• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1217369
審判番号 不服2007-6812  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-07 
確定日 2010-05-28 
事件の表示 特願2003- 43425「半導体製造装置用ウェハ保持体およびそれを搭載した半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-253665〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年2月21日の出願であって、平成19年1月31日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年3月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月6日付けで手続補正がなされ、その後当審において平成21年10月14日付けで審尋がなされたものである。

2.平成19年4月6日付けの手続補正について
【補正の却下の決定の結論】
平成19年4月6日付けの手続補正を却下する。

【理由】
(1)補正の内容
平成19年4月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正するとともに、明細書の0009段落について補正を行うものであり、そのうちの補正前後の特許請求の範囲の請求項1は、以下のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】 ウェハ搭載面を有するウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されており、前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径Lの5%以下であることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」

(補正後)
「【請求項1】 ウェハ搭載面を有するウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合されており、前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、5%以下であることを特徴とする半導体製造装置用ウェハ保持体。」

(2)補正の目的の適否および新規事項の追加の有無についての検討
(2-1)補正後の請求項1は、補正前の請求項1における「前記ウェハ搭載面の直径Lの5%以下」を、「前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、5%以下」と補正したものであるが、そのような補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2-2)そして、「前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、」は、本願の願書に最初に添付した明細書の【発明の詳細な説明】の【0011】及び【0061】段落の記載に基づく補正であり、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(以下「特許法第17条の2第3項」という。)に規定された新規事項の追加禁止の要件を満たしている。

(3)独立特許要件について
(3-1)検討の前提
上記(2)において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものであるから、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて検討する。

(3-2)補正後の請求項1に係る発明
本件補正による補正後の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年4月6日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後の発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記2.(1)の補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(3-3)引用刊行物に記載された発明
(3-3-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成4年10月30日に頒布された刊行物である実願平3-36110号(実開平4-121737号)のマイクロフィルム(以下「引用刊行物」という。)には、図1及び2とともに、以下の事項が記載されている。(なお、下線「 」は、当審において、特に強調する点に付与したものである。以下同様。)

「【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、基板処理加熱装置に関する。さらに詳しくは、この考案は、シリコンウェハ等の半導体基板を均一な面内温度で加熱することのできる基板加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の半導体産業の興隆に伴い、半導体基板の加熱装置は半導体の製造プロセスにおける様々な工程で使用されている。例えば、半導体基板にイオンを注入した後に行われるアニール工程で半導体基板を加熱する場合や、半導体基板の気相ドライエッチングの際にエッチレートを向上させるために半導体基板を加熱する場合や、また、CVD法で半導体基板にSiO2等の薄膜形成の際に、その堆積速度を向上させるために半導体基板を加熱する場合に使用されている。
【0003】
図2は、このような従来の基板加熱装置の説明図であり、加熱時の状態を表している。同図の基板加熱装置は、基板支持搬送手段4、その基板支持搬送手段4を上下に動かすための駆動装置5、ヒーター6が内臓された半導体基板10を加熱するための加熱保持台7から構成されており、加熱保持台の中心部は貫通口が開けられ、その中に基板支持搬送手段4が上下可動に配設されている。そして、この基板加熱装置は、開閉可能なゲート9が設置された加熱チャンバー8の中に収められている。」
「【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の基板加熱装置においては、図2に示すように、半導体基板10が加熱保持台7に載置されて加熱されるときに、基板支持搬送手段4とも接触しており、しかも基板支持搬送手段4が金属から構成されているので、基板支持搬送手段7(審決注:「基板支持搬送手段4」の誤記。以下同じ。)がヒートシンクとして機能してしまうこととなる。その結果、基板支持搬送手段7と接触している部分の半導体基板10の温度が、加熱保持台7と接触している部分の半導体基板10の温度より低くなり、半導体基板の面内温度が不均一となる。このため、こうような従来の基板加熱装置を用いて半導体基板をアニールすると半導体基板内に局部熱応力が生じ、スリップライン等の結晶欠陥生じたり、また、半導体基板を気相ドライエッチング処理するとエッチングレートが半導体基板の面内で不均一となったり、或いは半導体基板上にCVD法で薄膜を形成すると膜厚が不均一になったりするという問題点があった。
【0008】
この考案は以上のような従来技術の課題を解決しようとするものであり、シリコンウェハ等の基板を均一な面内温度で加熱することのできる基板加熱装置を提供することを目的としている。」
「【0014】
【実施例】
以下、この考案を実施例により具体的に説明する。
【0015】
図1はこの考案の基板加熱装置に使用する基板支持搬送手段1の一態様の斜視図であるが、この考案の基板加熱装置は、図2の基板支持搬送手段4を図1に示す基板支持搬送手段1に代える以外は図2に示す構成と同じであり、また基板の加熱処理の方法も図2について説明した通りである。
【0016】
図1において、この考案を特徴づける基板支持搬送手段1は、シリコンウェハやGaAsウェハ等の半導体基板と接する側を熱伝導性の高い円板状の部材2で構成し、その部材2を支持する円柱状の部分を熱伝導性の低い部材3で構成する。なお、熱伝導性のよい部材2の形状は円板状に限らず、その半導体基板と接する面も必ずしも平板状でなくともよい。半導体基板を安定に支持できる形状である限り種々の形状とすることができる。また、熱伝導性の低い部材1の形状も円柱状に限らず、部材2を支持できる限り種々の形状とすることができる。」
「【0019】
部材1(審決注:「部材3」の誤記。)と部材2の一体化は、当業者に公知の方法で一体化することができる。例えば、部材2を金属製とし、部材1をセラミックス製とした場合、金属製の部材2に複数の凹部を設け、一方、セラミックス製の部材1にも、金属製の部材2の凹部に嵌合するように凸部を設け、両者を嵌合すればよい。」

(3-3-2)上記記載からみて、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。

「半導体基板と接する側を有する円板状の部材2とその部材2を支持する円柱状の部材3が一体化された基板支持搬送手段1。」

(3-4)対比・判断
(3-4-1)刊行物発明における「半導体基板と接する側を有する円板状の部材2」、「その部材2を支持する円柱状の部材3」及び「基板支持搬送手段1」は、補正後の発明の「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体」、「シャフト」及び「半導体製造装置用ウェハ保持体」にそれぞれ相当する。

(3-4-2)引用刊行物には、「部材1と部材2の一体化は、当業者に公知の方法で一体化することができる。・・・」(【0019】)と記載されていることから、刊行物発明の「円板状の部材2」と「円柱状の部材3」は、接合されていることは明らかである。

(3-4-3)すると、補正後の発明と刊行物発明とは、
「ウェハ搭載面を有するウェハ保持体を支持するシャフトが前記ウェハ保持体に接合された半導体製造装置用ウェハ保持体。」である点で一致し、次の点で一応相違する。

(相違点)
補正後の発明では、「前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、5%以下である」のに対して、刊行物発明では、「円板状の部材2」の中心軸と「円柱状の部材3」の中心軸との距離と、円板状の部材2の半導体基板と接する面の直径との関係について、特定されていない点。

(3-4-4)上記形式上の相違点について、以下、検討する。
一般に、シャフト状の部分とその端部に設けられた円盤状の部分とからなり、円盤状の部分に物体を載せたり、円盤状の部分から外部に力を加えたりする装置において、特段の事情がない限り、バランスが良好となるよう、円盤状の部分の中心とシャフト状の部分の中心とをできるだけ合わせるようにすることは、例えば、燭台、シャンパングラス、注射器等に見られるように、古来周知の技術である。
したがって、刊行物発明において、「円盤状の部材2」と「円柱状の部材3」の中心軸とはほぼ一致している(すなわち、「円盤状の部材2」の中心軸と「円柱状の部材3」の中心軸との距離は、「円盤状の部材2」の直径に対して非常に小さい。)ものと認められる。
また、刊行物発明において、「円盤状の部材2」と「円柱状の部材3」の中心軸とが完全に一致している(すなわち、「円盤状の部材2」の中心軸と「円柱状の部材3」の中心軸との距離は、「円盤状の部材2」の直径に対して「0%」である。)ことがあり得ないことは当業者にとって自明である。
したがって、刊行物発明においても、補正後の発明と同様に、「前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径に対して0%を越え、5%以下である」ものと解されるから、刊行物発明と補正発明との間に相違点は存在しない。
また、仮に、刊行物発明と補正後の発明との間に相違点が存在しないとまではいえないものであったとしても、補正後の発明は、明細書の【0007】段落にも記載されているように、「ウェハ保持面の均熱性を高めた半導体製造装置用ウェハ保持体およびそれを搭載した半導体製造装置を提供することを目的とする」ものであるところ、ウエハ保持面の均熱性(熱の流れ)は、ウエハ保持面に載置されるウエハとウエハ保持体内に埋設される抵抗発熱体との位置関係、ウエハ保持体及びシャフトの材質、シャフトの直径(シャフトが円筒状の場合には、円筒の厚さ)などにより決まるものと認められるが、補正後の請求項1には、そもそも抵抗発熱体が記載されておらず、ウエハ保持体及びシャフトの材質、シャフトの直径も記載されていない。そして、これらが特定されていない以上、「前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、5%以下である」ということのみを限定したとしても、本件明細書に記載されたような効果を奏するものではないことは、明らかであるから、補正後の発明において、「前記シャフトの中心軸と前記ウェハ搭載面の中心軸との距離aが、前記ウェハ搭載面の直径Lに対して0%を超え、5%以下である」ことの臨界的意義は認められない。
したがって、相違点は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。
以上のとおりであるから、相違点は存在しないか、仮に存在しないとまではいえないものであったとしても、実質的なものではない。

(3-5)独立特許要件についてのまとめ
以上、検討したとおり、補正後の発明と刊行物発明との相違点は、実質的なものでなく、補正後の発明は、引用刊行物に記載された発明であると認められるので、補正後の発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。
したがって、本件補正は、補正後の発明が、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないものである。

(4)補正の却下の決定についてのむすび
本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するが、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成19年4月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本願の願書に最初に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される上記2.(1)の補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

4.引用刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物には、上において検討したとおり、上記2.(3-3-1)に記載したとおりの事項及び上記2.(3-3-2)において認定したとおりの発明が記載されているものと認められる。

5.判断
上記2.(2)において検討したとおり、補正後の発明は、本願発明を限定的に減縮したものであるところ、上記2.(3)において検討したように、補正後の発明が、引用刊行物に記載された発明である以上、本願発明も、当然に引用刊行物に記載された発明であると認められるので、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-10 
結審通知日 2010-03-09 
審決日 2010-03-23 
出願番号 特願2003-43425(P2003-43425)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大嶋 洋一  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 小野田 誠
加藤 俊哉
発明の名称 半導体製造装置用ウェハ保持体およびそれを搭載した半導体製造装置  
代理人 二島 英明  
代理人 中野 稔  
代理人 山口 幹雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ