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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1217314
審判番号 不服2008-25945  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-09 
確定日 2010-05-27 
事件の表示 特願2006- 39996「表示制御方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-201181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年4月25日に出願した特願平9-109769号の一部を平成18年2月16日に新たな特許出願としたものであって、平成20年9月3日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成20年9月9日)、これに対し、平成20年10月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年10月21日付で手続補正書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年10月21日付手続補正書で補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「一又は複数の経由点を含む予め設定された経路、及び自車位置に対応する自車位置マークが表示された地図、並びに前記自車位置に最も近い今後通過すべき前記経由点である目標経由点を表示画面に表示する表示制御方法において、
前記目標経由点経由後の自車の進行方向を検出する検出工程と、
前記自車が前記目標経由点を経由する前に、前記経由後の進行方向と反対方向であって、それまでの前記表示画面上の位置とは異なる位置に前記自車位置マークを移動する移動工程と、
を備えることを特徴とする表示制御方法。」
上記補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号に掲げる事項を目的とするものに該当する。


3.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-304097号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「一又は複数の経由点を含む予め設定された経路及び自車位置に対応する自車位置マークが表示された地図と、前記自車位置に最も近い今後通過すべき前記経由点である目標経由点を少なくとも含む前記地図上の所定範囲を拡大した拡大図とを同時に表示装置に表示する表示制御方法において、
前記表示装置の表示画面上における前記拡大図の表示位置に基づき、前記地図を表示する際の当該地図上における表示の中心となるべき表示中心点を、前記表示画面上において、前記拡大図の表示位置に対して前記地図上の表示されるべき部分が表示される方向に移動して当該地図を表示する移動表示工程を備えたことを特徴とする表示制御方法。」(【請求項2】)

b「請求項2に記載の表示制御方法において、
前記移動表示工程においては、前記自車位置マークの表示位置が前記表示装置の表示画面上において前記拡大図が表示される表示範囲内に含まれないように前記地図を表示するとともに、
前記地図上の前記自車位置マークの表示位置に対して、前記経路中における今後通過すべき経路が存在する方向に前記表示中心点を移動して前記地図を表示することを特徴とする表示制御方法。」(【請求項3】)

c「本発明は、表示制御方法及び装置に関し、より詳細には、車両等の自車を目的地に経路誘導するためのナビゲーション装置に用いられる表示制御方法及び装置に関する。」(【0001】)

d「図11に示すように、車載型ナビゲーション装置においては、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory )等に記憶されている地図データから自車位置に対応する地図データが読み出され、読み出された地図データに対応する地図Mと当該自車位置に対応する自車位置マークCとが重畳されてディスプレイD上に表示される。その際には、図11に示す道路Rの他に、当該地図Mの表示範囲に含まれる著名地物等の位置がその名称とともに表示され、更に、図11に示すように、予め設定された目的地までの予定経路PRが、他の道路Rとは異なる表示方法で表示される。このとき、経路PR上には、主要な経由点Pが、経由順を示す番号とともに表示される。」(【0007】)

e「(II)拡大図表示における全体動作の説明
次に、図2に示すフローチャートに基づいて、実施例のナビゲーション装置Sにおける拡大図の表示動作について説明する。なお、図2に示すフローチャートは、拡大図Wを表示せずに通常の地図Mのみを表示しつつ経路誘導が実行されている状態を前提とし、更に、図2のフローチャートで示される動作は、ROM8に格納されたプログラムに基づき、CPU7により実行される。」(【0044】)

f「始めに、地磁気センサ1等の各種センサからのデータに基づいて算出された自車位置に基づき、目標経由点PPとの位置関係(距離)を判断する(ステップS1、S2)。ステップS1及びS2における処理では、自車位置と目標経由点PPとの距離が常に監視され、それが予め設定された所定距離になったか否かが判断されている。そして、所定距離になっていない場合には(ステップS2;NO)そのまま地図Mを表示することにより通常の経路誘導を継続し、所定距離になった場合には(ステップS2;YES)、次のステップS3に移行する。」(【0046】)

g「(IV)表示中心点移動処理
次に、請求項2、3、6及び7に記載の発明に対応する地図Mの表示中心点の移動処理(図2ステップS11参照)について、図5及び図6を用いて説明する。なお、図5及び図6に示す処理は、拡大図Wが表示画面中の右下に表示されること(図11参照)を前提とし、地図M上の表示されるべき部分が拡大図Wによって隠れてしまうことを防止するために、地図Mを当該表示されるべき部分が表示される方向、すなわち、表示画面上左方向に移動するための処理が行われている。また、地図Mの表示においては、自車の進行方向が常に上方向となるように、自車の方向変換に伴い地図Mも回転して表示されているものとする。」(【0065】)

h「なお、上記の説明においては、拡大図Wは、表示画面上右下に表示されるものとし、地図Mの表示中心点の移動量Δxを一定として説明したが、これに限られるものではなく、拡大図Wの表示画面上の表示位置に対応して、今後通過すべき経路PRがより広い範囲で表示されるように、移動方向を決定することもできる。この場合には、ステップS45乃至ステップS48における移動方向の決定の際に、地図上の自車位置マークCの表示位置に対して、経路PRが存在する方向に表示中心点を移動するように移動方向を決定することとなる。」(【0072】)

上記記載及び図6を参照すると、自車位置マークCから目標経由点PPまでの経路と、目標経由点PP経由後の予め設定された目的地までの経路とを含む、今後通過すべき経路PRが、他の道路とは異なる表示方法で表示されているものと認められ、その際、地図上の表示中心点の移動方向を決定するためには、今後通過すべき経路が存在する方向を検出する検出工程が行われているものと認められる。

上記記載事項からみて、引用例には、
「一又は複数の経由点Pを含む予め設定された経路PR、及び自車位置に対応する自車位置マークCが表示された地図M、並びに自車位置に最も近い今後通過すべき前記経由点である目標経由点PPを表示装置に表示する表示制御方法において、
今後通過すべき経路PRが存在する方向を検出する検出工程と、
前記地図M上の前記自車位置マークCの表示位置に対して、今後通過すべき経路PRが存在する方向に前記地図M上の表示中心点を移動して前記地図Mを表示する工程と、
を備える表示制御方法」
との発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されている。


4.対比
そこで、本願発明と引用例発明とを比較すると、引用例発明の「表示装置に表示する」は、本願発明の「表示画面に表示する」に相当する。
引用例発明の「今後通過すべき経路PRが存在する方向を検出する検出工程」と本願発明の「目標経由点経由後の自車の進行方向を検出する検出工程」は、「自車の所定の進行方向を検出する検出工程」との概念で共通している。
引用例発明において、「今後通過すべき経路PR」には、「目標経由点PP」が含まれているから、「今後通過すべき経路PR」に基づく地図の移動が、自車が当該「目標経由点PP」を経由する前になされるものと認められ、また、「自車位置マークCの表示位置に対して、今後通過すべき経路PRが存在する方向に地図M上における表示中心点を移動」することは、自車位置マークCが表示された地図Mの表示中心点を、今後通過すべき方向と反対方向に移動することに等しく、その結果、自車位置マークCの位置が地図Mの移動の前後で異なることも明らかであるから、引用例発明の「地図M上の自車位置マークCの表示位置に対して、今後通過すべき経路PRが存在する方向に前記地図M上における表示中心点を移動して前記地図Mを表示する工程」と、本願発明の「前記自車が前記目標経由点を経由する前に、前記経由後の進行方向と反対方向であって、それまでの前記表示画面上の位置とは異なる位置に前記自車位置マークを移動する移動工程」とは、「自車が目標経由点を経由する前に、自車の所定の進行方向と反対方向であって、それまでの表示画面上の位置とは異なる位置に自車位置マークを移動する移動工程」との概念で共通している。
したがって、両者は、
「一又は複数の経由点を含む予め設定された経路、及び自車位置に対応する自車位置マークが表示された地図、並びに前記自車位置に最も近い今後通過すべき前記経由点である目標経由点を表示画面に表示する表示制御方法において、
自車の所定の進行方向を検出する検出工程と、
前記自車が目標経由点を経由する前に、前記自車の所定の進行方向と反対方向であって、それまでの前記表示画面上の位置とは異なる位置に前記自車位置マークを移動する移動工程と、
を備える表示制御方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
検出工程及び移動工程における「自車の所定の進行方向」に関し、本願発明は、「目標経由点経由後の自車の進行方向」としているのに対し、引用例発明は、「今後通過すべき経路PRが存在する方向」である点。


5.判断
引用例発明において、「今後通過すべき経路PRが存在する方向」は、図6の自車位置から目標経由点PPに進入する経路の方向の他に、図6の目標経由点PP経由後の経路の方向が想定され、上記二者の内どちらを選択するかは、当業者が必要に応じて適宜決定し得るものであり、特に後者の方向を選択するにあたり、格別の技術的困難性を伴うものとも認められない。
また、引用例発明が、自車位置マークCを「今後通過すべき経路PRが存在する方向」に移動する移動工程を行うための前提となる状態は、地図M上に拡大図Wが表示された状態である引用例の図6(b)に示されるものであり、この場合、引用例発明の「今後通過すべき経路PRが存在する方向」は、上記hの「今後通過すべき経路PRがより広い範囲で表示される」との効果を考慮すると、自車位置マークCから目標経由点PPまでの経路は既に全体が表示されているから、目標経由点PP経由後の経路の方向を示さなければ意味がなく、したがって、目標経由点PP経由後の経路の方向は、当業者が必要に応じて適宜選択し得るものと認められる。
そうすると、引用例発明において、検出工程及び移動工程における「自車の所定の進行方向(今後通過すべき経路PRの方向)」を「目標経由点PP経由後の自車の進行方向」に特定することで、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものというべきである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-26 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-13 
出願番号 特願2006-39996(P2006-39996)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 根本 徳子片岡 弘之  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 槙原 進
仁木 浩
発明の名称 表示制御方法及び装置  
代理人 石川 泰男  

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