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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1217901 |
審判番号 | 不服2007-24696 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-06 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 平成10年特許願第297046号「入力処理方法及び入力制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月28日出願公開、特開2000-122808〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成10年10月19日の出願であって、平成19年8月3日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して同年9月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月9日に手続補正書が提出されたものである。 2.補正却下の決定 平成19年10月9日に提出された手続補正書による補正の補正却下の決定 (1)[補正却下の決定の結論] 平成19年10月9日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 (2)[補正却下の決定の理由] (a)補正の内容 本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、 「カーソルの移動と描画とを引き起こす通常モードと、カーソル移動のみを引き起こすホバリングモードと、を備え、操作面に対するタッチ動作により入力を行う装置の、入力処理方法において、 前記操作面がタッチ動作されていない非タッチ動作状態の時間を検出する第1のステップと、 タッチ動作が発生した場合、前記検出された時間に応じて、ホバリングモードでのタッチ動作状態又は通常モードでのタッチ動作状態のいずれであるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する第2のステップと、 を有することを特徴とする、入力処理方法。」 と補正されている。 (b)補正の可否の検討 上記補正は、補正前の請求項1に「カーソルの移動と描画とを引き起こす通常モードと、カーソル移動のみを引き起こすホバリングモードと、を備え、」と追加するものである。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「通常モード」に関し、「カーソルの移動と描画とを引き起こす」ことは全く記載されていない。 例えば、当初明細書の段落【0008】には、「これに対し、タブレット上でのペンによる図形入力処理の場合、上述のように、ペンダウンによって常に点又は線が描画されるようにしてしまうと、点又は線を描くことなくカーソルを移動させる、図3に示される如き動作を実現することができない。そこで、実際にペンがタブレットに接触しても、ペンダウンと判定することなく、カーソルの移動のみを引き起こす動作モードが設けられている。このモードは、ホバリング(hovering)モードと呼ばれている。そして、通常モードによる動作とホバリングモードによる動作とを切り替えるために、図4に示されるように、ディスプレイ画面外に通常モード選択ボタン16とホバリングモード選択ボタン18とが設けられている。なお、ホバリングモード下でのアイコン操作においては、アイコンへのペンタップを行っても、カーソルがそのアイコンに位置づけられるのみである。」と記載されており、通常モードは、ペンダウンによって常に点又は線が描画されることが記載されているものの「通常モード」が「カーソルの移動と描画と」を引き起こすことは記載されておらず、ペンで点を描く動作を説明する図1、ペンで線を描く動作を説明する図2にもカーソルは全く示されていない。 そして、「カーソルの移動と描画とを引き起こす通常モード」を備えることは、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえないから、上記補正は当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下する。 3.本願発明 上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年9月25日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「操作面に対するタッチ動作により入力を行う装置の、入力処理方法において、 前記操作面がタッチ動作されていない非タッチ動作状態の時間を検出する第1のステップと、 タッチ動作が発生した場合、前記検出された時間に応じて、ホバリングモードでのタッチ動作状態又は通常モードでのタッチ動作状態のいずれであるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する第2のステップと、 を有することを特徴とする、入力処理方法。」 4.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-97133号公報(以下、「引用例」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。 (イ)「【発明の属する技術分野】本発明は、タブレットシートを押圧しながら移動し、パーソナルコンピュータのディスプレーに表示されたカーソルを移動制御する座標入力装置に関し、更に詳しくは、マウスとコンパチブルで使用するため、マウスの出力データと同一のフォーマットでパーソナルコンピュータへデータを出力する座標入力装置に関する。 」(段落【0001】) (ロ)「【0015】特に、マウスのドラッグに相当する操作を入力する時には、タブレットスイッチを押し下げながら、タブレットシート6を押圧移動させる必要があり、片手でこの操作を行うことができなかった。 【0016】従来の座標入力装置5には、この操作性に問題があり、座標入力装置5の普及の障害となっていた。 【0017】そこで、タブレットシート6を軽くたたく(以下タッピングという)回数、及びその間隔で、クリック、ダブルクリックなどのマウススイッチの操作を表す座標入力装置5が開発されている。」(段落【0015】、【0017】) (ハ)「【0023】上記従来の座標入力装置5は、このマウスの各操作モードに個々に対応するタッピング操作を表1のように定義し、タブレットシート6の押圧タイミングと押圧しながら移動があったかどうかで、表1に定義したタッピング操作であるかどうかを判定し、いずれかのモードの条件を満たすときに、該操作モードに合わせて、マウス出力データと同じデバイス出力データを図8のように出力するものである。 【0024】表1 【0025】例えば、一回タッピングを行った場合には、表1(a)からシングルクリックと、二回タッピングを行った場合には、表1(b)からダブルクリックとみなす。 【0026】同表において、タブレットシート6の押圧時間taが25msecから150msecの間であるときに、タッピング操作がなされたと判定する。タッピング以外の操作で、タブレットシート6が押圧される場合を除外するためである。 【0027】一回のタッピングの後、tbの期間タブレットシート6が押圧されない場合には、他のモードのためのタッピングではないので、シングルクリックと判定される(表1(a))。 【0028】また、一回のタッピング後tb期間内に、更にタブレットシート6が押圧され、この押圧がタッピング操作である場合にはダブルクリック(表1(b))と、押圧がtc時間以上続けられ、押圧中に相対移動位置データが変化した場合には、ドラッグ(表1(c))とそれぞれ判定される。ドラッグモードと通常の相対位置データ入力モードとは、その直前にタッピング操作がなされたかどうかで異なることとなる。 【0029】このようにタッピングの操作を行った後、所定の判定期間をおいて、マウスの各操作モードに相当するデバイス出力データを出力するので、その出力タイミングは、図7と図8を比較して明らかなように、マウスの出力タイミングより遅れることとなる。 【0030】しかしながら、マウスの各操作モードの単位でみれば、例えばクリックと判定したときのデバイス出力データは、図8の(ハ)が図6の(b)のように、図8の(ニ)が図6の(c)のように、マウスの左スイッチがクリック操作されたときのマウス出力データと、同一の出力間隔、同一のデータで出力される。」(段落【0023】?【0030】) 以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。 「タブレットシートに対する押圧操作により入力を行う座標入力装置において、 タブレットシートの押圧時間taが25msecから150msecの間であるときに、タッピング操作がなされたと判定し。 一回のタッピングの後、tbの期間タブレットシート6が押圧されない場合には、他のモードのためのタッピングではないので、シングルクリックと判定され、 また、一回のタッピング後tb期間内に、更にタブレットシート6が押圧され、この押圧がタッピング操作である場合にはダブルクリックと判定し、押圧がtc時間以上続けられ、押圧中に相対移動位置データが変化した場合には、ドラッグとそれぞれ判定され、 タッピングの操作を行った後、所定の判定期間をおいて、マウスの各操作モードに相当するデバイス出力データを出力し、ドラッグモードと通常の相対位置データ入力モードとは、その直前にタッピング操作がなされたかどうかで異なることを特徴とする座標入力装置。」 5.対 比 本願発明と引用例発明とを対比する。 引用例発明の「タブレットシート」は、本願発明の「操作面」に相当し、引用例発明の「押圧操作」は、本願発明の「タッチ動作」に相当し、引用例発明の「座標入力装置」は、本願補正発明の「操作面に対するタッチ動作により入力を行う装置」に相当する。 引用例発明は、タブレットシートにタッピングの操作を行った後、所定の判定期間をおいて、マウスの各操作モードに相当するデバイス出力データを出力しているから、「操作面に対するタッチ動作により入力を行う装置の、入力処理方法」といえる。 引用例発明の「一回のタッピングの後、tbの期間タブレットシートが押圧されない場合」と「一回のタッピング後tb期間内に、更にタブレットシート6が押圧され」るのを判定する点は、本願発明の「前記操作面がタッチ動作されていない非タッチ動作状態の時間を検出する第1のステップ」を有する点に相当するといえる。 引用例発明の「一回のタッピングの後、tbの期間タブレットシート6が押圧されない場合には、他のモードのためのタッピングではないので、シングルクリックと判定され、一回のタッピング後tb期間内に、更にタブレットシート6が押圧され、この押圧がタッピング操作である場合にはダブルクリックと判定し、押圧がtc時間以上続けられ、押圧中に相対移動位置データが変化した場合には、ドラッグとそれぞれ判定され」は、「一回のタッピング後(本願発明の「タッチ動作が発生した場合」に相当する。)、前記検出された時間に応じて」「シングルクリック操作モード」と「ドラッグ操作モード又はダブルクリック操作モード」を判定するものといえ、「タッチ動作が発生した場合、前記検出された時間に応じて、どのモードでのタッチ動作状態であるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する第2のステップ」を有する点で本願発明に対応(ただし、本願発明では、「タッチ動作が発生した場合、前記検出された時間に応じて、ホバリングモードでのタッチ動作状態又は通常モードでのタッチ動作状態のいずれであるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する第2のステップ」である。)する。 そうすると、両者は、 「操作面に対するタッチ動作により入力を行う装置の、入力処理方法において、 前記操作面がタッチ動作されていない非タッチ動作状態の時間を検出する第1のステップと、 タッチ動作が発生した場合、前記検出された時間に応じてどのモードでのタッチ動作状態のいずれであるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する第2のステップと、 を有することを特徴とする、入力処理方法。」 で一致するものであり、次の点で相違している。 本願発明は、「ホバリングモードでのタッチ動作状態又は通常モードでのタッチ動作状態のいずれであるかを表す、タッチ動作状態を示す情報を決定する」のに対し、引用例発明は「シングルクリック操作モード」と「ドラッグ操作モード又はダブルクリック操作モード」とのどちらにおけるタッチ動作状態あるかを判定する点。 6.当審の判断 上記相違点について検討する。 本願発明の「ホバリングモード」及び「通常モード」の内容は明らかではないが、本願明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌すると、「ホバリングモード」は、カーソルの移動のみを引き起こすモードであり、「通常モード」は、点や線を描画するモードであると判断される。 しかしながら、操作面をタッチして入力する装置において、カーソルの移動のみを行うモードと、点や線を描画するモードを有し、当該モードを変更することは、本願出願前周知の技術(例えば、特開平8-137609号公報、特開平10-171602号公報、特開平2-77926号公報参照)であり、操作面をタッチして入力する装置において、スイッチ操作によらず モード変更を容易に行えるようにするという課題も周知(前記特開平8-137609号公報、前記特開平10-171602号公報、特開昭61-223972号公報参照)である。 そして、引用例発明は、タブレットスイッチを押し下げることなく、タッチ操作のタイミング(「操作面がタッチ動作されていない非タッチ動作状態の時間」を含む。)により操作モードを判定して操作モードの変更を容易に行うことができるものである。 したがって、引用例発明において、判定の対象となるモードを「シングルクリック操作モード」と「ドラッグ操作モード又はダブルクリック操作モード」に代え、「ホバリングモード」(カーソルの移動のみを引き起こすモード)と「通常モード」(点や線を描画するモード)として本願発明を構成することは、当業者が容易になし得ることである。 そして、本願発明により奏される効果は当業者であれば引用例発明及び周知技術から予想できる範囲内のものである。 なお、審判請求人は、審判請求の理由において、「本願請求項1に係る発明によると、前回のタッチ動作の終了時点から今回のタッチ動作までの間隔(非タッチ動作状態の時間)を検出し、その間隔に基づいて、今回のタッチ動作がホバリングモードでのタッチ動作状態又は通常モードでのタッチ動作状態のいずれかであるかを決定しています。」と主張しているが、本願請求項1には、「タッチ動作」について、「前回のタッチ動作」、「今回のタッチ動作」の記載はなく、「タッチ動作されていない非タッチ状態の時間」が 「前回のタッチ動作の終了時点から今回のタッチ動作までの間隔」である記載もないから、この主張は採用できない。 7.結論 以上のとおり、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-07 |
結審通知日 | 2010-04-13 |
審決日 | 2010-04-26 |
出願番号 | 特願平10-297046 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 慎一、田中 慎太郎 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 圓道 浩史 |
発明の名称 | 入力処理方法及び入力制御装置 |
代理人 | 倉地 保幸 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 石田 敬 |
代理人 | 西山 雅也 |
代理人 | 樋口 外治 |