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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1216994
審判番号 不服2009-12168  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-03 
確定日 2010-05-17 
事件の表示 特願2004-159462「円すいころ軸受及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月8日出願公開、特開2005-337445〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年5月28日の出願であって、平成21年4月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年7月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年7月3日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成21年7月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年7月3日付けの手続補正を却下する。
[理由]
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、補正前の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪の間に転動自在に配された複数の円すいころと、円すいころをポケットに転動自在に収容して円周方向等間隔に保持する保持器とを備えた円すいころ軸受において、前記保持器は、ポケット間に位置する柱部を大径リング部と小径リング部で連結してその小径リング部の端縁から径方向にリブを延在させ、そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面を径方向に沿う平坦な形状としたことを特徴とする円すいころ軸受。」から、
補正後の特許請求の範囲の請求項1の、
「【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪の間に転動自在に配された複数の円すいころと、円すいころをポケットに転動自在に収容して円周方向等間隔に保持する保持器とを備えた円すいころ軸受において、前記保持器は、ポケット間に位置する柱部を大径リング部と小径リング部で連結し、前記大径リング部から小径リング部へ向けて縮径させてその小径リング部の端縁から径方向内側へリブを延在させ、そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面の円周方向全体を径方向に沿う平坦な形状としたことを特徴とする円すいころ軸受。」と補正された。なお、下線は対比の便のため当審において付したものである。
上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保持器」に関し、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の図1及び2の記載を根拠として、「前記大径リング部から小径リング部へ向けて縮径させてその小径リング部の端縁から径方向内側へリブを延在させ、そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面の円周方向全体を径方向に沿う平坦な形状とした」(下線部のみ)とその構成を限定するものである。
結局、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項追加禁止に該当するものではない。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

1.原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項
(1)刊行物1:特開平8-177851号公報

(刊行物1)
刊行物1には、「円すいころ軸受及びこの円すいころ軸受の組立方法」に関して、図面(特に、図1?3を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。
(a)「この発明は、組立に際し円すいころを挿入しやすくした保持器を備えた円すいころ軸受及びこの円すいころ軸受の組立方法に関する。」(第2頁第1欄第19?21行、段落【0001】参照)
(b)「図1(A)はこの発明の円すいころ軸受を組み立てる際の円すいころ3を保持器2のポケット2aに嵌め入れる工程を示す縦断面図、図1(B)は円すいころ3と保持器2の部分拡大図、図2(A)は図1(A)のP矢視平面図、図2(B)は支持体1の一部斜視図である。支持体1は円すいころ3を立てて支持するためのものであるが、小端面3a側を下にして立てた円すいころ3の側面3bを接触支持する所要数の凹部1aとこの小端面3aの一部を載置する前記凹部1aと連続する段部1bが環状に設けられている。そして該支持体1の凹部1aの段部1bに連続する円筒状の保持器案内部1cが形成され該保持器案内部1cの周囲には保持器2が設置される。この場合該保持器2を容易に着脱できるように保持器案内部1cの円筒部の直径D_(1)は保持器2の小径側に形成した鍔部2bの内径D_(2)より少し小さくなるように形成してある。
前記保持器2の小径側に設けた鍔部2bの端部には先端部を若干鋭くなるように形成した突起部2cが内側に向けて形成してある。該突起部2cは、図2(A)からも分かるように、ポケット2aの中央位置付近に周状に設けられる。即ち、該突起部2cはポケット2aと同数(円すいころと同数)設けるが、一定間隔で飛び飛びに設けても良いし連続して輪状に設けても良い。また、この場合、該突起部2cは保持器2を前記支持体1に設置したときその高さhが段部1bの高さとほほ同等か若干高くする。更に、該突起部2cの円すいころ3の小端面3aと接触する位置は支持体1の段部1bに載置したときの円すいころ3のピッチ円(P.C.D)直径より内径側(支持体1側)となるように設ける。
以上のように、この円すいころ軸受を、保持器2の小径側に鍔部2bを形成すると共に該鍔部2bの先端部に突起部2cを設け、支持体1の周囲に設けた凹部1aの段部1bに円すいころ3の小端面3aが載置されたとき、該突起部2cが環状に落下させた円すいころ3の軸心又はピッチ円直径(P.C.D)より小さい位置に当接するように構成すれば、支持体1を回転させなくても簡単に保持器2のポケット2aに嵌め入れることができる。
実際に円すいころ3を保持器2のポケット2aに嵌め入れ、内輪4及び外輪5(図3、図4参照)を組み立てるる方法は次のようにする。
(1)支持体1の上部に、該支持体1の段部1bに向けて円すいころ3を落下させるよう円すいころ案内穴を設けたころ案内具14(図6参照)を段部1bと同角度位置に配置する。
(2)支持体1の前記段部1bに連続して設けた保持器案内部1c周囲に保持器2を載置する。この場合、支持体1の所要数の段部1bと保持器2のポケット2aとは同角度位置とする。
(3)支持体1の周囲に設けた凹部1aの段部1bに円すいころ3が落下すると、保持器2の突起部2cに円すいころ3が当接する。この場合、保持器2の突起部2cの高さhは支持体1の段部1bの高さよりも少し高くするかほぼ同等の高さにしてある(或いは支持体1の段部1b及び保持器案内部1c部分が上下に少し移動可能なようにしても良い)。
(4)円すいころ3の小端面3aが保持器2の突起部2cと当接する位置は円すいころ3を支持体1の段部1bに載置したときピッチ円(P.C.D)の直径より小さい円の側にあるので円すいころ3は支持体1周囲に配置した保持器2のポケット2aに倒れ自然とポケット2aに嵌め入れることができる。こうして保持器2に円すいころ3を嵌め入れて内輪4と外輪5とを組み込む。円すいころ軸受の組立方法では以上のように支持体1を回転させることなく円すいころ3を保持器2に簡単に嵌め入れ且つ内輪及び外輪を組み立てることができる。
図3は保持器2に上記方法により円すいころ3を嵌め入れ、更に内輪4と外輪5を組み込んだ状態の円すいころ軸受の一部軸方向断面図である。この場合、内輪4を組み込むとき円すいころ3の小端面3aと保持器2のポケット2aの下端面2dとを接触させるようにすると共に円すいころ3の大端面3cと内輪4の案内つば4aとを接触させるようにしてある。即ち、この円すいころ軸受の内輪セット品(円すいころ3と保持器2及び内輪4の組立品)では円すいころ3を保持器2と内輪4とで保持させることになる。また、このとき保持器2のポケット2aの下端面2dと鍔部2bに設けた突起部2cとは僅かな隙間tでできるようにする。こうして組付時に円すいころ3の安定を図ることができる。」(第2頁第2欄第30行?第3頁第4欄第9行、段落【0006】?【0010】参照)
(c)図1及び2から、保持器2は、ポケット2a間に位置する柱部を大径側と小径側で連結し、大径側から小径側へ向けて縮径させてその小径側の端縁から径方向内側へ鍔部2bを延在させ、その鍔部2bの端部に先端部を若干鋭くなるように形成した突起部2cを内側に向けて形成した構成が看取できる。
したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
【引用発明】
内輪4と、外輪5と、前記内輪3と外輪5の間に転動自在に配された複数の円すいころ3と、円すいころ3をポケット2aに転動自在に収容して円周方向等間隔に保持する保持器2とを備えた円すいころ軸受において、前記保持器2は、ポケット2a間に位置する柱部を大径側と小径側で連結し、前記大径側から小径側へ向けて縮径させてその小径側の端縁から径方向内側へ鍔部2bを延在させ、その鍔部2bの端部に先端部を若干鋭くなるように形成した突起部2cを内側に向けて形成した円すいころ軸受。

2.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「内輪4」は本願補正発明の「内輪」に相当し、以下同様に、「外輪5」は「外輪」に、「円すいころ3」は「円すいころ」に、「ポケット2a」は「ポケット」に、「保持器2」は「保持器」に、「大径側」は「大径リング部」に、「小径側」は「小径リング部」に、「鍔部2b」は「リブ」に、それぞれ相当するので、両者は、下記の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪の間に転動自在に配された複数の円すいころと、円すいころをポケットに転動自在に収容して円周方向等間隔に保持する保持器とを備えた円すいころ軸受において、前記保持器は、ポケット間に位置する柱部を大径リング部と小径リング部で連結し、前記大径リング部から小径リング部へ向けて縮径させてその小径リング部の端縁から径方向内側へリブを延在させた円すいころ軸受。
(相違点)
本願補正発明は、「そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面の円周方向全体を径方向に沿う平坦な形状とした」のに対し、引用発明は、その鍔部2b(本願補正発明の「リブ」に相当)の端部に先端部を若干鋭くなるように形成した突起部2cを内側に向けて形成した点。
以下、上記相違点について検討する。
(相違点について)
刊行物1には、「該突起部2cは、図2(A)からも分かるように、ポケット2aの中央位置付近に周状に設けられる。即ち、該突起部2cはポケット2aと同数(円すいころと同数)設けるが、一定間隔で飛び飛びに設けても良いし連続して輪状に設けても良い。」(上記摘記事項(b)参照)と記載されている。
したがって、上記「突起部2cは・・・連続して輪状に設けても良い。」との記載からみて、刊行物1には、鍔部2b(本願補正発明の「リブ」に相当)先端部の円周方向全体を軸方向内側に屈曲させる技術的事項が記載又は示唆されているといえる。
また、円すいころ軸受の保持器において、軸方向内側面を径方向に沿う平坦な形状とすることは、従来周知の技術手段(例えば、特開平2-38713号公報の第1?4図から、保持器7の軸方向内側面を径方向に沿う平坦な形状とした構成が看取できる。)にすぎない。
してみれば、引用発明の円すいころ軸受の保持器において、先端部を若干鋭くなるように形成した突起部2cの構成に代えて、刊行物1に記載又は示唆された技術的事項、及び従来周知の技術手段を適用して、鍔部2b(リブ)先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面の円周方向全体を径方向に沿う平坦な形状とすることにより、上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものである。
本願補正発明の効果についてみても、引用発明、刊行物1に記載又は示唆された技術的事項、及び従来周知の技術手段の奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な作用効果を奏するものとは認められない。
以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「本願発明(注:本審決の「本願補正発明」に対応)では、リブ先端部の軸方向内側面を平坦な形状としたことにより、保持器のポケットに降下する円すいころの小端面を平坦な軸方向内側面で受けることから安定した姿勢に保持することができ、しかも、ポケットの端縁部とリブ先端部の平坦な軸方向内側面の二箇所で支持することができるため、円すいころが円周方向に傾倒することなく、安定した支持状態を確保することができます。」(【本願発明が特許されるべき理由】の項参照)と主張している。
しかしながら、上記「ポケットの端縁部とリブ先端部の平坦な軸方向内側面の二箇所で支持することができる」構成については、本願補正発明に何ら特定されていない事項であるし、さらに、上記(相違点について)において述べたように、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるところ、本願補正発明の構成を備えることによって、本願補正発明が、従前知られていた構成が奏する効果を併せたものとは異なる、相乗的で、当業者が予測できる範囲を超えた効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の上記主張は採用することができない。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
平成21年7月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成21年3月6日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と外輪の間に転動自在に配された複数の円すいころと、円すいころをポケットに転動自在に収容して円周方向等間隔に保持する保持器とを備えた円すいころ軸受において、前記保持器は、ポケット間に位置する柱部を大径リング部と小径リング部で連結してその小径リング部の端縁から径方向にリブを延在させ、そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面を径方向に沿う平坦な形状としたことを特徴とする円すいころ軸受。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項は、上記「II.1.」に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願発明は、上記「II.」で検討した本願補正発明の保持器に関する限定事項である「前記大径リング部から小径リング部へ向けて縮径させてその小径リング部の端縁から径方向内側へリブを延在させ、そのリブ先端部を軸方向内側に屈曲させ、その軸方向内側面の円周方向全体を径方向に沿う平坦な形状とした」(下線部のみ)を省くことにより拡張するものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「II.2.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-26 
結審通知日 2010-01-27 
審決日 2010-04-06 
出願番号 特願2004-159462(P2004-159462)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 勇  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 常盤 務
大山 健
発明の名称 円すいころ軸受及びその製造方法  
代理人 田中 秀佳  
代理人 城村 邦彦  
代理人 熊野 剛  

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