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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1216906
審判番号 不服2007-28241  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-16 
確定日 2010-05-21 
事件の表示 特願2001-384003「誤り測定装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 4日出願公開、特開2003-188861〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
1.手続の経緯と本願発明
本願は、平成13年12月18日の出願であって、平成18年6月6日付けで拒絶理由が通知され、同年9月5日付けで手続補正がされ、平成19年1月26日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月28日付けで手続補正がされ、同年7月13日付けで前記3月28日付けの手続補正の却下の決定がされるとともに、拒絶査定され、同年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされたものである。
なお、平成19年7月13日付けの補正却下の決定に対して不服の主張はされていない。

第2.補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年10月16日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の平成18年9月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された

「受信する被測定信号を2値化する手段と、
受信するクロック信号を2値化する手段と、
2値化された前記クロック信号に応答して基準信号を生成する手段と、
前記基準信号と前記2値化された被測定信号と前記2値化されたクロック信号が入力される誤り検出手段と、
前記誤り検出手段に入力される前記基準信号と前記2値化被測定信号と前記2値化クロック信号を測定者へ提供する手段と、
を備えることを特徴とする誤り測定装置。」
という発明(以下、「本願発明」という)を、

「受信する被測定信号を2値化する手段と、
受信するクロック信号を2値化する手段と、
2値化された前記クロック信号に応答して基準信号を生成する手段と、
前記基準信号と前記2値化された被測定信号と前記2値化されたクロック信号が入力される誤り検出手段と、
前記誤り検出手段に入力される前記2値化被測定信号および前記2値化クロック信号および前記基準信号を出力する端子と、
を備えることを特徴とする誤り測定装置。」
という発明(以下、「補正後発明」という。)に補正することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において、
本願発明に記載された「前記誤り検出手段に入力される前記基準信号と前記2値化被測定信号と前記2値化クロック信号を測定者へ提供する手段」について、「前記基準信号と前記2値化被測定信号と前記2値化クロック信号を測定者へ提供する手段」を「前記2値化被測定信号および前記2値化クロック信号および前記基準信号を出力する端子」と限定して、
特許請求の範囲を減縮するものであり、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(3-1)補正後発明
上記「1.本願発明と補正後発明」の項で「補正後発明」として認定したとおりである。

(3-2)引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-287081号公報(以下、「引用例」という。)には、「ディジタル信号解析装置」として図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「参照電圧発生器3の参照電圧や可変遅延器5の遅延量の調整は、例えば次のようにして装置の操作者が手動で調整を行っていた。
(1)被測定データ信号と参照電圧を2現象オシロスコープに表示させ、参照電圧を被測定データ信号の振幅の中央に位置するように参照電圧発生器3を調整する。
(2)識別器6に加わる信号6aとクロック信号6bを2現象オシロスコープに表示させ、クロック信号6bが信号6aの遷移点間のほぼ中央に位置するように可変遅延器5を調整する。
(3)表示器に表示された誤り率が最小になるように、参照電圧発生器3と可変遅延器5とを交互に調整する。」
(第2頁右下欄10行?第3頁左上欄3行)

ロ.「(ニ)前記(ハ)で説明した信号のプロービングによる影響を防止するために、モニタ端子を設けてもよいが、出力端子やバッファ回路の増設による価格の上昇を引き起こす。」
(第3頁左上欄17行?20行)

ハ.「第1図は本発明のディジタル信号解析装置、特に誤り率測定装置の構成を示すブロック図である。第1図を用いて本発明の一実施例を誤り率測定装置の例で説明する。
ディジタル信号解析装置には、クロック信号とそのクロック信号に同期して生成される被測定データ信号が同時に与えられる。入力端子11に印加される被測定データ信号はコンパレータ13に導かれる。参照電圧発生器14は、制御器18からの制御信号によって、電圧が連続的又は段階的に変化する参照電圧を発生し、その参照電圧をコンパレータ13へ送出する。参照電圧発生器14が例えばD/A変換器であれば、制御器18からの制御信号によって段階的に電圧が変化する参照電圧を発生する。コンパレータ13は、参照電圧発生器14から与えられる参照電圧に基づいて被測定データ信号の波形を整形し、その出力信号である信号Aをピーク検波器17及び識別器16へ送出する。一方、入力端子12に印加されるクロック信号は可変遅延器15に導かれる。可変遅延器15は、制御器18からの制御信号によって、クロック信号の位相を連続的又は段階的に変化させ、その出力であるクロック信号Bを識別器16、基準データ発生器24及びクロックカウンタ25へそれぞれ送出する。」
(第3頁右上欄19行?右下欄2行)

ニ.「識別器16は、例えばDタイプのフリップフロップで、データ入力端子(以下、「D入力端子」という。)及びクロック入力端子(以下、「CP入力入力端」という。)を有している。信号Aは識別器16のD入力端子に、またクロック信号Bは識別器16のCP人カ端子に加えられる。識別器16は、クロック信号Bに基づいて信号Aを識別し、その出力信号である信号Cを符号比較器21へ送出する。ピーク検波器17は、信号Aをピーク検波し、信号Aの波高値に関連した信号をA/D変換器19へ送出する。A/D変換器19はその信号をディジタルデータに変換して制御器18へ送出する。基準データ発生器24は、クロック信号Bを受領して、被測定データ信号のパターンと同一のパターン構成を有する基準データ信号を発生し、その出力信号を符号比較器21へ送出する。符号比較器21は、信号Cと基準データ発生器24からの基準データ信号とを各ビットごとに比較し、差違がある場合は誤りパルスをパルスカウンタ22へ送出する。」
(第3頁右下欄11行?第4頁左上欄10行)

ホ.「第2図はコンパレータ13に人力される被測定データ信号の波形(第2図(a))とコンパレータ13の出力信号である信号Aの波形(第2図(b)?(f))とを参照電圧に対応させて表した図である。なお、第2図(a)は、被測定データ信号のハイレベルとロウレベルのところにノイズ、またハイレベルとロウレベル間の遷移点にはジッタが重畳された波形をアイパターン形式で示している。可変遅延器15の遅延量は、制御器18からの制御信号により、可変可能な範囲の任意の値又はそのほぼ中央値に設定しておく。制御器18からの制御信号により、参照電圧発生器14が発生する参照電圧を最小(VL)から最大(VH)まで所定のステップで変化させる。参照電圧が被測定データ信号のロウレベルより低い場ときは(VL)、信号Aは第2図(b)に示すようにハイレベルの直流電圧しか出力されない。次に、参照電圧を被測定データ信号のロウレベルより高くしたとき(Va)、コンパレータ13の出力には交流成分が現われるが、所望の振幅より小さい(第2図(c))。そして、参照電圧が被測定データ信号の中央付近(V1)になると、第2図(d)に示すようにコンパレータ13の出力の振幅が最大となる。さらに参照電圧を高くしてゆくと、コンパレータ13の出力は第2図(e)及び(f)のように変化し、その振幅は小さくなる。」
(第4頁右上欄11行?左下欄15行)

上記引用例の記載及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると、
(1)引用例記載の「誤り率測定装置」は、例えば上記ハ.及び引用例第1図にあるように、「入力端子11」により受信する「被測定データ信号」を入力される「コンパレータ13」を有しており、ここで「コンパレータ13」は、例えば引用例第2図(d)で示されるように「被測定データ信号」を2値化しており、
(2)同様に「入力端子12」により受信する「クロック信号」は、引用例第4図に示されるように、もともと2値化されており、
(3)上記ニ.にあるように、「基準データ発生器24」は「クロック信号」に応答して「基準データ信号」を生成し、
(4)「識別器16」と「符号比較器21」とからなる回路は、全体として「基準データ信号」と「被測定データ信号」と「クロック信号」とを入力しており、「被測定データ信号」と「基準データ信号」との間に差違がある場合に誤りパルスを出力するものであるから誤り検出手段といえるものである。

したがって、上記(1)?(4)からして、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。

「受信する被測定データ信号を2値化するコンパレータ13と、
2値化されたクロック信号に応答して基準データ信号を生成する基準データ発生器24と、
前記基準データ信号と前記2値化された被測定データ信号と前記2値化されたクロック信号が入力される誤り検出手段と、
を備える誤り率測定装置。」

(3-3)対比
補正後発明と引用発明とを対比するに、
引用発明の「被測定データ信号」、「受信する被測定データ信号を2値化するコンパレータ13」は、補正後発明の「被測定信号」、「受信する被測定信号を2値化する手段」に相当し、
引用発明の「基準データ信号」、「基準データ信号を生成する基準データ発生器24」は、補正後発明の「基準信号」、「基準信号を生成する手段」に相当し、
引用発明の「誤り率測定装置」は、誤りの一特性である「誤り率」を測定するものであるから、補正後発明の「誤り測定装置」に相当する。

したがって、補正後発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「受信する被測定信号を2値化する手段と、
2値化されたクロック信号に応答して基準信号を発生する手段と、
前記基準信号と前記2値化された被測定信号と前記2値化されたクロック信号が入力される誤り検出手段と、
を備える誤り測定装置。」

(相違点1)
補正後発明は「受信するクロック信号を2値化する手段」を備えるのに対して、引用発明では不明な点。

(相違点2)
補正後発明は「前記誤り検出手段に入力される前記2値化被測定信号および前記2値化クロック信号および前記基準信号を出力する端子」を備えるのに対して、引用発明では不明な点。

(3-4)当審の判断
そこで、まず、上記相違点1について検討すると、引用例記載の誤り測定装置は、第4図に示されるように、クロック信号としてもともと2値化された信号を入力されるものであるから、入力されるクロック信号の必要とされる精度に応じてクロック信号を2値化する手段を設ける程度のことは、当業者が適宜なし得るものである。
次に、上記相違点2について検討すると、そもそも電子機器一般において、調整や故障診断等のため、内部各部の信号を出力する端子を予め設ける程度のことは通常に行われる慣用手段にすぎず、誤り測定装置において、ビット単位での誤り位置情報等の測定のために基準信号を観測することも、例えば原審の拒絶理由通知でも引用している特開2001-111531号公報に示されるように周知技術であるから、引用発明において基準信号ほかを観測することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。また、引用例記載の誤り測定装置は、上記イ.に示されるように、オシロスコープ等の外部機器での観測を可能とするものであり、上記ロ.に示されるように、観測に必要な端子を設けてもよい旨が記載されていることから、引用発明において観測が必要な信号を出力する端子を備える構成を採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、補正後発明の作用・効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後発明は引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年10月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で、「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(3-2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-21 
結審通知日 2009-12-22 
審決日 2010-01-06 
出願番号 特願2001-384003(P2001-384003)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小曳 満昭谷岡 佳彦  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 石井 研一
高野 洋
発明の名称 誤り測定装置  
代理人 加藤 公久  

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