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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60K 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B60K |
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管理番号 | 1217569 |
審判番号 | 不服2008-24094 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-09-19 |
確定日 | 2010-05-06 |
事件の表示 | 平成10年特許願第534667号「自動車用マルチメディア情報および制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月13日国際公開、WO98/34812、平成14年 2月19日国内公表、特表2002-505631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、1998年1月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年1月28日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成19年8月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成19年12月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年9月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成20年10月17日付けで明細書の特許請求の範囲について手続補正がなされると共に同日付けで審判請求書の請求の理由についての手続補正がなされ、その後、当審において平成21年8月3日付けで書面による審尋がなされたものである。 第2 平成20年10月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年10月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] [1]補正の内容 平成20年10月17日付けの明細書の特許請求の範囲についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年12月13日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1ないし12を下記の(b)に示す請求項1ないし12と補正するものである。 (a)本件補正前の特許請求の範囲 「【請求項1】車両の所定の機能に関連する情報にアクセスするための車両内システムであって、 前記車両の所定の機能に関連し、第一の状態を含む少なくとも一つのオプションを表示するための表示素子と、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択手段と、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給するための出力装置と、 前記情報にアクセスするために、前記少なくとも一つのオプションを作動する作動手段と、を含み、 前記選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、 前記作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示すことを特徴とするシステム。 【請求項2】前記情報が、前記車両の所定の機能を操作する指示を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項3】少なくとも前記第一、第二及び第三の状態の一つが、予め選択したオーディオ信号によって示されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項4】前記第二の状態が、第一の色で、前記選択されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項5】前記第三の状態が、第二の色で、前記作動されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。 【請求項6】前記表示素子が、車両の複数の機能の少なくとも一つの操作に関する指示を供給するための早分かりオプションも表示し、この早分かりオプションの表示は選択されたオーディオ信号を伴うことを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項7】車両内のシステムで使用するための方法であって、 前記車両の所定の機能に関連し、第一の状態を含む少なくとも一つのオプションを表示するステップと、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択ステップと、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給する供給ステップと、 前記情報にアクセスするために、前記選択された少なくとも一つのオプションを作動する作動ステップと、を含み、 前記選択ステップで選択された少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、 前記作動ステップで作動されたオプションが第三の状態を示すことを特徴とする方法。 【請求項8】前記情報が、前記車両の所定の機能を操作する指示を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項9】少なくとも前記第一、第二及び第三の状態の一つが、予め選択したオーディオ信号によって示されることを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項10】前記第二の状態が、第一の色で、前記選択されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。 【請求項11】前記第三の状態が、第二の色で、前記作動されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項12】前記表示素子が、車両の複数の機能の少なくとも一つの操作に関する指示を供給するための早分かりオプションも表示し、この早分かりオプションの表示は選択されたオーディオ信号を伴うことを特徴とする請求項7に記載の方法。」 (b)本件補正後の特許請求の範囲 「【請求項1】 車両の所定の機能に関連する情報にアクセスするための車両内システムであって、 前記車両の所定の機能に関連する視覚的表示と、前記車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションとを、別個に且つ第一の状態を含んで表示するための表示素子と、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択手段と、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給するための出力装置と、 前記情報にアクセスするために、前記少なくとも一つのオプションを作動する作動手段と、を含み、 前記選択手段によって前記少なくとも一つのオプションが選択されると、前記視覚的表示と前記少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、 前記作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示すことを特徴とするシステム。 【請求項2】 前記情報が、前記車両の所定の機能を操作する指示を含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 少なくとも前記第一、第二及び第三の状態の一つが、予め選択したオーディオ信号によって示されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項4】 前記第二の状態が、第一の色で、前記選択されたオプションと前記視覚的表示を強調することにより示されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項5】 前記第三の状態が、第二の色で、前記作動されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項4に記載のシステム。 【請求項6】 前記表示素子が、車両の複数の機能の少なくとも一つの操作に関する指示を供給するための早分かりオプションも表示し、この早分かりオプションの表示は選択されたオーディオ信号を伴うことを特徴とする請求項1に記載のシステム。 【請求項7】 表示素子を含み、車両の所定の機能に関連する情報にアクセスするための車両内システムで使用するための方法であって、 前記表示素子に、前記車両の所定の機能に関連する視覚的表示と、前記車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションとを、別個に且つ第一の状態を含んで表示するステップと、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択ステップと、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給する供給ステップと、 前記情報にアクセスするために、前記選択された少なくとも一つのオプションを作動する作動ステップと、を含み、 前記選択ステップで前記少なくとも一つのオプションが選択されると、前記視覚的表示と前記少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、 前記作動ステップで作動されたオプションが第三の状態を示すことを特徴とする方法。 【請求項8】 前記情報が、前記車両の所定の機能を操作する指示を含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項9】 少なくとも前記第一、第二及び第三の状態の一つが、予め選択したオーディオ信号によって示されることを特徴とする請求項7に記載の方法。 【請求項10】 前記第二の状態が、第一の色で、前記選択されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項7に記載のシステム。 【請求項11】 前記第三の状態が、第二の色で、前記作動されたオプションを強調することにより示されることを特徴とする請求項10に記載の方法。 【請求項12】 前記表示素子に、車両の複数の機能の少なくとも一つの操作に関する指示を供給するための早分かりオプションを表示するステップをさらに含み、この早分かりオプションの表示は選択されたオーディオ信号を伴うことを特徴とする請求項7に記載の方法。」(なお、下線部は補正箇所を示す。) [2]本件補正の適否 [2-1]本件補正の目的 本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項7に、車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションとは別個に第一の状態を含んで表示され、また、少なくとも一つのオプションが選択されると前記少なくとも一つのオプションと共に第二の状態を示す、「車両の所定の機能に関連する視覚的表示」を付加する補正を含むものであるが、この付加された「車両の所定の機能に関連する視覚的表示」は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし12における発明特定事項のいずれかを概念的に下位にしたものといえないから、上記の「車両の所定の機能に関連する視覚的表示」を付加する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではなく、また請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものでもない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [2-2]独立特許要件 仮に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとした場合に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 1.刊行物に記載された発明1 (1)刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭61-244632号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a)「1.表示ユニットを有し、該表示ユニットの表示面が情報および機能選択テーブル(メニュー)の表示のための複数個の面に区分されており、さらに表示されているメニューのエレメントに一義的に配属されている複数個の操作キーを有し、この場合メニューのエレメントが各操作キーにより作動される機能を表わすようにされており、さらに1つまたは複数個の個々の付加装置に対応するメニューが、表示部に表示される少くとも1つの基本メニューを介して選択される、車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置において、該中央操作入力-および情報出力装置が付加的な操作エレメント(25?34)を有し、該付加的な操作エレメントにより中央操作入力-および情報出力装置(1)のおよび付加装置(42?45)の所定の基本機能のために、いつでもかつ現在選択されているメニューに関係なく、直接操作ができるようにしたことを特徴とする車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置。」(特許請求の範囲の請求項1) b)「第1図において1は中央操作入力-および情報出力装置の正面図を示す。この装置は、車輛に組み込まれる複数個の付加装置の制御のために用いられる。表示ユニット3の表示部2は、情報の表示のための面(情報面4)と機能選択テーブルとに分割されている。後者は以下メニュー(メニュー面5?14)と称する。 操作キー15?24がメニュー面5?14ないし各メニュー面上に図形で示されている操作エレメントに一義的に配属されている。この場合これらのエレメントはそれぞれの操作キー15?24により作動される機能を示す。」(公報第4ページ左下欄第7ないし18行) c)「第2図に示されている電気的基本原理図を用いてこの装置の機能構成が示されている。中央操作入力-および情報出力システム1は、例えば中央制御計算器(マイクロコンピュータ)36を基礎として構成されている。このマイクロコンピュータに、操作キー15?24および-エレメント25?34および表示ユニット3が線(入力-および出力)37を介して接続されている。装置バス線路38?41を介して、制御されるべき付加装置42?45がマイクロコンピュータ36へ接続される。この場合この装置バス線路は星形-,リング状-またはスタブバス線路として実施できる。」(公報第5ページ左上欄第17行ないし同右上欄第9行) d)「第6図には捕足的に基本メニューの操作キー18を介して選択できる運転データメニューが示されている。情報面にまず最初に文字列”運転データ”が現われる。操作キーの1つオイル量15,オイル温度16,オイル圧17,タイヤ圧18または水温19のうちの1つを選択すると、この場合たとえば操作キー・オイル温度16を選択すると、表示部2には文字列”オイル温度”および/または相応の図形および測定値たとえば85℃が現われる。付加的に情報面の下側部分にさらにアナログ表示がたとえば棒グラフ56の形式でなされる。これには警告図形57′の付されている目盛57が設けられている。 図中に付加的に、キー操作(操作キー16)が行なわれた後に了解表示を設けることもできる。この場合相応のメニュー面が、白黒コントラストの反転により示される。もちろん枠で囲んだり、アンダーラインまたは別の方法で識別させることもできる。」(公報第6ページ左下欄第11行ないし同右下欄第10行) e)「中央操作入力-および情報出力装置の別の実施例が第7図?第9図に示されている。この場合これまでの図面において示されていた構成部分と同一の部分には、同じ番号が付されている。 この場合このシステムは、接触に応動するディスプレー(画面)58を有する。この場合その表面の接触個所を位置で示すことができる(”タッチスクリーン”)。その結果操作キーを仮想の接触キーないし-面として画面上に個々に表示することができる。 第8図に示されている基本メニューにおいては、ディスプレー58の表示面59が第3図における表示面2と同様に区分されている。即ち表示面59は情報面60と、同時に接触キーとしても用いられるメニュー面61?70とに区分されている。メニュー面61?70は第3図のメニュー面5?14の図形46?55と同じ図形を有する。」(公報第6ページ右下欄第15行ないし同第7ページ左上欄第12行) f)「発明の効果 本発明により、人間工学的に適切な配置構成を有し、交通状況により注意力をそらさせることがほとんどないため安全運転に専念できる、かつ車輛および交通状況の現時点の状態に関する十分な情報を運転者に示すことのできる、中央操作入力-および情報出力装置が提供される。」(公報第7ページ左下欄第18行ないし同右下欄第4行) (2)上記(1)a)ないしf)の記載並びに第1図ないし第3図、第6図及び第8図より、次のことが分かる。 ア)車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置により、車輛の付加装置の所定の基本機能に対応する情報が得られることが分かる。 イ)メニューは、1つまたは複数個あることが分かり、少なくとも一つのメニューがあるといえる。 ウ)メニューは、車輛の付加装置の所定の基本機能に対応していることが分かる。 エ)表示ユニットは、メニューを白黒コントラストの反転等がされていない初期の状態を含んで表示するものであることが分かる。 オ)操作キーは、メニューを選択し、情報を得るためにメニューを作動するためのものであることが分かる。 カ)情報出力装置は、選択されたメニューの内容を供給していることが分かる。 キ)操作キーによってメニューが選択され、作動されると、作動された前記メニューが白黒コントラストの反転等により示され、初期の状態とは異なる状態を示すことが分かる。 (3)刊行物に記載された発明1 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明1」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物に記載された発明1> 「車輛の付加装置の所定の基本機能に対応する情報を得るための車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置であって、 前記車輛の付加装置の所定の基本機能に対応する少なくとも一つのメニューを、初期の状態を含んで表示するための表示ユニットと、 前記少なくとも一つのメニューを選択する操作キーと、 前記選択された少なくとも一つのメニューの内容を供給するための情報出力装置と、 前記情報を得るために、前記少なくとも一つのメニューを作動する操作キーと、を含み、 前記操作キーによって前記少なくとも一つのメニューが選択され、作動されると、作動されたメニューが初期の状態とは異なる状態を示す車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置。」 2.対比・判断 本件補正発明と刊行物に記載された発明1とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物に記載された発明1における「車輛の付加装置の所定の基本機能に対応する」は本件補正発明における「車両の所定の機能に関連する」に相当し、以下同様に、「情報を得る」は「情報にアクセスする」に、「メニュー」は「オプション」に、「初期の状態」は「第一の状態」に、「表示ユニット」は「表示素子」に、「操作キー」は「選択手段」及び「作動手段」に、「情報出力装置」は「出力装置」に、「初期の状態とは異なる状態」は「第三の状態」に、それぞれ相当する。 また、刊行物に記載された発明1における「車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置」は、車輛内に配置されるものであることは明らかであるから、本件補正発明における「車両内システム」に相当する。 さらに、刊行物に記載された発明1における「操作キーによって前記少なくとも一つのメニューが選択され、作動されると、作動されたメニューが初期の状態とは異なる状態を示す」は、「選択手段及び作動手段によって少なくとも一つのオプションが選択され、作動されると、作動されたオプションが第三の状態を示す」という限りにおいて本件補正発明における「選択手段によって前記少なくとも一つのオプションが選択されると、前記視覚的表示と前記少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、前記作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示す」と一致する。 してみると、本件補正発明と刊行物に記載された発明1とは、 「車両の所定の機能に関連する情報にアクセスするための車両内システムであって、 前記車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションを、第一の状態を含んで表示するための表示素子と、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択手段と、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給するための出力装置と、 前記情報にアクセスするために、前記少なくとも一つのオプションを作動する作動手段と、を含み、 前記選択手段及び作動手段によって前記少なくとも一つのオプションが選択され、作動されると、作動されたオプションが第三の状態を示す車両内システム。」の点で一致し、次の点で相違する。 <相違点1> 本件補正発明は、「車両の所定の機能に関連する視覚的表示」を車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションとは「別個に且つ第一の状態」を含んで表示し、「選択手段によって前記少なくとも一つのオプションが選択されると、前記視覚的表示と前記少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示す」ものであるのに対して、刊行物に記載された発明1は、「車両の所定の機能に関連する視覚的表示」を表示するものではなく、また、「選択手段及び作動手段によって少なくとも一つのオプションが選択され、作動されると、作動されたオプションが第三の状態を示す」ものであって、選択手段による選択と作動手段による作動とを同時に行うものであるため、選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションの状態と、作動手段によって作動された少なくとも一つのオプションの状態とを異ならせておらず、選択手段によって少なくとも一つのオプションが選択されても、前記少なくとも一つのオプションと共に視覚的表示が第二の状態を示すものではない点(以下、「相違点1」という。)。 上記相違点1について検討する。 選択手段によって少なくとも一つのオプションが選択されると、少なくとも一つのオプションが第一の状態とは異なる第二の状態を示し、作動手段によって作動されたオプションが第二の状態とは異なる第三の状態を示す技術は、例えば特開平3-143739号公報、特開昭63-214823号公報及び実願昭59-195469号(実開昭61-109834号)のマイクロフィルムに記載されているように周知(以下、「周知技術1」という。)である。 また、所定の機能に関連する情報にアクセスするためのシステムであって、所定の機能に関連する視覚的表示と、所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションとを、別個にかつ第一の状態を含んで表示し、選択手段によって前記少なくとも一つのオプションが選択されると、前記視覚的表示と前記少なくとも一つのオプションが第一の状態とは異なる状態を示す技術は、例えば、特開平5-324229号公報(段落【0020】及び図5等参照。)及び特開平6-20175号公報(段落【0058】及び図4等参照。)に記載されているように周知(以下、「周知技術2」という。)である。 よって、刊行物に記載された発明1に、上記周知技術1及び2を適用して、選択手段によって少なくとも一つのオプションが選択されると、少なくとも一つのオプションが第一の状態とは異なる第二の状態を示し、作動手段によって作動されたオプションが第二の状態とは異なる第三の状態を示すようにし、また、車両の所定の機能に関連する少なくとも一つのオプションと別個に且つ第一の状態を含んで表示された車両の所定の機能に関連する視覚的表示が、選択手段によって少なくとも一つのオプションが選択された際に、少なくとも一つのオプションと共に第二の状態を示すようにして、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件補正発明を全体としてみても、刊行物に記載された発明1並びに周知技術1及び2から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 よって、本件補正発明は、刊行物に記載された発明1並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [3]むすび 上記[2][2-1]又は上記[2][2-2]で示したように、本件補正は却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本件発明について 1.本件発明 平成20年10月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲の請求項1ないし12に係る発明は、平成19年12月13日付けの手続補正により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、前記第2[理由][1](a)に示した請求項1に記載されたとおりのものである。 2.刊行物に記載された発明2 (1)刊行物の記載事項 上記刊行物(特開昭61-244632号公報)には、上記第2[2][2-2]1.(1)a)ないしf)のとおりのものが記載されている。 (2)上記(1)a)ないしf)の記載並びに第1図ないし第3図、第6図及び第8図より、上記第2[2][2-2]1.(2)ア)ないしカ)のことが分かる。 また、上記(1)a)ないしf)の記載及び第1図ないし第3図、第6図及び第8図より、次のことが分かる。 ク)操作キーによって選択され、作動されたメニューが白黒コントラストの反転等により示され、初期の状態とは異なる状態を示すことが分かる。 (3)刊行物に記載された発明2 したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物に記載された発明2」という。)が記載されていると認められる。 <刊行物に記載された発明2> 「車輛の付加装置の所定の基本機能に対応する情報を得るための車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置であって、 前記車輛の付加装置の所定の基本機能に対応し、初期の状態を含む少なくとも一つのメニューを表示するための表示ユニットと、 前記少なくとも一つのメニューを選択する操作キーと、 前記選択された少なくとも一つのメニューの内容を供給するための情報出力装置と、 前記情報を得るために、前記少なくとも一つのメニューを作動する操作キーと、を含み、 前記操作キーによって選択され、作動されたメニューが初期の状態とは異なる状態を示す車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置。」 3.対比・判断 本件発明と刊行物に記載された発明2とを対比すると、機能・構造からみて、刊行物に記載された発明2における「車輛の付加装置の所定の基本機能に対応」は本件発明における「車両の所定の機能に関連」に相当し、以下同様に、「情報を得る」は「情報にアクセスする」に、「初期の状態」は「第一の状態」に、「メニュー」は「オプション」に、「表示ユニット」は「表示素子」に、「操作キー」は「選択手段」及び「作動手段」に、「情報出力装置」は「出力装置」に、「初期の状態とは異なる状態」は「第三の状態」に、それぞれ相当する。 また、刊行物に記載された発明2における「車輛の付加装置に対する中央操作入力-および情報出力装置」は、車輛内に配置されるものであることは明らかであるから、本件発明における「車両内システム」に相当する。 さらに、刊行物に記載された発明2における「操作キーによって選択され、作動されたメニューが初期の状態とは異なる状態を示す」は、「選択手段及び作動手段によって選択され、作動されたオプションが第三の状態を示す」という限りにおいて本件発明における「選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、前記作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示す」と一致する。 してみると、本件発明と刊行物に記載された発明2とは、 「車両の所定の機能に関連する情報にアクセスするための車両内システムであって、 前記車両の所定の機能に関連し、第一の状態を含む少なくとも一つのオプションを表示するための表示素子と、 前記少なくとも一つのオプションを選択する選択手段と、 前記選択された少なくとも一つのオプションの内容を供給するための出力装置と、 前記情報にアクセスするために、前記少なくとも一つのオプションを作動する作動手段と、を含み、 前記選択手段及び作動手段によって選択され、作動されたオプションが第三の状態を示す車両内システム。」の点で一致し、次の点でのみ相違する。 <相違点2> 本件発明は、「選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションが第二の状態を示し、作動手段によって作動されたオプションが第三の状態を示す」ものであるのに対して、刊行物に記載された発明2では、「選択手段及び作動手段によって選択され、作動されたオプションが第三の状態を示す」ものであって、選択手段による選択と作動手段による作動とを同時に行うものであるため、選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションの状態と、作動手段によって作動された少なくとも一つのオプションの状態とを異ならせていない点(以下、「相違点2」という。)。 上記相違点2について検討する。 選択手段によって選択された少なくとも一つのオプションが第一の状態とは異なる第二の状態を示し、作動手段によって作動されたオプションが第二の状態とは異なる第三の状態を示す技術は、例えば特開平3-143739号公報、特開昭63-214823号公報及び実願昭59-195469号(実開昭61-109834号)のマイクロフィルムに記載されているように周知(以下、「周知技術3」という。)である。 よって、刊行物に記載された発明2に、上記周知技術3を付加して、上記相違点2に係る本件発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本件発明を全体としてみても、刊行物に記載された発明2及び周知技術3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。 したがって、本件発明は、刊行物に記載された発明2及び周知技術3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-11-30 |
結審通知日 | 2009-12-01 |
審決日 | 2009-12-16 |
出願番号 | 特願平10-534667 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60K)
P 1 8・ 57- Z (B60K) P 1 8・ 121- Z (B60K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 倉橋 紀夫 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
八板 直人 小谷 一郎 |
発明の名称 | 自動車用マルチメディア情報および制御システム |
代理人 | 関口 一秀 |
代理人 | 松原 伸之 |
代理人 | 村木 清司 |
代理人 | ▲高▼部 育子 |
代理人 | 松嶋 さやか |
代理人 | 塚田 美佳子 |
代理人 | 橋本 千賀子 |