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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1216788
審判番号 不服2008-29681  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-20 
確定日 2010-05-13 
事件の表示 特願2003-167716「動力出力装置及びハイブリッド型の動力出力装置、それらの制御方法並びにハイブリッド車両」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-176710〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成15年6月12日(優先日平成14年10月1日)の出願であって、平成19年10月22日付けで拒絶理由が通知され、平成19年12月27日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成20年2月20日付けで再度の拒絶理由が通知され、平成20年4月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年10月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年11月20日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年12月16日付けで明細書を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成21年10月13日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成21年12月21日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成20年12月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成20年12月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成20年12月16日付けの手続補正書による手続補正(以下、単に「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成20年4月25日付けの手続補正書により補正された)特許請求の範囲の以下のa.に示す請求項1ないし22を、b.に示す請求項1ないし21へと補正するものである。

a.本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記燃料供給停止処理が実施された後に、前記エンジンの回転を停止させる制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項2】 前記制御手段は、
前記燃料供給停止処理の開始時点を、前記エンジンの停止処理の開始時点と一致させるように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記燃料増大処理を、
前記触媒の温度に応じて実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項4】 前記制御手段は、前記燃料増大処理を、
前記触媒の温度が所定温度閾値を越える場合において実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項5】 前記制御手段は、
前記燃料供給停止処理の開始時点を、前記燃料増大処理の開始時点から2?3秒経過後とするように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項6】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に前記触媒の温度及び前記エンジンの回転数に応じて、前記燃焼室に対する前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項7】 前記制御手段は、前記燃料供給停止処理を、
前記燃料の点火の停止後、前記エンジンの回転数が所定の回転数閾値を下る場合において実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項8】 前記制御手段は、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、前記燃料供給停止処理を実施するように前記燃料制御手段を制御することを特徴とする請求項6又は7に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項9】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率が空気の比率に対して大きくなるように、少なくとも前記燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項10】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒に流入する空気量を調節する空気量調節手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の温度が所定温度閾値を越える場合、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記触媒に流入する空気量を減少させるように前記空気量調節手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項11】 前記制御手段は、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に前記燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項10に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項12】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒に流入する空気量を調節する空気量調節手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記触媒に流入する空気量を減少させるように前記空気量調節手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項13】 前記触媒上流の排気系の酸素濃度を測定又は推定する酸素濃度センサと、
前記エンジン停止時の排気系の空燃比を記憶する空燃比記憶手段と
を更に備え、
前記制御手段は、前記燃料増大処理における燃料の増大量を、前記空燃比記憶手段により記憶された前回又は過去のエンジン停止時の空燃比をフィードバック学習することによって、補正するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1乃至5、8、11、及び、12のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項14】 前記燃料増大処理における燃料の増大量が所定の上限値又は下限値を超えた場合、運転者に告知する告知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5、8、及び、11乃至13のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項15】 請求項1乃至14のいずれか一項に記載の動力出力装置において、
前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電可能であると共に駆動軸を介して駆動力を出力可能なモータジェネレータ装置を更に備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項16】 前記エンジンは間欠運転され、
前記エンジンを停止させる際は、前記間欠運転中における運転期間から休止期間への移行時点を含むことを特徴とする請求項15に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項17】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施する第1工程と、
該第1工程の後に、前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項18】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法において、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室から排出されるガスを浄化するための触媒の温度及び前記エンジンの回転数に応じて、前記燃焼室に対する前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する工程を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項19】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項20】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
触媒の温度が所定温度閾値を越える場合、前記エンジンを停止させる際に、
燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と、
該第2工程と共に、前記触媒に流入する空気量を減少させる第3工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項21】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施する第1工程と、
該第1工程の後に、前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と、
該第2工程と共に、触媒に流入する空気量を減少させる第3工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項22】 請求項15又は16に記載のハイブリッド型の動力出力装置と、
該動力出力装置が搭載される車両本体と、
該車両本体に取り付けられると共に前記駆動軸を介して出力される前記駆動力により駆動される車輪と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両。」

b.本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記燃料供給停止処理が実施された後に、前記エンジンの回転を停止させる制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項2】 前記制御手段は、
前記燃料供給停止処理の開始時点を、前記エンジンの停止処理の開始時点と一致させるように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項3】 前記制御手段は、前記燃料増大処理を、
前記触媒の温度に応じて実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項4】 前記制御手段は、前記燃料増大処理を、
前記触媒の温度が所定温度閾値を越える場合において実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項3に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項5】 前記制御手段は、
前記燃料供給停止処理の開始時点を、前記燃料増大処理の開始時点から2?3秒経過後とするように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項6】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合、前記触媒の温度に応じて、前記燃焼室に対する前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項7】 前記制御手段は、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、前記燃料供給停止処理を実施するように前記燃料制御手段を制御することを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項8】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率が空気の比率に対して大きくなるように、少なくとも前記燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項9】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒に流入する空気量を調節する空気量調節手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の温度が所定温度閾値を越える場合、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記触媒に流入する空気量を減少させるように前記空気量調節手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項10】 前記制御手段は、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に前記燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項9に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項11】 燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒に流入する空気量を調節する空気量調節手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記触媒に流入する空気量を減少させるように前記空気量調節手段を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項12】 前記触媒上流の排気系の酸素濃度を測定又は推定する酸素濃度センサと、
前記エンジン停止時の排気系の空燃比を記憶する空燃比記憶手段と
を更に備え、
前記制御手段は、前記燃料増大処理における燃料の増大量を、前記空燃比記憶手段により記憶された前回又は過去のエンジン停止時の空燃比をフィードバック学習することによって、補正するように前記燃料供給手段を制御することを特徴とする請求項1乃至5、7、10、及び、11のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項13】 前記燃料増大処理における燃料の増大量が所定の上限値又は下限値を超えた場合、運転者に告知する告知手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5、7、及び、10乃至12のいずれか一項に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項14】 請求項1乃至13のいずれか一項に記載の動力出力装置において、
前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電可能であると共に駆動軸を介して駆動力を出力可能なモータジェネレータ装置を更に備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項15】 前記エンジンは間欠運転され、
前記エンジンを停止させる際は、前記間欠運転中における運転期間から休止期間への移行時点を含むことを特徴とする請求項14に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
【請求項16】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施する第1工程と、
該第1工程の後に、前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項17】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法において、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室から排出されるガスを浄化するための触媒の温度及び前記エンジンの回転数に応じて、前記燃焼室に対する前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する工程を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項18】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項19】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
触媒の温度が所定温度閾値を越える場合、前記エンジンを停止させる際に、
燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と、
該第2工程と共に、前記触媒に流入する空気量を減少させる第3工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項20】 燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施する第1工程と、
該第1工程の後に、前記燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施する第2工程と、
該第2工程と共に、触媒に流入する空気量を減少させる第3工程と
を含むことを特徴とするエンジンの制御方法。
【請求項21】 請求項14又は15に記載のハイブリッド型の動力出力装置と、
該動力出力装置が搭載される車両本体と、
該車両本体に取り付けられると共に前記駆動軸を介して出力される前記駆動力により駆動される車輪と
を備えたことを特徴とするハイブリッド車両。」(なお、下線部は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)


2.本件補正の適否についての判断
[理由1]
2.-1 新規事項の判断
本件補正は、上記本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし5に対して、燃料増大処理を「前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に実施することを特定し、請求項6に対して、燃料供給停止処理を「前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に実施することを特定するとともに、請求項7を削除し、請求項8ないし22を請求項7ないし21に繰り上げるものである。
そして、この補正により、請求項1には、エンジンの回転数が所定値を下回ったと判定された場合に、燃料増大処理を実施するという事項が含まれることになった。
しかしながら、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には、段落【0041】に「本発明の第2動力出力装置の他の態様では、前記制御手段は、前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施した後に、前記燃料供給停止処理を実施するように前記燃料制御手段を制御する。」とは記載されているものの、エンジンの回転数が所定値を下回ったと判定された場合に、燃料増大処理を実施することまで記載されているとは認められない。
したがって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

2.-2 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
2.-3 独立特許要件の判断
本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)と、請求項18に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明2」という。)とが、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-4 引用文献
2.-4-1 引用文献1記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-120428号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a.「【0013】図1は、その排気浄化装置を概略的に示す全体図である。
【0014】図において、符号10は4気筒などの多気筒内燃機関(以下「エンジン」という)を示し、10aはその本体を示す。
【0015】吸気管12の先端に配置されたエアクリーナ(図示せず)から導入された吸気は、スロットルボディ14に収容されたスロットルバルブ16でその流量を調節されつつサージタンクおよび吸気マニホルド(共に図示せず)を経て、各気筒へ流入される。
【0016】各気筒の吸気バルブ(図示せず)の付近にはインジェクタ(燃料噴射弁)18が設けられて燃料を噴射する。噴射されて吸気と一体となった混合気は、各気筒内で図示しない点火プラグで点火されて燃焼してピストン(図示せず)を駆動する。
【0017】燃焼後の排気ガスは、排気バルブ(図示せず)および排気マニホルド(図示せず)を介して排気管22に送られる。排気管22には三元触媒機能を備えたNOx吸収材(NOx吸収触媒あるいは窒素酸化物浄化手段)24が配置される。」(段落【0013】ないし【0017】)

b.「【0025】さらに、エンジン10が搭載された車両(図示せず)のドライブシャフト(図示せず)の付近には車速センサ50が設けられ、ドライブシャフト所定回転当たり、即ち、車速Vに応じた信号を出力する。」(段落【0025】)

c.「【0033】次いで、図2フロー・チャートを参照して出願に係る装置の上記した動作を説明する。図示のプログラムは、例えばTDCごとに実行される。
【0034】以下説明すると、先ずS10において燃料供給停止(フューエルカット)条件が成立しているか否か判断する。燃料供給停止(フューエルカット)条件は、エンジン回転数NEと吸気管内絶対圧PBA(負荷)により決定される運転領域において減速運転状態のときなどに成立する。
【0035】S10で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS12に進み、リッチスパイクフラグFRS(後述)のビットが1にセットされているか判断し、否定されるときはS14に進み、リーン運転中にあるか否か判断する。
【0036】ここで、リーン運転中とは、目標空燃比が22:1付近のリーン空燃比に制御される運転状態にあることを意味する。
【0037】S14で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS16に進み、供給空燃比をリッチ空燃比にすべきか否か判断するリッチ制御実施判断を行う。
…(中略)…
【0046】図2フロー・チャートに説明に戻ると、S12で肯定されて前記したフラグFRSのビットが1にセットされていると判断されるときはS18に進み、供給空燃比をリッチ空燃比とするリッチ制御を実施する。」(段落【0033】ないし【0046】)

d.「【0068】この実施の形態にあっては、上記の如く、内燃機関(エンジン10)の排気系(排気管22)に設けられ、排気ガスの空燃比がリーンのときに排気ガス中の窒素酸化物NOxを吸収し、排気ガスの空燃比が理論空燃比あるいはリッチのときに吸収した窒素酸化物を還元する窒素酸化物浄化手段(NOx吸収材24)と、前記排気ガスの空燃比を理論空燃比あるいはリッチにする還元手段(ECU60,S10からS18,S100からS108,S200からS222)を有する内燃機関の排気浄化装置において、前記内燃機関の燃料供給停止直前に前記還元手段を、前記窒素酸化物浄化手段の温度TCATに応じて設定される時間Tr(Tro)、動作させる(S200からS222)如く構成した。」(段落【0068】)

上記a.ないしd.及び図面から、次のことが分かる。

e.フューエルカット条件のときには供給空燃比をリーン空燃比からリッチ空燃比にすることから、エンジンに供給する燃料の量を従前の状態よりも一時的に増大させる燃料増大処理を実施する制御手段を備えることが分かる。

f.車両のエンジン10やインジェクタ18等は、車両の動力出力装置を構成することが分かる。

上記a.ないしf.から、引用文献1には、次の発明が記載されている。

「エンジン10と、
インジェクタ18と、
排気管22に備えられたNOx吸収材24と、
減速運転状態等のフューエルカット条件のときに、
エンジン10に供給する燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施して空燃比をリッチにするようにインジェクタ18を制御する制御手段と
を備えた車両の動力出力装置。」(以下、「引用文献1記載の第1発明」という。)

「エンジン10を制御する制御方法であって、
減速運転状態等のフューエルカット条件のときに、
排気ガスの空燃比をリーンからリッチにする工程を含むエンジンの制御方法。」(以下、「引用文献1記載の第2発明」という。)

2.-4-2 引用文献2記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-252527号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a.「【請求項1】 点火中止信号が発せられた時の機関回転数が所定回転数以上である場合において、機関排気系に設けられた触媒中の酸素濃度を低下させる酸素濃度低下手段を具備することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】 前記酸素濃度低下手段は、機関燃焼室内へ燃料を供給する燃料供給手段を有し、前記燃焼室内での燃焼を実行することにより前記触媒中の酸素濃度を低下させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)

b.「【0007】この内燃機関の制御装置は、点火中止信号が発せられた時の機関回転数が所定値以上であると、点火及び燃料噴射が中止されても直ぐには停止せずに惰性により回転が持続し、そのままでは多量の未燃酸素により触媒中の酸素濃度が高まることになるが、この時、酸素濃度低下手段によって触媒中の酸素濃度を低下させる。」(段落【0007】)

c.「【0020】…(中略)…
ステップ103における判断が肯定されれば、ステップ106に進み、燃料噴射及び点火を実行して燃焼が開始される。この時の燃料噴射量は、今現在において燃焼室内へ供給されている吸気量に基づき決定される。
【0021】次に、ステップ107において回転センサ25により検出される今現在の機関回転数Nが所定回転数N’以上であるか否かが判断される。この判断が肯定される時には、燃料噴射及び点火を中止しても直ぐに機関停止しないためにステップ103に戻り、可燃範囲であれば燃料噴射及び点火を続行させる。スロットル弁2dは全閉であるために、燃焼を持続させても比較的早期に機関回転数Nは所定回転数N’を下回るようになり、ステップ107における判断が否定されステップ108に進む。
…(中略)…
【0023】それにより、ステップ108における判断が肯定される時には、ステップ103に戻り、可燃範囲であれば燃焼を持続させるが、ステップ108における判断が否定される時、すなわち、今現在の機関回転数Nが十分に低く、燃料噴射及び点火を中止すれば直ぐに機関停止する状態で、三元触媒コンバータ3c内の酸素濃度が十分に低くなっていれば、ステップ110に進み、燃料噴射及び点火を中止し、ステップ110において電源を遮断して終了するようになっている。このようにして、本フローチャートによれば、機関停止時における触媒劣化を低減することができる。
【0024】本フローチャートにおいて、点火中止信号が発せられた時の機関回転数が所定回転数以上で触媒温度が所定温度以上である場合に、触媒劣化の促進を防止するために、燃焼室内での燃焼を実行することによって触媒中の酸素濃度を低下させるようになっているが、…(後略)…」(段落【0020】ないし【0024】)

上記a.ないしc.から、引用文献2には、次の発明が記載されている。

「機関停止時に、機関回転数が所定回転数以上のときは燃料噴射及び点火を実行し、機関回転数が所定回転数を下回ったときに燃料噴射及び点火を中止し機関停止することによって、触媒の劣化を防止する発明。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)


2.-5 本願補正発明1について
2.-5-1 対比
本願補正発明1と引用文献1記載の第1発明とを対比すると、引用文献1記載の第1発明における「エンジン10」は、その機能からみて、本願補正発明1における「燃焼室を含むエンジン」に相当し、以下同様に、「インジェクタ18」は「前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段」に、「排気管22に備えられたNOx吸収材24」は「前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の第1発明における「減速運転状態等のフューエルカット条件のとき」は、本願補正発明1における「前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」と、「燃料カット制御を行う場合」の点に限り相当する。
引用文献1記載の第1発明における「車両の動力出力装置」は、本願補正発明1における「ハイブリッド型の動力出力装置」と、「動力出力装置」の点に限り相当する。

よって、本願補正発明と引用文献1記載の第1発明とは、
「燃焼室を含むエンジンと、
燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
燃料カット制御を行う際に、
燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施するように燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えた動力出力装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明1では、「前記エンジンを間欠運転させる場合、前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンのアイドル運転状態から前記エンジンを停止させる際に前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に、燃料増大処理を実施した後に、「当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記燃料供給停止処理が実施された後に、前記エンジンの回転を停止させる」のに対し、引用文献1記載の第1発明では、減速運転状態等のフューエルカット条件のときに、燃料増大処理のみを実施する点(以下、「相違点1」という。)。

相違点2
動力出力装置が、本願補正発明1では、「ハイブリッド型の動力出力装置」であるのに対し、引用文献1記載の第1発明では、「車両の動力出力装置」である点(以下、「相違点2」という。)。

2.-5-2 判断
(1)相違点1について検討する。
引用文献2記載の発明における「機関停止時」は、本願補正発明1における「エンジンを停止させる際」に相当し、以下同様に、「機関回転数が所定回転数を下回ったときに」は「前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に、「燃料噴射及び点火を中止し機関停止する」は「当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記燃料供給停止処理が実施された後に、前記エンジンの回転を停止させる」に、それぞれ相当する。
一方、燃料カット制御時に空燃比をリッチ状態とすることによって触媒の劣化が防止されることは周知の事項(以下、「周知の事項1」という。例えば、特開平6-207546号公報の段落【0003】、【0006】及び【0016】を参照。)であり、引用文献1記載の第1発明でも当然に「触媒の劣化を防止する制御」という作用があることは明らかである。また、エンジンを間欠運転させる場合、エンジンのアイドル運転状態からエンジンを停止させる際に燃料カット制御を行うことも周知(以下、「周知の事項2」という。)である。
引用文献1記載の第1発明において、エンジンを間欠運転させる場合、エンジンのアイドル運転状態からエンジンを停止させる際に燃料カット制御を行うとともに、触媒の劣化防止のために引用文献2記載の発明を適用することは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。そしてその際に、エンジンの回転数が所定値を下回った後に、燃料増大処理、燃料供給停止処理、エンジンの回転停止の順序となるように制御を行い、相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

(2)相違点2について検討する。
車両の動力出力装置として、エンジンのみを備えたものとハイブリッド型のものとはともに周知(以下、「周知の事項3」という。)であり、引用文献1記載の第1発明において、動力出力装置をハイブリッド型のものとすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(3)そして、本願補正発明1を全体としてみても、本願補正発明1の奏する効果は、引用文献1記載の第1発明及び引用文献2記載の発明並びに周知の事項1ないし3から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

(4)よって、本願補正発明1は、引用文献1記載の第1発明及び引用文献2記載の発明並びに周知の事項1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

2.-6 本願補正発明2について
2.-6-1 対比
本願補正発明2と引用文献1記載の第2発明とを対比すると、引用文献1記載の第2発明における「エンジン10」は、その機能からみて、本願補正発明1における「燃焼室を含むエンジン」に相当し、同様に、「排気ガスの空燃比をリーンからリッチにする工程」は「前記触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程」に相当する。
また、引用文献1記載の第2発明における「減速運転状態等のフューエルカット条件のときに」は、本願補正発明2における「前記エンジンを停止させる際に」と、「燃料カット制御を行う際に」の点に限り相当する。

よって、本願補正発明2と引用文献1記載の第2発明とは、
「燃焼室を含むエンジンを制御する制御方法であって、
燃料カット制御を行う際に、触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程を含むエンジンの制御方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点3
触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程を、本願補正発明2では「エンジンを停止させる際に」行うのに対し、引用文献1記載の第2発明では「減速運転状態等のフューエルカット条件のときに」行う点(以下、「相違点3」という。)

2.-6-2 判断
上記相違点3について検討する。
燃料カット制御は、減速運転状態の際のみならず、エンジンを停止させる際にも行うことは周知の事項(以下、「周知の事項4」という。)であり、引用文献1記載の第2発明において、エンジン停止の際にも「触媒の周囲の雰囲気における燃料の比率を空気の比率に対して大きくする工程」を行うことによって、相違点3に係る本願補正発明2の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

そして、本願補正発明2を全体としてみても、本願補正発明2の奏する効果は、引用文献1記載の第2発明及び周知の事項4から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

よって、本願補正発明2は、引用文献1記載の第2発明及び周知の事項4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

2.-7 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.結論
よって、[理由1]又は[理由2]により、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成20年12月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と、請求項19に係る発明(以下、「本願発明2」という。)とは、上記第2.[理由]1.a.の請求項1及び19に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用文献記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-120428号公報(引用文献1)には、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-4-1に記載したとおりの発明(引用文献1記載の第1発明及び引用文献1記載の第2発明)が記載されている。
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-252527号公報(引用文献2)には、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-4-2に記載したとおりの発明(引用文献2記載の発明)が記載されている。

3.本願発明1についての対比及び判断
本願発明1は、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-5で検討した本願補正発明1における発明特定事項から、燃料増大処理を「前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に実施するという事項を削除して、本願補正発明1を上位概念化したものである。
したがって、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-5で検討したとおり、本願発明1の発明特定事項をすべて含む本願補正発明1が引用文献1記載の第1発明及び引用文献2記載の発明並びに周知の事項1ないし3に基づいて当業者が格別の創意を要することなく想到できたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が格別の創意を要することなく想到できたものである。

4.本願発明2についての対比及び判断
本願発明2は、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-6で検討した本願補正発明2と同じである。
したがって、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-6で検討したとおり、本願補正発明2が引用文献1記載の第2発明及び周知の事項4に基づいて、当業者が格別の創意を要することなく想到できたものであるから、本願発明2も同様の理由により当業者が格別の創意を要することなく想到できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献1記載の第1発明、引用文献2記載の発明、並びに周知の事項1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本願発明2は、引用文献1記載の第2発明及び周知の事項4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。


第4.付記
なお、平成21年12月21日付けの回答書において請求人は、補正案を提示しているので、念のために検討する。

1.当該補正案における請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正案の発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
燃焼室を含むエンジンと、
前記燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
前記燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施するように前記燃料供給手段を制御し、且つ、前記エンジンを停止させるには当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合に実施するように前記燃料供給手段を制御し前記エンジンの回転を停止させる制御手段と
を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。」

2.対比
本願補正案の発明と引用文献1記載の第1発明とは、
「燃焼室を含むエンジンと、
燃焼室内に燃料を供給するための燃料供給手段と、
燃焼室から排出されるガスを触媒によって浄化する排気浄化手段と、
燃料カット制御を行う際に、
燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施するように燃料供給手段を制御する制御手段と
を備えた動力出力装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1’
本願補正案の発明では、「前記触媒の劣化を防止する制御として、前記エンジンを停止させる際に、前記燃焼室内の燃料の量を従前の状態よりも増大させる燃料増大処理を実施するように前記燃料供給手段を制御し、且つ、前記エンジンを停止させるには当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合に実施するように前記燃料供給手段を制御し前記エンジンの回転を停止させる」のに対し、引用文献1記載の第1発明では、減速運転状態等のフューエルカット条件のときに、燃料増大処理のみを実施する点(以下、「相違点1’」という。)。

相違点2
動力出力装置が、本願発明1では、「ハイブリッド型の動力出力装置」であるのに対し、引用文献1記載の第1発明では、「車両の動力出力装置」である点(相違点2)。

3.判断
(1)相違点1’について検討する。
引用文献2記載の発明における「機関停止時」は、本願補正案の発明における「エンジンを停止させる際」に相当し、以下同様に、「機関回転数が所定回転数を下回ったときに」は「前記エンジンの回転数が所定値を下回った場合」に、「燃料噴射及び点火を中止し機関停止する」は「当該燃料の供給を停止させる燃料供給停止処理を実施するように前記燃料供給手段を制御すると共に、前記燃料供給停止処理が実施された後に、前記エンジンの回転を停止させる」に、それぞれ相当する。
一方、燃料カット制御時に空燃比をリッチ状態とすることによって触媒の劣化が防止されることは周知の事項(周知の事項1)であり、引用文献1記載の第1発明でも当然に「触媒の劣化を防止する制御」という作用があることは明らかである。また、エンジンを停止させる際に燃料カット制御を行うことも周知(以下、「周知の事項2’」という。)である。
引用文献1記載の第1発明において、燃料カット制御をエンジンを停止させる際にも行うとともに、触媒の劣化防止のために引用文献2記載の発明を適用することによって、相違点1’に係る本願補正案の発明の発明特定事項とすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(2)相違点2について検討する。
車両の動力出力装置として、エンジンのみを備えたものとハイブリッド型のものとはともに周知(周知の事項3)であり、引用文献1記載の第1発明において、動力出力装置をハイブリッド型のものとすることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

(3)そして、本願補正案の発明を全体としてみても、本願補正案の発明の奏する効果は、引用文献1記載の第1発明及び引用文献2記載の発明並びに周知の事項1、2’及び3から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

(4)よって、本願補正案の発明は、引用文献1記載の第1発明及び引用文献2記載の発明並びに周知の事項1、2’及び3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2010-03-10 
結審通知日 2010-03-16 
審決日 2010-03-30 
出願番号 特願2003-167716(P2003-167716)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
P 1 8・ 561- Z (F02D)
P 1 8・ 575- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 寺川 ゆりか畔津 圭介  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 金澤 俊郎
西山 真二
発明の名称 動力出力装置及びハイブリッド型の動力出力装置、それらの制御方法並びにハイブリッド車両  
代理人 江上 達夫  

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