• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1217782
審判番号 不服2009-13399  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-27 
確定日 2010-06-11 
事件の表示 特願2008-136975「パチンコ機」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 8月28日出願公開、特開2008-194534〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯

本件の経緯概要は以下のとおりである。

特許出願 平成20年5月26日(特願2004-20312号(出願日:平成16年1月28日)の分割出願)
審査請求 平成20年6月23日
拒絶理由 平成20年10月17日
意見書 平成20年12月9日
拒絶査定 平成21年5月11日
審判請求 平成21年7月27日

第2.当審の判断

1.本願発明

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は次のとおりのものである。

「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入賞に基づいて行われる特典付与抽選の結果が当たりの場合に該遊技領域に設けられた大入賞口を所定の開放条件で開放せしめて、該大入賞口への遊技球の入賞を可能にするという特典を付与するパチンコ機において、
前記大入賞口を複数設けてそれら大入賞口の開放条件を相互に異ならせると共に、遊技球の通過を検出する通過検出手段を互いに異なる位置に複数設けて、前記特典付与抽選の結果が当たりの場合に、該複数の通過検出手段による遊技球の検出結果に基づいて一つの通過検出手段が選定されることにより、該複数の大入賞口のなかから該一つの通過検出手段に対応付けられた一つの大入賞口が選択されて開放せしめられるように為し、且つ、前記複数の大入賞口として第一の大入賞口と第二の大入賞口を採用すると共に、前記通過検出手段として該第一の大入賞口に対応付けられた第一の通過検出手段と該第二の大入賞口に対応付けられた第二の通過検出手段を採用して、該第一の大入賞口及び該第一の通過検出手段を前記遊技領域に設けられた液晶表示器の下方に位置せしめると共に、該第二の大入賞口及び該第二の通過検出手段を該遊技領域の右側に位置せしめ、それによって、前記特典を遊技者が遊技球を利用して選択できるようにしたことを特徴とするパチンコ機。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由において引用された特願2003-428785号(特開2005-185393号)(以下「出願1」という)に添付された明細書又は図面には、以下の技術事項が記載されている。

【0019】
以下、本発明の実施の形態を、パチンコ機に適用した例について説明する。
A.遊技機の正面構成
図1はパチンコ機(遊技機)の遊技盤を示す正面図である。図1において、符号1は遊技盤であり、前面の略円形領域がガイドレール2で囲まれることにより遊技領域3が形成されている。
遊技盤1には、ほぼ中央に本発明の変動表示装置11(可変表示装置、特別図柄表示装置ともいう。以下、場合により単に表示装置という)が配置されるとともに、可変表示装置11の左右下部領域にそれぞれ変動入賞装置12(大入賞口A)及び変動入賞装置13(大入賞口B)が配置されている。
なお、説明の都合上、単に大入賞口A、Bということがある。
変動入賞装置12、13は大当りが発生したときに遊技領域を流下する球が入賞可能に配置され、開閉扉により開閉される大入賞口を有しており、大当り発生時には遊技者にとって有利な第1状態(開閉扉が開放状態)に変換作動する(ただし、どちらの変動入賞装置12、13が開放するかは、遊技ゲームの内容で決定される)。また、発射勢を変化させて球の流下位置が異なる遊技領域2に複数(本実施の形態では2つ)の変動入賞装置12、13を配置した構成となっている。
【0020】
ここで、本実施の形態では複数の変動入賞装置12、13毎に異なる価値の特別遊技(大当り)を設定する構成であり、価値が高いか低いは、例えば大当りのラウンド数、入賞カウント数、扉の開放時間、賞球などの違いによって区分されるようになっている。これを、異価値という。
変動入賞装置12の下方には特図始動口15が配置され、変動入賞装置13の下方には特図始動口16が配置されている。特図始動口15、16は変動表示装置11の図柄を可変表示開始するための始動入賞を受け入れるための入賞口である。
【0021】
一方、変動入賞装置12の上方には選択ゲート17が配置され、変動入賞装置13の上方には選択ゲート18が配置されている。選択ゲート17、18はいわゆるスルーチャッカー形式のゲートであり、各変動入賞装置12、13近傍の特定遊技領域を流下する球を通過させるもので、各変動入賞装置12、13にそれぞれ対応させて配置されている。
遊技領域2の下方には設定価値表示装置19(設定価値報知手段)が配置されており、設定価値表示装置19は大当り発生時に変動入賞装置12及び変動入賞装置13のそれぞれについての特別遊技に係る価値を報知する機能を有している(ただし、報知時期については後述)。
【0022】
変動表示装置11は、始動入賞に基づいて複数(例えば、3つ)の識別情報(以下、場合により図柄とか特図とかいう)を可変表示させるもので、画像、図柄などの識別情報を表示可能な画面を備え、その画面には複数の図柄表示領域(通常は、横方向3列に配列された3個の領域)を形成可能で、形成した図柄表示領域のそれぞれに複数の特図を変動表示可能である。
例えば、変動表示装置11は液晶画面を表示可能なもの(例えば、カラーで静止画及び動画が表示可能な、例えば液晶ディスプレイ(LCD)であり、CRTであってもよい。)が用いられ、画像はCG等を使用して造られるとともに、画面の略中央部に三つの変動表示領域が横3列に形成され、各変動表示領域には、数字や文字等よりなる特図を停止状態で表示(停止表示)したり、あるいは変動状態(例えば、縦方向にスクロールさせて図柄を順に切り替える状態)で表示(変動表示)したりすることが可能である。なお、特図の図柄は、番号が1?12まで全部で12個設定されるのが一般的であり、通常の変動表示の際には、各図柄が番号順に表示される。
【0023】
そして、変動表示装置11における複数の図柄が予め定めた表示結果態様(例えば、3つのゾロ目で揃った状態)になれば、特別遊技が発生するようになっている。ここで、始動入賞口(特図始動口15、16)に遊技球が入賞すると、所定条件が成立したことに相当し、変動表示装置11の識別情報を可変表示させることは補助遊技を行うことに相当する。…
【0028】
遊技盤1に設けられた複数の全ての入賞口、すなわち特図始動口15、16、変動入賞装置12、13については、後述するように、各入賞口毎に入賞検出用のセンサ(例えば近接センサであり、図2に示す)が配置されている。
また、変動入賞装置12、13のそれぞれの大入賞口内における、入賞流路(図示省略)にはカウントセンサ51、52(図2参照、以下図1に示されていないものは同様)がそれぞれ設けられている。特図始動口15、16の各入賞流路には特図始動センサ53、54がそれぞれ設けられ、選択ゲート17、18の各流路には選択ゲートセンサ55、56が設けられ、さらに設定価値表示装置19にはモータ位置センサ57が設けられている。なお、変動入賞装置12、13の大入賞口内にはいわゆる継続入賞(V入賞)した球を検出する継続センサは設けられていない。
【0051】
すなわち、後述のタイマー割込処理における乱数更新処理(ステップS15)では、特図に関連する乱数の更新が行われ、特図に関連する乱数としては、例えば、大当り乱数(大当りとするか否かを決定するための乱数)、リーチ乱数(リーチ態様決定用の乱数)、大当り停止図柄乱数(大当り停止図柄決定用の乱数)、などがある。そして、乱数の生成では、特図の乱数を例えば「1」ずつインクリメントして更新することが行われる。そのため、例えば本ルーチンが繰り返される毎に、特図の乱数が変り、大当りの乱数抽出値がアトランダム性を保つようになる。リーチ乱数、大当り停止図柄乱数などについても同様である。…
【0059】
次に、特図ゲーム処理における価値設定処理のサブルーチンについて説明する。図7は、価値設定処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
このサブルーチンが開始されると、まずステップS30で価値設定処理(大当りA・Bの価値を決定するもの)が済みであるか否かを判別し、済みでなければステップS31に進み、既に済んでいればステップS32にジャンプする。
ステップS31では、大当りA・Bの価値を決定する。この処理は、大当り発生毎に複数の大入賞口A、Bに対する大当り遊技の価値を設定するもので、詳細には、大当り判定用の乱数に基づいて複数の大入賞口A(変動入賞装置12)、大入賞口B(変動入賞装置13)の各々のラウンド数、カウント数、開放時間(前扉の開放時間のこと)、賞球数等を決定する。つまり、2つの大入賞口A、Bがあるので、それらの価値(遊技者にどのくらい賞球を獲得させるかという価値)を決定しておくものである。ここでは、大当り毎にその都度、価値を決定するようにしている。ただし、大当り判定用の乱数を用いて価値を設定する場合には、大当り図柄により、何れの大入賞口の価値が高いか(有利か)が解らない(予測されない)ようにしておくのが良い。
【0060】
そこで、本実施の形態では、特定条件が成立した場合以外は、通常は選択ゲート17、18を球が通過する前には遊技者に設定された価値内容を知らせないようにしている。これにより、遊技者には予想する楽しみが増えることになる。
なお、上記価値の設定では単に各大入賞口の価値が高い・低いを設定するだけでもよく、そのときは各々のラウンド数、カウント数、開放時間、賞球数のうちのどれか1つを選んで設定してもよい。また、この他に、ラウンド数、カウント数、開放時間、賞球数等の違いによる高低や、これらの組み合せによる高低の設定のうちのどれか1つを選んで設定してもよい。
また、価値の設定に際して、大当り判定用の乱数に基づいて決定するのではなく、例えば別の価値設定用の乱数を用意し、それを用いて価値を設定するようにしてもよい。
また、単に各大入賞口の価値の高い・低いを設定する場合に、ラウンド数、カウント数、開放時間、賞球数の組み合せによる価値を予め決定しておくようにしてもよい。
【0061】
次いで、ステップS32で価値表示処理を行う。これは、設定価値表示装置19を制御して設定された価値を表示するもので、どちらの大入賞口A、Bが高い価値か低い価値かを遊技者に報知する処理である。詳細はサブルーチンで後述する。これにより、遊技者は大入賞口A、Bの価値を知ることになる。
次いで、ステップS33で特定条件が成立しているか否かを判別する。特定条件とは、予め決められた条件であり、例えば遊技者に有利な条件及び不利な条件の両方を含むものである。特定条件として、本実施の形態では確率変動を設定しており、遊技者が有利な遊技を行える(高い価値が設定されている大入賞口が分かる)ようになるものである。すなわち、特定条件が成立していれば、高い価値の大入賞口を遊技者に報知しようとする趣旨である。
なお、特定条件は確率変動に限るものではなく、その他の条件でもよい。その他の条件として、例えば遊技者に不利なもの(例えば、大当り確率が低くなってかなりの特図変動回数がなければ大当りが発生困難なようなもの)であってもよい。
【0065】
このように、予め大当りの価値を複数の大入賞口A、Bについて決定しておいて、通常は遊技者にどちらの価値が高いかを知らせずに期待感を持たせて遊技をさせる。
一方、特定条件のとき、すなわち確率変動時に限っては、予め遊技者にどちらの価値が高いかを報知する(自動的に高い価値の大入賞口を知らせる)ようにし、高い価値に対応する発射指示表示LED25(あるいは26)を点滅した状態とする。したがって、遊技者は設定価値表示装置19を見ることで、高い価値の大入賞口を知り、また、それに対応した発射指示表示LED25(あるいは26)が点滅していることを見て、対応する選択ゲートセンサ55(あるいは56)を球が通過するように発射することにより、高い価値の大入賞口に球を入賞させて遊技価値を獲得することができるようになる。
【0066】
なお、本実施の形態では、特定条件の成立によって発射指示表示LED25(あるいは26)の一方をのみ点滅させて遊技者へ高い価値が設定されている変動入賞装置(大入賞口)を知らせているが、このような制御に限るものではない。 例えば、遊技者の選択(特定球検出手段(選択ゲートセンサ55、56)による球の検出)前に設定価値報知手段(設定価値表示器19や変動表示装置11の特図)によって設定価値の報知を行う構成にしてもよい。
【0070】
… また、大当り発生後に選択ゲート17、18を即座に有効にしないこと、すなわち、変動入賞装置(大入賞口)を選択するための特定球検出手段(選択ゲートセンサ55、56)による球の検出期間は、特別遊技の発生(補助遊技の結果が特別結果(大当り図柄の停止)になった状態)直後の検出は無効とし、所定時間経過後から検出を有効にする制御にしているのは、以下の理由による。
例えば、球の発射を連続して行っていると、遊技者が一方の特定球検出手段(選択ゲート18)を選択しようとしても、他方の特定球検出手段(選択ゲート17)によって球が検出されてしまうことがあり、そうなると、遊技者の意図しない変動入賞装置(大入賞口)を用いた特別遊技が行われてしまうことがあるので、そのような事態を防止するためである。
また、遊技者が選択を行う意思を持って発射が行えるようにためでもある。
【0076】
また、高価値設定状態報知手段は、特定条件が成立した場合、特定球検出手段(選択ゲートセンサ55、56)が球を検出する前に、異価値特別遊技設定手段が設定した高い価値の特別遊技が設定された変動入賞装置(大入賞口A又はB)を遊技者に知らせ、その変動入賞装置(大入賞口)に対応する特定球検出手段(選択ゲートセンサ)へ向けた発射が行えるようにするためのものであるが、特定条件としては、例えば補助遊技の特別結果としての大当り図柄の停止の中、特定の大当り図柄(確変図柄等)が停止表示された場合に限るものではない。その他に、例えば連続した特別結果(特別遊技の終了後、所定回(例えば、50回)以内の補助遊技で再び特別結果(大当り))が得られた場合や、補助遊技において特定の図柄が停止表示された後の所定回数(例えば、100回)以内の補助遊技で特別結果が得られた場合などを特定条件の成立とするような構成であってもよい。
【0088】
選択ゲート17、18の何れかを球が通過すると、通過した方の選択ゲートに対応する大入賞口が開放制御されて大当り遊技のラウンドに移行する。何れかの大入賞口が開放制御される段階になると、ようやく設定価値表示装置19における価値表示被覆液晶表示器64の不透明化されていた部分が解除(マスク解除)されて、図3(d)のように、何れの大入賞口が価値が高いのかが明確に表示される。これにより、遊技者は自分の選択(つまり選んだ方の選択ゲート、大入賞口)が良かったのか悪かったのかを知ることができ、遊技の興趣も高まる。…

段落【0019】によれば「変動入賞装置12(大入賞口A)及び変動入賞装置13(大入賞口B)」とあるから、「変動入賞装置」、「変動入賞装置12」及び「変動入賞装置13」については、それぞれ「大入賞口」、「大入賞口A」及び「大入賞口B」と、また段落【0020】によれば「特別遊技(大当り)」とあるから、「特別遊技」については「大当り」と、いずれも呼称を統一して用いることとする。
また、段落【0066】によれば「特定条件の成立によって…遊技者へ高い価値が設定されている変動入賞装置(大入賞口)を知らせているが、このような制御に限るものではない。例えば、遊技者の選択(特定球検出手段(選択ゲートセンサ55、56)による球の検出)前に…設定価値の報知を行う構成にしてもよい。」という記載があるから、この例によれば、遊技者へ高い価値が設定されている大入賞口を報知することは「特定条件の成立」の有無に関わらないこととなる。
よって、出願1の明細書又は図面における記載事項を総合的に勘案すれば、出願1の明細書又は図面には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

「遊技領域が形成された遊技盤1には、
ほぼ中央に液晶ディスプレイ(LCD)からなる変動表示装置11が配置され、
前記変動表示装置11の図柄を可変表示開始するための始動入賞を受け入れるための入賞口である特図始動口15,16が配置され、
前記変動表示装置11の左右下部領域にそれぞれ大入賞口A及び大入賞口Bが配置され、
前記大入賞口Aの上方には選択ゲート17が配置され、前記大入賞口Bの上方には選択ゲート18が配置され、前記選択ゲート17、18は前記大入賞口A、Bにそれぞれ対応させて配置されており、前記選択ゲート17、18はいわゆるスルーチャッカー形式のゲートであり各流路には選択ゲートセンサ55、56が設けられ、
大当り乱数によって大当りとするか否かが決定され、前記変動表示装置11における複数の図柄が予め定めた表示結果態様(例えば、3つのゾロ目で揃った状態)になれば、大当りが発生するようになっており、
前記大入賞口A、Bは大当りが発生したときに前記遊技領域を流下する球が入賞可能に配置され、大当り発生時には遊技者にとって有利な第1状態(開閉扉が開放状態)に変換作動するものであり、複数の前記大入賞口A、B毎に異なる価値の大当りを設定する構成であり、価値が高いか低いは、例えば大当りのラウンド数、入賞カウント数、扉の開放時間、賞球などの違いによって区分されるようになっており、
前記選択ゲートセンサ55、56が球を検出する前に、高い価値の大当りが設定された大入賞口を遊技者に知らせ、遊技者はその大入賞口に対応する選択ゲートセンサを球が通過するように、選択を行う意思を持って発射を行うことができ、
前記選択ゲート17、18の何れかを球が通過すると、通過した方の選択ゲートに対応する大入賞口が開放制御されて大当り遊技のラウンドに移行する
パチンコ機。」

3.対比

本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「特図始動口15,16」、「球」、「(液晶ディスプレイ(LCD)からなる)変動表示装置11」は、それぞれ本願発明の「始動口」、「遊技球」、「液晶表示器」に相当する。また、引用発明における「大入賞口A」と「大入賞口B」は本願発明の「第一の大入賞口」と「第二の大入賞口」に、引用発明における「選択ゲートセンサ55」と「選択ゲートセンサ56」は本願発明の「第一の通過検出手段」と「第二の通過検出手段」に、それぞれ相当する。
また引用発明から次の点も云える。
(a)引用発明においては、特図始動口15,16に入賞すると「変動表示装置11の図柄を可変表示開始する」ものであって、「大当り乱数によって大当りとするか否かが決定され、前記変動表示装置11における複数の図柄が予め定めた表示結果態様(例えば、3つのゾロ目で揃った状態)になれば、大当りが発生」し、かつ「前記大入賞口A、Bは大当りが発生したときに前記遊技領域を流下する球が入賞可能に配置され、大当り発生時には遊技者にとって有利な第1状態(開閉扉が開放状態)に変換作動する」ものであるから、引用発明が本願発明における「始動口への遊技球の入賞に基づいて行われる特典付与抽選の結果が当たりの場合に該遊技領域に設けられた大入賞口を所定の開放条件で開放せしめて、該大入賞口への遊技球の入賞を可能にするという特典を付与する」点の構成を満たすことは明らかである。
(b)引用発明においては「複数の前記大入賞口A、B毎に異なる価値の大当りを設定する構成であり、価値が高いか低いは、例えば大当りのラウンド数、入賞カウント数、扉の開放時間、賞球などの違いによって区分されるようになって」いるものであり、かつ「前記選択ゲートセンサ55、56が球を検出する前に、高い価値の大当りが設定された大入賞口を遊技者に知らせ」ているのであるから、引用発明の大入賞口Aと大入賞口Bとは相互に大当りの価値を異ならせているものである。そして本願発明の「開放条件」について発明の詳細な説明の段落【0016】には「本発明における開放条件とは、大入賞口を開放するための条件をいい、大入賞口の一回の開放時間,大入賞口の一回の開放において入賞可能な遊技球の数,特典付与抽選に当たった場合における大入賞口の開放回数,大入賞口に遊技球が一個入賞することに基づいて払い出される賞球(遊技球)の数,開放状態での大入賞口の大きさ等によって規定されたものである。」と記載されているから、引用発明における「大当り」の「価値」とは、本願発明の「開放条件」に他ならず、さらに本願発明の「大入賞口の開放条件を…異ならせる」についても、同【0016】には「本発明において大入賞口の開放条件を異ならせるとは、これら各種の条件の少なくとも一つを異ならせている場合をいう。」と記載されているから、引用発明における「異なる価値の大当りを設定」とは本願発明の「大入賞口の開放条件を…異ならせる」に相当するものである。よって、引用発明が本願発明における「前記大入賞口を複数設けてそれら大入賞口の開放条件を相互に異ならせる」という点及び「前記複数の大入賞口として第一の大入賞口と第二の大入賞口を採用する」という点の構成を満たすことは明らかである。
(c)引用発明においては「選択ゲート17、18は前記大入賞口A、Bにそれぞれ対応させて配置されており、前記選択ゲート17、18はいわゆるスルーチャッカー形式のゲートであり各流路には選択ゲートセンサ55、56が設けられ」ており、また「前記選択ゲート17、18の何れかを球が通過すると、通過した方の選択ゲートに対応する大入賞口が開放制御されて大当り遊技のラウンドに移行する」ものであるから、引用発明が本願発明における「遊技球の通過を検出する通過検出手段を互いに異なる位置に複数設けて、前記特典付与抽選の結果が当たりの場合に、該複数の通過検出手段による遊技球の検出結果に基づいて一つの通過検出手段が選定されることにより、該複数の大入賞口のなかから該一つの通過検出手段に対応付けられた一つの大入賞口が選択されて開放せしめられるように為し」という点及び「前記通過検出手段として該第一の大入賞口に対応付けられた第一の通過検出手段と該第二の大入賞口に対応付けられた第二の通過検出手段を採用して」という点の構成を満たすことは明らかである。
(d)引用発明においては「前記変動表示装置11の左右下部領域にそれぞれ大入賞口A及び大入賞口Bが配置され」、また「前記大入賞口Aの上方には選択ゲート17が配置され、前記大入賞口Bの上方には選択ゲート18が配置され」ている。そして出願1の【図1】も参照すれば、引用発明における「大入賞口B」とその上方の「選択ゲート18」は遊技領域の右側に配置されていると云えるから、引用発明が本願発明における「該第二の大入賞口及び該第二の通過検出手段を該遊技領域の右側に位置せしめ」という点の構成を満たすことは明らかである。また、引用発明においても「遊技者はその大入賞口に対応する選択ゲートセンサを球が通過するように、選択を行う意思を持って発射を行うことができ」るものであるから、引用発明が本願発明の「前記特典を遊技者が遊技球を利用して選択できるようにした」という点を満たすことも明らかである。

したがって、引用発明と本願発明とは、
「遊技領域に設けられた始動口への遊技球の入賞に基づいて行われる特典付与抽選の結果が当たりの場合に該遊技領域に設けられた大入賞口を所定の開放条件で開放せしめて、該大入賞口への遊技球の入賞を可能にするという特典を付与するパチンコ機において、
前記大入賞口を複数設けてそれら大入賞口の開放条件を相互に異ならせると共に、遊技球の通過を検出する通過検出手段を互いに異なる位置に複数設けて、前記特典付与抽選の結果が当たりの場合に、該複数の通過検出手段による遊技球の検出結果に基づいて一つの通過検出手段が選定されることにより、該複数の大入賞口のなかから該一つの通過検出手段に対応付けられた一つの大入賞口が選択されて開放せしめられるように為し、且つ、前記複数の大入賞口として第一の大入賞口と第二の大入賞口を採用すると共に、前記通過検出手段として該第一の大入賞口に対応付けられた第一の通過検出手段と該第二の大入賞口に対応付けられた第二の通過検出手段を採用して、該第二の大入賞口及び該第二の通過検出手段を該遊技領域の右側に位置せしめ、それによって、前記特典を遊技者が遊技球を利用して選択できるようにしたパチンコ機。」
の点で一致し、次の点で一応相違している。

[相違点]
本願発明においては「該第一の大入賞口及び該第一の通過検出手段を前記遊技領域に設けられた液晶表示器の下方に位置せしめ」ているのに対して、引用発明における「大入賞口A」と「選択ゲート17」がそのような配置と云えるか不明である点。

4.相違点の判断

上記相違点について検討する。
引用発明における「大入賞口A」については、変動表示装置11の「下部領域」に配置されている。しかし、出願1の【図1】を参照すれば、「選択ゲート17」については、変動表示装置11の「下部」とは云えない位置にあるように見受けられる。
引用発明は「遊技者は発射勢を変化させて特定の特定球検出手段に向けて球を発射することにより、自分で選んだ変動入賞装置による特別遊技を行うことができる」(出願1の【発明の効果】【0013】参照)ものであって、要は選択ゲート17又は18を遊技者が発射勢によって選択できればよいものである。とすれば、引用発明において、仮に選択ゲート17の位置が変動表示装置11よりも下部に位置していていないとしても、遊技者が発射勢によって選択が可能であれば、その位置は適宜設計できると判断できるものである。
そして、出願1の【図1】によれば、確かに選択ゲート17が変動表示装置11の左横に描かれているが、一方、選択ゲート17へは遊技釘によって球の流下が規制されていることも見て取れ、そのような流下規制部材の存在も踏まえれば、選択ゲートを変動入賞装置11の横位置に配することは特段必須の要件でなく、【図1】に描かれた位置よりも下方(変動入賞装置よりも下方)に配したとしても、遊技者の発射勢による選択が不可能になるものでもないと解される。
とすれば、引用発明と本願発明において選択ゲート17(第一の通過検出手段)の位置にやや相違があるとしても、それは具体化にあたっての微差に過ぎない。

そして、本願発明の作用効果について検討しても、請求人は審判請求書において、遊技者を遊技に「積極的に参加」、「主体的に関わらせる」といった効果を主張しているが、引用発明においても、遊技者は「選択を行う意思を持って発射を行うことでき」るものであって、引用発明も同様の効果を奏しているものである。
さらに、請求人は、通過検出手段を特定の位置に設けた効果として「開放される大入賞口の選択時間がオーバーすること等によって気づかないうちに不利益を被ってしまうという問題が回避される」と主張しているが、そもそも「選択時間」等の構成は本願発明には何らなく、このような効果は特許請求の範囲の記載に基づくものではないから参酌の対象にならない。

したがって、本願発明と引用発明とは実質的に同一であり、本願発明は特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

第3.むすび

以上のとおり、本願発明は原査定の理由に基づき特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-15 
結審通知日 2010-04-16 
審決日 2010-04-30 
出願番号 特願2008-136975(P2008-136975)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠崎 正  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 池谷 香次郎
吉村 尚
発明の名称 パチンコ機  
代理人 笠井 美孝  
代理人 中根 美枝  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ