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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1217357 |
審判番号 | 不服2007-27930 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-11 |
確定日 | 2010-05-26 |
事件の表示 | 特願2003-541225「パケットの順序付けを行う並列パケット変換処理のための方法、システムおよびコンピュータプログラム製品」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 8日国際公開、WO03/39093、平成17年 3月17日国内公表、特表2005-507614〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2001年12月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年10月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年9月6日付け拒絶理由通知に対して、平成19年3月8日付けで手続補正がされたが、同年7月6日付けで拒絶査定され、これに対し、同年10月11日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年11月12日付けで手続補正がされたものである。 第2 補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年11月12日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項28に記載された発明を、 「【請求項27】 複数の並列した、暗号プロセッサを構成している、パケット変換処理ユニットと、 暗号パケットのシリアルストリームを受信して、受信された暗号パケットの順序を特定し、それらの暗号パケットを前記複数のパケット変換処理ユニットに提供して、それらの受信された暗号パケットを並列処理することができるように構成されたパケット入力デマルチプレクサと、 前記複数のパケット変換処理ユニットから処理済みの暗号パケットを受信して前記パケット入力デマルチプレクサによって特定された順序により該処理済みの暗号パケットを出力するように構成されたパケット出力マルチプレクサと を含む、暗号パケットの順序を維持しながら暗号パケットを並列に変換処理する並列パケット変換処理システム。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.新規事項の有無、補正の目的要件について 本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項28に記載された「パケット」に関し、「暗号」と限定を付加し、また、「並列パケット変換処理システム」に関し、「暗号パケットの順序を維持しながら暗号パケットを並列に変換処理する」と限定を付加して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 3.独立特許要件について 本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 (1)補正後の発明 上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。 (2)引用発明 原審の拒絶理由に引用された特開平7-74754号公報(以下、「引用例」という。)には、「パケット交換機の負荷分散制御方式」として図面とともに以下の事項が記載されている。 イ.「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は複数のパケット処理部に負荷分散させるパケット交換機の負荷分散制御方式に関する。」(2頁1欄) ロ.「【0009】図1は本発明のパケット交換機の負荷分散制御方式の一実施例を示すブロック図である。 【0010】本実施例のパケット交換機は、パケット多重通信回線から入力したパケットを同一の論理チャネルに属するデータパケットごとにパケット交換機内で一連番号を付与して分離するとともに、複数のパケット処理部のいずれかで処理した後一連番号に従った出力方路のデータパケット多重通信回線に出力する。 【0011】図1を参照すると、この実施例のパケット交換機は、パケット多重通信回線100,110および120にそれぞれ接続された入出力分離・多重処理部200,210および220と、それぞれ入出力分離・多重処理部200,210および220からの呼設定パケットの論理チャネルの認識を行う入力処理部300,310および320と、内部バス400を通して入力処理部300,310,320と接続されるパケット処理部500,510,520,530および540と、内部バス400を通して入力処理部300,310,320と接続され出力をそれぞれ入出力分離・多重処理部200,210および220に出力する出力処理部600,610および620とで構成される。 【0012】入力処理部300は論理チャネル分離部301と、一連番号付与・振分け部302,303とから構成され、入力処理部310,320も入力処理部300とそれぞれ同様の構成を有する。 【0013】出力処理部600は一連番号整合部601,602と、論理チャネル多重部603とで構成され、同様に出力処理部610は一連番号整合部611,612と、論理チャネル多重部603とで構成され、出力処理部620は一連番号整合部621,622と、論理チャネル多重部623とで構成される。 【0014】続いて本実施例の動作について説明する。 【0015】図1において、パケット多重通信回線100から入力したパケットは本実施例のパケット交換機を通してパケット多重通信回線120に出力するものとする。 【0016】パケット多重通信回線100から入力したパケットは入出力分離・多重処理部200を経由して入力処理部300の論理チャネル分離部301において呼設定パケットの入力時に論理チャネルの認識を行い、この呼において呼設定パケットで要求されたスループットと各パケット処理部の稼働状況とを比較してパケット処理部を選択する。 【0017】本実施例では、一連番号付与・振分け部302と、パケット処理部500およびパケット処理部510と、一連番号整合部621と、論理チャネル多重部623とが選択されたものとする。 【0018】また、呼制御パケットに対する応答パケットを作成するパケット処理部としてパケット処理部500が選択されたものとする。 【0019】すなわち、この論理チャネルに関するパケットで、パケット多重通信回線100から入力したデータパケットは破線矢印で示すように入出力分離・多重処理部200,入力処理部300,内部バス400,パケット処理部500またはパケット処理部510,内部バス400,出力処理部620および入出力分離・多重処理部220を経由してパケット多重通信回線120に出力される。 【0020】逆に、パケット多重通信回線120から入力したデータバケットは入出力分離・多重処理部220,入力処理部320,内部バス400,パケット処理部500またはパケット処理部510,内部バス400,出力処理部600および入出力分離・多重処理部200を経由してパケット多重通信回線100に出力される。 【0021】以降、呼が切断されるまでは、パケット多重通信回線100から入力したデータパケットには論理チャネル分離部301で分離された上記の論理チャネル内の入力パケットごとに一連番号付与・振分け部302において一連の番号を付与する。 【0022】パケット処理部500,510の負荷が均等なときに、データパケットはこの一連番号が奇数番号であればパケット処理部500に送られ、一連番号が偶数番号であればパケット処理部510に送られて処理パケット数も平均化される。 【0023】パケット処理部500またはパケット処理部510は、入力したパケットのパケットレベルでの順序性等のエラーチェックを行い、パケット多重通信回線120からの出力データパケット形式に変換した後に出力処理部620に送出する。」(2頁2欄?3頁4欄) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0010】、【0011】の記載、及び図1によれば、パケット交換機の負荷分散制御方式は、複数の並列した、パケット処理部(500,510)を含んでいる。 また、上記摘記事項ロ.の【0010】?【0012】、【0017】?【0023】の記載、及び図1によれば、パケット交換機の負荷分散制御方式は、入力処理部(300)を含んでおり、入力処理部(300)は、パケットのシリアルストリームを受信して、受信されたパケットの順序を特定し、それらのパケットを複数のパケット処理部(500,510)に提供して、それらの受信されたパケットを並列処理することができるように構成されている。 また、上記摘記事項ロ.の【0010】?【0013】、【0017】?【0023】の記載、及び図1によれば、パケット交換機の負荷分散制御方式は、出力処理部(620)を含んでおり、出力処理部(620)は、複数のパケット処理部(500,510)から処理済みのパケットを受信して入力処理部(300)によって特定された順序により該処理済みのパケットを出力するように構成されている。 したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 「複数の並列した、パケット処理部(500,510)と、 パケットのシリアルストリームを受信して、受信されたパケットの順序を特定し、それらのパケットを前記複数のパケット処理部(500,510)に提供して、それらの受信されたパケットを並列処理することができるように構成された入力処理部(300)と、 前記複数のパケット処理部(500,510)から処理済みのパケットを受信して前記入力処理部(300)によって特定された順序により該処理済みのパケットを出力するように構成された出力処理部(620)と を含むパケット交換機の負荷分散制御方式。」 (3)対比・判断 補正後の発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「パケット処理部(500,510)」と、補正後の発明の「パケット変換処理ユニット」とは、いずれも、「パケット処理手段」という点で一致する。 b.引用発明の「パケット」と、補正後の発明の「暗号パケット」とは、いずれも、「パケット」という点で一致する。 c.引用発明の「入力処理部(300)」及び「出力処理部(620)」は、補正後の発明の「パケット入力デマルチプレクサ」及び「パケット出力マルチプレクサ」にそれぞれ相当する。 d.引用発明の「パケット交換機の負荷分散制御方式」と、補正後の発明の「並列パケット変換処理システム」とは、いずれも、「並列パケット処理システム」という点で一致する。 したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。 (一致点) 「複数の並列した、パケット処理手段と、 パケットのシリアルストリームを受信して、受信されたパケットの順序を特定し、それらのパケットを前記複数のパケット処理手段に提供して、それらの受信されたパケットを並列処理することができるように構成されたパケット入力デマルチプレクサと、 前記複数のパケット処理手段から処理済みのパケットを受信して前記パケット入力デマルチプレクサによって特定された順序により該処理済みのパケットを出力するように構成されたパケット出力マルチプレクサ を含む並列パケット処理システム。」 (相違点1) 「パケット処理手段」に関し、 補正後の発明は、複数の並列した、「暗号プロセッサを構成している」、パケット「変換」処理「ユニット」であるのに対し、 引用発明は、複数の並列した、パケット処理部(500,510)である点。 (相違点2) 「パケット」に関し、 補正後の発明は、「暗号」パケットであるのに対し、 引用発明は、その様なパケットであるか不明な点。 (相違点3) 「並列パケット処理システム」に関し、 補正後の発明は、暗号パケットの順序を維持しながら暗号パケットを並列に変換処理する並列パケット変換処理システムであるのに対し、 引用発明は、その様な処理をするのか否か不明であり、また、パケット交換機の負荷分散制御方式である点。 そこで、まず、上記相違点1及び2について検討する。 パケット処理の態様として、パケットの暗号化処理は、例えば、特開平10-224409号公報の【従来の技術】で引用されているように周知であり、暗号化処理において、複数の並列した、暗号プロセッサを構成しているユニットを用いることも、例えば、特開2001-230771号公報、特開平5-249891号公報に開示されているように周知であって、引用発明に周知技術を採用することに格別の困難性は認められないから、引用発明のパケット処理部に周知技術を適用して、補正後の発明のように「複数の並列した、『暗号プロセッサを構成している』、パケット『変換』処理『ユニット』」とすることは当業者が容易に成し得ることである。そして、引用発明のパケットが、本願明細書の【0030】における「暗号パケットの入力ストリームは、ここでは、アウトバウンドパケット(outbound packets)と称されるそれ以前に(平文から暗号文に)処理されていない未処理のパケットであるか、あるいは、インバウンドパケット(inbound packets)と称される(暗号文から平文に)処理済みのパケットである場合がある。ここ用いられる暗号パケットという用語はインバウンドパケットおよび/またはアウトバウンドパケットを指す。」との記載でいう「暗号」パケットになることも自明なことである。 次に、上記相違点3について検討する。 引用発明は、出力処理部(620)(パケット出力マルチプレクサ)において、特定された順序によりパケットを処理しているところ、出力処理部(620)(パケット出力マルチプレクサ)において、パケットの順序さえ維持すれば、補正後の発明の効果は奏するものであるから、補正後の発明のように「暗号パケットの順序を維持しながら暗号パケットを並列に変換処理する」ことは当業者が適宜成し得ることである。そして、上記相違点1及び2についての検討を踏まえれば、引用発明のパケット交換機の負荷分散制御方式を並列パケット変換処理システムということができることも当然なことである。 そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。 以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.結語 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1.本願発明 平成19年11月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項28に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年3月8日付け手続補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項28に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項28】 複数の並列した、暗号プロセッサを構成している、パケット変換処理ユニットと、 パケットのシリアルストリームを受信して、受信されたパケットの順序を特定し、それらのパケットを前記複数のパケット変換処理ユニットに提供して、それらの受信されたパケットを並列処理することができるように構成されたパケット入力デマルチプレクサと、 前記複数のパケット変換処理ユニットから処理済みのパケットを受信して前記パケット入力デマルチプレクサによって特定された順序により該処理済みのパケットを出力するように構成されたパケット出力マルチプレクサと を含む並列パケット変換処理システム。」 2.引用発明 引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-15 |
結審通知日 | 2009-12-18 |
審決日 | 2010-01-13 |
出願番号 | 特願2003-541225(P2003-541225) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
P 1 8・ 575- Z (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 隆之 |
特許庁審判長 |
竹井 文雄 |
特許庁審判官 |
萩原 義則 柳下 勝幸 |
発明の名称 | パケットの順序付けを行う並列パケット変換処理のための方法、システムおよびコンピュータプログラム製品 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 松島 鉄男 |