようにした構成とすることがみてとれる。

イ 本願の出願前に日本国内で頒布された,特開平11-297674号公報(以下「周知例2」という。)には,図1及び図2とともに次の記載がある。

・ 「 【0009】
【発明の実施の形態】以下この発明の実施の形態を図を参照して説明する。LSIのチップは,一般に,図1(a)に示すように,まず,トランジスタなどの素子やそれらを接続する多層配線構造が形成されている上に,酸化シリコンからなる層間絶縁膜101が形成されている。また,その上に最上層のアルミニウムなどからなる金属配線層102が形成されている。また,これを覆うように酸化シリコンからなるカバー膜103が形成されている。そして,その上に保護膜となるポリイミドから構成されたパシベーション膜104が形成された状態となっている。なお,図1では,素子や多層配線などは省略して図示していない。
【0010】このように製造されたチップにおいて,まず,図1(b)に示すように,ハンダバンプを形成する金属配線層102上の領域に,開口部105aを有するレジストパターン105を形成し,このレジストパターン105をマスクとしてパシベーション膜104を選択的にエッチングする。このレジストパターン105の形成は,公知のフォトリソグラフィ技術により形成すればよい。また,このエッチングは,有機物であるポリイミドのエッチングなので,酸素ガスをエッチングガスとした反応性イオンエッチングにより行えばよい。この結果,パシベーション膜104の金属配線層102上の所定領域に開口部106が形成される。
(中略)
【0012】次に,レジストパターン105を除去した後,加熱してパシベーション膜104を軟化させ,図1(c)に示すように,開口部106の断面をなだらかな状態にする。次に,図1(d)に示すように,開口部106が形成されたパシベーション膜104をマスクとし,カバー膜103を選択的にエッチングし,開口部107を形成する。これは,CF_(4 )をエッチングガスに用いた反応性イオンエッチングにより行えばよい。
【0013】次に,図1(e)に示すように,開口部107底部に露出した金属配線層102表面および,開口部106,107側面を含むパシベーション膜104全域に,チタンとタングステンとからなるTiWをスパッタにより堆積し,TiW膜108を形成する。
(中略)
【0017】以上のように,前処理をしてからスパッタクリーニングをした後,前述したように,TiW膜108を形成する。次いで,そのTiW膜108の形成に引き続き,図2(f)に示すように,スパッタ法によりCuを堆積し,TiW膜108上にCu膜109を形成する。なお,メッキ法によりCu膜109を形成するようにしてもよい。次に,図2(g)に示すように,開口部107上の位置を中心とした所定の領域が覆われるようにレジストパターン110を形成し,これをマスクとしてCu膜109およびTiW膜108を選択的にエッチング除去する。次に,レジストパターン110を除去した後,図2(h)に示すように,Cu膜109上にハンダバンプ111を形成することで,フリップチップ接続ができる状態となる。 」

・ 上記摘記と相俟って,図2(h)からは,半導体装置において,LSIチップの最上層に形成された金属配線層102,上記金属配線層102の上に開口部107を有し,上記LSIチップの上面に形成された酸化シリコンからなるカバー膜103,上記金属配線層102の上に開口部106を有し,カバー膜103の上面に形成された,ポリイミドから構成されたパシベーション膜104,上記金属配線層102と電気的に接続されるように形成されたTiW膜108及びCu膜109,並びに上記Cu膜109上に形成されたハンダバンプ111を備えた構成とすること,上記TiW膜108及び上記Cu膜109は,上記パシベーション膜104の上記開口部106から上記パシベーション膜104の上面にかけて形成された構成とすること,並びに上記パシベーション膜104の上面の上記TiW膜108及び上記Cu膜109と上記金属配線層102の上面の上記カバー膜103の間に上記パシベーション膜104が存在するようにした構成とすることがみてとれる。

ウ 上記ア及びイから,半導体装置において,半導体チップの上面に形成された電極と,上記電極の上に開口部を有し,上記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,上記電極の上に上記開口部を有し,上記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜と,上記有機絶縁膜の上記開口部に上記電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,上記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた構成とすることは,例えば周知例1及び周知例2にみられるように周知技術であるから,引用発明において,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とすること(相違点1に係る構成とすること)は,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(5-2) 相違点2について
上記(5-1)で検討したとおり,半導体装置において,半導体チップの上面に形成された電極と,上記電極の上に開口部を有し,上記半導体チップの上面に形成された絶縁性保護膜と,上記電極の上に上記開口部を有し,上記絶縁性保護膜の上面に形成された有機絶縁膜と,上記有機絶縁膜の上記開口部に上記電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,上記外部接続用電極上に形成されたバンプとを備えた構成とすることは,例えば周知例1及び周知例2にみられるように周知技術であるから,引用発明において,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成としたうえで,上記有機絶縁膜の上記開口部に上記「電極パッド6」と電気的に接続されるように「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)を形成した構成とすることも,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(5-3) 相違点3について
ア 上記(5-2)で検討したとおり,引用発明において,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成としたうえで,上記有機絶縁膜の上記開口部に上記「電極パッド6」を構成する上記「第4層Al配線3」と電気的に接続されるように「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)を形成した構成とすることは,例えば周知例1及び周知例2にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

イ 上記(3)の(3-1)エのとおり,引用発明は,「第3層Al配線7a?7eと同一の配線層の余領域のうち,半田バンプ2の下方とその近傍にダミーパターン8を配設したことにより,この領域の配線(ダミーパターンを含む)密度が高くなり,その上層に形成される層間絶縁膜29の表面が平坦化されるので,層間絶縁膜29の上に形成される第4層Al配線3(電極パッド6)が平坦化される。」という作用効果を奏するものであるところ,引用発明において,上記作用効果を奏するためには,上記「電極パッド6」と相対する位置に,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)及び「複数のダミーパターン8」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)を配置する際に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を,上記「電極パッド6」と相対する領域の全体にわたって,高密度かつ均一に配置すればよいことは,引用例1に接した当業者には明らかであり,そのために,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の数,寸法及び形成位置を適宜選択,調整することは,当業者における設計事項である。
そして,上記(3)の(3-4)で認定したとおり,上記「電極パッド6」は,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」に形成された「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)の底部に露出した「第4層Al配線3」であるから,上記「電極パッド6」が,上記「コンタクトホール4」と同等のサイズであることは明らかであり,この点を考慮すれば,引用発明において,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を,上記「電極パッド6」と相対する領域の全体にわたって,高密度かつ均一に配置する際に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の最外側のエッジ間が,上記「電極パッド6」上の上記「コンタクトホール4」と同等以上のサイズとなるように配置することは,当業者が通常行い得ることである。

ウ そうすると,上記ア及びイから,引用発明において,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えるとともに,上記「電極パッド6」の下の配線層で,かつ上記「電極パッド6」と相対する位置に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を有し,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の最外側のエッジ間が,上記有機絶縁膜の上記開口部と同等以上のサイズとなるようにすること(相違点3に係る構成とすること)は,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(5-4) 相違点4について
ア 上記(5-3)イで検討したとおり,引用発明において,「半田バンプ2」(本願補正発明の「バンプ」に相当。)の下方領域とその近傍で,「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)と相対する位置に,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。),及び上記「複数の第3層Al配線7b,7c」の各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて,「複数のダミーパターン8」(本願補正発明の「複数の配線あるいは複数の第2の電極」に相当。)を配置する際に,上記「電極パッド6」が平坦化されるという作用効果を奏するためには,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を,上記「電極パッド6」と相対する領域の全体にわたって,高密度かつ均一に配置すればよいことは,引用例1に接した当業者には明らかであり,そのために,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の数,寸法及び形成位置を適宜選択,調整することは,当業者における設計事項である。
そして,上記(5-3)イで検討したとおり,引用発明において,上記「電極パッド6」は,「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)に形成された「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)と同等のサイズであることは明らかであり,この点を考慮すれば,引用発明において,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を,上記「電極パッド6」と相対する領域の全体にわたって,高密度かつ均一に配置する際に,上記「コンタクトホール4」のエッジの真下に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」,及び上記「複数のダミーパターン8」のうちの最外側に配置された配線が存在する構成とすることは,当業者が通常行い得ることである。

イ また,引用発明において,上記「電極パッド6」が平坦化されるという作用効果を奏するために,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を,上記「電極パッド6」と相対する領域の全体にわたって,高密度かつ均一に配置する際に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」,及び上記「複数のダミーパターン8」のうちの一部の複数の配線を,「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)の下方領域に配置することは,当業者が通常行い得る事項である。
そして,上記(3)の(3-4)で認定したとおり,引用発明において,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」,及び上記「複数のダミーパターン8」は,上記「電極パッド6」を構成する「第4層Al配線3」の延在方向と直交する方向(引用例1第1図及び第4図の上下方向)に延在するから,上記「コンタクトホール4」の下方領域に配置した,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」,及び上記「複数のダミーパターン8」のうちの一部の複数の配線が,その延在する方向(引用例1第1図及び第4図の上下方向)において,上記「コンタクトホール4」のエッジの真下を通過する構成,換言すれば,上記一部の複数の配線が,上記「コンタクトホール4」のエッジの真下に存在する構成とすることも,当業者が通常行い得ることである。

ウ 上記(5-3)アで検討したとおり,引用発明において,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とすることは,例えば周知例1及び周知例2にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることであり,また,上記ア及びイで検討したとおり,引用発明において,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」,及び上記「複数のダミーパターン8」のうちの一部の複数の配線が,上記「コンタクトホール4」のエッジの真下に存在する構成とすることは,上記「電極パッド6」が平坦化されるという作用効果を奏するために,当業者が通常行い得ることである。
そうすると,引用発明において,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えるとともに,上記「電極パッド6」の下の配線層で,かつ上記「電極パッド6」と相対する位置に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」を有し,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」のうちの一部の複数の配線が,上記開口部のエッジの真下に存在する構成とすること(相違点4に係る構成とすること)は,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(5-5) 相違点5について
上記(5-2)で検討したとおり,引用発明において,「半導体チップ1」(本願補正発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願補正発明の「第1の電極」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」(本願補正発明の「絶縁性保護膜」に相当。)と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成としたうえで,上記有機絶縁膜の上記開口部に上記「電極パッド6」を構成する「第4層Al配線3」と電気的に接続されるように「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)を形成した構成とすることは,例えば周知例1及び周知例2にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,上記(3)の(3-4)で認定したとおり,引用発明において,上記「半田下地層30」は,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上記「コンタクトホール4」から上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面にかけて形成されているから,引用発明に上記周知技術を適用し,上記「電極パッド6」の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」と,上記「電極パッド6」の上に上記開口部を有し,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とした場合に,上記「半田下地層30」が,上記有機絶縁膜の上記開口部から上記有機絶縁膜の上面にかけて形成される構成とすることは,当業者が当然に行い得ることであり,当該構成によって,上記有機絶縁膜の上面の上記「半田下地層30」と上記「電極パッド6」の上面の上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の間に上記有機絶縁膜が存在している構成も自然と備えることは明らかである。
そうすると,引用発明において,相違点5に係る構成とすることは,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(6) 審判請求人の主張について
平成19年5月31日に提出され,同年6月29日付け手続補正書により補正された審判請求書で,「本願発明の構成によれば,「有機絶縁膜の前記開口部と同等以上のサイズであり,前記開口部のエッジの真下に前記配線あるいは前記第2の電極が存在し,前記外部接続用電極は前記有機絶縁膜の前記開口部から前記有機絶縁膜の上面にかけて形成され,前記有機絶縁膜の上面の前記外部接続用電極と前記第1の電極の上面の前記絶縁性保護膜の間に前記有機絶縁膜が存在している」ことにより,バンプが形成された外部接続用電極の金属膜の膜応力による最上層配線へのダメージを低減できる。」旨,審判請求人が主張しているので,当該主張について検討する。
引用例1には,上記(3)の(3-1)エのとおり,「第3層Al配線7a?7eと同一の配線層の余領域のうち,半田バンプ2の下方とその近傍にダミーパターン8を配設したことにより,この領域の配線(ダミーパターンを含む)密度が高くなり,その上層に形成される層間絶縁膜29の表面が平坦化されるので,層間絶縁膜29の上に形成される第4層Al配線3(電極パッド6)が平坦化される」こと,及び上記(3)の(3-1)ウのとおり,引用発明における「例えば下層から順次Cr,CuおよびAuの薄膜を蒸着法で積層してなる」金属膜からなる「半田下地層30」(本願補正発明の「外部接続用電極」に相当。)について,「半田下地層30は,段差のない平坦な電極パッド6上に形成されているので,そのカバレージが極めて良好となっており,コンタクトホール4の底部,側壁および上縁部をほぼ均一な膜厚で覆っている」ことが記載されている。
そして,引用例1に記載された,上記「半田下地層30」が,表面が平坦化された「電極パッド6」の上に,「コンタクトホール4」(本願補正発明の「開口部」に相当。)の底部をほぼ均一な膜厚で覆って形成されるという構成からみて,上記「半田下地層30」の金属膜の膜応力が,上記「電極パッド6」全面,及びその直下の上記「層間絶縁膜29」における上記「電極パッド6」との接触面全体にほぼ均等に加わることは明らかである。
そうすると,上記「半田下地層30」の金属膜の膜応力により上記「層間絶縁膜29」にクラックが入ることが防止されるという作用効果を奏し得ることは,引用例1の記載に接した当業者には明らかであり,その結果,上記「電極パッド6」の下で,上記「層間絶縁膜29」の下層に設けられた,実配線である「第3層Al配線7b,7c」へのダメージを低減できることも,引用例1の記載に接した当業者には明らかである。
したがって,引用例1の記載に接した当業者には,引用発明が本願補正発明と同様の作用効果を奏し得ることは明らかであるから,審判請求人の上記の主張を採用することはできない。

(7) まとめ
以上のとおり,相違点1?5に係る構成は,引用発明において,例えば周知例1及び周知例2にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることであるから,本願補正発明は,引用例1記載の発明(引用発明),及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項をいう。以下同じ。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。

5 むすび
以上検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしておらず,また,仮に当該要件を満たすものであったとしても,特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものであるから,いずれにしても,本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明の容易想到性について

1 本願発明について
平成19年6月29日付けの手続補正書による手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は,平成18年2月8日付けの手続補正書に記載されたとおりのものであり,その請求項1の記載は,次のとおりである。(以下,本願の請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

「 【請求項1】
半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された有機絶縁膜と,前記有機絶縁膜の開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極とを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは第2の電極を有し,前記複数の配線あるいは第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の開口部と同等以上のサイズであることを特徴とする半導体装置。 」

2 引用例の記載と引用発明
引用例1の記載は,前記第2の3(3)の(3-1)のとおりであり,引用発明は,前記第2の3(3)の(3-4)で認定したとおりである。

3 対比・判断
(1) 対比
ア 前記第2の(4)の(4-1)アで検討したとおり,引用発明の「半導体チップ1」,「コンタクトホール4」,「半田下地層30」,及び「半導体集積回路装置」は,それぞれ,本願発明の「半導体チップ」,「開口部」,「外部接続用電極」,及び「半導体装置」に相当する。

イ 前記第2の(4)の(4-1)イで検討したとおり,引用発明の「電極パッド6」は,本願発明の「第1の電極」に相当し,引用発明の「半導体チップ1上に形成された」「電極パッド6」は,本願発明の「半導体チップの上面に形成された第1の電極」に相当する。

ウ 前記第2の(4)の(4-1)ウで検討したとおり,引用発明の「上記コンタクトホール4の底部に露出した上記第4層Al配線3である上記電極パッド6上に積層された半田下地層30と,」は,本願発明の「開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極と,」に相当する。

エ 前記第2の(4)の(4-1)エで検討したとおり,引用発明の「複数の第3層Al配線7b,7c」及び「複数のダミーパターン8」は,本願発明の「複数の配線あるいは第2の電極」に相当し,引用発明の「上記半田バンプ2の下方領域とその近傍で,上記電極パッド6と相対する位置に,複数の第3層Al配線7b,7cが配置されるとともに,上記複数の第3層Al配線7b,7cの各々と交互に,かつ等しい間隔を置いて,上記複数のダミーパターン8が配置され,」は,本願発明の「前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは第2の電極を有し,」に相当する。

オ 引用発明の「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」と,本願発明の「有機絶縁膜」とは,「絶縁膜」である点で共通する。

カ 以上によれば,本願発明と引用発明との一致点と相違点は,次のとおりである。

< 一致点 >
「半導体チップの上面に形成された第1の電極と,前記第1の電極の上に開口部を有し,前記半導体チップの上面に形成された絶縁膜と,前記絶縁膜の開口部に前記第1の電極と電気的に接続されるように形成した外部接続用電極とを備えた半導体装置であって,
前記第1の電極の下の配線層で,かつ前記第1の電極と相対する位置に,複数の配線あるいは第2の電極を有する半導体装置。 」

< 相違点 >
・ 相違点1
本願発明は,「絶縁膜」が「有機絶縁膜」であるのに対し,引用発明は,「絶縁膜」が「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」であり,有機絶縁膜ではない点。

・ 相違点2
本願発明は,「前記複数の配線あるいは第2の電極の最外側のエッジ間が前記有機絶縁膜の開口部と同等以上のサイズ」である構成を備えているのに対し,引用発明の「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」は有機絶縁膜ではなく,また,引用発明において,「半田バンプ2」の下方領域とその近傍で,「電極パッド6」(本願発明の「第1の電極」に相当。)と相対する位置に配置される,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願発明の「複数の配線あるいは第2の電極」に相当。)及び「複数のダミーパターン8」(本願発明の「複数の配線あるいは第2の電極」に相当。)の最外側のエッジ間のサイズについて,上記「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」の「コンタクトホール4」(本願発明の「開口部」に相当。)と関連づけた特定はされていない点。

(2) 判断
(2-1) 相違点1について
ア 引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内で頒布された特開平06-302605号公報(以下「引用例2」という。)には,図1(a)?(d)とともに次の記載がある。

・「 【0009】図1(a)?(b)(審決注:「図1(a)?(d)」の誤記である。)は本発明の一実施例の製造方法を説明するための工程順に示した半導体チップの断面図である。
【0010】まず,図1(a)に示すように,半導体基板1の上に設けた層間絶縁膜2の上にアルミニウム膜又はアルミニウム銅合金膜からなる線幅の小さい信号配線等を含む第1層配線3a,3b,3c,3dを形成し,これらの第1層配線3a,3b,3c,3dを含む表面に酸化シリコン膜又は窒化シリコン膜等からなる第1の層間絶縁膜4を形成する。次に,層間絶縁膜4に設けた接続孔を介して第1層配線3aと接続するアルミニウム膜やアルミニウム銅合金膜等からなる第2層配線5aや第1層配線3a,3b,3cの上にまたがって配置された第2層配線5bを層間絶縁膜4上に形成する。
【0011】次に,図1(b)に示すように,第2層配線5a,5bを含む表面に回転塗布法によりシリカ膜又はポリイミド膜を1?5μmの厚さに堆積して第2の層間絶縁膜6を形成し,第2層配線5aの上に接続孔7を形成する。
【0012】次に,図1(c)に示すように,接続孔7を含む表面にアルミニウム膜又はアルミニウム銅合金膜を1?10μmの厚さに堆積してパターニングし,接続孔7を介して第2層配線5aと接続し,第2層配線5b上に主要部を配置したパッド8を形成する。
【0013】次に,図1(d)に示すように,パッド8を含む表面にポリイミド膜等の保護膜9を形成し,パターニングして直径50?500μmの開孔部10を形成する。 」

・ 上記摘記と相俟って,図1(d)からは,半導体チップの上面に形成されたパッド8と,上記パッド8の上に開孔部10を有し,上記半導体チップの上面に形成されたポリイミド膜等の保護膜9を備えた半導体装置の構成がみてとれる。

イ 引用例3
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に日本国内で頒布された特表2001-521288号公報(以下「引用例3」という。)には,図1及び図2とともに次の記載がある。

・「 【0024】
(前略)本願発明を実施するための最良の態様
図1及び図2は,全体が参照符号8によって示され,本願発明にしたがって構成されたフリップチップ集積回路用のチップ・スケール・パッケージを図示している。図1において,集積回路10が,通常の態様で,半導体チップ上に形成されており,トランジスター及び他の電気素子(図示せず)されたネットワークを含んでいる。図2を参照すると,集積回路10は,半導体ウェハ14の表面12に形成されている。半導体ウェハ14は,また,その反対側に裏面16を有している。化学的な不純物が,集積回路10の処理の間に,その表面12を介して半導体ウェハ14内に,拡散され,移植され,又は導入されており,これによって,集積回路10内に種々のトランジスターや他の電気素子を形成している。そのような電気素子は,半導体ウェハ14の表面12に形成された,1つ又はそれ以上の金属被覆層(図示せず)によって,互いに相互に接続されている。
(中略)
【0028】
リディストリビューショントレース30とはんだバンプパッド26が,ウェハパッシベーション層22上と第1パッシベーション層24上に形成されるパターン化金属層として,半導体ウェハ14の表面上方に設けられる。このパターン化金属層は,最初に,半導体ウェハ14の表面を,いわゆるアンダーバンプ冶金(Under Bump Metallurgy)(またはUBM)層でブランケッティングすることにより行われることが好ましい。
(中略)
【0030】
UBM層が上記の方法で設けられ,パターン化された後,図2に示すように,そのパターン化された金属層上に第2パッシベーション層32が設けられる。この第2パッシベーション層もまた,上記のベンゾシクロブテンにより形成されることが好ましいが,ポリイミド,ポリオレフィンや,他の有機または無機パッシベーションを用いてもよい。第2パッシベーション層32は,好ましくは,スピンコーティングによって,半導体ウェハ14上に設けられることにより,約4ミクロンの厚みを有する層を形成する。従来のフォトリソグラフィ技術を用いて,第2パッシベーション層32中の,各はんだバンプパッド26の箇所に,パターン化された開口を形成する。 」

・ 上記摘記と相俟って,図2からは,半導体ウェハ14の上面に形成されたリディストリビューショントレース30及びはんだバンプパッド26と,上記リディストリビューショントレース30及び上記はんだバンプパッド26の上に開口を有し,上記半導体ウェハ14の上面に形成された,有機材料からなる第2パッシベーション層32を備えたチップ・スケール・パッケージ8の構成がみてとれる。

ウ 判断
上記ア及びイから,半導体装置において,半導体チップの上面に形成された電極と,上記電極の上に開口部を有し,上記半導体チップの上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とすることは,例えば引用例2及び引用例3にみられるように周知技術であるから,引用発明において,絶縁膜である「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」を有機絶縁膜で形成し,「半導体チップ1」(本願発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願発明の「第1の電極」に相当。)の上に「コンタクトホール4」(本願発明の「開口部」に相当。)を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とすること(相違点1に係る構成とすること)は,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(2-2) 相違点2について
ア 上記(2-1)で検討したとおり,引用発明において,絶縁膜である「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」を有機絶縁膜で形成し,「半導体チップ1」(本願発明の「半導体チップ」に相当。)の上面に形成された「電極パッド6」(本願発明の「第1の電極」に相当。)の上に開口部を有し,上記「半導体チップ1」の上面に形成された有機絶縁膜とを備えた構成とすること(相違点1に係る構成とすること)は,例えば引用例2及び引用例3にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

イ そして,前記第2の(5)の(5-3)イで検討したとおり,引用発明において,上記「電極パッド6」と相対する位置に,「複数の第3層Al配線7b,7c」(本願発明の「複数の配線あるいは第2の電極」に相当。)及び「複数のダミーパターン8」(本願発明の「複数の配線あるいは第2の電極」に相当。)を配置する際に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の最外側のエッジ間が,上記「電極パッド6」上の上記「コンタクトホール4」と同等以上のサイズとなるように配置することは,上記「電極パッド6」が平坦化されるという作用効果を奏するために,当業者が通常行い得ることである。

ウ そうすると,引用発明において,絶縁膜である「SiO_(2)からなるパッシベーション膜5」を有機絶縁膜で形成し,上記「電極パッド6」の下の配線層で,上記「電極パッド6」と相対する位置に,上記「複数の第3層Al配線7b,7c」及び上記「複数のダミーパターン8」の最外側のエッジ間が,上記「電極パッド6」上の上記有機絶縁膜の上記開口部と同等以上のサイズとなるように配置すること(相違点2に係る構成とすること)は,上記周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

(2-3) まとめ
以上のとおり,相違点1及び相違点2は,いずれも,引用発明において,例えば引用例2及び引用例3にみられるような周知技術を適用することにより,当業者が容易に想到し得ることである。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用例1記載の発明(引用発明),並びに例えば引用例2及び引用例3にみられるような周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 結言

以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-11 
結審通知日 2010-03-16 
審決日 2010-03-31 
出願番号 特願2003-309880(P2003-309880)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次早川 朋一  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 安田 雅彦
橋本 武
発明の名称 半導体装置  
代理人 宮井 暎夫  

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