ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
---|---|
管理番号 | 1216757 |
審判番号 | 不服2008-12221 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-05-14 |
確定日 | 2010-05-13 |
事件の表示 | 特願2006-526881「映像情報出力装置及び映像情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月29日国際公開、WO2006/068323、平成19年11月 8日国内公表、特表2007-532039〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 経緯等 本件出願は、平成17年12月22日(優先権主張平成16年12月24日)を国際出願日とする出願であって、平成19年5月10日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、平成19年6月26日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされ、平成19年11月14日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対し、平成20年1月4日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、当該平成20年1月4日付けの手続補正は平成20年4月9日付けで却下され、同日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、上記拒絶査定を不服として平成20年5月14日に請求された拒絶査定不服審判であり、平成20年5月14日付けで手続補正(明細書、特許請求の範囲又は図面について請求の日から30日以内にする補正)がなされた。 平成20年5月14日付けの補正は、平成21年11月19日付けの決定により却下され、同平成21年11月19日付けで、当審拒絶の理由が通知され、これに対し、平成22年1月22日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされた。 2 本願発明 本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は平成22年1月22日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、次のとおりのものである。 「【請求項1】 番組表の画面を作成し、かつ電源待機時において映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止する映像情報出力装置であって、 外部から番組表の画面を作成するためのデータを取得する取得部と、 前記取得部で取得されたデータを保存する第1保存部と、 該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合に、前記第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部と、 前記作成部で作成されたデータを保存する第2保存部と、 該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合には、映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止し、前記電源待機において番組表の画面の表示要求があった場合には、前記映像信号の出力の停止を解除するとともに前記第2保存部に保存されたデータを出力する出力部と を備えることを特徴とする映像情報出力装置。」 3 刊行物に記載された発明 (1) 刊行物1の記載 平成21年11月19日付け当審拒絶理由通知において引用した特開2000-69436号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の記載がある。 ア 「【発明の属する技術分野】本発明は、文字放送受信装置に関し、特に文字放送を利用してテレビジョン番組の番組表を作成し表示することのできる文字放送受信装置に関する。」(段落【0001】) イ 「次に、上記構成により、番組表作成及び表示を行なう動作を図3のフローチャートを参照して説明する。まず、主電源をONにして受信を開始すると(ステップS101)、デジタル放送選局部12、アナログ放送選局部14及び文字放送デコーダ部17のそれぞれの電源がONに設定される(ステップS102)。そして、アナログ放送選局部14で選局が行われ(ステップS103)、文字放送デコーダ部17の波形整形回路17b及びデータ取込回路17cで文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリ17dに記憶される(ステップS104)。このバッファメモリ17dに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され(ステップS105)、番組情報メモリ17jに書き込まれる(ステップS106)。」(段落【0028】) 「以上のステップS103?S106までの動作がアナログ放送の複数ないし全チャンネルについて行われたか否かを判断し(ステップS107)、複数ないし全チャンネルについて行われた場合はステップS108に進み、終了していない場合はステップS103に戻る。ステップS108では、アンテナ11でデジタル放送が受信されたか否かの判定が行なわれ、受信されている場合には、デジタル放送選局部12で選局が行なわれ(ステップS109)、文字放送デコーダ部17の波形整形回路17m及びデータ取込回路17cで文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリ17dに記憶される(ステップS110)。このバッファメモリ17dに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され(ステップS111)、番組情報メモリ17jに書き込まれる(ステップS112)。」(段落【0029】) 「以上のステップS109?S112までの動作がデジタル放送の複数ないし全チャンネルについて行われたか否かを判断し(ステップS119)、複数ないし全チャンネルについて行われたか場合はステップS113に進み、終了していない場合はステップS109に戻る。」(段落【0030】) 「番組情報メモリ17jに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部17kに転送されることにより、番組表作成に供され(ステップS113)、以後、画像メモリ17hに書き込まれる(ステップS114)。」(段落【0031】) 「ところで、番組表作成後に放送時間や番組内容が変更されることがある。このため適当な時間毎に自動的に番組表の情報を作成し直す必要がある。そこで番組表の書き替えが必要かどうか判断され(ステップS115)、書き替える場合はステップS103の処理に戻される。書き替えない場合には、テレビジョン受像機本体の電源がON状態に設定され(ステップS116)、番組表が選択されると、画像メモリ17hから番組表のデータが読み出され(ステップS117)、受像管16に番組表が表示される(ステップS118)。これにより、放送時間や番組内容の変更に対応した番組表が作成される。また、放送時間や番組内容が変更された場合には、その旨を受像管16に表示する。もしくは音声を発する等の手段を用いて視聴者に知らせる機能を持たせることも可能である。」(段落【0032】) ウ 「尚、上記実施の形態では、主電源をONしたときに全ての機能部がONするものとしたが、主電源がOFFの状態でも、例えばタイマーによる制御で常時もしくは一定時間毎に少なくともデジタル放送選局部12あるいはアナログ放送選局部14と、波形整形回路17b,17mと、データ取込回路17cと、バッファメモリ17dとのそれぞれの電源をONにして複数ないし全チャンネルの選局を行い、それぞれの番組情報信号の取得に供するようにしてもよい。」(段落【0040】) エ 「この構成によれば、視聴されていない期間にアナログ放送、デジタル放送の複数ないし全チャンネルの番組情報を取得しているので、視聴者が受像機の電源をONにしてすぐに番組表の表示を指示したとしても、待ち時間なしに番組表を表示できるようになる。」(段落【0042】) (2) 刊行物1に記載された発明の認定 ア 文字放送受信装置 刊行物1には、上記「(1)ア」のとおり、「文字放送受信装置」が記載されていると認められる。 イ 番組表の作成 上記「(1)ア」のとおり、刊行物1の段落【0001】には、「本発明は、文字放送受信装置に関し、特に文字放送を利用してテレビジョン番組の番組表を作成し表示することのできる文字放送受信装置に関する」とあるから、刊行物1には、「番組表を作成し表示することのできる文字放送受信装置」が記載されていると認められる。 ウ 電源待機時 上記「(1)ウ」のとおり、刊行物1には、「尚、上記実施の形態では、主電源をONしたときに全ての機能部がONするものとしたが、主電源がOFFの状態でも、例えばタイマーによる制御で常時もしくは一定時間毎に少なくともデジタル放送選局部12あるいはアナログ放送選局部14と、波形整形回路17b,17mと、データ取込回路17cと、バッファメモリ17dとのそれぞれの電源をONにして複数ないし全チャンネルの選局を行い、それぞれの番組情報信号の取得に供するようにしてもよい。」(段落【0040】)とあるから、 刊行物1に記載の「文字放送受信装置」は、「主電源がOFFの状態でも、例えばタイマーによる制御で常時もしくは一定時間毎に少なくともデジタル放送選局部あるいはアナログ放送選局部と、波形整形回路と、データ取込回路と、バッファメモリとのそれぞれの電源をONにして複数ないし全チャンネルの選局を行い、それぞれの番組情報信号の取得に供する」ように構成されていると認められる。 エ 番組表の画面を作成するためのデータ取得及びデータ保存 上記「(1)イ」のとおり、刊行物1には、「次に、上記構成により、番組表作成及び表示を行なう動作を図3のフローチャートを参照して説明する。まず、主電源をONにして受信を開始すると(ステップS101)、デジタル放送選局部12、アナログ放送選局部14及び文字放送デコーダ部17のそれぞれの電源がONに設定される(ステップS102)。そして、アナログ放送選局部14で選局が行われ(ステップS103)、文字放送デコーダ部17の波形整形回路17b及びデータ取込回路17cで文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリ17dに記憶される(ステップS104)。このバッファメモリ17dに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され(ステップS105)、番組情報メモリ17jに書き込まれる(ステップS106)。」(段落【0028】)とあり、また、 「以上のステップS103?S106までの動作がアナログ放送の複数ないし全チャンネルについて行われたか否かを判断し(ステップS107)、複数ないし全チャンネルについて行われた場合はステップS108に進み、終了していない場合はステップS103に戻る。ステップS108では、アンテナ11でデジタル放送が受信されたか否かの判定が行なわれ、受信されている場合には、デジタル放送選局部12で選局が行なわれ(ステップS109)、文字放送デコーダ部17の波形整形回路17m及びデータ取込回路17cで文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリ17dに記憶される(ステップS110)。このバッファメモリ17dに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され(ステップS111)、番組情報メモリ17jに書き込まれる(ステップS112)。」(段落【0029】)とあるから、 刊行物1に記載の「文字放送受信装置」は「アナログ放送選局部」及び「デジタル放送選局部で選局が行なわれ、文字放送デコーダ部の波形整形回路及びデータ取込回路で文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリに記憶され、このバッファメモリに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され、番組情報メモリに書き込まれる」ようにしていると認められる。 オ 番組表の画面データ作成及び保存 上記「(1)イ」のとおり、刊行物1には、「番組情報メモリ17jに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部17kに転送されることにより、番組表作成に供され(ステップS113)、以後、画像メモリ17hに書き込まれる(ステップS114)。」(段落【0031】)とあるから、刊行物1に記載の「文字放送受信装置」は「番組情報メモリに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され、以後、画像メモリに書き込まれる」と認められる。 カ 番組表表示要求 上記「(1)イ」のとおり、刊行物1には、「ところで、番組表作成後に放送時間や番組内容が変更されることがある。このため適当な時間毎に自動的に番組表の情報を作成し直す必要がある。そこで番組表の書き替えが必要かどうか判断され(ステップS115)、書き替える場合はステップS103の処理に戻される。書き替えない場合には、テレビジョン受像機本体の電源がON状態に設定され(ステップS116)、番組表が選択されると、画像メモリ17hから番組表のデータが読み出され(ステップS117)、受像管16に番組表が表示される(ステップS118)。これにより、放送時間や番組内容の変更に対応した番組表が作成される。また、放送時間や番組内容が変更された場合には、その旨を受像管16に表示する。もしくは音声を発する等の手段を用いて視聴者に知らせる機能を持たせることも可能である。」(段落【0032】)とあるから、刊行物1に記載の「文字放送受信装置」は「番組表が選択されると、画像メモリから番組表のデータが読み出され、受像管に番組表が表示される」ように構成されていると認められる。 キ 引用発明 以上を踏まえ、上記刊行物1の記載事項及び図面を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「番組表を作成し表示することのできる文字放送受信装置であって、 アナログ放送選局部及びデジタル放送選局部で選局が行なわれ、文字放送デコーダ部の波形整形回路及びデータ取込回路で文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリに記憶され、 このバッファメモリに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され、番組情報メモリに書き込まれ、 番組情報メモリに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され、以後、画像メモリに書き込まれ、 番組表が選択されると、画像メモリから番組表のデータが読み出され、受像管に番組表が表示され、 主電源がOFFの状態でも、例えばタイマーによる制御で常時もしくは一定時間毎に少なくともデジタル放送選局部あるいはアナログ放送選局部と、波形整形回路と、データ取込回路と、バッファメモリとのそれぞれの電源をONにして複数ないし全チャンネルの選局を行い、それぞれの番組情報信号の取得に供するように構成される 文字放送受信装置。」 4 対比 本願発明を引用発明と比較する。 (1)「番組表の画面を作成」することについて 引用発明は、「番組表を作成し表示する」ように構成されており、具体的には、 「文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され、番組情報メモリに書き込まれ、 番組情報メモリに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され、以後、画像メモリに書き込まれ、 番組表が選択されると、画像メモリから番組表のデータが読み出され、受像管に番組表が表示され」るものである。 受像管は画面を表示するのが普通であるから、受像管には番組表の画面が表示されるものと認められる。引用発明は、「画像メモリから番組表のデータが読み出され、受像管に番組表が表示され」るから、画像メモリから読み出される番組表のデータは「番組表の画面のデータ」といえる。そして、「番組情報メモリに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され、以後、画像メモリに書き込まれ」るから、画像メモリから読み出される番組表のデータ(「番組表の画面のデータ」)は、「番組情報」が「番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され」て作成され、「画像メモリに書き込まれ」るものと認められる。 そうすると、引用発明は「番組表のデータ」を作成し、画像メモリに書き込み、その書き込まれた「番組表の画面のデータ」を読み出して、番組表の画面を表示しているものと認められ、「番組表の画面のデータ」を作成するのであるから、引用発明は「番組表の画面を作成」するものということもできる。 したがって、引用発明は「番組表の画面を作成」する点で本願発明と相違しない。 (2)「電源待機時において映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止する」点について 引用発明は、「主電源がOFFの状態でも、例えばタイマーによる制御で常時もしくは一定時間毎に少なくともデジタル放送選局部あるいはアナログ放送選局部と、波形整形回路と、データ取込回路と、バッファメモリとのそれぞれの電源をONにして複数ないし全チャンネルの選局を行い、それぞれの番組情報信号の取得に供するように構成」されている。 電源待機時とは、通常、主電源がOFFではあるものの、リモコンを受信するための回路など一部の回路には電源を供給している状態をいうのであり、引用発明においても、主電源がOFFの状態でも番組情報信号の取得のための回路には電源が供給されており、これは「電源待機時」であるといいうる。 そして、引用発明において、番組情報信号の取得のための回路には電源が供給されているものの、主電源がOFFの状態において、それ以外の回路には電源は供給されず、結果として映像は出力されないのであるから、引用発明は、「電源待機時において」「映像出力の出力を停止する」点で本願発明と相違しないといえる。 もっとも、引用発明は、電源待機時に「映像信号を処理」するようにはしていない点で、本願発明と相違する。 なお、審判請求人は、平成22年1月22日付けの意見書において、本件出願の明細書の段落【0029】?【0033】等を根拠に、 「映像信号の処理を行いつつ、その出力のみを停止(ミュート)する電源待機状態は、本発明の新規な特徴の1つ」とした上で、 「このような電源待機時の映像出力のミュートの特徴は刊行物1ないし3のいずれにおいても開示、示唆はありません。よって、いずれの刊行物に記載の思想を単独でまたは組み合わせて用いても、当業者が、電源待機時における映像出力の解除とともに直ちに番組表の画面を表示することを可能とする本発明に想到することはできないと思料します。」 と主張する。 上記主張に関して、本件出願の明細書の詳細な説明においては、「本実施形態の映像情報出力装置1は、機器本体の電源オフ時において、通電が完全に遮断されるものではなく、通電されたまま待機状態で動作し続けているものとする。すなわち、本実施形態の映像情報出力装置1において、電源オフ状態は待機状態を意味する。」(段落【0025】)、「本実施形態では、このように、本実施形態において、電源オフにするとは、単に映像信号を映像装置10に出力しないようにすることを意味する。」(段落【0033】)としているが、特許請求の範囲の請求項1は、「電源待機時」に関しては「電源待機時において」「映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止する」とするものであり、「その出力のみを停止(ミュート)する」とするものではないから、審判請求人の上記主張は特許請求の範囲の記載に基づかない主張であり、採用できない。 (3)「外部から番組表の画面を作成するためのデータを取得する取得部」について 引用発明において「アナログ放送選局部及びデジタル放送選局部で選局が行なわれ、文字放送デコーダ部の波形整形回路及びデータ取込回路で文字放送データ抽出処理が行なわれ、文字放送データがバッファメモリに記憶され、このバッファメモリに記憶された文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され、番組情報メモリに書き込まれ」るように構成されており、当該「番組情報」は、「番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され」ることにかんがみれば、当該「番組情報」は本願発明の「番組表の画面を作成するためのデータ」と相違しない。 そして、当該「番組情報」はテレビジョン放送信号に含まれており、当該テレビジョン放送信号は文字放送受信装置の外部である放送局側から送信されるものであるから、当該「番組情報」は外部から取得されるものであるといえる。 してみれば、引用発明は「外部から番組表の画面を作成するためのデータを取得する取得部」を有する点で本願発明と相違しない。 (4)「前記取得部で取得されたデータを保存する第1保存部」について 引用発明は、「文字放送データの中に番組情報が含まれる場合に、この番組情報が選択され、番組情報メモリに書き込まれ」る構成であり、上記「(3)」で検討したとおり、「番組情報」は本願発明の「番組表の画面を作成するためのデータ」と相違しないから、当該「番組情報」を記憶する「番組情報メモリ」を有する引用発明は、「前記取得部で取得された番組表の画面を作成するためのデータを保存する第1保存部」を有している点で本願発明と相違しない。 (5)「該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合に、前記第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部」について 引用発明は、「番組情報メモリに記憶されたアナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され」るように構成されており、上記「(1)」のとおり、番組表作成に供され、その後画像メモリに書き込まれるものは「番組表の画面のデータ」といえるから、「第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部」を有すると認められる点で、本願発明と相違しない。 しかし、番組表の画面のデータを作成する場合に関して、引用発明は主電源がONの場合には番組表の画面のデータを作成するように構成されてはいるものの(段落【0028】?【0031】参照)、主電源がOFFの電源待機状態においては、「番組情報信号の取得」を行うものの(段落【0040】参照)、番組表の画面データを作成するとまではしておらず、「電源待機の要求があった場合に」番組表の画面のデータを作成するとはしていない点で本願発明と相違する。 つまり、第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部が、本願発明では、「電源待機の要求があった場合」に、番組表の画像データを作成するのに対し、引用発明においては、「電源待機の要求があった場合」に番組表の画面データを作成するとはしていない点で相違する。 (6)「前記作成部で作成されたデータを保存する第2保存部」について 引用発明は、「アナログ放送及びデジタル放送の番組情報は、番組表提示部に転送されることにより、番組表作成に供され、以後、画像メモリに書き込まれ」るように構成されており、上記「(1)」のとおり、画像メモリに書き込まれるものは「番組表の画面のデータ」といえるから、「前記作成部で作成された番組表の画面のデータを保存する第2保存部」を備えている点で本願発明と相違しない。 しかし、上記「(5)」で検討したとおり、引用発明は、電源待機の要求があった場合に、番組表のデータを作成するようには構成されていないので、番組表の画面のデータを保存するタイミングに関しても、「電源待機の要求があった場合に」データを保存することにはならず、この点で本願発明と相違する。 (7)番組表データを作成部で作成するタイミング及び番組表の画面のデータを第2保存部に保存するタイミング 上記「(5)」、「(6)」を踏まえれば、 引用発明の文字放送受信装置と本願発明は、「第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部と、前記作成部で作成された番組表の画面のデータを保存する第2保存部とを備え」ている点で相違しないが、 当該「作成部」と「第2保存部」の動作に関して、 本願発明では、「電源待機の要求があった場合」に、番組表の画像データを作成し、番組表の画面データを第2保存部に保存するようにしているのに対し、 引用発明の文字放送受信装置においては、「電源待機の要求があった場合」に番組表の画面データを作成し、番組表の画面データを第2保存部に保存するとはしていない点で相違する。 (8)「該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合には、映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止し、前記電源待機において番組表の画面の表示要求があった場合には、前記映像信号の出力の停止を解除するとともに前記第2保存部に保存されたデータを出力する出力部」について ア 上記「(2)」で対比したとおり、引用発明は、「電源待機時において映像信号の出力を停止する」ものであり、「電源待機時において映像信号の出力を停止する」ためには、「電源待機の要求があった場合に」「映像信号の出力を停止」するようにすることが普通であるといえる。してみれば、引用発明は、「電源待機の要求があった場合には、」「映像出力の出力を停止する」点で本願発明と相違しないと認められる。 もっとも、引用発明は、電源待機時に「映像信号を処理」するようにはしていない点で、本願発明と相違する。 イ 引用発明は、「番組表が選択されると、画像メモリから番組表のデータが読み出され、受像管に番組表が表示され」ており、受像管に番組表を表示するためには、番組表の画面の映像信号を出力する必要があることは当然であるから、「番組表の画面の表示要求があった場合には、」「前記第2保存部に保存されたデータに基づき番組表の画面の映像信号を出力する」点で、本願発明と相違しないと認められる。 しかし、刊行物1の「視聴されていない期間にアナログ放送、デジタル放送の複数ないし全チャンネルの番組情報を取得しているので、視聴者が受像機の電源をONにしてすぐに番組表の表示を指示したとしても、待ち時間なしに番組表を表示できるようになる。」(段落【0042】)という記載を踏まえれば、引用発明は、電源待機時に番組表の画面の表示を希望する場合には、まず電源をONにして、次に番組表の表示を指示することになり、「前記電源待機において番組表の画面の表示要求があった場合には、前記映像信号の出力の停止を解除」して番組表の表示を行うのではない点で、本願発明と相違する。 (9)「映像情報出力装置」 引用発明も、受像管に映像情報を出力するものであり、本願発明と同様に「映像情報出力装置」であるといえる。 5 一致点・相違点 以上によれば、本願発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「番組表の画面を作成し、かつ電源待機時において映像信号の出力を停止する映像情報出力装置であって、 外部から番組表の画面を作成するためのデータを取得する取得部と、 前記取得部で取得されたデータを保存する第1保存部と、 前記第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部と、 前記作成部で作成されたデータを保存する第2保存部と、 該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合には、映像信号の出力を停止し、番組表の画面の表示要求があった場合には、前記第2保存部に保存されたデータを出力する出力部と を備えることを特徴とする映像情報出力装置。」 <相違点> <相違点1> 電源待機時に、 本願発明は、「映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止する」ようにしているのに対し、 引用発明は、「映像信号の出力を停止する」ようにしているが、「映像信号を処理」するようにはしていない点。 <相違点2> 第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部と、前記作成部で作成された番組表の画面のデータを保存する第2保存部の動作に関して、 本願発明では、「該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合」に、番組表の画像データを作成し、番組表の画面データを第2保存部に保存するようにしているのに対し、 引用発明は、「該映像情報出力装置に電源待機の要求があった場合」に、番組表の画面データを作成し、番組表の画面データを第2保存部に保存するとはしていない点。 <相違点3> 番組表の表示に関して、 本願発明は「前記電源待機において番組表の画面の表示要求があった場合には、前記映像信号の出力の停止を解除」して番組表の表示を行うように構成しているのに対し、 引用発明においては、電源待機時において番組表の画面の表示要求があった場合には、まず電源をONにして、次に番組表の表示を指示することになり、本願発明のように構成されていない点。 6 判断 (1) 相違点1について ア 相違点1の克服 電源待機時に、引用発明において、映像信号の出力を停止するようにしていることに加えて、映像信号を処理するようにして、映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止するようにすれば、相違点1は克服される。 イ 相違点1の克服の容易想到性 (ア)刊行物の記載 平成21年11月19日付け当審拒絶理由通知において引用した特開2004-128942号公報(当該刊行物は、平成19年11月14日付けの最後の拒絶理由通知において「引用文献3」として引用された刊行物であり、平成21年11月19日付け当審拒絶理由通知において、特開2004-148942号公報としているが、誤記であり、正しくは特開2004-128942号公報である。)(以下「刊行物2」という。)には、次の記載がある。 a 「【発明の属する技術分野】 本発明は、MPEG方式で圧縮された信号を、放送衛星や地上波、あるいは、ケーブルを利用するケーブルテレビ(以下、CATVと記す)を利用してデジタル伝送された放送を受信するデジタル放送受信装置に関するものである。」(段落【0001】) 「【従来の技術】」(段落【0002】) 「MPEG2方式を使ったデジタル放送受信装置の使用者(視聴者)が受信チャンネルを切り替えた場合に、受信信号を直ちに復号化し、すばやく表示できないという問題がある。これは、MPEG2方式では差分情報(Pフレーム、Bフレームのデータ)のみからでは映像信号の複号ができないことから、チャンネルを切り替えた後にIフレームが入力されるまで待機しなければ受信チャンネルの内容を表示することができないためである(例えば、非特許文献1参照)。」(段落【0003】) 「これを解決するため、例えば、複数のチューナを設け、複数の受信チャンネルについての受信が可能なように構成されたものが知られている。そのようなデジタル放送受信装置では、複数のチューナの何れかに表示する受信チャンネルを指定し、他のチューナにそれぞれ次に表示される候補の受信チャンネルを指定し、その指定情報が保持される。次に表示される候補の受信チャンネルは、予め設定された手順に従って自動的に決定される。各チューナにより受信された受信チャンネルのデータは、表示するように指定された受信チャンネルのデータが表示され、次に表示される候補の受信チャンネルのデータは保存される。(例えば、特許文献1参照)」(段落【0004】) 「【非特許文献1】 藤原洋監修、マルチメディア通信研究会編、「最新MPEG教科書」アスキー出版局、1994年8月1日、p100?102、p137?142 【特許文献1】 特開2000-101467号公報(図1、図8)」(段落【0005】) b 「【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、特許文献1のデジタル放送受信装置では、現時点で視聴(受信選択し表示)するために1系統のチューナ(1チャンネル分の受信が可能)を使用し、他の2系統のチューナ(2チャンネル分の受信が可能)を選択されていない他のチャンネルの受信に使用するという構成であるので、その時点で表示されているチャンネルの次に選択されたチャンネルをすばやく表示することができる場合は、残り2系統のチューナが予測して受信している候補のチャンネルである場合のみである。 逆に言えば、特許文献1のデジタル放送受信装置は、使用者が次に選択するチャンネルが、残り2系統のチューナが予測して受信している候補のチャンネルではない場合には、結局、番組を切り替えて表示する毎にIフレームが入力されるまで待機しなければ番組内容を表示できない。つまり、特許文献1のデジタル放送受信装置では、次に使用者に選択される表示予測がはずれた場合には、公報のチャンネルは無駄になり、結局、すばやく表示できないことになり問題を解決できない。」(段落【0006】) 「より具体的に、例えば、従来のデジタル放送受信装置では、使用者が現在放送中の番組内容を検索するために受信チャンネルの順送り(以下、ザッピングと記載)をする場合、受信チャンネルの復調等を素早く切り替えても、結局Iフレームが入力されるまでは表示できないので待機することになってしまう。従って、従来のデジタル放送受信装置では、素早いザッピングはできず、全番組の一巡表示検索あるいは特定番組から一巡表示検索を実施しようとすると、多くの時間が必要になるという問題点があった。」(段落【0007】) 「本発明は、上述した問題点を解消するためになされたもので、使用者が電源投入後などに番組を検索(選局)する際、素早いザッピング処理が行えるデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。 また、その番組検索の際に、1画面の中に各受信チャンネルの表示画面を縮小して複数表示(以下、マルチ画面表示と記載)し、番組の検索をさらに素早くできるデジタル放送受信装置を提供することを目的とする。」(段落【0008】) c 「【課題を解決するための手段】 上述した目的を達成するため、本発明に係るデジタル放送受信装置は、設定された受信チャンネルの復号された映像信号から少なくとも1フレームの映像信号を格納する映像信号メモリ部と、該映像信号メモリへの映像信号の書き込みおよび読み出しを制御するメモリ制御部と、設定された受信チャンネルの復号された映像信号と映像信号メモリ部から読み出された映像信号を切り替えて出力する映像信号切替部と、デジタル放送番組の受信が使用者に選択されていない場合に、受信チャンネルを順次設定して、メモリ制御部を用いて受信チャンネル毎に映像信号を映像信号メモリ部に格納し、デジタル放送番組の受信が使用者に選択された場合に、メモリ制御部を用いて映像信号メモリ部に格納された映像信号を順次読み出して表示させることによりデジタル放送番組を使用者に選択させる受信装置制御部とを有している。」(段落【0009】) 「また、上述した目的を達成するため、本発明に係るデジタル放送受信装置の受信方法では、デジタル放送の復号された映像信号から少なくとも1フレームの映像信号を映像信号メモリ部に格納し、復号された映像信号と前記映像信号メモリ部から読み出された映像信号を切り替えて出力できるデジタル放送受信装置の受信方法であって、(A)デジタル放送の受信が選択されていない場合に、伝送チャンネル中の複数の受信チャンネルの映像信号を復号し、各受信チャンネルの少なくとも1フレームの映像信号を映像信号メモリ部に格納するステップと、(B)ステップ(A)の処理後、デジタル放送の受信が選択されて伝送チャンネルから受信チャンネルを検索する場合、前記映像信号メモリ部から読み出した映像信号を出力して検索するステップを有している。」(段落【0010】) 「メモリ制御部31は、受信装置制御部20からの制御信号により、後述する映像信号メモリ部32のデータの格納、読み出しに関する一連の制御を行う。使用者がデジタル放送の受信を選択していない時に、復号された映像データを各受信チャンネルに対して所定の画面分づつ格納する。また、使用者が受信チャンネルの検索処理を希望する場合、メモリ制御部31は、映像信号メモリ部32内に格納されている各受信チャンネルの映像データを読み出し、受信チャンネルの検索処理用に出力する。」(段落【0027】) 「また、受信装置制御部20は、図示しない入力装置等からの入力により、使用者がデジタル放送の受信を選択していない状態、すなわち、主電源OFF状態やリモコンからの電源オン信号受信を待機している状態(以下スタンバイ状態と記載)やアナログ放送など別の放送方式で伝送される番組を受信している状態かどうか等のデジタル放送視聴状況(受信選択状況)を判断する。」(段落【0031】) 「そして、受信装置制御部20は、使用者がデジタル放送の受信を選択していない期間には、電源制御部17を制御して、少なくともアンテナ2、チューナ・復調部11、デ・マルチプレクサ部12、映像信号デコーダ部15、メモリ制御部31、および、映像信号メモリ部32には電源電力を供給する。」(段落【0032】) 「それと共に、受信装置制御部20は、チューナ・復調部11およびデ・マルチプレクサ部12を制御して、例えば、受信チャンネル毎に上記した映像データを各受信チャンネルに対して所定の画面分づつ格納する処理が終了したことを検出し、1つの受信チャンネルにおける処理が終了したら受信チャンネルを切り替えるようにして、現在放送されている全ての受信チャンネルあるいは特定の指定された受信チャンネルを伝送チャンネルから選択する。従って、その受信チャンネルの選択のために、伝送チャンネルは一定期間選択される。」(段落【0033】) 「受信装置制御部20は、1つの伝送チャンネルにおける全受信チャンネルあるいは指定受信チャンネルの記憶処理が終了した場合、それまでに選択されていない伝送チャンネルを次の伝送チャンネルとして選択する。さらに、指定したすべての伝送チャンネルで上記記憶処理が終了した場合、受信装置制御部20は、再び最初の伝送チャンネルに戻って上記記憶処理を繰り返す。受信装置制御部20は、以後、同様にチューナ・復調部11等を制御して、伝送チャンネルを巡回し、メモリ制御部31を制御して上記記憶処理を繰り返す。」(段落【0034】) 「また、本実施の形態における映像信号デコーダ部15よりも前段に位置する各部(各回路)は、使用者がデジタル放送の受信を選択(視聴)している場合のみでなく、例えば、使用者がデジタル放送の受信を選択していないスタンバイ状態や別の放送方式の番組を受信している状態でも動作している。そのため、本実施の形態では、デジタル放送の受信を使用者が選択していない場合でも、各伝送チャンネルおよび各受信チャンネルを巡回しながら、各受信チャンネル(番組)の映像データを所定の画面分づつ格納することができる。」(段落【0036】) d 「このように、本実施の形態では、使用者がデジタル放送の受信を選択していない期間を利用して、指定された受信チャンネルの少なくとも1フレーム以上の所定の画面数のデジタル映像信号を番組検索用画面信号として映像信号メモリ部32に格納し、次にデジタル放送の受信を選択する場合で番組検索する場合には、映像信号メモリ部32から読み出した各受信チャンネルの番組検索用画面信号を映像出力部に表示するので、ザッピング表示をすばやく実施することができ、検索時間を短縮することができる。また、その番組検索の際に、1画面の中に各受信チャンネルの表示画面を縮小して複数表示するマルチ画面表示が可能であるので、番組の検索をさらに素早くできる」(段落【0074】) 以上によれば、刊行物2には、引用発明と同様の放送受信機の分野において、主電源OFF状態やリモコンからの電源オン信号受信を待機している状態において、アンテナ、チューナ・復調部、デ・マルチプレクサ部、映像信号デコーダ部、メモリ制御部、および、映像信号メモリ部に電源電力を供給して、各伝送チャンネルおよび各受信チャンネルを巡回しながら、各受信チャンネル(番組)の映像データを所定の画面分づつ格納するようにすることが記載されており(段落【0031】?【0034】、【0036】等)、これは電源待機時に映像信号を処理しているということができる。 (イ)容易想到性 引用発明も、刊行物2に記載のデジタル放送受信装置と同様に、デジタル放送を受信することができるものであり、デジタル放送においてMPEG2方式のような画面間符号化を行った放送は周知の技術であるから、引用発明においても、MPEG2方式のような画面間符号化を行った放送を受信するに際して、受信チャンネルを切り替えた場合に、受信信号を直ちに復号化しすばやく表示できない、という刊行物2に記載のものと同様の課題が存在すると認められる。してみれば、引用発明において、このような課題を解決するために、刊行物2に記載の技術を適用し、電源待機時に、映像信号を処理して、各番組の映像データを所定の画面ずつメモリに格納するようにすることは、当業者であれば容易になし得たことであると認められ、また、これを妨げる特段の事情があるとも認められない。 引用発明も刊行物2に記載のものも、電源待機時には映像信号の出力を行わないから、引用発明に刊行物2に記載の技術を適用することは、映像信号の出力を停止するようにしていることに加えて、映像信号を処理することになり、これは映像信号を処理しつつ映像信号の出力を停止するといえるから、引用発明に刊行物2に記載の技術を適用することにより、相違点1は克服される。 (2) 相違点2について ア 相違点2の克服 第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成する作成部と、前記作成部で作成された番組表の画面のデータを保存する第2保存部の動作に関して、「電源待機の要求があった場合」に、第1保存部で保存されたデータを用いて、番組表の画面のデータを作成し、前記作成部で作成された番組表の画面のデータを第2保存部に保存するようにすれば相違点2は克服される。 イ 相違点2の克服の容易想到性 (ア)刊行物の記載 a 刊行物2(特開2004-128942号公報)の記載 刊行物2には、上記「(1)イ(ア)」に摘示した事項が記載されている。これを踏まえれば、刊行物2には、引用発明と同様の放送受信機の分野において、電源投入後に素早い画面表示を行う、すなわち待ち時間を短くするために、あらかじめメモリに表示画面のデータを記憶しておくようにすることも記載されていると認められる。 b 特開2002-142163号公報の記載 平成21年11月19日付け当審拒絶理由通知において引用した特開2002-142163号公報(以下「刊行物3」という。)には、次の記載がある。 (a)「【発明の属する技術分野】この発明は、ディジタルテレビ放送受信機に関する。」(段落【0001】) (b)「【従来の技術】CS放送やBSディジタル放送のようなディジタル衛星放送システムでは、多数チャンネルが用意されており、多数の番組が提供されている。このような放送では、ユーザの番組選択を容易にするために、付属情報として現在放送されている番組及び将来放送される番組の案内情報が本来の番組データとともに所定の時間間隔で伝送されてきている。」(段落【0002】) 「ディジタルテレビ放送受信機の制御プログラムでは、これらの情報を基に、電子番組ガイド(EPG:ElectronicProgramGuide)、メニューなどの表示データを作成する。ユーザは、画面上に表示されたEPG、メニューから所望の番組を選択することができる。」(段落【0003】) 「【発明が解決しようとする課題】ところで、近年では環境問題などから節電が社会的要請となってきており、電子機器の待機電力をどれだけ削減できるかが大きな課題になってきている。このため、待機(スタンバイ)時には起動のために必要な一部の回路を除いて全ての回路への電力の供給をカットするなどの工夫を必要としている。」(段落【0004】) (c)「待機モード(スタンバイモード)に入るとそれまでにRAMに記憶させていた付属情報を全て失ってしまうので、次回の起動時には再度付属情報を取得する必要がある。ところが、かかる付属情報が再送される周期が長い場合、ユーザが番組ガイドを表示させようとした際、その時点から付属情報の取得を開始していては番組ガイドが表示されるまでに時間がかかりという問題があり、操作性の向上の観点からその改善が望まれていた。」(段落【0005】) (d)「図2を参照しつつ電源OFF時の動作を示すと、ユーザから電源OFFの指令がリモコン送信機21によって入力されたとき、第1システムコントローラ14はまず付属情報26のうちEPGの表示に必要な情報を取り出した番組情報29を不揮発性メモリ16に書き込む(S1)。次に第1システムコントローラ14はスタンバイ信号35を第2システムコントローラ18に供給する。」(段落【0030】) 以上によれば、刊行物3には、 ディジタルテレビ放送受信機において、番組ガイドが表示されるまでの時間を短くしたいという課題が存在すること、 及び、 そのような課題を解決するために「ユーザから電源OFFの指令が入力されたとき」、番組情報を不揮発性メモリに記憶しておくようにすること、 が記載されていると認められる。 (イ) 容易想到性 刊行物1には、「この構成によれば、視聴されていない期間にアナログ放送、デジタル放送の複数ないし全チャンネルの番組情報を取得しているので、視聴者が受像機の電源をONにしてすぐに番組表の表示を指示したとしても、待ち時間なしに番組表を表示できるようになる。」(段落【0042】)という記載があることから、「番組ガイドが表示されるまでの時間を短くしたい」という課題が引用発明にも存在することが示唆されているといえる。 してみれば、番組ガイドが表示されるまでの時間を短くしたいという課題が存在する引用発明において、番組表の表示を指示した場合の待ち時間を短くするために、電源投入後の画面表示の待ち時間を少なくするための技術である刊行物2に記載の技術を適用し、あらかじめ、すなわち電源待機時に、メモリに表示画面のデータを記憶しておくようにすることは当業者であれば容易になし得たことである。 そして、電源待機時中のどのタイミングでメモリに表示画面のデータを記憶しておく動作を行うのかに関しては、電源待機となったタイミング、すなわち電源待機の要求あったタイミングで行うことがもっとも自然であるし、番組表に関するデータを保存するタイミングを電源待機の要求がなされたタイミングとすることが刊行物3に記載されており、刊行物3に記載の技術は、番組表を表示する放送受信機において、番組ガイドが表示されるまでの時間を短くしたいという、引用発明と共通の課題を解決するためのものであるから、刊行物3に記載の技術を引用発明に適用して、電源待機の要求があったタイミングで、メモリに表示画面のデータを記憶しておくようにすることも当業者であれば容易になし得たことであると認められる。また、これを妨げる特段の事情があるとも認められない。 (3) 相違点3について ア 相違点3の克服 電源待機時に番組表の表示を希望する場合に関して、引用発明において、まず電源をONにして、次に番組表の表示を指示することにより番組表を表示することに代えて、映像情報出力装置の電源待機時に、番組表の画面の表示要求があったときに、映像信号の出力の停止を解除して番組表の表示を行うようにすれば、相違点3は克服される。 イ 相違点3の克服容易性 (ア) 特開2003-51960号公報の記載 平成21年11月19日付け当審拒絶理由通知において引用した特開2003-51960号公報(以下、「刊行物4」という。)には、次の記載がある。(ただし、下線は当審において附記した。) a 「【発明の属する技術分野】本発明は電子機器に関わり、特に、ストップモードを有するマイクロコンピュータを備えた各種電子機器に適用して好適なものである。」(段落【0001】) 「【従来の技術】近年の電子機器は、その多くが赤外線の受信部を備え、リモートコマンド等の遠隔制御送信機(以下、単に「リモコン」という)による遠隔制御が可能になっている。このため、従来の電子機器では、リモコンにより電子機器の電源をオン/オフするスタンバイモードを有している。スタンバイモードは、電子機器の主要な動作を停止させた状態においても、リモコンからのコマンド信号に応じて電源オンを行うために、内蔵されているマイクロコンピュータ(以下、単に「マイコン」という)を常に動作させておく必要がある。」(段落【0002】) 「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記したような従来の電子機器では、スタンバイ時には、内蔵されているマイコンが常に動作していることから、電源オフ時においても、その分だけ多くの電力を消費するため、省エネルギー化という観点から好ましいものではなかった。」(段落【0003】) 「そこで、スタンバイ時の消費電力を削減するため、スタンバイ時においては、マイコンが電力消費の少ないストップモード(又はスリープモード)に入り、低消費電力化を図ることができるようにしたマイコンが知られている。ストップモードは、電子機器がスタンバイモードになった時に、マイコンが全ての機能を司るクロックを停止して、その動作を停止するというモードである。そして、マイコンがストップモードにあるときは、マイコンは特定の入力端子に入力される信号のエッジを検出することで、自動的に復帰する機能を備えている。マイコンがストップモードから復帰することを「ウェイクアップ」という。」(段落【0004】) 「しかしながら、これまでの電子機器では、リモコンからのコマンド信号を利用して、マイコンをストップモードからウェイクアップさせるようにしているため、リモコン以外の操作ではマイコンをストップモードからウェイクアップしないものとされる。」(段落【0005】) 「このため、例えば機器本体に対して、リモコンのスタンバイ電源ボタンなどに相当する電源ボタン(メイン電源をオン/オフする操作ボタン)を設けるなどした場合は、この機器本体に設けた電源ボタンを操作してもマイコンをストップモードから復帰させることができなかった。つまり、従来の電子機器では、リモコン以外の操作によってマイコンをストップモードから復帰させることができなかった。このため、例えば機器本体にスタンバイ電源ボタンなどに相当する電源ボタンを設ける場合には、マイコンのストップモードを利用することができず、スタンバイ時の低消費電力化を図ることができないという欠点があった。」(段落【0006】) b 「【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態では本発明の電子機器としてモニター装置を例に挙げて説明する。図1は、本実施の形態としてのモニター装置の外観構成を示した図である。この図1に示すモニター装置1は、その前面にユーザ操作に供される操作部2や、リモコン受光部6などが設けられている。操作部2は、拡大して示されているように、モニター装置1のメイン電源をオン/オフするスタンバイ電源ボタン3、チャンネルを選局するチャンネルキー部4、音量を調節する音量キー部5などが設けられている。」(段落【0010】) c 「リモコン受光部6は、リモコン7から送信されてくるコマンド信号を受光して出力する部位である。リモコン7は、モニター装置1を離れた位置から遠隔操作するための遠隔制御送信装置であり、モニター装置1の各種設定や操作等を行うための各種操作ボタンが設けられている。例えばユーザー操作に供されるスタンバイ電源ボタンや、チャンネルボタン、音量ボタンなどが設けられている。そして、これらの操作ボタンが操作されると、例えば赤外線や電波を利用して操作ボタンに応じたコマンドを少なくとも3回以上連続して送信するようになっている。なお、リモコン7に設けられているチャンネルボタンなども、スタンバイ電源ボタンの電源オンに相当する機能を有するものとされる。」(段落【0014】) d 「また、モニター装置1のスタンバイ時における動作状態は、後述するマイコン16を動作させた状態(以下、「リモートオフ状態」という)と、マイコンの動作を停止させ、その分だけ消費電力を低く抑えた状態(以下、「低消費電力状態」という)を採ることができるものとされる。そして、本実施の形態のモニター装置1は、その動作状態が低消費電力状態にあるときも、電源オン機能を有する、操作部2の複数の操作キー、又はリモコン7の操作ボタンが操作された時に、モニター装置1のメイン電源をオンにして通常の動作状態で動作させることができるようになっている。」(段落【0017】) e 「従って、このようなモニター装置1では、その動作状態が低消費電力状態にあるときに、リモコン7からパワーオンコマンドを含むコマンド信号S3が入力されることで、確実にモニター装置1の電源をオンにして通常の動作状態で動作させることが可能になる。」(段落【0035】) 以上によれば、刊行物4には、モニター装置において、リモコン7に設けられているチャンネルボタンなども、スタンバイ電源ボタンの電源オンに相当する機能を有するものとして、スタンバイ(電源待機)時にあるときに、電源オン機能を有する、操作部2の複数の操作キー、又はリモコン7の操作ボタンが操作された時に、パワーオンコマンドを含むコマンド信号S3が入力されることで、確実にモニター装置1の電源をオンにして通常の動作状態で動作させることが可能になるようにすることが記載されていると認められる。 (イ) 容易想到性 刊行物4には、上記「(ア)」のとおりの記載があり、 「スタンバイ(電源待機)時にあるときに」、「電源オン機能を有する」、「リモコン7の操作ボタンが操作された時に」、「パワーオンコマンドを含むコマンド信号S3が入力されることで、確実にモニター装置1の電源をオンにして通常の動作状態で動作させることが可能になる」ようにするのであり、 「リモコン7に設けられているチャンネルボタンなど」は、「スタンバイ電源ボタンの電源オンに相当する機能を有する」のであるから、 スタンバイ(電源待機)時に、リモコン7に設けられているチャンネルボタンを押したときには、パワーオンコマンドを含むコマンド信号S3は、パワーオンコマンド及びチャンネルコマンドを含んでいるといえる。 そして、チャンネルボタンは、本来、電源をON、OFFするためのボタンではない、つまり、電源ボタンではない。 したがって、刊行物4には、電源待機時に、リモコンの電源ボタンではないボタン(チャンネルボタンなど)に、電源ON機能を持たせるようにすることが記載されている、ということができる。 刊行物4に記載のものは、モニター装置に関するものであり、本体やリモコンにチャンネルを選局する構成(本体のチャンネルキー部4及びリモコン7のチャンネルボタン)が設けられていることにかんがみれば、文字放送受信装置である引用発明と共通の技術分野に関するものであるといえる。 番組表を見たい、あるチャンネルの番組を見たい、といった要求に関しては、装置の電源がオンのときのみならず、電源がオフの状態、待機時においても、そのような要求があることは、通常のことと認められるところ、 刊行物1には、 「視聴者が受像機の電源をONにしてすぐに番組表の表示を指示」することが記載されているから(段落【0042】)、番組表を見たいという要求は、電源ONの後、最初に求められる動作であり、電源ONより前、すなわち、スタンバイ時から番組表を見たいという要求があったという示唆があるということができる。 してみれば、電源待機時に番組表を表示したいという要求があるといえる引用発明においても、刊行物4に記載のもののように、電源をONにするためのボタンではないボタンに電源ONに相当する機能を持たせるようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることであり、具体的には、電源をONにするためのボタンではないボタンとしての、番組表の画面の表示要求を与えるもの(ボタンなど)に電源ONに相当する機能を加えて持たせるようにして、電源待機時において、電源ボタンをONすることによる電源ONの手順を踏むことなく、番組表の画面の表示要求を直接受け付けるようにすることは当業者であれば容易になし得たことと認められ、また、これを妨げる特別の事情があるとも認められない。 (4)判断についてのまとめ 以上、引用発明を出発点として、上記相違点1、2、3の克服をそれぞれ行うことで、本願発明の構成に達するところ、その克服は、当業者が容易になし得たことである。 本願発明の構成は、上記のとおり、当業者が容易に想到できるところ、本願発明の効果は、その容易に想到できる構成から当業者が予測し得る範囲内のものであり、同範囲を超える格別顕著なものでもない。 したがって、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3、4に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 結び 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2、3、4に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について言及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-08 |
結審通知日 | 2010-03-09 |
審決日 | 2010-03-26 |
出願番号 | 特願2006-526881(P2006-526881) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 啓介、江嶋 清仁 |
特許庁審判長 |
奥村 元宏 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 夏目 健一郎 |
発明の名称 | 映像情報出力装置及び映像情報処理方法 |
代理人 | 川端 純市 |
代理人 | 山田 卓二 |
代理人 | 石野 正弘 |
代理人 | 田中 光雄 |