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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1217372
審判番号 不服2007-15394  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-31 
確定日 2010-05-28 
事件の表示 特願2002-171919「データ送信装置、データ受信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月22日出願公開、特開2004- 23187〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 経緯
1 手続
本願は、平成14年6月12日の出願であって、平成18年12月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、平成19年3月9日付けで意見書が提出されると同時に手続補正がなされたが、平成19年4月25日付け(発送日同年5月1日)で拒絶査定がなされたものである。
本件は、本願についてなされた上記拒絶査定を不服として平成19年5月31日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、平成19年7月2日付けで手続補正がなされたものである。

2 査定
原査定の理由は、概略、以下のとおりである。

A.この出願は、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

B.この出願の請求項1?35に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


1.特願2002-576429号(特許第3718836号公報)

第2 本願発明
本願の請求項1から33に係る発明は、平成19年7月2日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から33に記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「デジタルディスプレイ接続用のインターフェースを用いたディジタル信号伝送システムにおいて用いられるデータ送信装置であって、
映像・音声信号源からディジタルオーディオデータを取り込むデータ取り込み手段と、
前記データ取り込み手段が取り込んだディジタルオーディオデータを加工して伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段と、
映像データの映像ブランキング期間に前記伝送用のオーディオデータを重畳する映像・オーディオデータ重畳手段と、
前記伝送用のオーディオデータを重畳した映像データ、映像ブランク同期信号、及び映像データ用のピクセルクロックを、データ受信装置に対して送信するデータ送信手段と、
を備え、
前記伝送用のオーディオデータは、データ受信装置においてディジタルオーディオデータの再生に用いるオーディオクロックを、前記映像データ用のピクセルクロックを分周して生成するときに使われるパラメータN、及び逓倍して生成するときに使われるパラメータCTS(N、CTSは共に正の整数)を含むものであり、
前記パラメータNは、前記ピクセルクロックと前記オーディオクロックの組合せを基に決定する所定の値であり、
前記パラメータCTSが、
CTS=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たすとともに、
300(Hz) ≦ オーディオクロック(Hz)/N ≦ 3000(Hz)
の関係を満たす、
ことを特徴とするデータ送信装置。」

第3 先願発明
1 先願明細書の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の日前の他の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行された特願2002-576429号(特許第3718836号公報)の願書に最初に添付された明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には、次に揚げる事項が記載されている。なお、摘示箇所は国際公開2002/078336号による。

(ア)「本実施の形態によるディジタル信号送受信システムは、ビデオテープ記録再生装置、ビデオディスク再生装置、チューナーなどの映像・音声信号源から出力される映像データ,およびオーディオデータを、表示装置として音声出力機能を有するモニタ受像機、テレビジョン受像機などの表示装置に対し、1つの伝送ケーブルを使用して伝送するようにしたものである。この伝送ケーブルとしては、DVI(Digital Visual Interface)と称される規格でデータが伝送されるケーブルを使用する。」(7頁2?8行)

(イ)「第1図は本実施の形態によるディジタル信号伝送システムの全体構成を示す図である。図において、101はビデオテープ記録再生装置、ビデオディスク再生装置、チューナーなどの映像・音声信号源、102は映像・音声信号源から出力される映像データとオーディオデータを重畳してDVI用ケーブルに送出するデータ送信装置、103はDVI用ケーブル、104はDVI用ケーブル103により伝送された映像・オーディオデータ重畳信号を受信し、映像データとアナログオーディオ信号を出力するデータ受信装置、105はデータ受信装置から映像データとアナログオーディオ信号を受け取り映像および音声の表示を行う映像音声表示装置である。DVI用ケーブル103が接続されるデータ送信装置102及びデータ受信装置104のコネクタ部は、たとえば24本のピンコネクタで構成され、ケーブル103によりデータ送信装置102のコネクタの24本のピンとデータ受信装置104のコネクタの24本のピンが個別に接続される。」(7頁9?20行)

(ウ)「第2図は第1図中のデータ送信装置の構成を示すブロック図である。図において、201は映像・音声信号源から出力されるディジタルオーディオデータを取り込むオーディオデータ取り込み手段、202は映像・音声信号源から出力される映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて分周パラメータを決定する分周パラメータ決定手段である。203はオーディオデータ取り込み手段201が取り込んだディジタルオーディオデータに対し分周パラメータ決定手段202が決定した分周パラメータ等の情報を付加するなどの処理を行い、伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段、204はオーディオデータ加工手段により生成された伝送用のオーディオデータを一時記憶するデータ記憶手段、205は映像・音声信号源から出力される水平ブランク同期信号,及び映像のピクセルクロックを用いてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を用いて、データ記憶手段204に記憶された伝送用のオーディオデータを、映像・音声信号源から出力される映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳して映像・オーディオデータ重畳信号を生成する映像・オーディオデータ重畳手段である。また、206はオーディオデータの入力端子、207は映像データの入力端子である。」(7頁21行?8頁7行)

(エ)「分周パラメータ決定手段202は、映像・音声信号源から出力される映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて分周パラメータを決定する。受信側においてディジタルオーディオデータをアナログオーディオ信号として再生する際には、オーディオクロックが必要となるが、本実施の形態によるディジタル信号伝送システムでは後述するように、受信側において、送信側から伝送されるピクセルクロックを分周することによってオーディオクロックを生成し、これをオーディオデータの再生に用いる。ピクセルクロックをもとに、オーディオクロックを生成するので、ジッタなどが発生しやすく、オーディオクロック精度が下がる可能性があるが、それを防いでオーディオクロックを精度良く生成するため本実施の形態によるディジタル信号伝送システムでは、映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決まる分周パラメータを受信側に対して伝送し、受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行う。分周パラメータは、上述のように映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて一意的に決まる。ここでは、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものをオーディオクロックとし、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値を分周パラメータNとする。例えば、画像データが480Pの画質のものであればピクセルクロックは27.000MHzであるが、これに対しオーディオデータのサンプリング周波数が48kHzであれば分周パラメータNは6144であり、オーディオデータのサンプリング周波数が44.1kHzであれば分周パラメータNは6272である。また、画像データが1080Iの画質のものであればピクセルクロックは74.176MHzであるが、これに対しオーディオデータのサンプリング周波数が48kHzであれば分周パラメータNは11648であり、オーディオデータのサンプリング周波数が44.1kHzであれば分周パラメータNは17836である。分周パラメータ決定手段202はこのような分周パラメータの値をテーブルとして保持しておき、映像・音声信号源から与えられるピクセルクロックの周波数,及びオーディオデータのプリアンブルに記述されたサンプリング周波数に基づいて該当する分周パラメータの値をテーブルから読み出してオーディオデータ加工手段203に対して出力する。」(8頁19行?9頁16行)

(オ)「オーディオデータ取り込み手段201によって取り込まれたディジタルオーディオデータは、オーディオデータ加工手段203に出力される。オーディオデータ加工手段203は、オーディオデータ取り込み手段201から受け取ったディジタルオーディオデータに対し、分周パラメータ決定手段202で決定された分周パラメータや加工後のデータ長等の情報を含むヘッダを付加し、また、データの多ビット化等、データ伝送に適した形態への変換処理を行って、伝送用オーディオデータを生成する。オーディオデータ加工手段203で生成された伝送用オーディオデータは、データ記憶手段204に一時記憶され、映像・オーディオデータ重畳手段から出力されるオーディオデータ重畳タイミングにあわせた読み込み信号に従い、映像・オーディオデータ重畳手段205に入力される。」(9頁20?29行)

(カ)「映像データ入力端子207には、DVI規格で符号化された映像データが映像・音声信号源の映像処理部(図示せず)から供給される。映像データ入力端子207に供給される映像データは、映像・オーディオデータ重畳手段205に入力される。映像・オーディオデータ重畳手段205はオーディオデータを映像データに多重化する合成処理を行い、合成されたデータをDVIケーブルに送出する。」(10頁1?6行)

(キ)「映像・オーディオデータ重畳手段205は、映像・音声信号源から与えられる水平ブランク同期信号とピクセルクロックを用いてオーディオデータの重畳タイミング信号を生成する。すなわち、水平ブランク同期信号を受けた時からピクセルクロックを予め定められた個数であるn個をカウントしたタイミングで読み込み信号をデータ記憶手段204に対して出力する。データ記憶手段204に一時記憶された伝送用オーディオデータは、映像・オーディオデータ重畳手段から出力される読み込み信号に応じてデータ記憶手段204から映像・オーディオデータ重畳手段205に入力され、映像データの水平ブランキング期間の所定の位置に重畳される。」(10頁24行?11頁3行)

(ク)「本実施の形態のデータ送信装置は、上述のようにオーディオデータを映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳した映像・オーディオデータ重畳信号を、水平ブランク同期信号やピクセルクロックとともにDVI用ケーブルを介してデータ受信装置に対して伝送する。」(11頁11?14行)

(ケ)「また、上述した実施の形態では、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものをオーディオクロックとし、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値を分周パラメータNとしてこれをオーディオデータに付加して伝送するものについて説明したが、この分周パラメータNとともに、さらに、
M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たすMの値も同時に情報としてオーディオデータに付加して伝送するようにしてもよい。これにより受信側のオーディオクロックの位相を送信側のオーディオクロックの位相に合わせることが可能となる。」(15頁11?19行)

2 先願発明
先願明細書に記載されたディジタル信号伝送システムにおけるデータ伝送装置102は、映像・音声信号源101から出力される映像データ,およびオーディオデータを、表示装置として音声出力機能を有する映像音声表示装置105にDVI(Digital Visual Interface)と称される規格でデータが伝送されるケーブルを使用して伝送するものである(上記(ア)、(イ)及び第1図)。
データ伝送装置102は、
映像・音声信号源から出力されるディジタルオーディオデータを取り込むオーディオデータ取り込み手段201、
映像・音声信号源から出力される映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて分周パラメータを決定する分周パラメータ決定手段202、
オーディオデータ取り込み手段201が取り込んだディジタルオーディオデータに対し分周パラメータ決定手段202が決定した分周パラメータ等の情報を付加するなどの処理を行い、伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段203、
オーディオデータ加工手段により生成された伝送用のオーディオデータを一時記憶するデータ記憶手段204、
映像・音声信号源から出力される水平ブランク同期信号,及び映像のピクセルクロックを用いてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を用いて、データ記憶手段204に記憶された伝送用のオーディオデータを、映像・音声信号源から出力される映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳して映像・オーディオデータ重畳信号を生成する映像・オーディオデータ重畳手段205からなる(上記(ウ)及び第2図)。
データ伝送装置102は、オーディオデータを映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳した映像・オーディオデータ重畳信号を、水平ブランク同期信号やピクセルクロックとともにDVI用ケーブルを介してデータ受信装置に対して伝送する(上記(ク))。

分周パラメータは、映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決まり、その分周パラメータを受信側に対して伝送し、受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行うものである。オーディオクロックは、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであり、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値を分周パラメータNとする。分周パラメータ決定手段202はこのような分周パラメータの値をテーブルとして保持しておき、映像・音声信号源から与えられるピクセルクロックの周波数,及びオーディオデータのプリアンブルに記述されたサンプリング周波数に基づいて該当する分周パラメータの値をテーブルから読み出してオーディオデータ加工手段203に対して出力する(上記(エ))。
分周パラメータNとともに、さらに、
M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たすMの値も同時に情報としてオーディオデータに付加して伝送し、これにより受信側のオーディオクロックの位相を送信側のオーディオクロックの位相に合わせることが可能となる(上記(ケ))。

具体的な数値として、次の4つが示されている(上記(エ))。
(a)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:6144
(b)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:6272
(c)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:11648
(d)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:17836

以上より、先願明細書には次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。

「DVI(Digital Visual Interface)と称される規格でデータが伝送されるディジタル信号伝送システムにおけるデータ伝送装置102であって、
映像・音声信号源から出力されるディジタルオーディオデータを取り込むオーディオデータ取り込み手段201、
オーディオデータ取り込み手段201が取り込んだディジタルオーディオデータに対し分周パラメータ決定手段202が決定した分周パラメータ等の情報を付加するなどの処理を行い、伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段203、
映像・音声信号源から出力される水平ブランク同期信号,及び映像のピクセルクロックを用いてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を用いて、データ記憶手段204に記憶された伝送用のオーディオデータを、映像・音声信号源から出力される映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳して映像・オーディオデータ重畳信号を生成する映像・オーディオデータ重畳手段205からなり、
データ伝送装置102は、オーディオデータを映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳した映像・オーディオデータ重畳信号を、水平ブランク同期信号やピクセルクロックとともにDVI用ケーブルを介してデータ受信装置に対して伝送するものであり、
分周パラメータは、映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決まり、その分周パラメータを受信側に対して伝送し、受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行うものであり、
オーディオクロックは、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであり、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値を分周パラメータNとし、
分周パラメータNとともに、さらに、
M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たすMの値も同時に情報としてオーディオデータに付加して伝送し、これにより受信側のオーディオクロックの位相を送信側のオーディオクロックの位相に合わせることが可能となるようにし、
ピクセルクロック、オーディオデータのサンプリング周波数、分周パラメータNの値が次の(a)?(d)のうちの一つとする
ことを特徴とするデータ伝送装置。
(a)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:6144
(b)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:6272
(c)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:11648
(d)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:17836」

第4 対比・判断
1 対比・判断
(1)「デジタルディスプレイ接続用のインターフェースを用いたディジタル信号伝送システムにおいて用いられるデータ送信装置」
先願発明の「DVI(Digital Visual Interface)」は、「デジタルディスプレイ接続用のインターフェース」といえるので、先願発明の「DVI(Digital Visual Interface)と称される規格でデータが伝送されるディジタル信号伝送システムにおけるデータ伝送装置102」は、本願発明の「デジタルディスプレイ接続用のインターフェースを用いたディジタル信号伝送システムにおいて用いられるデータ送信装置」と一致する。

(2)「映像・音声信号源からディジタルオーディオデータを取り込むデータ取り込み手段」
先願発明の「映像・音声信号源から出力されるディジタルオーディオデータを取り込むオーディオデータ取り込み手段201」は、本願発明の「映像・音声信号源からディジタルオーディオデータを取り込むデータ取り込み手段」と一致する。

(3)「前記データ取り込み手段が取り込んだディジタルオーディオデータを加工して伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段」
先願発明の「オーディオデータ加工手段203」は、「オーディオデータ取り込み手段201が取り込んだディジタルオーディオデータに対し分周パラメータ決定手段202が決定した分周パラメータ等の情報を付加するなどの処理を行い、伝送用のオーディオデータを生成する」もので、ディジタルオーディオデータを加工しているといえるので、本願発明の「前記データ取り込み手段が取り込んだディジタルオーディオデータを加工して伝送用のオーディオデータを生成するオーディオデータ加工手段」と一致する。

(4)「映像データの映像ブランキング期間に前記伝送用のオーディオデータを重畳する映像・オーディオデータ重畳手段」
先願発明の「映像・オーディオデータ重畳手段205」は、「映像・音声信号源から出力される水平ブランク同期信号,及び映像のピクセルクロックを用いてタイミング信号を生成し、このタイミング信号を用いて、データ記憶手段204に記憶された伝送用のオーディオデータを、映像・音声信号源から出力される映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳して映像・オーディオデータ重畳信号を生成する」から、本願発明の「映像データの映像ブランキング期間に前記伝送用のオーディオデータを重畳する映像・オーディオデータ重畳手段」と一致する。

(5)「前記伝送用のオーディオデータを重畳した映像データ、映像ブランク同期信号、及び映像データ用のピクセルクロックを、データ受信装置に対して送信するデータ送信手段」
先願発明の「データ伝送装置102」は、「オーディオデータを映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳した映像・オーディオデータ重畳信号を、水平ブランク同期信号やピクセルクロックとともにDVI用ケーブルを介してデータ受信装置に対して伝送するもの」であるから、「オーディオデータを映像データの水平ブランキング期間の所定位置に重畳した映像・オーディオデータ重畳信号」、「水平ブランク同期信号」、「ピクセルクロック」をデータ受信装置に対して伝送する手段を有していることは明らかで、この手段は、本願発明の「前記伝送用のオーディオデータを重畳した映像データ、映像ブランク同期信号、及び映像データ用のピクセルクロックを、データ受信装置に対して送信するデータ送信手段」に一致する。

(6)「パラメータN」「パラメータCTS」
(6-1)「パラメータN」
先願発明の「分周パラメータN」は、
「映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決まり、その分周パラメータを受信側に対して伝送し、受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行うものであり、
オーディオクロックは、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであり、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値」である。
「オーディオクロック」は、「オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであ」るから、「オーディオデータのサンプリング周波数」により一義的に決まるものである。
そうすると、先願発明の「分周パラメータN」は、「映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決ま」るものであり、「オーディオクロック」は、「オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであ」るから、「前記ピクセルクロックと前記オーディオクロックの組合せを基に決定する所定の値」といえる。 したがって、先願発明の「分周パラメータN」は、本願発明の「パラメータN」と一致する。

(6-2)「パラメータCTS」
先願発明の「M」は、
「M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック」
の関係を満たすものであり、先願発明の「分周パラメータN」は、「オーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値」であるから、「分周パラメータN」と「M」は正の整数である。
また、先願発明の「M」は「分周パラメータNとともに」「(同時に)情報としてオーディオデータに付加して伝送」されるものである。
よって、先願発明の「M」は、本願発明の「パラメータCTS」に一致する。
先願発明の「分周パラメータN」と「M」は、「オーディオデータに付加して伝送」され、「受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行うものであり」、「これにより受信側のオーディオクロックの位相を送信側のオーディオクロックの位相に合わせることが可能となるようにし」ているから、本願発明の「前記伝送用のオーディオデータは、データ受信装置においてディジタルオーディオデータの再生に用いるオーディオクロックを、前記映像データ用のピクセルクロックを分周して生成するときに使われるパラメータN、及び逓倍して生成するときに使われるパラメータCTS(N、CTSは共に正の整数)を含むものであ」ると一致する。

(6-3)
以上より、先願発明の
「分周パラメータは、映像のピクセルクロックとオーディオデータのサンプリング周波数に基づいて決まり、その分周パラメータを受信側に対して伝送し、受信側でこの分周パラメータを用いて送信側から伝送されるピクセルクロックを分周し、オーディオクロックの生成を行うものであり、
オーディオクロックは、オーディオデータのサンプリング周波数を128倍したものであり、このオーディオクロックとピクセルクロックの最小公倍数にするためにピクセルクロックに掛ける値を分周パラメータNとし、
分周パラメータNとともに、さらに、
M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たすMの値も同時に情報としてオーディオデータに付加して伝送し、これにより受信側のオーディオクロックの位相を送信側のオーディオクロックの位相に合わせることが可能となるように」するは、
本願発明の
「前記伝送用のオーディオデータは、データ受信装置においてディジタルオーディオデータの再生に用いるオーディオクロックを、前記映像データ用のピクセルクロックを分周して生成するときに使われるパラメータN、及び逓倍して生成するときに使われるパラメータCTS(N、CTSは共に正の整数)を含むものであり、
前記パラメータNは、前記ピクセルクロックと前記オーディオクロックの組合せを基に決定する所定の値であり、
前記パラメータCTSが、
CTS=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
の関係を満たす」
と一致する。

(7)「オーディオクロック(Hz)/N」
先願発明は、ピクセルクロック、オーディオデータのサンプリング周波数、分周パラメータNの値として(a)?(d)の4つの場合がある。
(a)?(d)の場合について、
オーディオクロック、
オーディオクロック/N、
M=ピクセルクロック×N/オーディオクロック
を計算すると,次のとおりである。(c)、(d)におけるピクセルクロック(画像データが1080Iの画質のもの)は74.176MHzであるが、正確には74.25/1.001MHzであるので、この値を用いた。
(a)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:6144
オーディオクロック:48000×128
オーディオクロック/N:48000×128/6144=1000
M:27MHz×6144/(48000Hz×128)=27000
(b)ピクセルクロック:27.000MHz(画像データが480Pの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:6272
オーディオクロック:44100×128
オーディオクロック/N:44100×128/6272=900
M:27MHz×6272/(44100Hz×128)=30000
(c)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:48kHz
分周パラメータN:11648
オーディオクロック:48000×128
オーディオクロック/N:48000×128/11648=527.4725
M:74.25MHz/1.001×11648/(48000Hz×128)=140625
(d)ピクセルクロック:74.176MHz(画像データが1080Iの画質のもの)
オーディオデータのサンプリング周波数:44.1kHz
分周パラメータN:17836
オーディオクロック:44100×128
オーディオクロック/N:44100×128/17836=316.4835
M:74.25MHz/1.001×17836/(44100Hz×128)=234375

(a)?(d)における「オーディオクロック/N」の値は、
「300(Hz) ≦ オーディオクロック(Hz)/N ≦ 3000(Hz)」
の関係を満たす。
したがって、先願発明の(a)?(d)の4つの場合の「オーディオクロック/N」の値は、
「300(Hz) ≦ オーディオクロック(Hz)/N ≦ 3000(Hz)」
の関係を満たすから、本願発明と一致する。

(8)まとめ
以上より、本願発明は、先願発明と一致する。

2 請求人の主張について
請求人は、請求の理由において、「先願1には」(上記第1の2のB.に記載された特許出願)「分周パラメータNのとり得る値を、300Hz≦オーディオクロック/N≦3000Hzに限定するもの、及び該数値限定の技術的意義については一切開示されておりません。」と主張している。
しかしながら、上記第4の1に記載のとおり、本願発明は先願発明と同一であり、「分周パラメータNのとり得る値を、300Hz≦オーディオクロック/N≦3000Hzに限定するもの、及び該数値限定の技術的意義については一切開示されて」いないことは、本願発明が先願発明と同一でないことの理由にならないから、請求人の主張は採用できない。

3 発明者、出願人
本願発明の発明者と、先願発明の発明者とは同一でない。
また、本願の出願時に、本願の出願人と、本願の日前の他の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行された特願2002-576429号(以下「他の出願」という。)の出願人とは同一でない。

4 まとめ
したがって、本願の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の請求項1に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願出願時にその出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本願の請求項1に係る発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また、本願出願時にその出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条の2第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2から32に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のように審決する。
 
審理終結日 2010-03-24 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-14 
出願番号 特願2002-171919(P2002-171919)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 夏目 健一郎
小池 正彦
発明の名称 データ送信装置、データ受信装置  
代理人 早瀬 憲一  

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