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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1217181
審判番号 不服2008-26398  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-14 
確定日 2010-05-20 
事件の表示 特願2006-356815「末梢神経系特異的ナトリウムチャンネル、それをコードするDNA、結晶化、X線回折、コンピューター分子モデリング、合理的薬物設計、薬物スクリーニング、ならびにその製造法および使用法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-169286〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成7年11月2日(パリ条約に基づく優先権主張1994年11月2日,米国特許出願第08/334,029号;1995年6月7日,米国特許出願第08/482,401号)に国際出願された特願平8-515424号の一部を新たな特許出願として,平成14年5月17日に出願された特願2002-143880号の一部を新たな特許出願として,平成18年12月29日に出願されたものであって,平成20年6月27日付けで特許請求の範囲について手続補正がなされ,平成20年7月14日付けで平成20年6月27日付け手続補正書の補正の却下の決定がなされるとともに,拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


第2 平成20年6月27日付けの手続補正についての平成20年7月14日付けの補正却下の決定について
請求人は,平成20年10月31日付け審判請求理由を補充する手続補正書において,「補正の却下の決定は不当である」と主張し,補正却下の決定に対して不服を申立てていると解されるので,特許法第53条第3項に基づき,以下検討する。

1.本願補正発明
平成20年6月27日付け手続補正書により,補正前の特許請求の範囲1
「【請求項1】 末梢神経系特異的ナトリウムチャンネルポリペプチドを用いる薬物スクリーニング方法および治療法。」
は,
「【請求項1】 末梢神経系特異的ナトリウムチャンネルポリペプチドを用いる治療法。」
と補正されることになる(補正後の発明を,以下,「本願補正発明1」という。)。

2.特許法第17条の2第4項の規定(本件補正の目的)についての判断
上記手続補正は請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「末梢神経系特異的ナトリウムチャンネルポリペプチドを用いる」ものにおいて,「薬物スクリーニング方法」および「治療法」の両方を包含する発明から,薬物スクリーニング方法に係る択一的記載の要素を削除したものであると認められ,特許請求の範囲の限定的減縮に該当する。
そこで,本件補正後の本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.特許法第17条の2第5項の規定(独立特許要件)についての判断
上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1の記載からみて,本願補正発明1が治療方法の発明であることは明らかである。そして,本願の発明の詳細な説明の記載をみても,例えば「本発明の化合物および/または組成物の投与の受容者は,哺乳動物の中で鳥類,硬骨魚,カエル,およびヒキガエルのような,任意の脊椎動物でもあり得る。哺乳動物の中で好ましい受容者は,霊長類(ヒト,ヒトニザル,およびサルを含む),偶蹄類(ウマ,ヤギ,ウシ,ヒツジ,ブタを含む),齧歯類(マウス,ラット,ウサギおよびハムスターを含む),および食肉類(ネコ,およびイヌを含む)の哺乳動物である。鳥類の中で好ましい受容者は,七面鳥,ニワトリおよび他の同目のメンバーである。最も好ましい受容者はヒトである。」(【0198】段落)とあるように,特にヒトを対象とする旨の記載はあるが,人を対象から除く旨の記載はない。したがって,本願発明は,ヒトの治療方法を明らかに包含するものである。
そして,「人間を手術,治療又は診断する方法(医療方法)」の発明を,特許法第29条に規定する「産業上利用することができる発明」に該当しないと解釈することにより特許の対象外とすることは,国民の生命や健康に直結するなどの医療の特質に配慮するという人道上・公共政策上の理由等に基づくものと解されており,東京高裁も,平成12年(行ケ)第65号判決(平成14年4月11日判決言渡)において「ヒトの治療方法を特許することは,医師の行う医療行為自体が侵害となることを防ぐための措置を講じていない我が国の特許法のもとでは,医師を,特許侵害を恐れながら医療行為に当たるという状況に追い込むことになりきわめて不当であるから,特許法は,医療行為そのものに対しては特許性を認めていないと考える以外にないというべきであって,ヒトの治療方法は産業上利用できない発明に該当すると扱わざるを得ない」と判示し,判例上もこのような取扱いは是認されている。
したがって本願補正発明1は,特許法第29条第1項柱書きの「産業上利用できる発明」に該当せず,特許を受けることができない。

4.審判請求理由を補充する手続補正書等における請求人の主張について
請求人は,平成20年6月27日付け意見書及び平成20年10月31日付け審判請求理由を補充する手続補正書において,以下の主張(1),(2)に基づき,補正の却下の決定は不当であることは明白と主張する。

(主張1)請求項1の発明は,ヒトに対する医療行為以外においても産業上利用可能な発明を含むことは明白であり,本願発明は,特許法第29条第1項柱書にいう産業上利用可能な発明を含み,すなわち該当することは明白である。

(主張2)いかなる発明についても,産業上の利用態様でない実施方法は存在することは論理的に自明であるところ,かかる態様の存在をもって,産業上利用可能性がないとすることは,特許法第2条に規定する発明についてすべて特許性を否定することと同義であり,かような審査は特許法第1条および第49条の趣旨にもとるものであり,妥当ではない。

主張1について検討する。
特許法は,ヒトに対する医療行為そのものに対しては特許性を認めていないと考える以外にないから産業上利用できない発明として扱うという趣旨を参酌すれば,治療方法の発明の対象にヒトを包含していれば,それが特許された場合には,医師の医療行為が特許権侵害となり得るのであるから,いかに産業上利用可能な発明が含まれていたとしても,発明全体としてみれば産業上利用できない発明として扱わざるを得ないことは明らかである。
したがって,請求人の主張1は採用することができない。

主張2について検討する。
請求人の主張するように,ほとんどの発明は,個人的に利用したり,学術的,実験的に利用することができるものであり,産業上の利用態様でない実施方法が存在するものであるが,このことは発明が,産業上利用することも,産業上利用しないこともできるというだけのことであり,発明が産業上利用できない発明として扱われるということと,本質的に異なることである。 このことは,例えば,ヒト以外の動物の治療法であれば,飼っているペットを自ら治療するなど,産業上の利用態様でない実施方法が存在したとしても,産業上利用できない発明として扱われないことからも明らかである。
したがって,請求人の主張2は採用することができない。
そして,そもそも補正却下の決定は,「「治療法」の発明には,依然としてヒトに対する医療行為が包含されている」ということに基づいており,請求人が主張するように,産業上の利用態様でない実施方法が存在するから産業上利用可能性がないと判断しているわけではないから,請求人の主張2は当を得たものではない。

以上のとおりであるから,請求人のこれらの主張はいずれも採用することができない。

5.小括
したがって,本件補正後の本願補正発明1は,特許法第29条第1項柱書きの「産業上利用できる発明」に該当せず,特許を受けることができるものでないので,平成20年6月27日付け手続補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定の規定に違反するものであるから,同法第53条第1項の規定により平成20年7月14日付けの補正却下の決定のとおり却下すべきものであって,当該決定に誤りはない。


第3.本願発明について
平成20年7月14日付けの補正却下の決定によって,平成20年6月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されており,当該決定に誤りはないので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,平成19年12月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「【請求項1】 末梢神経系特異的ナトリウムチャンネルポリペプチドを用いる薬物スクリーニング方法および治療法。」


第4.原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由となった,平成19年12月26日付けで通知した拒絶理由の概要は,この出願の発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない(理由1),この出願の発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていない(理由2),この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない(理由3)というものである。


第5.理由2(特許法第29条第1項柱書に規定する要件)についての判断
本願発明1は,第2の3において述べたとおり,ヒトの治療方法を包含すると認められるところ,本願補正発明1について第2の3において検討したとおり,ヒトの治療方法を包含する発明は産業上利用できない発明に該当すると扱わざるを得ないのであるから,本願発明1は,特許法第29条第1項柱書の「産業上利用できる発明」に該当せず,特許を受けることができない。


第6.むすび
以上のとおりであるから,本願請求項1に係る発明は,特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないものであるから,その余の理由について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-12-18 
結審通知日 2009-12-21 
審決日 2010-01-08 
出願番号 特願2006-356815(P2006-356815)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (C07K)
P 1 8・ 575- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森井 隆信  
特許庁審判長 平田 和男
特許庁審判官 上條 肇
鵜飼 健
発明の名称 末梢神経系特異的ナトリウムチャンネル、それをコードするDNA、結晶化、X線回折、コンピューター分子モデリング、合理的薬物設計、薬物スクリーニング、ならびにその製造法および使用法  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  
代理人 森下 夏樹  
代理人 安村 高明  

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