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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F22B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F22B
管理番号 1216911
審判番号 不服2008-3470  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2010-05-21 
事件の表示 特願2000-82714号「横型排熱回収ボイラ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月26日出願公開、特開2001-263602号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年3月23日の出願であって 、平成20年1月10日付けで拒絶査定がなされ(発送:1月16日)、これに対し、同年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年3月10日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年3月10日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年3月10日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の請求項1に記載された発明
平成20年3月10日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「【請求項1】 前方から排ガスが供給されて略水平方向に排ガスが流れて後方から排出される排ガス流路を形成する横長形状のケーシング(10)からなり、該ケーシング(10)内に熱交換器を配置し、前記ケーシング(10)に配管、ケーブルを含む付属機器・設備(5)を配置した横型排熱回収ボイラにおいて、
前記ケーシング(10)に配置した配管、ケーブルを含む付属機器・設備(5)と運転員の点検時の床、歩廊を含む架構(6)を、上面を除いて一方の側面の外側にのみ設置し、他方の側面には前記熱交換器のパネル(7)を取り出す開口部及び仮設モノレール(8)を上面より低い位置に設置可能にしたことを特徴とする横型排熱回収ボイラ。」

本件補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「付属機器・設備」に関して「配管、ケーブルを含む」との限定を付加し、「横型排熱回収ボイラ(の構成要素)」に関して「運転員の点検時の床、歩廊を含む架構」との限定を付加するとともに、「付属機器・設備」と「運転員の点検時の床、歩廊を含む架構」に関して「上面を除いて一方の側面の外側にのみ設置し」との限定を付加するもので、本件補正に係る事項は、新規事項を含むものでなく、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることが出来るものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2.引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶理由において引用された刊行物である実願昭60-179029号(実開昭62-88108号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「 本考案は、ガスタービン装置から排出される燃焼ガスを熱源として、他の蒸気原動機の駆動蒸気を発生する排熱回収ボイラにかかわり、」(明細書第1頁第15行?第17行)

イ.「ここで排熱回収ボイラ20はケーシング本体30内に過熱器21、蒸発器22、節炭器23とがガスの流れ方向から順に設置され」(明細書第2頁第9行?第11行)

ウ.「第2図は過熱器、蒸発器、節炭器それぞれのチユーブ(伝熱管)をボイラ本体より分解する際の要領図を示す。
第3図は過熱器21、蒸発器22,節炭器23それぞれのチユーブ(伝熱管)をボイラ本体より切り離し後スライドレール53及びガイド54を伝熱管下部管寄21b?23b支持材52の上に取付し、ボイラ本体の外部に搬出できるよう取付けた要領図を示す。」(明細書第5頁第11行?第19行)

エ.第2図には、ケーシング本体30の一側面に(明示はされていないが)過熱器21、蒸発器22,節炭器23のチユーブを搬出する開口部が設けられ、該開口部及び搬出用のスライドレール53をケーシング本体30の上面より低い位置に設置可能としたことが図示されている。

オ.第5図には、前方からガスタービン装置から排出される燃焼ガスが供給されて略水平方向に該ガスが流れて後方から排出される排ガス流路を形成する横長形状のケーシング本体30からなり、該ケーシング本体30内に過熱器21、蒸発器22,節炭器23を配置した横型排熱回収ボイラが図示されている。

以上を総合すると、引用刊行物には、「前方からガスタービン装置から排出される燃焼ガスが供給されて略水平方向に該ガスが流れて後方から排出される排ガス流路を形成する横長形状のケーシング本体からなり、該ケーシング本体内に過熱器、蒸発器、節炭器を配置した横型排熱回収ボイラにおいて、
前記ケーシング本体の一側面に過熱器、蒸発器,節炭器のチユーブを搬出する開口部が設けられると共に、該開口部及び搬出用のスライドレールをケーシング本体の上面より低い位置に設置可能とした横型排熱回収ボイラ。」の発明 (以下、「引用刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、原査定において周知技術文献として、提示された特開平8-86404号公報には、以下の事項が記載されている。

カ.「ボイラーの周囲を覆うケーシングにおいて、ボイラー上部のケーシングを複数に分割し、一方はケーシング本体に固定し、煙突、蒸気管などの配管類は固定したケーシングに設けた穴によってケーシングを貫通するように設けておき、他方の上部ケーシングには配管を貫通させず、取り外しを可能にしたことを特徴とするボイラー用ケーシング。」(【請求項2】)

キ.「また、上部のケーシングは、ボイラー上部に設けた配管がケーシングを貫通している場合には容易に取り外すことができず、ボイラー上部に設けられている部品の修理は非常に困難であった。」(段落【0003】)

3.発明の対比
本願補正発明と引用刊行物記載の発明を対比するに、引用刊行物記載の発明の「ガスタービン装置から排出される燃焼ガス」、「ケーシング本体」、「過熱器、蒸発器、節炭器」、「過熱器、蒸発器,節炭器のチユーブ」は、本願補正発明の「排ガス」、「ケーシング」、「熱交換器」、「熱交換器のパネル」に各々相当する。
また、引用刊行物記載の発明の「スライドレール」も 本願補正発明の「仮設モノレール」も、ともに仮設の搬出手段ということができる。

よって、両者の一致点、相違点は、次のとおりである。

(一致点)
前方から排ガスが供給されて略水平方向に排ガスが流れて後方から排出される排ガス流路を形成する横長形状のケーシングからなり、該ケーシング内に熱交換器を配置した横型排熱回収ボイラにおいて、
前記ケーシングの一側面に前記熱交換器のパネルを取り出す開口部及び仮設の搬出手段を上面より低い位置に設置可能にした横型排熱回収ボイラ。

(相違点1)
本願補正発明では、配管、ケーブルを含む付属機器・設備とケーシングに設けられた運転員の点検時の床、歩廊を含む架構とを、上面を除いてケーシングの熱交換器のパネルを取り出す開口部の設置される側面と対向する側面(開口部を設けるケーシング側面を他方の側面と規定した場合一方の側面)の外側にのみ設置されているのに対し、引用刊行物記載の発明においてはこれらの点が不明な点。

(相違点2)
本願補正発明では、仮設の搬出手段が「仮設モノレール」であるのに対し、引用刊行物記載の発明においては「スライドレール」である点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点1、2につき検討する。

(相違点1について)
横型排熱回収ボイラにおいて、付属機器・設備と運転員の点検時の床、歩廊を含む架構とを、ケーシングの外側に設置することは本願明細書段落【0005】、【0006】に従来例として記載され、また、特開平9-329303号公報にも記載(特に、段落【0014】の作業用、監視用の床36に関する記載、段落【0027】の記載参照)されているように従来より広く採用されている周知の技術手段であり、引用刊行物記載の発明において前記周知の技術手段を適用し、配管、ケーブルを含む付属機器・設備とケーシングに設けられた運転員の点検時の床、歩廊を含む架構とを、ケーシングの外側に設置することに格別な困難性は認められない。
また、本願補正発明では「付属機器・設備と架構を上面を除いてケーシングの熱交換器のパネルを取り出す開口部の設置される側面と対向する側面(開口部を設けるケーシング側面を他方の側面と規定した場合一方の側面)の外側にのみ設置する」、換言すると、「ケーシングの開口部を設置する側面部分の外側には付属機器・設備と架構を設置しない」と特定しているが、外側に一体的に構造物が設けられているケーシング部位に開口部を設置するには該構造物の除去等が必要となり、作業効率が損なわれることは、本願出願前から当業者の技術常識である(必用であれば、摘記事項カ、キ参照)。
従って、引用刊行物記載の発明において、付属機器・設備と架構のケーシング外側への設置に際し、「ケーシングの開口部を設置する側面部分の外側には付属機器・設備と架構を設置しない」こと、即ち 「付属機器・設備と架構を上面を除いてケーシングの熱交換器のパネルを取り出す開口部の設置される側面と対向する側面(開口部を設けるケーシング側面を他方の側面と規定した場合一方の側面)の外側にのみ設置する」ことは、開口部を設置する作業効率を考慮して、当業者が、容易に想到し得た事項である。

(相違点2について)
プラント機器内部より重量物を搬出するに仮設モノレールを用いることは、本願明細書段落【0006】に従来例として記載され、また、特開平2-31192号公報にも記載されている周知の技術手段であり、引用刊行物記載の発明において「スライドレール」に代えて「仮設モノレール」を用いた点は、当業者が、適宜選択すべき設計的事項である。

また、本願補正発明により得られる効果も、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段から、技術常識を参酌することによって、当業者であれば、予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.結び
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成19年11月28日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】 前方から排ガスが供給されて略水平方向に排ガスが流れて後方から排出される排ガス流路を形成する横長形状のケーシングからなり、該ケーシング内に熱交換器を配置し、前記ケーシングの側面及び上面に付属機器・設備を配置した横型排熱回収ボイラにおいて、
前記ケーシングの側面及び上面に配置した付属機器・設備を、上面を除いて一方の側面にのみ設置し、他方の側面には前記熱交換器を取り出す開口部及び仮設モノレールを上面より低い位置に設置可能にしたことを特徴とする横型排熱回収ボイラ。」

2.引用刊行物とその記載事項
原査定で引用された引用刊行物とその記載事項は、前記の「第2.2」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明から「付属機器・設備」に関して「配管、ケーブルを含む」との限定を削除し、「横型排熱回収ボイラ(の構成要素)」に関して「運転員の点検時の床、歩廊を含む架構」との限定を削除するとともに、「付属機器・設備」と「運転員の点検時の床、歩廊を含む架構」に関して「上面を除いて一方の側面の外側にのみ設置し」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.4」に記載したとおり、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.結び
以上のとおり、本願発明は引用刊行物記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-18 
結審通知日 2010-03-24 
審決日 2010-04-06 
出願番号 特願2000-82714(P2000-82714)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F22B)
P 1 8・ 121- Z (F22B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
前田 仁
発明の名称 横型排熱回収ボイラ  
代理人 松永 孝義  

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