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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D |
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管理番号 | 1216781 |
審判番号 | 不服2008-24180 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-22 |
確定日 | 2010-05-13 |
事件の表示 | 特願2000- 6669号「金銭取扱装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月19日出願公開、特開2001-195632号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年1月14日の出願であって、平成20年8月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年9月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、平成20年10月17日付けで手続補正がされたものである。 2.平成20年10月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年10月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、 「【請求項2】汎用的な情報を表示する第1の表示部を有し、顧客のキーボードの操作により金銭取扱を行う金銭取扱装置において、 前記キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように装置に形成された凹部と、前記キーボードに近接し、該キーボード部より前記凹部の奥側でかつ該凹部の側壁の影になる位置に第2の表示部とを設け、 前記キーボードは、第2の表示部側の端部に訂正キーと配設し、 前記第1の表示部に情報を表示するとともに、該第1の表示部の表示内容が暗証番号となった場合には、前記第2の表示部に表示を切り替える制御を行うことにより、前記第2の表示部に前記暗証番号の桁数分の記号を表示し、 顧客が前記訂正キーを押下して第2の表示部の前記記号の表示を訂正すると、前記第1の表示部に情報を表示したまま、第2の表示部の記号の表示をクリアすることを特徴とすることを特徴とする金銭取扱装置。」と補正された。 上記補正は、補正前の請求項2に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記下線部記載のように限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用例 (ア)原査定の拒絶の理由に引用され本願出願前に頒布された刊行物である、実願昭58-38699号(実開昭59-147253号)のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 ・「この考案は、現金自動預金支払機など、顧客の操作に応じて現金の出し入れを行う取引処理装置に関する。」(明細書2頁[(a)技術分野]の項) ・「第1図はこの考案の取引処理装置を適用した現金自動預金支払機の顧客操作部の水平接客面を示す図である。 水平接客面1には、保護ガラスによって覆われた操作案内用CRT2が設けられている。CRT2は利用客の操作を誘導する操作誘導文面および図形の表示,操作キーの機能表示,預金,支払などの取引操作確認表示を行うために設けられている。」(明細書4頁4行ないし12行) ・「キー入力ユニット5は第2図に示すように、テンキー6,万,千,円などの金額キーイン用キー7,訂正キー10を備える。また、キー入力ユニット5の上部には、暗証番号,取引金額などのキー入力データを表示するキー入力表示部9が設けられている。キー入力ユニット5は第3図に示すように、水平接客面1に形成した取付凹部11に着脱自在に取り付けられている。」(明細書4頁末行ないし5頁7行) ・「カードおよび通帳が挿入されたなら暗証番号のキーインを促すメッセージをCRT2に表示する。このとき、暗証番号,取引金額のキーインはキー入力ユニット5を水平接客面1から取り外した状態でも行なえる旨を表すメッセージを表示する。」(明細書8頁11行ないし16行) ・「キー入力ユニット5が取付凹部11から取り外されたならテンキー6によって入力された暗証番号を数字でキー入力表示部9に表示するが、CRT2には表示しない(n5)。一方、キー入力ユニット5が取付凹部11に取り付けられたまま暗証番号がキーインされたなら暗証番号入力のためのキー操作毎にCRT2に丸印(●)などのマークを順次表示していく(n6)。この場合、通常暗証番号は4桁であるので暗証番号入力完了時にはCRT2に4個のマーク(●)が表示されている。しかも、キー入力ユニット5のキー入力表示部9には暗証番号は表示されない。このように、顧客はキー入力ユニット5を水平接客面1から取り外してキー入力表示部9に表示された暗証番号を確認しながら第三者に見られることなく暗証番号を入力することができる。」(明細書8頁末行ないし9頁15行) 上記記載事項及び図面の記載を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が実質的に記載されていると認められる。 「取引操作確認表示を行うCRT2を有し、顧客のキー入力ユニット5のテンキー6などの操作に応じて現金の出し入れを行う取引処理装置において、キー入力ユニット5は、装置の水平接客面1に形成した取付凹部11に着脱自在に取り付けられていて、テンキー6とともにその近傍にキー入力表示部9が設けられており、キー入力ユニット5を取付凹部11から取り外して、キー入力表示部9に表示された暗証番号を確認しながら第三者に見られることなく暗証番号を入力することができるものであって、この場合、暗証番号はキー入力表示部9に数字で表示されるが、CRT2には表示されないようにし、テンキー6の端部に訂正キー10を設けた取引処理装置。」 (イ)同じく引用され本願出願前に頒布された刊行物である、特開平2-249061号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。 現金の引き出しなどの金融取引において暗証番号により個人識別(照合)を行うシステムに関し、表示手段を前面より窪んだ位置に備えることにより、カード持参者が暗証番号の入力を行っている時、第三者から見えないようにしたもの。 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを比較すると次のことが明らかである。 ・引用発明の「取引操作確認表示を行うCRT2」が、本願補正発明の「汎用的な情報を表示する第1の表示部」に相当する。同様に、「顧客のキー入力ユニット5のテンキー6などの操作に応じて現金の出し入れを行う取引処理装置」が「顧客のキーボードの操作により金銭取扱を行う金銭取扱装置」に、「テンキー6」と「訂正キー」が「キーボード」に、「キー入力表示部9」が「第2の表示部」に、それぞれ相当する。 ・本願補正発明の「キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように装置に形成された凹部と、前記キーボードに近接し、該キーボード部より前記凹部の奥側でかつ該凹部の側壁の影になる位置に第2の表示部とを設け」「第1の表示部に情報を表示するとともに、該第1の表示部の表示内容が暗証番号となった場合には、前記第2の表示部に表示を切り替える制御を行うことにより、前記第2の表示部に前記暗証番号の桁数分の記号を表示」した点と、引用発明の「キー入力ユニット5は、装置の水平接客面1に形成した取付凹部11に着脱自在に取り付けられていて、テンキー6とともにその近傍にキー入力表示部9が設けられており、キー入力ユニット5を取付凹部11から取り外しキー入力表示部9に表示された暗証番号を確認しながら第三者に見られることなく暗証番号を入力することができるものであって、この場合、暗証番号はキー入力表示部9に数字で表示されるが、CRT2には表示されないように」した点とは、ともに、「キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように暗証番号を入力することができる」との技術的思想を有する点において共通する。 ・本願補正発明のキーボードに「第2の表示部側の端部に訂正キーと配設」した点と、引用発明の「テンキー6の端部に訂正キー10を設けた」点とは、ともに、「キーボードに訂正キーを設けた」点で共通する。 すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「汎用的な情報を表示する第1の表示部を有し、顧客のキーボードの操作により金銭取扱を行う金銭取扱装置において、前記キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように暗証番号を入力することができ、前記キーボードに近接して第2の表示部を設け、前記キーボードに訂正キーを設けた金銭取扱装置。」 一方で、両者は、次の点で相違する。 (相違点) (ア)本願補正発明が、「キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように装置に形成された凹部と、前記キーボードに近接し、該キーボード部より前記凹部の奥側でかつ該凹部の側壁の影になる位置に第2の表示部とを設け、前記キーボードは、第2の表示部側の端部に訂正キーと配設し、前記第1の表示部に情報を表示するとともに、該第1の表示部の表示内容が暗証番号となった場合には、前記第2の表示部に表示を切り替える制御を行うことにより、前記第2の表示部に前記暗証番号の桁数分の記号を表示し、顧客が前記訂正キーを押下して第2の表示部の前記記号の表示を訂正すると、前記第1の表示部に情報を表示したまま、第2の表示部の記号の表示をクリアする」ものであるのに対して、引用発明は「キー入力ユニット5は、装置の水平接客面1に形成した取付凹部11に着脱自在に取り付けられていて、テンキー6とともにその近傍にキー入力表示部9が設けられており、キー入力ユニット5を取付凹部11から取り外して、キー入力表示部9に表示された暗証番号を確認しながら第三者に見られることなく暗証番号を入力することができるものであって、この場合、暗証番号はキー入力表示部9に数字で表示されるが、CRT2には表示させないようにし、テンキー6の端部に訂正キー10を設けた」ものである点。 (4)相違点についての判断 上記相違点について、以下便宜的に構成要件に分説して検討する。 (ア)本願補正発明が「キーボードに対する操作者以外の者の視線を遮るように装置に形成された凹部と、前記キーボードに近接し、該キーボード部より前記凹部の奥側でかつ該凹部の側壁の影になる位置に第2の表示部とを設け」た点について 引用発明のものは、操作者以外の者の視線を遮るために、キー入力ユニット5を装置から取り外して使用することができる。 ところで、一般に他者の視線を遮るためには、その視線を遮るべき対象物の周囲に壁面を設けてこれを隠すということも普通に行われる技術である。そして、その対象物が装置前面などに配置されるような場合に、その装置前面に凹部様の窪みを設け、この凹部にその対象物を配置するということは周知の技術に属する。例えば、引用例2のものは、暗証番号が第三者から見えないように、装置の前面より窪んだ位置に表示手段を配置している。また、前置報告書に挙げられた、実願平4-34630号(実開平5-92877号)のCD-ROMのものは、暗証番号が他人から見えないように、テンキー9を装置前面の凹部20内に設けている。 そうすると、引用発明において、上記周知の技術を参照して、装置前面の適宜箇所に凹部を設け、その凹部に第三者の目から隠すべき対象であるキー入力ユニット5を配置するようにすることは格別のことではない。そしてこの場合、このキー入力ユニット5を、凹部にそのまま配置すれば、テンキー6などと近接して、そのテンキー6より凹部の奥側でかつ凹部の側壁の影になる位置にキー入力表示部9が配されることとなるのであって、このような配置とすることは設計的事項である。 (イ)本願補正発明が「前記キーボードは、第2の表示部側の端部に訂正キーと配設し」た点について 引用発明の訂正キーは、テンキー6の端部に設けられている。 一般に、訂正キーをテンキーや表示部に対してどのような位置に配するかは、全体の合理的配置関係から考えられるべきものであるが、テンキーと表示部を備えたキーボードにおいて、訂正キー或いはクリアキーの位置は各種各様である。 すると、引用発明において、そのキー入力ユニット5を凹部に配した場合に、訂正キーの操作が他のテンキーなどの操作に比して、格別隠さなければならないものであるとも考えられず、適宜位置に配置すればよいのであって、いずれにしても操作者以外の者の視線を遮るような位置として、キー入力表示部9側の端部に配置することは、当業者の設計的事項といえる。 なお、訂正キーが他のテンキーなどに比して頻繁に使用されるものではないが、仮にそうだとしても引用発明においても操作者以外の者の視線をなるべく遮ることを課題としているのだから操作者以外の者の視線にさらすような訂正キーの配置をするはずもない。 (ウ)本願補正発明が「前記第1の表示部に情報を表示するとともに、該第1の表示部の表示内容が暗証番号となった場合には、前記第2の表示部に表示を切り替える制御を行うことにより、前記第2の表示部に前記暗証番号の桁数分の記号を表示」する点について 引用発明のものは、キー入力ユニット5が取り外されたときに、CRT2からキー入力表示部9へ表示が切り替わる。この場合、取り外されたときとは、例えばCRT2の表示内容が暗証番号入力を促す画面となったときである。そして、このような表示切替えは、引用発明において、キー入力ユニット5が凹部に配された場合に暗証番号入力となった場合であっても有効であることは明かである。 ここで、引用発明において、キー入力ユニット5を取り外して暗証番号を入力した場合には、キー入力表示部9に暗証番号の数字が表示されるが、暗証番号は桁数分の記号により表示されるのが一般的であって、例えば、引用例1に、キー入力ユニット5が取り外されなかった場合として、そのような表示がなされる旨の記載がある。そして、そのような桁数分の記号で表示することの方が、実際の数字を表示することより安全性が高いことは確かであるから、凹部に隠したとしても、なお桁数分の記号で表示するとの選択は困難なく考えられることである。 (エ)本願補正発明が「顧客が前記訂正キーを押下して第2の表示部の前記記号の表示を訂正すると、前記第1の表示部に情報を表示したまま、第2の表示部の記号の表示をクリアする」点について 引用発明のものも訂正キー10を備えるが、このような訂正キーは通常、その押下によって、すでに入力された内容を訂正するためのものであって、その入力された内容に相当するものが表示されている場合には、その表示内容をクリアする機能を有するべきものである。そして引用発明において、訂正キーを押下するような状況のときには、CRT2には、暗証番号の入力を促すメッセージなどが表示されていたはずであって、このような表示内容は、訂正キーを押下した場合にもメッセージとして依然有効なものであることは明かであるから、この表示をそのまま残しておくことは、通常考えられることであって、敢えてこの表示までもクリアする理由はない。 (オ)以上、上記相違点について分説して検討したが、全体としてみても、引用発明において、本願補正発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者にとって容易想到の範囲ということができる。 そして、本願補正発明により得られる作用効果も、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成20年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項2】 汎用的な情報を表示する表示部を有し、顧客の操作により金銭取扱を行う金銭取扱装置において、 操作している顧客以外の者からは見えにくい位置に第2の表示部を設け、 前記表示部に情報を表示するとともに、表示内容が暗証番号となった場合には前記第2の表示部に表示を切り替える制御を行い、前記第2の表示部に前記暗証番号の桁数分の記号を表示することを特徴とする金銭取扱装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、前記下線部の特定事項を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)、(4)に記載したとおり、引用発明、引用例2記載の事項及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-10 |
結審通知日 | 2010-03-16 |
審決日 | 2010-03-29 |
出願番号 | 特願2000-6669(P2000-6669) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G07D)
P 1 8・ 575- Z (G07D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堅田 多恵子 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
小関 峰夫 横溝 顕範 |
発明の名称 | 金銭取扱装置 |
代理人 | 鈴木 弘一 |