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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1217775
審判番号 不服2008-23260  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-11 
確定日 2010-06-11 
事件の表示 特願2004-318415「パチンコ機の風車」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日出願公開、特開2006-122589〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第一.手続きの経緯
本願は、平成16年11月1日の出願であって、平成20年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し、同年4月18日付けで手続補正がなされ、同年8月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月11日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに、同年10月3日付け手続補正書によって明細書の一部が補正され、その後、当審において平成22年1月20日付けで、前記平成20年10月3日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され、これに対し、平成22年3月1日付けで手続補正がなされたものであり、その請求項に係る発明は、上記平成22年3月1日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 軸筒部に軸釘を挿通して遊技盤面に取着され、前記軸筒部の外周面に三枚の羽根部が等間隔にかつ放射線状に突設され、前記遊技盤面を流下するパチンコ球を隣り合う前記羽根部間で受けて回転するパチンコ機の風車であって、
前記軸筒部の外周面に隣り合う前記各羽根部間の中間位置からずらせてかつ前記軸筒部の長手方向に沿って前記パチンコ球が当接する突条部を突設し、前記三枚の羽根部が正面Y字形となる位置で停止しているとき、前記逆ハの字状の羽根部間に受けられ該両羽根部間で前記軸筒部の上面に乗りそのままその位置で留まろうとするパチンコ球を前記突条部によりバランスを崩し他方の羽根部側よりも一方の羽根部側へ多く導くようにしたことを特徴とするパチンコ機の風車。」(以下「本願発明」という。)

第二.当審の拒絶理由の概要
当審は、上記平成22年1月20日付けの拒絶理由通知書で、本願の請求項1に係る発明は、下記の刊行物1及び2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を通知した。

第三.刊行物に記載された発明
刊行物1:昭和28年実用新案出願公告第9626号公報
刊行物2:実願昭58-130210号(実開昭60-37371号)の
マイクロフィルム
(以下、各々を「引用刊行物1」及び「引用刊行物2」ともいう。)

当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物1(昭和28年実用新案出願公告第9626号公報)における、
(1a)公報第1頁左欄第6行乃至第10行には「本考案は弾球遊戯機に於て障碍釘と共に弾道に設けられて弾球の落下方向を変ずる風車に発射弾球の引懸りて之を落下せしめざる不都合を除去すべく提案せるものにして其構造とする所は風車の翼間に軸心よりの突起部を設けたることに在り。」と、
(1b)公報第1頁右欄第3行乃至第16行には「本考案に於ては中心を枢着すべくなせる風車6に於て弾球の衝突すべき公知の翼11間に薄き小突起12を設けたり、故に従来の風車に於て弾球を二翼間に挾み且垂直線上に位置したる場合に風車の旋回の阻止せらるるが如き欠点無く、本考案に於ては二翼11間に於て弾球は薄き突起12上に当り、何れの方向へか転ひて一の翼11を衝撃し得るを以て風車は確実に旋回せられ、以て弾球を転落せしめ得る効果あり。
登録請求の範囲
・・・半径方向へ配置せる翼11間に中心より外方へ向かへる小なる突起12を設けて成る弾球遊戯機の弾道に於ける風車の構造。」と、それぞれ記載されている。
(1c)また、風車の裏面図である【第3図】及び風車の側面図である【第4図】には、「三枚の翼11が略等間隔にかつ放射線状に突設される弾球遊戯機の風車6」及び「隣り合う各翼11間の略中間位置に軸心の長手方向に沿って突設する突起12」が示されている。

したがって、これらの記載事項をまとめると、引用刊行物1には、
「障碍釘と共に弾道に設けられて弾球の落下方向を変ずる風車に発射弾球の引懸りて之を落下せしめざる不都合を除去すべく、風車の翼間に軸心よりの突起部を設け、弾球を二翼間に挾み且垂直線上に位置したる場合に風車の旋回の阻止せらるるが如き欠点を無くしたものであって、
該風車6は中心を枢着すべくなされ、略等間隔にかつ放射線状に突設される三枚の翼11間に中心より外方へ向かへる小なる突起12を軸心の長手方向に沿って突設して成り、
二翼11間に於て弾球は各翼11間の略中間位置の薄き突起12上に当り、何れの方向へか転ひて一の翼11を衝撃し得るを以て風車6は確実に旋回せられ、以て弾球を転落せしめ得る効果がある、弾球遊戯機の弾道に於ける風車6。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

当審の拒絶理由通知に引用され、本願出願前に頒布された引用刊行物2(実願昭58-130210号(実開昭60-37371号)のマイクロフィルム)における、
(2a)明細書第3頁第1行乃至第8行には「本考案は、上記欠点を除去し、打球を左右の一方により多く流下させることが可能な風車を提供することを目的としたもので、任意の1つの羽根を上向きに且つほぼ垂直に位置せしめたとき、その羽根の少なくとも先端側が、風車の軸孔の中心を通る垂直線から若干離れるように、各羽根の先端側を風車の周方向同じ側にずらせて風車を構成するものである。」と、
(2b)明細書第3頁第9行乃至第4頁第6行には「以下、本考案を図示の実施例に基づいて説明する。
第1図-第4図に於て、10は合成樹脂から成る風車本体、・・・を示す。 風車本体10は、従来の風車本体と同様に、支軸の入る軸孔11を有する軸筒12(ボス部)と、その周囲に120゜間隔で放射状に設けた3枚の直線的な羽根13と、・・・とを具備している。しかし、従来の風車本体と異なり、風車の各羽根13A,13B,13Cの軸線は、軸筒12の軸孔11の中心と一致してはおらず、該軸孔の中心から外側に若干ずれている。即ち第3図に示すように、軸孔11の中心を通る直線A,B,Cに対し羽根の中心線を平行に位置せしめたとき、該直線A,B,Cと羽根13A,13B,13Cとの間に僅かながら間隔tが生じるように、各羽根を設けてある。」と、
(2c)明細書第5頁第18行乃至第6頁第4行には「これに対し、本考案の風車では、羽根13Aが垂直線Aから距離tだけ若干離れているので、その分だけ打球は、少し第3図の左寄りに来たものまでも、風車を右に回転させることとなる。即ち、打球は第3図の右側に寄せられる場合が多くなる訳である。」と、
(2d)明細書第8頁第6行乃至第14行には「本考案の風車は、任意の1つの羽根を上向きに且つほぼ垂直に位置せしめたとき、その羽根の少なくとも先端側が、風車の軸孔の中心を通る垂直線から若干離れるように、各羽根の先端側を風車の周方向同じ側にずらせる構成であるから、本考案の風車によれば、・・・打球を一定方向により多く導くことができる。」と、それぞれ記載されている。

第四.本願発明と引用発明1との比較・検討
(四-1)引用発明1の「三枚の翼11」は本願発明の「三枚の羽根部」に相当し、以下同様に「弾球」及び「発射弾球」は「パチンコ球」に、「旋回」は「回転」に、「弾球遊戯機」は「パチンコ機」に、「風車6」は「風車」に、「突起部」及び「突起12」は「突条部」に、それぞれ相当する。
(四-2)パチンコ機の技術常識を併せて考慮して、引用発明1と本願発明とを比較・検討すると、
a)引用発明1の「障碍釘と共に弾道に設けられて弾球の落下方向を変ずる風車」は、「中心を枢着すべくなされ」、「略等間隔にかつ放射線状に突設される三枚の翼11」を備えているから、引用発明1は本願発明の「軸筒部に軸釘を挿通して遊技盤面に取着され、前記軸筒部の外周面に三枚の羽根部が等間隔にかつ放射線状に突設され、前記遊技盤面を流下するパチンコ球を隣り合う前記羽根部間で受けて回転するパチンコ機の風車」に対応する技術事項を有していることは明らかであり、
b)引用発明1の「突起部」及び「突起12」は、「三枚の翼11間に中心より外方へ向か」って、「軸心の長手方向に沿って突設して成」るものであり、「二翼11間に於て弾球は突起12上に当」るものであるから、引用発明1は本願発明の「(前記)軸筒部の外周面に隣り合う(前記)各羽根部間の中間位置からずらせてかつ前記軸筒部の長手方向に沿って(前記)パチンコ球が当接する突条部を突設し、」と比較して、「軸筒部の外周面に隣り合う各羽根部間にかつ前記軸筒部の長手方向に沿ってパチンコ球が当接する突条部を突設し、」において一致し、
c)引用発明1の「風車」は、「弾球の翼11を衝撃し得るを以て旋回せられ」その後停止するものであるから、引用発明1は本願発明の「三枚の羽根部が正面Y字形となる位置で停止している」場合があることは明らかであり、
d)引用発明1は、「弾球を二翼間に挾み且垂直線上に位置したる場合に風車の旋回の阻止せらるるが如き欠点を無くしたものであって」、「二翼11間に於て弾球は突起12上に当り、何れの方向へか転ひて一の翼11を衝撃し得るを以て風車6は確実に旋回せられ、以て弾球を転落せしめ得る効果がある」ものであるから、引用発明1は本願発明の「(前記)三枚の羽根部が正面Y字形となる位置で停止しているとき、(前記)逆ハの字状の羽根部間に受けられ該両羽根部間で(前記)軸筒部の上面に乗りそのままその位置で留まろうとするパチンコ球を(前記)突条部によりバランスを崩し他方の羽根部側よりも一方の羽根部側へ多く導くようにした、パチンコ機の風車」と比較して、「三枚の羽根部が正面Y字形となる位置で停止しているとき、逆ハの字状の羽根部間に受けられ該両羽根部間で軸筒部の上面に乗りそのままその位置で留まろうとするパチンコ球を突条部によりバランスを崩し他方又は一方の羽根部側へ導くようにした、パチンコ機の風車」において一致する。

そうすると、両者は、
「軸筒部に軸釘を挿通して遊技盤面に取着され、前記軸筒部の外周面に三枚の羽根部が等間隔にかつ放射線状に突設され、前記遊技盤面を流下するパチンコ球を隣り合う前記羽根部間で受けて回転するパチンコ機の風車であって、
前記軸筒部の外周面に隣り合う前記各羽根部間にかつ前記軸筒部の長手方向に沿って前記パチンコ球が当接する突条部を突設し、前記三枚の羽根部が正面Y字形となる位置で停止しているとき、前記逆ハの字状の羽根部間に受けられ該両羽根部間で前記軸筒部の上面に乗りそのままその位置で留まろうとするパチンコ球を前記突条部によりバランスを崩し他方又は一方の羽根部側へ導くようにした、パチンコ機の風車。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
突条部が、本願発明では各羽根部間の中間位置からずらせて突設されるのに対し、引用発明1では各羽根部間の略中間位置に突設される点。
相違点2
突条部が、本願発明ではパチンコ球を他方の羽根部側よりも一方の羽根部側へ多く導くようにしたのに対し、引用発明1では他方又は一方の羽根部側へ導くものであって一方の羽根部側へ多く導くかどうか記載されていない点。

上記相違点1及び2は共に突条部に関するものであるから併せて検討する。
引用刊行物2には、「軸筒12の周囲に放射状に設けた3枚の直線的な羽根13を具備し、任意の1つの羽根を上向きに且つほぼ垂直に位置せしめたとき、その羽根の少なくとも先端側が、風車の軸孔の中心を通る垂直線から若干離れるように、各羽根の先端側を風車の周方向同じ側にずらせることにより、打球を左右どちらかの一定方向により多く導くことができる、風車」が、即ち「流下するパチンコ球が当接する突状部材(羽根)を上向きに且つほぼ垂直に位置せしめたとき、風車の軸孔の中心を通る垂直線から若干離れるように、該突状部材(羽根)の先端側を風車の周方向にずらせることにより、流下するパチンコ球を左右どちらかの一定方向により多く導くことができる、風車」が記載されている。ここで、引用刊行物2に記載された「軸筒12の周囲に放射状に設けた3枚の直線的な羽根13」と引用発明1の「軸筒部(軸心)の長手方向に沿って突設」する「突状部(突起部及び突起12)」とは「流下するパチンコ球が当接し、該パチンコ球を左右どちらかの一方向に導く突状部材」において共通しており、また「軸筒部の長手方向に沿って突設する突状部」の突設する位置を軸筒部の周方向にずらせることに格別の困難性は認められないから、引用発明1の「突状部(突起部及び突起12)」に引用刊行物2に記載された「上向きに且つほぼ垂直に位置せしめたとき、風車の軸孔の中心を通る垂直線から若干離れるように、先端側を風車の周方向にずらせた、突状部材(羽根)」を適用し、相違点1及び2に係る本願発明を特定する事項とすることは、当業者が容易になし得ることである。

そして効果において、引用刊行物2には「打球を一定方向により多く導くことができる」と記載されているから、本願発明による効果に格別のものは認められない。

第五.むすび
以上のとおり、本願発明は、当審の拒絶理由通知に引用された刊行物1及び2に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-25 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-22 
出願番号 特願2004-318415(P2004-318415)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 河本 明彦
川島 陵司
発明の名称 パチンコ機の風車  
代理人 伊藤 浩二  

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