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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N |
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管理番号 | 1216981 |
審判番号 | 不服2008-3321 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-02-13 |
確定日 | 2010-05-17 |
事件の表示 | 特願2002-553096「複数の種類の腐食を検出するための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 4日国際公開、WO02/52247、平成16年 7月29日国内公表、特表2004-522948〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成13年12月18日(パリ条約による優先権主張2000年12月22日,米国)の出願であって,平成19年11月12日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,平成20年2月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明は,平成16年12月8日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであると認められ,その請求項1に係る発明は次のとおりである。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】 腐食環境に置かれた腐食性金属物品の腐食状態を検出するための方法であって, a)腐食環境中に腐食センサ8を設置するステップであって,腐食センサ8が, i)腐食性金属物品の金属と実質的に同じ金属からなる金属プローブ2と, ii)前記プローブに取り付けられた,プローブを通して超音波信号または無線周波数信号を発信し,かつ,受信することができる変換器要素4とを備えたステップと, b)金属プローブ2を通して変換器要素4から超音波信号または無線周波数信号を発信するステップと, c)金属プローブ2の腐食した領域で反射した,金属プローブの腐食状態を表す反射超音波信号または無線周波数信号を変換器要素4で受信し,かつ,反射超音波信号または無線周波数信号に対する電気応答信号を発生するステップとを含む方法。」 第3 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願の優先権主張の日前に頒布された特開昭61-28841号公報(以下「刊行物1」という。)及び特開2000-304684号公報(以下「刊行物2」という。)には,図面と共に次の事項が記載されている。 <刊行物1> (1-ア) 「3.発明の詳細な説明 (産業上の利用分野) 本発明は腐食試験装置,摩耗試験装置,金属材料の消耗を連続的に検出し,あわせて腐食モニタリング装置に関するものである。」(1頁左下欄11?15行) (1-イ) 「腐食試験片を腐食液に浸す。その下端は腐食環境形成容器中に入れられて腐食物質と接触している。又腐食の環境は腐食環境コントロール装置により温度,ガス組成,湿度等の条件を一定あるいは実環境に合わせて制御される。また試験片の下端に腐食を発生させてその変化は試験片上端に取付けられた超音波トランスデューサから入射した超音波の腐食面での反射波を捉えることにより検知する。超音波発信受信トランスデューサ1で受信した反射超音波エコーは反射エコー表示装置6で反射エコー音圧,腐食面の凹凸状態,減肉等の情報が表示され,記録装置により時間的変化等を自動的に記録する。」(1頁右下欄12行?2頁左上欄3行) これらの記載事項と図面を総合すると,刊行物1には,以下の発明が記載されていると認められる。 「金属材料の消耗を連続的に検出し,あわせて腐食モニタリングする方法であって,腐食試験片の下端を腐食環境形成容器中に入れ腐食物質と接触し,前記試験片の下端に発生した腐食の変化は,前記試験片上端に取付けられた超音波発信受信トランスデューサ1から入射した超音波の腐食面での反射波を捉えることにより検知し,超音波発信受信トランスデューサ1で受信した反射超音波エコーは反射エコー表示装置6で反射エコー音圧,腐食面の凹凸状態,減肉等の情報が表示され,記録装置により時間的変化等を自動的に記録する方法。」(以下「引用発明」という。) <刊行物2> (2-ア) 「【0010】 【課題を解決するための手段】 本発明の腐食モニタリング用センサは,水系媒体に接する金属の腐食モニタリング用センサであって,該金属と同材料の材質からなり,溶接部,すきま部及び伝熱部を有するモニタリング部と,該モニタリング部を固定設置するための固定部とを備えたことを特徴とするものである。」 第4 本願発明と引用発明との対比 1 その機能・構成からみて,引用発明の「金属材料の消耗を連続的に検出し,あわせて腐食モニタリングする方法であって」と本願発明の「腐食環境に置かれた腐食性金属物品の腐食状態を検出するための方法であって」は,「腐食性金属物品の腐食状態を検出するための方法であって」という点で共通する。 2 引用発明の「腐食環境形成容器中」,「超音波発信受信トランスデューサ1」が,それぞれ,本願発明の「腐食環境中」,「変換器要素4」に相当することは明らかである。また,引用発明の「腐食試験片」は「金属材料の消耗を連続的に検出し,あせて腐食モニタリングする方法」に用いられることから「金属材料」であることは明らかであり,本願発明の「金属プローブ2」に相当するといえる。そうすると,引用発明の「腐食試験片の下端を腐食環境形成容器中に入れ腐食物質と接触し,前記試験片の下端に発生した腐食の変化は,前記試験片上端に取付けられた超音波発信受信トランスデューサ1から入射した超音波の腐食面での反射波を捉えることにより検知し,超音波発信受信トランスデューサ1で受信した反射超音波エコー」と本願発明の「a)腐食環境中に腐食センサ8を設置するステップであって,腐食センサ8が,i)腐食性金属物品の金属と実質的に同じ金属からなる金属プローブ2と,ii)前記プローブに取り付けられた,プローブを通して超音波信号または無線周波数信号を発信し,かつ,受信することができる変換器要素4とを備えたステップと,b)金属プローブ2を通して変換器要素4から超音波信号または無線周波数信号を発信するステップと,c)金属プローブ2の腐食した領域で反射した,金属プローブの腐食状態を表す反射超音波信号または無線周波数信号を変換器要素4で受信し,」は「a)腐食環境中に腐食センサ8を設置するステップであって,腐食センサ8が,i)金属プローブ2と,ii)前記プローブに取り付けられた,プローブを通して超音波信号または無線周波数信号を発信し,かつ,受信することができる変換器要素4とを備えたステップと,b)金属プローブ2を通して変換器要素4から超音波信号または無線周波数信号を発信するステップと,c)金属プローブ2の腐食した領域で反射した,金属プローブの腐食状態を表す反射超音波信号または無線周波数信号を変換器要素4で受信し」ている点で共通する。 3 引用発明は「超音波発信受信トランスデューサ1で受信した反射超音波エコーは反射エコー表示装置6で反射エコー音圧,腐食面の凹凸状態,減肉等の情報が表示され」ることから,「反射超音波信号または無線周波数信号に対する電気応答信号を発生」していることは明らかである。 そうすると,両者は, (一致点) 「腐食性金属物品の腐食状態を検出するための方法であって, a)腐食環境中に腐食センサ8を設置するステップであって,腐食センサ8が, i)金属プローブ2と, ii)前記プローブに取り付けられた,プローブを通して超音波信号または無線周波数信号を発信し,かつ,受信することができる変換器要素4とを備えたステップと, b)金属プローブ2を通して変換器要素4から超音波信号または無線周波数信号を発信するステップと, c)金属プローブ2の腐食した領域で反射した,金属プローブの腐食状態を表す反射超音波信号または無線周波数信号を変換器要素4で受信し,かつ,反射超音波信号または無線周波数信号に対する電気応答信号を発生するステップとを含む方法。」 である点で一致し,以下の点で相違するといえる。 (相違点) 本願発明は「腐食環境に置かれた腐食性金属物品」の腐食状態を検出するための方法でり,金属プローブ2が「腐食性金属物品の金属と実質的に同じ金属からなる」のに対して,引用発明は「腐食環境形成容器中」に入れられた「腐食試験片」の消耗を連続的に検出し,あわせて腐食モニタリングする方法であり,「金属プローブ2」は「金属材料」との記載に留まる点。 第5 相違点についての当審の判断 (相違点)について 腐食環境に置かれた腐食性物質の腐食状態を検出するために,腐食センサを腐食環境中に装着することは,出願人が自認するとおり周知の事項である。 例えば,本願明細書【0005】に記載されている米国特許第4,412,174号のパテントファミリーである特開昭57-22535号公報には「第1図を参照すれば,腐食監視プローブ1は腐食性の導電性物質で作られたU字型素子2を備え,これは密封された非腐食性基部3に取り付けられる。基部3はカラー4及びロックリング5を有し,これらにより基部3は腐食性流れ媒体8を含むコンジット又は容器7の壁6に装着される。素子2は,これに対する腐食性媒体8の作用を監視すべき物質で作られる。例えば,素子2は,容器又はコンジット7の状態を監視すべき場合には容器又はコンジットと同じ物質で作られ,或いは腐食性媒体8に決められるポンプ又は他の装置の腐食性部品(図示せず)と同じ物質で作られる。」と記載されている。 そうすると,引用発明を,「腐食環境形成容器中」のみではなく,実際の「腐食環境に置かれた腐食性金属物品」の腐食状態を検出する方法にも使用できることは当業者であれば容易に想到し得るというべきである。 そして,上記(2-ア)の記載,及び上記周知の事項の「容器又はコンジット7の状態を監視すべき場合には容器又はコンジットと同じ物質で作られ」との記載からみて,引用発明を実際の「腐食環境に置かれた腐食性金属物品」の腐食状態を検出する方法に使用する際に,金属プローブ2を「腐食性金属物品の金属と実質的に同じ金属」とすることは,当業者であれば当然行うべき設計変更に過ぎないというべきである。 よって,引用発明に刊行物2に記載されている事項及び周知の事項を適用し,相違点に係る本願発明の構成とすることに格別な困難性はない。 また,本願発明に係る効果も,引用発明,刊行物2に記載された事項及び周知の事項から予測し得る範囲内であり,格別顕著なものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明,刊行物2に記載された事項及び周知の事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-14 |
結審通知日 | 2009-12-15 |
審決日 | 2010-01-04 |
出願番号 | 特願2002-553096(P2002-553096) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福田 裕司 |
特許庁審判長 |
岡田 孝博 |
特許庁審判官 |
後藤 時男 松本 征二 |
発明の名称 | 複数の種類の腐食を検出するための方法 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 神田 藤博 |
代理人 | 小林 泰 |