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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62D
管理番号 1216992
審判番号 不服2008-32841  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-26 
確定日 2010-05-18 
事件の表示 平成11年特許願第269818号「自動車ステアリング・ボックス」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月11日出願公開、特開2000-103342号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願は、平成11年 9月24日(パリ条約による優先権主張 1998年 9月24日、米国)を出願日とする特許出願であって、平成20年 9月12日付けで拒絶査定がなされ、この拒絶査定を不服として、同年12月26日に本件審判請求がなされるとともに、平成21年 1月22日付けで手続補正がなされたものである。

2.補正の可否の判断

平成21年 1月22日付けの手続補正は、明細書段落【0013】における「内側車輪11の旋回角度Li(9.090″=31)」及び「外側タイ・ロッド・ボール・ジョイント26の中心及びキングピン33の中心の間の距離(6.010in)」との記載について、「内側車輪11の旋回角度Li(9.090°=θ1)」及び「外側タイ・ロッド・ボール・ジョイント26の中心及びキングピン33の中心の間の距離(6.020in)」と補正するものであり、補正前の明細書及び図面の記載から誤記であったことは明らかであるから、上記補正は、特許法第17条の2第5項第3号でいう誤記の訂正を目的とするものに該当する。
したがって、平成21年 1月22日付けの手続補正を認める。

3.本願発明

上記平成21年 1月22日付けの手続補正においては、特許請求の範囲についての補正はなされておらず、よって本願の請求項1乃至10に係る発明は、平成20年 6月 4日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりである。

【請求項1】
「アッカーマン幾何学的配列を制御するように2つのステアラブル・ホイールを持つ自動車のステアリング・システムに使用するための自動車ステアリング・ボックスにおいて、
一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径の中心を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径の中心に一致させるように、一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度に相対的に調整する調整手段と、
この調整手段を前記ステアリング・システムのステアリング・コラム及びステアリング・ホィールに結合する第1の連結機構と、
前記調整手段を前記ステアリング・システムのリンケージ装置の第1のタイ・ロッドに結合する第2の連結機構と、
前記調整手段を前記リンケージ装置の第2のタイ・ロッドに結合するための第3の連結機構と、
を包含する自動車ステアリング・ボックス。」

なお、請求項1には「この調整手段を…ステアリング・コラム及びステアラブル・ホィールに結合する第1の連結機構」と記載されているが、調整手段がステアリング・コラムとともにステアラブル・ホィールに結合するものとは認められず、出願当初の請求項1には「この関数発生手段を…ステアリング・コラム及びステアリング・ホィールに結合するための第1の連結手段」と記載されていたので、上記「ステアラブル・ホィール」は「ステアリング・ホィール」の誤記と認め、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を上記のように認定した。

4.引用例及びその記載事項

原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実公平3-33583号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

A:(第1頁左欄第22行?右欄第26行)
「〔産業上の利用分野〕
本考案は、ラツクピニオン式ステアリング装置に係り、特にハンドル操舵によつてラツクバーが摺動する際にラツクバーの長さが変わるようにしてアツカーマン率を変化させうるようにしたラツクピニオン式ステアリング装置に関する。
〔従来技術〕及び〔本考案の解決しようとする問題点〕
ステアリング装置において、車両旋回時の操安性をよくするためには、内輪の転舵量を外輪の転舵量より大きくすること(以下、車両旋回時における外輪転舵量に対する内輪転舵量の比をアツカーマン率といい、このアツカーマン率を大きくすること)が望ましいが、特にナツクルアームが車輪のスピンドル軸から前方向に配置されたナツクルアーム前配置の車両では、ナツクルボールジヨイントとタイヤホイールとの干渉のおそれがあるため、あるいはステアリング系リンクの着水などによるトラブルのおそれがあるため、ナツクルアームを車両幅方向外方に大きく突出させることができず、その結果アツカーマン率を十分に大きくとれない場合がある。・・・。
本考案は、前記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、ステアリング系リンク配置の何如んにかかわらず、ハンドルを切り込んだときのアツカーマン率を大きくすることの可能なラツクピニオン式ステアリング装置を提供することにある。」

B:(第2頁左欄第14?24行)
「〔作用〕
ハンドルの操舵によりラツクバーは所定の方向に移動するが、ロツド部とラツクハウジング間の摺動面に形成されているガイド溝とガイドピンとからなる相対案内機構によつてロツド部が回動し、ロツド部がラツク形成部から離間する方向に変位する。そしてラツクバーの旋回側(内輪側)端部の変位量が反対側(外輪側)端部の変位量よりも大きくなつてアツカーマン率が大きくなり、すなわち旋回側車輪(内輪)の転舵量が反対側車輪(外輪)の転舵量よりも大きくなる。」

C:(第2頁左欄第28行?右欄第39行)
「第1図?第3図は本考案の第1の実施例を示す図で、・・・ある。
これらの図において、符号2はラツクバーで、ラツクハウジング4内に挿入配置されて車両幅方向に延在しており、その両端部はタイロツド6A,6Bを介してナツクルアーム8A,8Bに連結されている。ラツクハウジング4には、ギアハウジング4Aが形成されており、このギアハウジング4A内において、ピニオン軸に嵌着されたピニオン10がラツクバー2のラツク21と噛み合うように配置されている。ラツクバー2とタイロツド6A,6B、タイロツド6A,6Bとナツクルアーム8A,8Bとは互いにボールジヨイント30A,30B、31A,31Bによつて連結されている。ピニオン軸はハンドル12に連なる操舵軸14に連結されており、ハンドル12を回すことによりラツクバー2が車両幅方向(第2図、第3図左右方向)に摺動して左右の車輪W1,W2を転舵させるようになつている。
ラツクバー2は、第1図および第2図に示されるように、ラツク21の形成されているラツク形成部22とロツド部24とが螺合連結されて同軸上にのびたものとなつている。ラツク形成部22、ロツド部24には、それぞれ雌ねじ部22A、雄ねじ部24Aが形成されており、これらの雌ねじ部22A、雄ねじ部24Aが互いに螺合連結されることにより一体化され、ラツクバー2として一体に移動するようになつている。ロツド部24の外周面には、ロツド部24の軸心から傾斜した方向にV字形状に延びるカム溝26が形成され、一方ラツクハウジング4の内周面には、このカム溝26に係合するピン28が突設されており、ラツク形成部22の移動に伴つてカム溝26がピン28にガイドされて案内され、そしてロツド部24が回動するようになつている。・・・。雌ねじ部22A、雄ねじ部24Aは左ねじが切られており、ハンドル12を操舵するとラツク形成部22を介してロツド部24に移動力が伝わり、カム溝26がガイドピン28にガイドされるので、ロツド部24は回動してラツク形成部22との間隔dを拡大するように移動する。そのため、ハンドル操舵によつて旋回しようとする側(内輪側)のラツクエンドボールジヨイントの移動量が反対側(外輪側)のラツクエンドボールジヨイントの移動量よりも大きくなり、旋回しようとする側の車輪の転舵量が反対側の車輪の転舵量より大きくなるようになつている。すなわち、操舵すればするほどアツカーマン率が大きくなるようになつており、タイヤの横すべりを防止するとともに、ハンドル戻りを良好なものにするようになつている。」

D:(第3頁左欄第33行?右欄第12行)
「第4図および第5図は、本考案の第2の実施例を示すものである。
前記第1の実施例では、ラツクバー2をラツク形成部22とロツド部24とに2分割した構造としているが、本実施例では、ラツク形成部23の両端部にロツド部40,50をそれぞれれ螺合連結して、一本のラツクバー3を形成するようになつている。
ロツド部40の端部には左ねじ部40Aが、ロツド部50の端部には右ねじ部50Aがそれぞれ形成されており、ラツク形成部23の両端部には、これらのねじ部40A,50Aと螺合するねじ部23A,23Bがそれぞれ形成され、ねじ部40Aと23A,50Aと23Bが互いに螺合されて一本のラツクバー3が形成されている。ロツド部40,50の外周面にはカム溝26がそれぞれ形成されており、ラツクハウジング4の内周面にはこれらのカム溝26とそれぞれ係合するピン28が突設されている。なお、ハンドル12の操舵角が0のときに、ピン28がちようどV字形状にのびるカム溝26の対称中心部26Aにそれぞれ位置するようになつている。その他の部分は前記第1の実施例と同一であるため、同一の符号を付すことによりその説明は省略する。」

図面とともに、上記摘記事項A?Dを総合すると、引用例には、

「アツカーマン率を変化させうるように左右の車輪W1,W2を転舵させる車両のステアリング装置において、
旋回側車輪(内輪)の転舵量を、反対側車輪(外輪)の転舵量よりも大きくさせる機構であり、ピニオン軸に嵌着されたピニオン10、該ピニオン10と噛み合うラック21を有するラツク形成部23と両端のロツド部40,50とから形成されるラックバー3、該ラックバー3が挿入配置されるラツクハウジング4、からなり、ラックバー3のラツク形成部23の両端部にロッド部40,50のねじ部40A,50Aと螺合するねじ部23A,23Bがそれぞれ形成され、またラックバー3のロツド部40,50とラツクハウジング4間の摺動面に形成されているカム溝26とガイドピン28とからなる相対案内機構と、
上記ピニオン軸はハンドル12に連なる操舵軸14に連結されており、
上記ラックバー3のラツク形成部23の両端部にロツド部40,50をそれぞれ螺合連結している、車両のステアリング装置。」
に関する発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

また、周知例として提示する実公平1-34933号公報には、次の事項が記載されている。

E:(実用新案登録請求の範囲)
「転舵軸のタイロツドにタイロツドを伸縮自在にする油圧シリンダを介装するとともに、左右輪の転舵角を検出する転舵角検出手段を設け、一方の車輪の転舵角を検出し、その転舵角に応じた他方の車輪の理論的転舵角を転舵角理論値マツプの記憶手段によつて計算し、他方の車輪の転舵角を理論的転舵角に略等しくなるように油圧シリンダを介してタイロツドの長さを伸縮制御する制御ユニツトを設けたことを特徴とするステアリング装置。」

F:(第1欄左欄第16行?右欄第15行)
「[従来技術]
従来のリジツドアクスル式のステアリング装置では、車両の直進および旋回運動を安全確実に行なわせるため、左右車輪の姿勢が一定の関係を保つように設定されている。すなわち、自動車の旋回に際し、各輪が異なつた旋回半径をとりながら旋回するが、同一旋回中心回りの運動を転舵軸である前車軸の内外輪に別々の転舵角を与えて合理的に成立させなければならず、各車輪のタイヤにサイドスリツプを生じさせないためには、アツカーマンジヤントの理論により第5図に示すように、前輪の内輪軸の延長線Aと外輪軸の延長線Bが後輪軸の延長線C上の点Oで交わるように、・・・となる。
しかしながら、・・・ステアリングリンクの幾何学的誤差のある場合、低速において外輪軸の延長線は内輪軸および後輪軸の延長線との交点O1と交わらず、内輪軸の延長線と点O2あるいはO3で交わつてしまう。このため、外輪のサイドスリツプ角が大きく、タイヤが摩耗して耐久性が損なわれるという問題がある。」

G:(第2頁左欄第23?35行)
「[考案の作用効果]
従つて、本考案では、他方の車輪の転舵角は一方の車輪の理論的転舵角に略等しくなるようにし、もつて転舵軸の左右輪のかじ取り角をアツカーマンのかじ取り角に合致させるようにタイロツドの長さを変えることができる。この作業は転舵角理論値マツプの記憶手段によつて行われるので、正確であり、低速におけるサイドスリツプを無くし、その結果、タイヤの偏摩耗をなくして寿命を延長することができる。
そして、左右輪のかじ取り角が適正なため旋回性能のよいステアリング装置を得ることができる。」

さらに周知例として提示する実願平2-102407号(実開平4-58482号)のマイクロフィルムには、次の事項が記載されている。

H:(実用新案登録請求の範囲第1項)
「車体に固定されて左右方向に延びる外筒と、該外筒内に摺動可能に嵌挿され、先端部が外筒の左右端部から突出する1対の内筒と、該各内筒の先端部に垂直軸周りに揺動可能に取り付けられたナックルアームと、該ナックルアームに回転可能に軸支された左右の舵取り車輪と、上記各ナックルアームの先端部と内筒との間に架設され、伸縮により舵取り車輪を揺動させる1対の油圧アクチュエータと、各アクチュエータをそれぞれ作動制御する1対の油圧切換弁とを備えた自走式作業車等の舵取り装置であって、
左右の舵取り車輪の操舵角をそれぞれ検出する1対の操舵角検出手段と、
一方の操舵角検出手段により検出された一方の舵取り車輪の操舵角に基づき、所定のステアリングジオメトリに相当する他方車輪の目標操舵角を演算する演算手段と、
他方の操舵角検出手段により検出された他方の車輪の操舵角が上記演算された目標操舵角になるよう、該他方の舵取り車輪の切換弁を制御する制御手段とを設けたことを特徴とする自走式作業車等の舵取り装置。」

I:(明細書第3頁第14行?第4頁第16行)
「(考案が解決しようとする課題)
この提案のものでは、・・・舵取り状態における内側車輪の操舵角が外側車輪よりも大きくて両操舵角に差が付き、いわゆるアッカーマンジオメトリに近似した舵取り性能を得ることができる。しかし、それはあくまでも近似的なものであり、高精度の舵取り性能は期待できない。
しかも、通常の操舵角範囲で操舵するためには、リンク機構を大形にする必要があるが、車体との干渉を避ける上で大形化は困難である。従って、実際には操舵角範囲が狭く、実用上の問題がある。
・・・。
本考案は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、・・・小さな操舵システムでアッカーマン等のステアリングジオメトリに高精度に制御できるようにすることにある。」

J:第4図には、アッカーマンジオメトリの原理を示す図として、右車輪6Rの旋回中心を、左車輪6Lの旋回中心に一致させたものが記載されている。

5.対比

本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「車両のステアリング装置」は本願発明における「自動車ステアリング・ボックス」及び「ステアリング・システムに使用するための自動車ステアリング・ボックス」に相当し、以下同様に、「左右の車輪W1,W2を転舵させる車両」は「2つのステアラブル・ホイールを持つ自動車」に、「転舵量」は「旋回角度」に、「ハンドル12に連なる操舵軸14」は「ステアリング・システムのステアリング・コラム及びステアリング・ホィール」に、「ロッド部40」は「ステアリング・システムのリンケージ装置の第1のタイ・ロッド」に、及び「ロッド部50」は「リンケージ装置の第2のタイ・ロッド」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「旋回側車輪(内輪)の転舵量を、反対側車輪(外輪)の転舵量よりも大きくさせる機構」は、反対側車輪(外輪)の旋回角度を旋回側車輪(内輪)の旋回角度に相対的に調整する手段であるといえるから、本願発明における「一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度に相対的に調整する調整手段」と一致し、よって引用発明の「ピニオン軸に嵌着されたピニオン10、該ピニオン10と噛み合うラック21を有するラツク形成部23と両端のロツド部40,50とから形成されるラックバー3、該ラックバー3が挿入配置されるラツクハウジング4、からなり、ラックバー3のラツク形成部23の両端部にロッド部40,50のねじ部40A,50Aと螺合するねじ部23A,23Bがそれぞれ形成され、またラックバー3のロツド部40,50とラツクハウジング4間の摺動面に形成されているカム溝26とガイドピン28とからなる相対案内機構」が本願発明の「調整手段」に相当するから、引用発明における「上記ピニオン軸はハンドル12に連なる操舵軸14に連結されて」いることが本願発明における「この調整手段を前記ステアリング・システムのステアリング・コラム及びステアリング・ホィールに結合する第1の連結機構」を包含することに相当し、同様に「上記ラックバー3のラツク形成部23の両端部にロツド部40,50をそれぞれ螺合連結している」ことが「前記調整手段を前記ステアリング・システムのリンケージ装置の第1のタイ・ロッドに結合する第2の連結機構と、前記調整手段を前記リンケージ装置の第2のタイ・ロッドに結合するための第3の連結機構と、を包含する」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の一致点、相違点は以下のとおりであると認められる。

<一致点>
「2つのステアラブル・ホイールを持つ自動車のステアリング・システムに使用するための自動車ステアリング・ボックスにおいて、
一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度に相対的に調整する調整手段と、
この調整手段を前記ステアリング・システムのステアリング・コラム及びステアリング・ホィールに結合する第1の連結機構と、
前記調整手段を前記ステアリング・システムのリンケージ装置の第1のタイ・ロッドに結合する第2の連結機構と、
前記調整手段を前記リンケージ装置の第2のタイ・ロッドに結合するための第3の連結機構と、
を包含する自動車ステアリング・ボックス。」

<相違点>
本願発明では、「アッカーマン幾何学的配列を制御する」ための自動車ステアリング・ボックスにおいて、調整手段が「一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径の中心を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径の中心に一致させるように」旋回角度を調整するのに対し、引用例1記載の発明では「アツカーマン率を変化させうる」ような自動車ステアリング・ボックスであって、調整手段が旋回角度をどのように調整しているか言及がない点。

6.相違点の検討

上記相違点について検討する。

上記周知例(上記4.の摘記事項E?Jの記載を参照のこと)に示されているように、自動車のステアリング装置において、旋回性能を向上させるために、一方の車輪の旋回半径の中心を、他方の車輪の旋回半径の中心に一致させるように、一方の車輪の旋回角度を、他方の車輪の旋回角度に相対的に調整して、完全なアッカーマン幾何学的配列(アッカーマンジオメトリ)とすることは、周知技術である。
よって、引用発明において、一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径の中心を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回半径に一致させるように、一方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度を、他方の前記ステアラブル・ホイールの旋回角度に相対的に調整して、アッカーマン幾何学的配列を制御する自動車ステアリング・ボックスとすることは、当業者にとって格別の創作力を要することもなく、なし得る程度のことにすぎない。

そして、上記相違点を併せ備える本願発明の作用・効果について検討しても、引用発明及び周知例から当業者が予測し得る範囲を超えるものではない。

したがって、本願発明は引用発明及び周知例に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび

以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-11-30 
結審通知日 2009-12-08 
審決日 2009-12-21 
出願番号 特願平11-269818
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B62D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 良隆久保田 信也上尾 敬彦  
特許庁審判長 寺本 光生
特許庁審判官 小関 峰夫
植前 津子
発明の名称 自動車ステアリング・ボックス  
代理人 尾原 静夫  
代理人 真田 雄造  

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