• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09F
管理番号 1217049
審判番号 不服2008-30631  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-03 
確定日 2010-05-19 
事件の表示 特願2002-140575「封印具」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月19日出願公開、特開2003-330372〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年5月15日に特許出願したものであって、平成20年4月14日に手続補正がなされたが、同年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月3日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年12月19日に手続補正がなされたものである(以下、平成20年12月19日になされた手続補正を「本件補正」という。)。

2 本件補正についての却下の決定
(1)結論
本件補正を却下する。

(2)理由
ア 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲につき、補正前の
「【請求項1】 合成樹脂材により成形し、平板状に成形される表示基板と、前記表示基板の外周側面から該表示基板の表面と平行に延設され、先端部の一側面であって前記表示基板の表面と直交する面に弾性を有する係止歯を設けた屈曲自在なバンド部と、前記表示基板に設けられ、前記バンド部の先端部が前記外周側面側から挿入される差込孔を有したバンド差込部と、からなり、
前記バンド部の適宜個所に切断用の薄肉部を設け、前記バンド差込部には、前記表示基板の表・裏面と同側面に前記差込孔と連通すると共に同じ高さを有しかつ前記表示基板の表・裏面と直交する通孔を交互に位置を違えて開設し、前記差込孔内には、前記通孔が開設された方向と平行な面に、挿入された前記係止歯に係合してその逆抜けを防止する逆止爪を設けたことを特徴とする封印具。」

「【請求項1】 合成樹脂材により成形し、平板状に成形される表示基板と、前記表示基板の外周側面から該表示基板の表面と平行に延設され、細い薄板からなる先端部の一側面であって前記表示基板の表面と直交する面に前記先端部とは逆方向を向き弾性を有する係止歯を設けた屈曲自在なバンド部と、前記表示基板に設けられ、前記バンド部の先端部が前記外周側面側から挿入される差込孔を有したバンド差込部と、からなり、
前記バンド部の適宜個所に切断用の薄肉部を設け、前記バンド差込部には、前記表示基板の表・裏面と同側面に前記差込孔と連通すると共に同じ高さを有しかつ前記表示基板の表・裏面と直交する通孔を交互に位置を違えて開設し、前記差込孔内には、前記通孔が開設された方向と平行な面に、挿入された前記係止歯に係合してその逆抜けを防止する逆止爪を設けたことを特徴とする封印具。」
に補正する内容を含むものである。

イ 補正の目的
上記アの補正の内容は、補正前の請求項1の「先端部」について「細い薄板からなる」との限定を付加するとともに、同じく「弾性を有する係止歯」について「前記先端部とは逆方向を向き」との限定を付加するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。

ウ 独立特許要件
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。

(ア)刊行物の記載
a 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-37314号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。

(a)「【請求項1】 標識表示面を有する板状の本体と、該本体の上端面に一端が接続された帯状の係止バンド部と、該本体の前記上端面又はその近傍に開口し、係合片を有する係合貫通孔とからなり、前記係止バンド部は、前記係合貫通孔に対して挿入方向においては挿通可能で、かつ、前記挿入方向と逆方向においては前記係合片と係合して移動不能とする係止歯を、該係止バンド部の長手方向に複数個配列していることを特徴とする封緘具。
・・・
【請求項4】 前記係止バンド部の前記本体との接続部近傍に手操作による破断が可能な脆弱部を設けたことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の封緘具。」

(b)「【0028】
【発明の実施の形態】以下図面に基づき本発明による封緘具の実施の形態について説明する。
【0029】〔第1の実施の形態〕図1?図8に示すように、本発明の第1の実施の形態の封緘具20は、ナイロン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂で一体成形され、標識表示面22を有する板状の本体21と、この本体21の上端面21uに一端が接続された係止バンド部23と、この上端面21uに一端側25uが開口し他端側25dが下側に開口する、係合片26を有する係合貫通孔25とから形成される。
【0030】また、係止バンド部23には、係止歯24を長手方向に複数個連続して配列し鋸歯状に設ける。この係止歯24は係合貫通孔25に対して挿入方向Aにおいては挿通可能に形成されるが、挿入方向Aと逆方向Bにおいては,図8に示すように係合片26と係合して移動できないように、先端側の傾斜面24aと後端側の垂直面24bとで形成する。
【0031】この係止歯24を係止バンド部23の側部でなく表裏面側に設ける構成にすると、係止歯24を大きく形成できると共に、係止バンド部23はバンドの側面側には曲がり難く、バンドの表裏側に曲がり易くなり、折り曲げ方向が定まるので、係止バンド部23を折り曲げて係合貫通孔25に挿入する時に非常に操作し易くなる。」

(c)「【0042】〔第2の実施の形態〕次に、図9?図15に示す本発明の第2の実施の形態の封緘具20Aについて説明する。
【0043】この第2の実施の形態の封緘具20Aは、標識表示面22Aが微小突起群で形成されていないことと、係止バンド部23Aの本体21Aとの接続部近傍に手操作による破断が可能な脆弱部28Aを設けたことが相違し、他は同じである。
【0044】標識表示面22Aを平面で形成した場合には、刻印を押圧により刻印することは難しいが、印刷やシールによる標識を付与することができる。
【0045】そして、脆弱部28Aは、引張については、係止バンド部の他の部分や係合部分の係合時と略同等以上の強度を有するが、折り曲げや捩じりに弱い部分であり、鋏やペンチ等のカッターを用いずに手操作のみで分断できるように形成される部分である。
【0046】この第2の実施の形態の封緘具20Aでは、脆弱部28Aは、図15に示すように本体21Aの上端面21Auに基部28aを設け、この基部28aに偏平部材28bと両隣の細柱28cを植立し、これらで、係止バンド部23Aの下側の円柱部23Aaとこの円柱部23Aaの側面から三角状に広がって形成された支持部28dを支持する構造にしている。
【0047】手で本体21Aを保持し、別の手で係止バンド部23Aの根元を持って、部分を捩じると、先ず、細柱28cが、次に偏平部材28bが破損し、脆弱部28Aが切断される。
【0048】以上の構成の封緘具20Aによれば、脆弱部28Aを設けているので、鋏やペンチ等の道具を使用せずに封緘を簡単に解く事ができるようになり、作業効率を著しく向上することができる。」

(d)「【符号の説明】
・・・
25,25A,25B 係合貫通孔
26,26A,26B 係合片」

(e)図9から、係止バンド部23Aは、本体21Aの上端面から本体21Aの表面と平行な方向に延びて設けられ、本体21Aの表面と直交する表裏面を有するへんぺいな板状であり、前記表裏面に係止歯が配列されていること、がみてとれる。

(f)図11から、係合片26Aは、係合貫通孔25Aの、本体21Aの表面と直交する面に設けたものであることがみてとれる。

b 同じく実願昭49-16417号(実開昭50-107600号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

(a)「 第1図は本考案に係る封止具の1例を示す斜視図で、封止具1は頭部2と尾部3とこれらの間に介在する中間部4とで構成され、全体はナイロン、ポリプロピレン、ポリエステルその他の分子配向性の合成樹脂で一体的に成形されている。
第2図は封止具の側断面図、第3図は同正面図である。同図において頭部2の表面(A側)には係合歯5が設けられ、裏面(B側)には係合歯6が設けられており、表面と裏面に設けた係合歯5,6は対象形をなしている。前記係合歯を設けた部分に続いて止り部7が設けられて、その止り部の一端はだんだん縮小して中間部4を形成し、この中間部に続いて尾部3が形成されている。
尾部3は前記頭部2を受け入れ、かつ係合することによつて中間部4を輪状に形成する部分であつて、全体は一種の箱状になつている。
前記尾部3の表面には窓8,9が開口し、裏面には窓10,11,12がそれぞれ開口し、中央には挿通孔13が開口している。14と15は担持部で、頭部の先端16の両面を支持する。17と18は係合歯で、頭部2に設けた係合歯5,6のいずれかと係合できるようになつている。19は押圧壁で、頭部2の最先端の係合歯の表面を押圧するようになつている。
第2図より分るように、窓10の前方には担持部14が存在し、窓8の前方には担持部15が存在する。これと同様に窓9,11,12の前方には係合歯18、押圧壁19、係合歯17がそれぞれ存在しており、したがつてこれらの窓より頭部2の側面を押しても対向する係合歯に頭部の係合歯が嵌合するのみで係合を解除することはできないような構造になつている。」(3頁15行?5頁8行)

(b)第2図及び第4図から、封止具の頭部2を受け入れる箱状の尾部3の表面に開口する窓8、9と、裏面に開口する窓10、11、12とは、交互に位置を違えて設けられており、概略同じ高さであることがみてとれる。

(イ)引用発明
上記(ア)aによれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。

「標識表示面を有する板状の本体と、該本体の上端面に一端が接続され、該本体の表面と平行な方向に延びて設けられ、該本体の表面と直交する表裏面を有するへんぺいな板状である帯状の係止バンド部と、該本体の前記上端面又はその近傍に開口し、前記係止バンド部を折り曲げて挿入する、係合片を有する係合貫通孔とからなり、前記係合片は、前記係合貫通孔の、本体の表面と直交する面に設けられ、前記係止バンド部の前記表裏面に、前記係合貫通孔に対して挿入方向においては挿通可能で、かつ、前記挿入方向と逆方向においては前記係合片と係合して移動不能とする係止歯を、該係止バンド部の長手方向に複数個配列しており、前記係止バンド部の前記本体との接続部近傍に手操作による破断が可能な脆弱部を設け、合成樹脂で一体成形された封緘具。」(以下「引用発明」という。)

(ウ)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「封緘具」は、本願補正発明の「封印具」に相当し、「合成樹脂で一体成形された」ものであるから、本願補正発明の「合成樹脂材により成形し」との事項を備える。

b 引用発明の「標識表示面を有する板状の本体」は、本願補正発明の「平板状に成形される表示基板」に相当する。

c 引用発明の「係止バンド部」は、「該本体の上端面に一端が接続され、該本体の表面と平行な方向に延びて設けられ、該本体の表面と直交する表裏面を有するへんぺいな板状である帯状」で、「折り曲げて」「係合貫通孔」に挿入するものであり、「前記表裏面に、前記係合貫通孔に対して挿入方向においては挿通可能で、かつ、前記挿入方向と逆方向においては前記係合片と係合して移動不能とする係止歯」を、「長手方向に複数個配列」するものであるから、「前記表示基板の外周側面から該表示基板の表面と平行に延設され、細い薄板からなり、前記表示基板の表面と直交する面に前記バンド部の先端部とは逆方向を向く係止歯を設けた屈曲自在なバンド部」である点で、本願補正発明の「バンド部」と一致する。

d 引用発明の「係合貫通孔」は、「該本体の前記上端面又はその近傍に開口し、前記係止バンド部を折り曲げて挿入する」ものであるから、本願補正発明の「垂前記表示基板に設けられ、前記バンド部の先端部が前記外周側面側から挿入される差込孔を有したバンド差込部」に相当する。
そして、引用発明の「前記係止バンド部の前記表裏面に」「配列」した「係止歯」は、「係合貫通孔」が有する「係合片」と、「前記係合貫通孔に対して挿入方向においては挿通可能で、かつ、前記挿入方向と逆方向においては前記係合片と係合して移動不能とする」ものであるから、引用発明の「係合片」は、本願補正発明の「差込孔内に」「設けた」「挿入された前記係止歯に係合してその逆抜けを防止する逆止爪」に相当する。

e 引用発明の「前記係止バンド部の前記本体との接続部近傍に」「設けた」「手操作による破断が可能な脆弱部」は、本願補正発明の「前記バンド部の適宜個所に」「設けた」「切断用の薄肉部」に相当する。

f 以上によれば、両者は、
「合成樹脂材により成形し、平板状に成形される表示基板と、前記表示基板の外周側面から該表示基板の表面と平行に延設され、細い薄板からなり、前記表示基板の表面と直交する面に前記バンド部の先端部とは逆方向を向く係止歯を設けた屈曲自在なバンド部と、前記表示基板に設けられ、前記バンド部の先端部が前記外周側面側から挿入される差込孔を有したバンド差込部と、からなり、
前記バンド部の適宜個所に切断用の薄肉部を設け、前記差込孔内には、挿入された前記係止歯に係合してその逆抜けを防止する逆止爪を設けた封印具。」
である点で一致し、以下の(a)及び(b)の点で相違するものと認められる。

(a)本願補正発明では、係止歯が、(前記バンド部の)先端部の一側面に設けたものであり、弾性を有するのに対して、引用発明の係止歯は、前記バンド部の先端部の一側面に設けられたものではなく、また、弾性を有するのかどうか不明である点(以下「相違点1」という。)。

(b)本願補正発明は、前記バンド差込部には、前記表示基板の表・裏面と同側面に前記差込孔と連通すると共に同じ高さを有しかつ前記表示基板の表・裏面と直交する通孔を交互に位置を違えて開設し、逆止爪を前記通孔が開設された方向と平行な面に設けたものであるのに対して、引用発明は、そのような通孔を開設したものでない点(以下「相違点2」という。)。

(エ)判断
a 相違点1について
(a)係止歯を具体的にどのようなものとし、係止バンド部のどのような位置に設けるかは、当業者が適宜設計的に定め得る事項というべきところ、バンド先端部の一側面に係止歯を設けたものは、本願出願時において周知のものである(例えば、特開平6-293358号公報の図3を参照。)から、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成とするに格別の困難はないものと認められる。

b 相違点2について
前記(ア)bによれば、刊行物2には、合成樹脂で一体的に成形された封止具1において、封止具の頭部2を受け入れる箱状の尾部3の表裏面にそれぞれ開口し、概略同じ高さである、窓8、9と、10、11、12とを、交互に位置を違えて設けたものが記載されているものと認められる。
そして、引用発明も、封止具である点で、刊行物2記載の上記封止具と共通するものであるから、引用発明において、バンド差込部に、前記表示基板の表・裏面と同側面に前記差込孔と連通すると共に同じ高さを有しかつ前記表示基板の表・裏面と直交する通孔を交互に位置を違えて開設することは、当業者が容易になし得る程度のことである。
そして、引用発明の係合片は、前記係合貫通孔の、本体の表面と直交する面に設けられたものであるところ、前記通孔は表示基板の表・裏面と直交するものであるから、引用発明の係合片、すなわち逆止爪は、前記通孔が開設された方向と平行な面に設けたものになるものと認められる。
よって、引用発明において、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。

(オ)小括
以上の検討によれば、本願補正発明は、刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成20年4月14日になされた手続補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記2(2)アにおいて、補正前のものとして示したとおりのものである。

(2)判断
前記2(2)イのとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められるところ、前記2(2)ウで検討したとおり、本願発明に係る特許請求の範囲を減縮したものである本願補正発明が、刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、減縮前の本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1及び2にそれぞれ記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-09 
結審通知日 2010-03-16 
審決日 2010-03-29 
出願番号 特願2002-140575(P2002-140575)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09F)
P 1 8・ 121- Z (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 斉昭  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 田部 元史
右田 昌士
発明の名称 封印具  
代理人 伊藤 浩二  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ