ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F04D 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F04D |
---|---|
管理番号 | 1217743 |
審判番号 | 不服2008-9235 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-14 |
確定日 | 2010-06-02 |
事件の表示 | 特願2005- 45755「散熱モジュールおよびその流れ方向制御構造」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月27日出願公開、特開2006-112415〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成17年2月22日(パリ条約の例による優先権主張2004年10月15日、台湾)の出願であって、平成19年12月28日付けで拒絶査定がなされ、平成20年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年4月14日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願の発明 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項8に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、 「ハウジング及び前記ハウジングに配置した遠心ファンである第一散熱装置と前記遠心ファンと対称に配置された遠心ファンである第二散熱装置を含む散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造であって、 前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の圧力が不均一な時、前記第二端は、偏移し、前記第一散熱装置、または前記第二散熱装置に近づき、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の面積を変える可動物を含む流れ方向制御構造において、 前記可動物の材料は、マイラー薄膜、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチックなど、軽量、薄膜の特性を有する材料の一つから選ばれる流れ方向制御構造。」と補正された。 (なお、当審において、「請求項1に記載の」を削除し、「において」を追加して、上記のように認定した。) 本件補正は、本件補正前の請求項1を引用している請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項である「第一散熱装置」及び「第二散熱装置」に関し、「遠心ファンである」第一散熱装置と「遠心ファンと対称に配置された遠心ファンである」第二散熱装置を含む散熱モジュールと限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-128499号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ・「[発明が解決しようとする課題] 上述した従来の電子回路パッケージの冷却構造にあっては、最悪使用条件時に、電子回路パッケージ1上の半導体素子2の温度が規定の温度を超えないように冷却できる送風能力を持つ冷却用ファン14を選定して用いるため、環境温度が半導体素子2を搭載した電子回路パッケージ1を含む装置の一般的に使用される温度で、電子回路パッケージ1の発熱も平均的な一般的使用条件時には、ファンの送風能力は過剰となり電子回路パッケージ1は必要以上に冷却されるという欠点があった。 また、一般にファンは送風能力が大きいほど騒音が大きいため一般的使用条件時には、ファンが送風能力過剰となりその過剰分だけ一般的使用条件時に適したファンより大きな騒音を出すという欠点があった。 [課題を解決するための手段] 本発明は、上記課題を解決するためになしたもので、その解決手段として本発明は、電子回路パッケージを強制空冷する電子回路パッケージの冷却構造において、冷却風の入側に並列に設けた2組のファンを有する冷却用ファンと、電子回路パッケージの温度、吸入空気温度又は排出空気温度あるいはこれらを組合せて測定する温度検出装置と、該温度検出装置で測定した温度により上記2組のファンを個別に稼動・停止させる制御装置と、上記2組のファンのうちいずれか一方の組のファン又は2組のファンの双方の冷却風を電子回路パッケージに導く切換可能な案内羽根とを備える構成としている。 [実施例] 次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。 第1図は本発明の一実施例に係る電子回路パッケージの冷却構造を示す縦断面図、第2図は第1図のA-A線断面図、第3図(a)、(b)、(c)は各々案内羽根の切換状態を示す部分断面図である。 図中1は電子回路パッケージで、この電子回路パッケージ1には、複数の半導体素子2が搭載されており、これら半導体素子2がある規定の温度を超えないように冷却する必要がある。この電子回路パッケージ1は筐体3の内部に固定されている。 筐体3の電子回路パッケージ1の下部に冷却用ファン20が設けである。この冷却用ファン20はファン4とファン5の2組が並列に並べて設置され、その境界に案内羽根6が設けられている。ファン4、ファン5と電子回路パッケージ1の間に送風路を形成するようにダクト7が設けられ、ファン4,5からの風を電子回路パッケージ1へと導く。 案内羽根6は、軽量で、下部に軸を有しており第3図(a)、(b)、(c)に示すように切換えて動くことができる。第3図(a)ではファン4からの送風路を開いてファン5からの送風路を塞いだ状態、第3図(b)はファン4、ファン5の両方からの風を導く状態、第3図(c)はファン4からの送風路を塞いで、ファン5からの送風路を開いた状態である。 筐体3の冷却空気吸入口8、冷却空気排出口9、電子回路パッケージ1などに温度センサ10が取付けられ、冷却空気温度、排出空気温度、電子回路パッケージ温度などのいずれかを、温度検出装置11で測定している。 制御装置12は、温度検出装置11で得られた温度に基づきファン4、ファン5を個別に稼動・停止させることができる。 ファン4、ファン5は両方が同時に稼動していている場合には環境温度が高く、半導体素子2の発熱が最大の最悪使用条件時にも半導体素子2の温度をある規定温度を超えないように冷却できる送風能力を持つファンが選定されており、環境温度が電子回路パッケージ1を含む装置の一般的に使用される温度で半導体素子2の発熱が平均的な一般的使用条件時にファン4とファン5の両方を最悪使用条件時と同じに稼動させるとファンの送風能力が過剰となり電子回路パッケージ1を必要以上に冷却する。 一般にファンは送風能力が大きいほど騒音が大きいため一般的使用条件時にはファンの送風能力が過剰な分だけ一般的使用条件時に適したファンより大きな騒音を発生する。 本実施例では一般的使用条件時で、ファン4ファン5のうち一方で半導体素子2の冷却が可能な場合を温度検出装置11で空気温度、排出空気温度、電子回路パッケージ温度などのいずれかを測定して判断し制御装置12でファン4、ファン5のうち一方を停止することにより一般的使用条件時の騒音を小さくできる。一方のファンが停止した場合、案内羽根6は稼動しているファンからの風圧に押されて第3図(a)、(c)のように停止したファンの送風路を塞ぎ風が逆流することを防いでいる。」(第2頁右上欄第1行から第3頁右上欄6行) ・第3図には、固定した第一端と、風圧(矢印で図示)に押されて可動し、薄い特性を有することが図示されているので、第二端を有した薄膜の案内羽根6により対称に配置されたファン4とファン5の送風路を開く状態と塞いだ状態とを切替える点が示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「筐体3及び前記筐体3に配置したファン4と前記ファン4と対称に配置されたファン5を含む切換可能な案内羽根6を備える電子回路パッケージ1の冷却構造であって、 前記ファン4と前記ファン5の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し、案内羽根6は風が逆流することを防ぐために、稼動しているファン4又はファン5からの風圧に押されて停止したファン4又はファン5の送風路を塞ぐ、前記ファン4と前記ファン5の送風路を開く状態と塞いだ状態とを切替える案内羽根6を備える冷却構造において、 前記案内羽根6は、軽量で薄い特性を有する冷却構造。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)後者の「筐体3」が前者の「ハウジング」に相当し、以下同様に、 「切換可能な案内羽根6を備える電子回路パッケージ1の冷却構造」が「散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造」に、 「ファン4」が「第一散熱装置」に、 「ファン5」が「第二散熱装置」に、それぞれ相当することから、 後者の「筐体3及び前記筐体3に配置したファン4と前記ファン4と対称に配置されたファン5を含む切換可能な案内羽根6を備える電子回路パッケージ1の冷却構造」と 前者の「ハウジング及び前記ハウジングに配置した遠心ファンである第一散熱装置と前記遠心ファンと対称に配置された遠心ファンである第二散熱装置を含む散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造」とは、 「ハウジング及び前記ハウジングに配置したファンである第一散熱装置と前記ファンと対称に配置されたファンである第二散熱装置を含む散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造」なる概念で共通する。 (イ)後者の「ファン4とファン5の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し」た態様は、 前者の「第一散熱装置と第二散熱装置の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し」た態様に相当する。 (ウ)後者の「案内羽根6は風が逆流することを防ぐために、稼動しているファン4又はファン5からの風圧に押されて停止したファン4又はファン5の送風路を塞ぐ」態様は、 前者の「第一散熱装置と第二散熱装置の風出口の圧力が不均一な時、第二端は、偏移し、前記第一散熱装置、または前記第二散熱装置に近づ」く態様に相当する。 (エ)後者の「送風路を開く状態と塞いだ状態とを切替える」態様が前者の「風出口の面積を変える」態様に相当し、同様に、 「案内羽根6を備える冷却構造」が「可動物を含む流れ方向制御構造」に相当する。 (オ)後者の「案内羽根6は、軽量で薄い特性を有する冷却構造」と 前者の「可動物の材料は、マイラー薄膜、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチックなど、軽量、薄膜の特性を有する材料の一つから選ばれる流れ方向制御構造」とは、 「可動物は、軽量、薄膜の特性を有する流れ方向制御構造」なる概念で共通する。 したがって、両者は、 「ハウジング及び前記ハウジングに配置したファンである第一散熱装置と前記ファンと対称に配置されたファンである第二散熱装置を含む散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造であって、 前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の圧力が不均一な時、前記第二端は、偏移し、前記第一散熱装置、または前記第二散熱装置に近づき、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の面積を変える可動物を含む流れ方向制御構造において、 前記可動物は、軽量、薄膜の特性を有する流れ方向制御構造。」 の点で一致し、以下の各点で相違している。 [相違点1] ファンに関し、本願補正発明では「遠心」ファンであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。 [相違点2] 可動物が有する軽量、薄膜の特性に関し、本願補正発明では「マイラー薄膜、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチックなど」軽量、薄膜の特性を有する「材料の一つから選ばれる」のに対し、引用発明ではそのような限定はなされていない点。 (4)判断 [相違点1]について 本願補正発明において「遠心」ファンを採用したことによる技術的な意義は出願当初の明細書には記載されていない。 一方、例えば、原審の拒絶の理由に引用された特開2003-347778号公報(以下、「周知例」という。)の【0003】に「一般的に、例えばサーバ、コンピュータ、電気機械、パワーサプライ、空調等において、排気、対流、放熱等の問題を解決するために、放熱や空調対流として、常に軸流ファン、遠心ファン等の放熱ファンや、他に同じ性能を持っている装置を用いて、電子装置が作動している際に生じる高温を外部へ排出させ、気流を特定のチャネルに流動するように案内している」と記載されているように、冷却装置(本願補正発明の「散熱モジュール」が相当)において、送風のために遠心ファンを採用する点は周知慣用技術にすぎない。 そうすると、冷却装置(本願補正発明の「散熱モジュール」が相当)において送風という一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知慣用技術の遠心ファンを採用することにより相違点1に係る本願補正発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。 [相違点2]について 本願補正発明において、マイラー薄膜、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチックなどの材料の一つから選ばれることを特定していることによる技術的な意義は、出願当初の明細書には記載されていない。 一方、周知例の【0025】には、「同時に、それらの可動部材が電子装置のチャネルに回転自在に枢着されている薄片であり、材質としては可撓性があって割れにくく、例えばマイラー(Mylar)、アクリル、ガラス繊維、樹脂とPC等のように軽薄特性を有する材料で、流体が該可動部材をスムーズに通過できるものであれば良い」と記載されているように、可動物(「可動部材」が相当)の材料は、マイラー薄膜(「マイラー」が相当)、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチック(「PC」が相当)など、軽量、薄膜(「軽薄特性」が相当)の特性を有する材料の一つから選ぶ点は周知慣用技術にすぎない。 そうすると、軽量、薄膜の可動物とするという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知慣用技術の材料を採用することにより相違点2に係る本願補正発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。 そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、及び、上記各周知慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、上記各周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。 3.本願発明について 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月12日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。 「ハウジング及び前記ハウジング内に配置した第一散熱装置と第二散熱装置を含む散熱モジュールに用いる流れ方向制御構造であって、 前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の間に設置され、固定した第一端と、対応して可動する第二端を有し、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の圧力が不均一な時、前記第二端は、偏移し、前記第一散熱装置、または前記第二散熱装置に近づき、前記第一散熱装置と前記第二散熱装置の風出口の面積を変える可動物を含む流れ方向制御構造。」 (1)引用例 引用例、及び、その記載内容は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・検討 本願発明は、「2.」で検討した本願補正発明から「第一散熱装置」及び「第二散熱装置」に関し、「遠心ファンである」第一散熱装置と「遠心ファンと対称に配置された遠心ファンである」第二散熱装置を含む散熱モジュールという限定を省くと共に、「可動物の材料は、マイラー薄膜、アクリル、ガラス繊維、樹脂とプラスチックなど、軽量、薄膜の特性を有する材料の一つから選ばれる」なる限定を省いたものに相当することから、相違点1及び2は共に相違点ではなくなったものである。 したがって、両者は、すべての点で一致し、両者の間に構成上の差異は存在しないので、本願発明は、引用例に記載された発明であるといわざるを得ない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-12-17 |
結審通知日 | 2010-01-05 |
審決日 | 2010-01-18 |
出願番号 | 特願2005-45755(P2005-45755) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F04D)
P 1 8・ 572- Z (F04D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀之 |
特許庁審判長 |
仁木 浩 |
特許庁審判官 |
大河原 裕 冨江 耕太郎 |
発明の名称 | 散熱モジュールおよびその流れ方向制御構造 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 伊東 忠彦 |