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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008800061 審決 特許
無効200580330 審決 特許
無効200580033 審決 特許

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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性  D06F
管理番号 1217587
審判番号 無効2009-800041  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2009-02-20 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 上記当事者間の特許第3317613号発明「洗濯機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由
1.手続の経緯

(1)本件特許第3317613号についての出願は、平成7年8月28日に特許出願され、平成14年6月14日に請求項1ないし5に係る発明について特許の設定登録がされたものである。

(2)これに対して、請求人は、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)が、「甲第1号証に示されたものと実質的に同じ、もしくは甲第1号証に示されたものから容易に発明できたもの」(審判請求書の第5頁第12?13行)であり、「甲第2号証に示されたものと実質的に同じ、もしくは甲第2号証に示されたものから容易に発明できたもの(同第6頁第4?5行)」であるとして、本件発明は、甲第1号証または甲第2号証の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明についての特許は無効とされるべきと主張するとともに、その証拠方法として、
甲第1号証(特開平4-240486号公報)
甲第2号証(特開平4-108494号公報)
を提出している。

(3)一方、被請求人は、本件発明は、甲第1号証または甲第2号証の刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明の特許を無効とすることはできない旨、主張している。



2.本件発明

本件発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「洗濯に供した槽を洗浄する槽洗浄コースを有するものにおいて、その槽洗浄コースの給水時に、該給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位でそれぞれ給水を中断し槽内に溜まった水の撹拌を所定時間ずつ行なうようにしたことを特徴とする洗濯機。」



3.甲第1号証、甲第2号証に記載された事項及び発明

(1)甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

a.「本発明は槽の汚れに対処する改良をした洗濯機に関する。」(段落【0002】)

b.「「槽洗浄コース」は、詳細には例えば図5に示すように、「高」水位までの給水(ステップa1)と、内槽3内の撹拌体5の強力回転(ステップa2)、及び内槽3の高速回転(ステップa3)を、その後の判断ステップ(ステップa4)で2巡目に達したと判断されるまで行なうものである。」(段落【0018】)

c.「ここで、図6ないし図8は本発明を二槽式洗濯機に適用した第2実施例を示している。…。
この場合、まず図6に示す外箱21には、洗濯蓋22と脱水蓋23との配置で理解できるように、洗濯槽と脱水槽(いずれも図示せず)とを並置状態で内設している。」(段落【0021】?【0022】)

d.「この場合の「槽洗浄コース」は、詳細には例えば図8に示すように、適当な(特には低水位までの)給水と排水を交互に繰返しながら、洗濯用モータも適宜正逆回転させて行なうものである。」(段落【0025】)

上記摘記事項a,b及び図5を総合すると、甲第1号証には第1実施例として次の発明が記載されている。(以下「甲1号証発明ア」という)。
<甲1号証発明ア>
「「槽洗浄コース」において、「高」水位まで給水した後、攪拌体5の強力回転を行い、2回目に「高」水位まで給水した後、攪拌体5の強力回転を行う、洗濯機。」

また、上記摘記事項a,c,d及び図8を総合すると、甲第1号証には第2実施例として次の発明が記載されている。(以下「甲1号証発明イ」という)。
<甲1号証発明イ>
「「槽洗浄コース」において、給水弁を開いたまま低水位までの給水を続ける途中で、洗濯用モータの正転と逆転を1回ずつ行う、二槽式洗濯機。」


(2)甲第2号証
甲第2号証には、図面とともに次の技術事項が記載されている。

e.「この槽洗浄コースでは、まず、給水弁17を開放して槽内に給水し、この給水により槽内の水位が洗濯時の高水位に達した後も更に例えば30秒給水を継続し(ステップP1)、それによって槽内に高水位以上に給水して両槽2,3のほぼ全体を水に浸した状態にする。この状態で、所定時間(例えば20分)つけ置くつけ置き行程を実行する(ステップP2)。この実施例では、つけ置き行程中に、定期的に槽内の水を撹拌して漂白剤を水に良く溶け込ませるために、モータ6を例えば1.5秒オン、0.5秒オフの時限で正逆回転させて、撹拌体4を正逆回転させて槽内の水を撹拌する。この様な撹拌を1分間行い、その後5分間撹拌を休止した後、1分間撹拌するという動作を繰り返す。斯かるつけ置き行程中に、内槽3と外槽2との間の汚れがふやけて落ちやすい状態になり、しかもこの場合、高水位以上に給水してつけ置き行程を実行することにより、両槽2,3間のほぼ全面の汚れが落ちやすい状態になる。…。
この様なつけ置き行程を20分実行した後、排水弁9を開放して、排水を例えば5秒行った後(ステップP3)、直ちにモータ6を起動して内槽3を高速回転させて1回目の残水脱水を例えば5秒実行する(ステップP4)。この残水脱水開始時までに、排水は5秒行われるだけであるから、残水脱水中には槽内に多量の水が残っており、従って、内槽3は水中で高速回転することになる。この内槽3の回転により、内槽3内の水が内槽3周壁の脱水孔10から外槽2の内周面に向けてシャワー状に放出され、そのシャワー効果と、水中で内槽3を高速回転させることによるすすぎ効果との相乗作用によって、両槽2,3間の汚れを効率良く洗浄する。
この様な1回目の残水脱水を5秒実行した後、排水弁9を閉鎖して排水を停止し(ステップP5)、撹拌を例えば3分間行う(ステップP6)。この後、排水弁9を開放して(ステップP7)、中水位まで排水した時点で(ステップP8)、排水を継続しながら2回目の残水脱水を実行する(ステップP9)。この2回目の残水脱水は、例えば80秒実行するが、そのうち、最初の50秒程度で槽内の水がほぼ無くなり、残り30秒は水切りのための脱水となる。
以上、ステップP3からP9までの行程を一通り実行すると、再度、高水位プラス30秒の給水を行った後(ステップP11)、1分間の撹拌を行った上で(ステップP12)、前述したステップP3からP9までの行程を繰り返して、槽洗浄コースを終了する(ステップP10)。従って、この実施例の槽洗浄コースでは、5秒の残水脱水と80秒の残水脱水がそれぞれ2回ずつ行われることになる。」(公報第2頁左下欄第18行?第3頁右上欄第13行)

上記摘記事項e及び第1図を総合すると、甲第2号証には次の発明が記載されている。(以下「甲2号証発明」という)。
<甲2号証発明>
「槽洗浄コースにおいて、洗濯時の高水位以上に給水し(ステップP1)、槽内の水を攪拌し(ステップP2)、少し排水し(ステップP3)、内槽3を高速回転させて1回目の残水脱水を実行し(ステップP4)、排水を停止し(ステップP5)、攪拌を行い(ステップP6)、中水位まで排水し(ステップP7、P8)、2回目の残水脱水を実行して槽内の水を無くし(ステップP9)、2回目の高水位以上の給水を行い(ステップP11)、攪拌を行い(ステップP12)、ステップP3からP9までの行程を繰り返して、槽洗浄コースを終了する(ステップP10)、洗濯機。」



4.当審の判断

(1)本件発明と甲第1号証に記載された発明との対比・判断
(1)-1)甲1号証発明アとの対比・判断
甲1号証発明アにおける「「高」水位」は、本件発明における「最終到達水位」に相当する。
したがって、甲1号証発明アを本件発明の用語を用いて記載すると次のようになる。
「洗濯に供した槽を洗浄する槽洗浄コースを有するものにおいて、その槽洗浄コースの給水時に、該給水時の最終到達水位まで給水した後、槽内に溜まった水の攪拌を所定時間行ない、2回目に最終到達水位まで給水した後、槽内に溜まった水の攪拌を所定時間行なう、洗濯機。」

すると、甲1号証発明アは、本件発明における「給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位でそれぞれ給水を中断し(槽内に溜まった水の撹拌を行なう)」との発明特定事項を備えていないから、本件発明が甲1号証発明アと同一であるとは言えない。
そして、本件発明は、「水を攪拌することによる洗浄効果は、…波による作用であるから、水面部分ほどその効果が大きい」(本件特許公報の段落【0007】)との知見に基づき、上記発明特定事項を備えたことによって、「複数の各段階で…波の機械力が槽に及び、最終到達水位の水面部分のみならず、それより下位の各部分でもそれぞれ充分な洗浄効果が得られる」(同段落【0008】)との作用・効果を奏するものであるところ、甲第1号証にはそのような技術的事項について記載も示唆もされていないのであるから、甲1号証発明アに基づいて、当業者が本件発明を容易に想到し得るものとも言えない。

(1)-2)甲1号証発明イとの対比・判断
甲1号証発明イにおける「低水位」は、本件発明における「最終到達水位」に相当する。
また、甲1号証発明イは二槽式洗濯機に関するものであるところ、二槽式洗濯機の「洗濯用モータ」は、洗濯槽内の水を攪拌する攪拌機を回転させるものであることは当該技術分野において周知であるから(必要であれば、実願昭59-16916号(実開昭60-129284号)のマイクロフィルムの第1図あるいは特開昭59-111793号公報の第1図等参照)、甲1号証発明イにおける「洗濯用モータの正転と逆転を1回ずつ行う」は、本件発明における「槽内に溜まった水の攪拌を所定時間ずつ行なう」に相当する。

したがって、甲1号証発明イを本件発明の用語を用いて記載すると次のようになる。
「洗濯に供した槽を洗浄する槽洗浄コースを有するものにおいて、その槽洗浄コースの給水時に、該給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位で、給水を続けながら、槽内に溜まった水の攪拌を所定時間ずつ行なう洗濯機。」

すると、甲1号証発明イは、本件発明における「(給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位で)それぞれ給水を中断し(槽内に溜まった水の撹拌を行なう)」との発明特定事項を備えていないから、本件発明が甲1号証発明イと同一であるとは言えない。
さらに、甲1号証発明イは二槽式洗濯機に関するものであって、槽洗浄の対象とされる「洗濯槽」は、本件発明の実施例として本件特許公報の段落【0012】に記載された、洗濯槽と脱水槽兼用の「槽4」のように「多孔円筒状の内カバー13」を内周側部に配設したものとは異なっており、「洗濯槽」内側部の洗浄はユーザーが手で容易に行い得るものである。このため、甲1号証発明イにおける「槽洗浄コース」は、攪拌体が設置された洗濯槽底部を主な洗浄対象としており、よって給水時の「最終到達水位」が「低水位」とされていると推測される。
したがって、内側部の洗浄が不要なため低水位までしか給水せずに槽洗浄を行う、甲1号証発明イにおいて、「低水位(給水時の最終到達水位)より低い複数段階の水位でそれぞれ給水を中断」して、(本件発明のように)「内側部の各部分に波の機械力を及ぼし、槽内側部に対する十分な洗浄効果を得る」ようにすることの、動機付けを見いだすことはできないから、本件発明が、甲1号証発明イから容易に想到し得るものとも言えない。


(2)本件発明と甲第2号証に記載された発明との対比・判断
甲2号証発明における「洗濯時の高水位以上」は、本件発明における「給水時の最終到達水位」に相当する。また、甲2号証発明の、ステップP5における排水の「停止」は、ステップP7において排水が再開されるものであるから、排水を「中断」するものと言える。

ここで、甲2号証発明における「(ステップP4、P9の)残水脱水」は、槽(内槽3)を洗浄するために行われる点において、本件発明における「水の攪拌」と共通するものと言えるが、その洗浄の仕組みは、「(内)槽の回転」による、「内槽3周壁の脱水孔10から外槽2の内周面に向けて…のシャワー効果」と「水中で内槽3を高速回転させることによるすすぎ効果」(摘記事項e参照)とされている。
一方、本件発明における「水の攪拌」による洗浄の仕組みについてみると、「攪拌」とは一般に「かきまぜること」(「三省堂国語辞典」第四版)であり、本件発明における「水の攪拌」は、発明の詳細な説明において「モータ16を起動させて駆動機構17により攪拌体15を間欠回転駆動させることにより行なう」(本件特許公報の段落【0018】)とされ、「水を攪拌することによる洗浄効果は、…槽内の水が攪拌されて波立つことにより槽に与えられるものであり、要するに波による作用であるから、水面部分ほどその効果が大きい」(同段落【0007】)とされている。
すると、本件発明における「水の攪拌」による洗浄が、(攪拌体15による)「水のかきまぜ」で起きた波による作用により行われ、波の起こる水面部分において、特に洗浄効果が高まるものであるのに対し、甲2号証発明の「残水脱水」による洗浄は、内槽の回転によるシャワー効果とすすぎ効果によるものであるから、その洗浄の仕組み及び効果において異なっている。
したがって、甲2号証発明の「残水脱水」が、本件発明における「水の攪拌」に相当するものということはできない。

よって、甲2号証発明を本件発明の用語を用いて記載すると次のようになる。
「洗濯に供した槽を洗浄する槽洗浄コースを有するものにおいて、その槽洗浄コースの給水時に、該給水時の最終到達水位まで給水した(ステップP1)後、槽内に溜まった水の攪拌を所定時間行い(ステップP2)、少し排水し(ステップP3)、1回目の残水脱水を行い(ステップP4)、排水を中断し(ステップP5)、槽内に残った水の攪拌を所定時間行った後(ステップP6)、中水位まで排水し(ステップP7、P8)、2回目の残水脱水を行って槽内の水を無くし(ステップP9)、2回目に最終到達水位まで給水した後(ステップP11)、槽内に溜まった水の攪拌を所定時間行い(ステップP12)、ステップP3からP9までの行程を繰り返して、槽洗浄コースを終了する、洗濯機。」

そうすると、甲2号証発明は、「給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位」で、槽の洗浄のために「1回目の残水脱水(ステップP4)」、「水の攪拌(ステップP6)」、「2回目の残水脱水(ステップP9)」を行うものではあるが、甲2号証発明の「残水脱水」と本件発明の「水の攪拌」が、その洗浄の仕組み及び効果において異なり、相違するものであることは上記の通りであるから、甲2号証発明は、本件発明の「給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位で水の攪拌を行う」との発明特定事項を備えていない。
また、甲2号証発明における「1回目の残水脱水(ステップP4)」、「水の攪拌(ステップP6)」、「2回目の残水脱水(ステップP9)」は、(本件発明のように)最終到達水位に達するまでの「給水時」ではなく、最終到達水位に達した後槽内の水が無くなるまでの間の「排水時」に行われており、かつ、「(ステップP4、P9の)残水脱水」は、中断することなく排水を続けながら行われるものであるところ、本件発明における「水の攪拌」は、最終到達水位に達するまでの「給水時」に「給水を中断」して行われるものであるから、甲2号証発明は、本件発明の「給水を中断し水の撹拌を行なう」との発明特定事項を備えていないものである。
結局、甲2号証発明は、本件発明における「給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位でそれぞれ給水を中断し槽内に溜まった水の撹拌を行なう」との発明特定事項を備えていないから、本件発明が甲2号証発明と同一であるとすることはできない。

さらに、甲2号証発明における「脱水排水」は、最終到達水位に達した後、水が無くなるまでの間の「排水時」に、排水するのみでなく併せて「槽を回転」させることによって、「シャワー効果」と「すすぎ効果」を得ようとするものであって、このうち、「すすぎ効果」については槽内に多量の水がある状態で行われることが効果的であり、「シャワー効果」については排水を継続しつつ行うことが効果的であるものと考えられることから、甲2号証発明における「脱水排水」は「排水時」に行われることが必須のものと言える。
したがって、このように、そもそも本件発明の「水の攪拌」とは異なった「脱水排水」という槽洗浄の仕組みを採用している甲2号証発明において、「排水時」に換えて、最終到達水位に達するまでの「給水時」に、「最終到達水位より低い複数段階の水位」で「給水を中断」し、槽の洗浄を行うようにすることの、動機付けを見いだすことはできないから、本件発明が甲2号証発明に基づいて容易に想到し得るものとも言えない。


(3)まとめ
結局、甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも、本件発明の「槽洗浄コースの給水時に、該給水時の最終到達水位より低い複数段階の水位でそれぞれ給水を中断し槽内に溜まった水の撹拌を行なう」との発明特定事項について、記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明が、甲第1号証または甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。



5.請求人の主張についての検討

(1)請求人の主張する、甲第1号証の記載事項について
請求人は、図5とその関連記載部分(上記3.(1)の摘記事項b参照)に基づき、甲第1号証には、「槽洗浄コースでは最初の給水(ステップa1)後の水位(中間水位)において攪拌を所定時間行い(ステップa2)、さらに2回目の給水(ステップa1)を行なって最終到達水位に達しその攪拌を所定時間行う(ステップa2)ことになり、結局最初の給水後の中間水位で給水を中断した後、再び給水して最高到達水位で給水を中断する動作と、中間水位と最終到達水位の双方で所定時間ずつ攪拌する動作が示されている。」(審判請求書第3頁第18?23行)と主張し、よって、「本件特許発明と甲第1号証との効果上の相違は単に、最終到達水位より低い段階の水位で給水を中断する回数の違いでしかない。」(同第4頁第28?30行)と主張している。
しかしながら、上記3.(1)の摘記事項bには「「高」水位までの給水(ステップa1)」と明記されているから、「最初の給水(ステップa1)後の水位」が「中間水位」であるとの請求人の上記主張は、採用することができない。


(2)請求人の主張する、甲第2号証の記載事項について
請求人は、第1図とその関連記載部分(上記3.(2)の摘記事項e参照)に基づき、甲第2号証には、「「…B.高水位+30秒給水(ステップP1)の後、排水5秒(ステップP3)、残水脱水5秒(ステップP4)で排水停止(ステップP5:中間水位で給排水停止状態)、その後高水位+30秒給水(ステップP11:最終到達水位)の前後において、C.ステップP5の中間水位状態で槽内に溜まった水の攪拌を3分行うステップ(ステップP6)と給水ステップP11の後の最終到達水位で槽内に溜まった水の攪拌を1分行うステップ(ステップP12)とを行うようにしたことを特徴とする洗濯機。」が示されている。」(審判請求書第4頁第4?11行)と主張し、「最終到達水位より低い段階の水位で給水を中断するのは一回だけという点で、両者は若干相違するように見受けられる。しかるに、この構成要件Bにて見受けられる見かけ上の若干の相違点に何ら発明性はな」い(同第5頁第24?27行)と主張している。
しかしながら、上記3.(2)の摘記事項e及び第1図によれば、「ステップP5」における水位(請求人のいう「中間水位」)は、「ステップP1」でいったん「高水位+30秒給水」の水位(すなわち最終到達水位)となった後、ステップP3、P4で排水した後の水位であり、さらに「ステップP11」(請求人のいう「最終到達水位」)よりも前の「ステップP9」において槽内の排水が完了するのであるから、ステップP5は「排水を中断し
た」水位であって、(本件発明でいう)「給水時の最終到達水位より低い段階の水位」で「給水を中断」した水位であるとは言えず、請求人の上記主張は採用できない。



6. 結論

以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許の請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-07-29 
結審通知日 2009-08-06 
審決日 2009-08-18 
出願番号 特願平7-219204
審決分類 P 1 123・ 121- Y (D06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増沢 誠一  
特許庁審判長 平上 悦司
特許庁審判官 渋谷 知子
長浜 義憲
登録日 2002-06-14 
登録番号 特許第3317613号(P3317613)
発明の名称 洗濯機  
代理人 佐藤 強  
代理人 南島 昇  
代理人 南島 昇  
代理人 堀江 真一  
代理人 佐藤 強  
代理人 堀江 真一  
代理人 堀江 真一  
代理人 佐藤 強  
代理人 稲葉 忠彦  
代理人 南島 昇  
代理人 家入 久栄  
代理人 高橋 省吾  
代理人 小川 文男  
代理人 萩原 亨  

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