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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A45D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1217933
審判番号 不服2008-5828  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-07 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2005-512272号「頭髪,頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月26日国際公開、WO2006/008794〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成16年7月16日を国際出願日とする出願であって、平成20年1月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで特許請求の範囲及び明細書についての手続補正がなされたものである。

II.平成20年3月7日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月7日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
本件補正は、補正事項として、特許請求の範囲を、次のように補正することを含むものである。
(1)「頭部を前記ボウルと一体になって覆うフェイスカバー又はヘッドカバー」を、「頭部と顔をボウルと一体になって覆うヘッドカバーを兼ねたフェイスカバー」と補正。
(2)「折畳,展開自在のフレーム」を「前記ボウルとカバーと供給手段が配置された水平姿勢の上部フレームと、該上部フレームを水平姿勢のまま旋回昇降させるためのベースフレーム下部の後端部に起伏自在に立設した脚部材と、前記の仰向け又は俯せ状態の人を支持するため起伏自在の背もたれを備えた椅子状の人体支持手段とを具備し、該人体支持手段の座面を前記ベースフレームの前半側に配した脚メンバに架設すると共に、前記上部フレームに設けたシャンプーボウルとフェイスカバーと供給手段とを、前記脚部材を伏倒させて上部フレームと一緒に前記背もたれの背面下方に折畳むようにし、」と補正。
しかしながら、補正事項(1)における「頭部と顔をボウルと一体になって覆うヘッドカバーを兼ねたフェイスカバー」は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつこれらから自明な事項でもない。
したがって、この手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。

III.本願発明
1.本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という。)は、平成19年10月11日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「仰向け状態又は俯せ状態に支持される人の頭部の下方に配置される排水手段を具備したシャンプーボウルと、該ボウルの上部に開閉自在又は着脱自在若しくは前記ボウルと一体形で配置されると共に前記頭部を前記ボウルと一体になって覆うフェイスカバー又はヘッドカバーと、前記ボウルとカバーで囲まれた頭部に対しゾル状乃至はゲル状の洗髪剤や頭皮ケア剤など並びに水,湯など種々の液体などを供給する供給手段であって前記カバー又はボウルに装備される薬液や洗浄液などの供給手段とを、アルミ合金材製のパイプやチャンネル材などの軽量な金属材により組立てた折畳,展開自在のフレームに装備して一人で運搬可能な大きさと重量に形成し、使用時に頭部を仰向け状態又は俯せ状態にして人を支持する椅子などの人体支持手段と組合せるようにしたことを特徴とする頭髪、頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置。」

2.引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示された特開2003-111613号公報(以下、単に「引用例」という。)には、下記の事項が記載されている。
(イ)「【0016】この自動洗髪機1は、被洗髪者が洗髪時に座るための座席2と、この座席2の後方に配置される水槽13と、この水槽13と座席2とを共通に支持するための支持部材としてのハウジング3とを有している。ハウジング3内には、水槽13内にある被洗髪者の頭部に温水を噴射して自動的に洗髪するための噴射手段4が配置される。噴射手段4は、後述するポンプ、水路、制御部等を含んでいる。ハウジング3は、座席2の下方に配置される前部5と、これの後方に配置されて上方に突出するように延びて水槽13を収容する後部6と有している。ハウジング3の後部6の上面中央には、被洗髪者の頭部を水槽13に挿入するための入口12が形成されている。入口12は、水槽13の上部に設けられ、水槽13の内部に頭部および髪が収容される。」(第3頁第4欄第44行?第4頁第5欄第7行)、
(ロ)「【0017】入口12には、被洗髪者の顔の周囲を覆うフード14が開閉可能に取付けられている。このフード14を開いて、洗髪のために被洗髪者の頭部を水槽13に収容する。洗髪時には、フード14は閉じられ、被洗髪者は座席2に座り仰向け状態で入口12に頭部を挿入し、顔をフード14から出した状態で洗髪される。フード14は、被洗髪者の顔を露出させつつ水槽13の上部を開閉可能に覆い、このために、閉じた状態で前部となる部位に切欠部が形成されている。この切欠部の周囲には、略U字形状に形成された柔軟なシール部材であるフェイスシール15が設けられている。このフェイスシール15は、被洗髪者の顔面に沿いつつ、その周囲を封止する。」(第4頁第5欄第8?20行)、
(ハ)「【0018】ハウジング3内には、座席2の座部7の下方に電気部品17が配置されている。座席2の背もたれ8の下方には、洗髪用の温水を溜める貯湯タンク45が配置されている。水槽13の下方には、水槽13から水を排水するための管93等を含む排水用水路、貯湯タンク45に温水をためるための管44等を含む給水用水路、および貯湯タンク45から温水を流出させてポンプ59により水槽13内のノズルから噴射させるための管57,75等を含む噴射用水路が配置され、これらの水路のための管、弁等の水路形成部材が収容されている。」(第4頁第5欄第21?30行)、
(ニ)「水槽13内には、図2および図3の水路図に示すように、温水を噴射するための複数のノズル24,26,27?30が設けられている。これらのノズルには、頭部用ノズルリンク(以下、「上ノズルリンク」という。)23および襟足用ノズルリンク(以下、「下ノズルリンク」という。)25に配置されて、温水の噴射方向を変えながら噴射できる上ノズル24および下ノズル26と、水槽13の側壁に固定された複数の固定ノズル27?30とがある。これらの固定ノズル27?30は、水槽13内での位置が固定されているが、その温水の噴射方向を調整することができる。」(第4頁第5欄第37?48行)、
(ホ)「【0027】流出管57の途中部には、シャンプー供給管61とトリートメント供給管62が合流している。シャンプー供給管61は、シャンプー容器21からシャンプー用ポンプ65を介して流出管57に接続されている。また、トリートメント供給管62は、トリートメント容器22からトリートメント用ポンプ66を介して流出管57に接続されている。シャンプー容器21はシャンプー液を貯蔵し、トリートメント容器22はトリートメント液を貯蔵する。これらの容器21,22は、ハウジング3内に取り外し可能に設置されている。なお、これらの容器21,22をハウジング3の上面に露出させて装着するようにしてもよい。」(第5頁第7欄第32?43行)、および
(ヘ)「 また、図5に示すように、自動洗髪機1に移動手段として、ハウジング3の下部の四隅に支持される回動自在の複数の車輪95と、自動洗髪機1を押すためのハウジング3の後部に固定された棒部材96とを設けてもよい。これにより、自動洗髪機1を容易に移動させることができる。」(第8頁第13欄第45?50行)、そして
(ト)図2,3および5には上記記載事項に対応する構成が示されている。
上記各記載事項(イ)?(ト)からみて、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、上記引用例には、
「仰向け状態に座る被洗髪者の頭部の下方に配置される排水するための管93等を含む排水用水路を具備した水槽13と、該水槽13の上部に開閉可能に取付けられていると共に前記頭部を前記水槽13と一体になって覆うフード14と、前記水槽13とフード14で囲まれた頭部に対しシャンプー液やトリートメント液など並びに洗髪用の温水などを噴射する複数のノズル24,26,27?30であって前記フード14又は水槽13に設けられているシャンプー液、トリートメント液、温水などの複数のノズル24,26,27?30とを、ハウジング3に支持して押して移動させることができる移動手段を設け、頭部を仰向け状態にして被洗髪者を座らせる座席2を一体に設けるようにした自動洗髪機1」についての発明(以下、「引用発明」という。)、
が記載されている。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、上記引用発明における「座る」は本願発明の「支持される」に相当し、以下順に、「被洗髪者」は「人」に、「排水するための管93等を含む排水用水路」は「排水手段」に、「水槽13」は「シャンプーボウル」または「ボウル」に、「開閉可能に取付けられている」は「開閉自在で配置される」に、「フード14」は「フェイスカバー又はヘッドカバー」または「カバー」に、「シャンプー液」は「洗髪剤」に、「トリートメント液」は「頭皮ケア剤」に、「洗髪用の温水」は「水,湯など種々の液体」に、「噴射する」は「供給する」に、「複数のノズル24,26,27?30」は「供給手段」に、「設けられている」は「装備される」に、「シャンプー液、トリートメント液、温水」は「薬液や洗浄液」に、「支持して」は「装備して」に、「押して移動させることができる移動手段を設け」は「一人で運搬可能な大きさと重量に形成し」に、「被洗髪者を座らせる座席2」は「人を支持する椅子などの人体支持手段」に、そして「自動洗髪機1」は「頭髪、頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置」に、それぞれ相当し、また、引用発明における「ハウジング3」と本願発明の「フレーム」とは、支持手段である点で共通し、更に、本願発明と引用発明とは、椅子などの人体支持手段(座席2)を備えるようにしている点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「仰向け状態に支持される人の頭部の下方に配置される排水手段を具備したシャンプーボウルと、該ボウルの上部に開閉自在で配置されると共に前記頭部を前記ボウルと一体になって覆うフェイスカバー又はヘッドカバーと、前記ボウルとカバーで囲まれた頭部に対し洗髪剤や頭皮ケア剤など並びに水,湯など種々の液体などを供給する供給手段であって前記カバー又はボウルに装備される薬液や洗浄液などの供給手段とを、支持手段に装備して一人で運搬可能な大きさと重量に形成し、頭部を仰向け状態にして人を支持する椅子などの人体支持手段を備えるようにした頭髪、頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置」である点。
〈相違点〉
(A)洗髪剤(シャンプー液)が、本願発明では、ゾル状乃至はゲル状であるのに対して、引用発明では、ゾル状乃至はゲル状であるのか、否か、明らかでない点。
(B)支持手段が、本願発明では、アルミ合金材製のパイプやチャンネル材などの軽量な金属材により組立てた折畳,展開自在のフレームであるのに対して、引用発明では、そのような構成ではない点。
(C)頭髪,頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置(自動洗髪機1)に備える椅子などの人体支持手段(座席2)を、本願発明では、使用時に組合せるようにしているのに対し、引用発明では、一体に設けるようにしている点。

4.相違点についての判断
(a)相違点(A)について
ゾル状乃至はゲル状の洗髪剤(シャンプー液)は、周知である。
したがって、洗髪剤としてそのようなゾル状乃至はゲル状の洗髪剤を適用する程度のことは、必要に応じて適宜になし得たものと認められる。
(b)相違点(B)について
一般に、その上部等に装置を構成する各部材を載置、支持する支持手段として、アルミ合金材製のパイプやチャンネル材などの軽量な金属材により組立てたフレームを用い、そのフレームを必要に応じて折畳,展開自在に構成するようなことは、周知の技術手段である。
したがって、引用発明の支持手段であるハウジング3を、上記周知の技術手段に倣って、アルミ合金材製のパイプやチャンネル材などの軽量な金属材により組立てた折畳,展開自在のフレームで構成して、本願発明のように構成することは、当業者が必要に応じて容易になし得たことである。
(c)相違点(C)について
椅子などの人体支持手段を、使用時に、頭髪、頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置に組合せるようなことは、例えば、
i).上記引用例に、「上述の自動洗髪機は、ハウジング内に洗髪のための水槽を有し、この水槽の上部に、被洗髪者の頭部を入れるための開口が設けられている。自動洗髪機の前方には、被洗髪者のための椅子が設置される。被洗髪者は、椅子に座り、椅子の背が後方に倒されることにより仰向けになって、頭部を水槽の開口に挿入して、洗髪がなされる。【0003】洗髪時に利用される椅子は、リクライニング可能な汎用の椅子で、自動洗髪機とは別に準備される。」(第2頁第2欄第14?23行)と記載されており、また、
ii).原査定の拒絶の理由に引用文献2として示された特開2003-38240号公報に、「図1は、この発明の一実施形態に係る自動洗髪機1の斜視図である。図2は、自動洗髪機1によって被洗髪者が洗髪を行っている様子を示す図解的な縦断面図である。図1,2を参照して、自動洗髪機1は、キャビネット3によってその外観形状が構成されている。」(第5頁第8欄第15?20行)と記載され、図2に被洗髪者の支持手段を、使用時に、自動洗髪機1に組合せるようにした洗髪の様子が図示されており、更に、
iii).原査定の拒絶の理由に引用文献3として示された特開2003-275019号公報に、「シンク2を保持するシンク保持部3と、椅子4を保持する椅子保持部5とを着脱可能な構成とする。シンク保持部3と椅子保持部5とを取り付ける際は、まず、シンク保持部3を所定の設置位置に設置した後、シンク保持部3の手前側から後方へと椅子保持部5をスライドさせることにより、シンク保持部3の各部(送水機構9、貯湯タンク10、電気部品ボックス23およびドレンパン21)を外側から覆うように椅子保持部5をシンク保持部3に嵌め合わせる。」(第1頁の【要約】における【解決手段】)と記載され、図2に、使用時に、椅子保持部5をシンク保持部3に取り付けるようにした構成が図示されているように、この種の技術分野において周知の手段である。
したがって、上記周知の手段に倣って、頭髪、頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置を、使用時に椅子などの人体支持手段と組合せるようにして、本願発明のように構成する程度のことは、当業者が必要に応じて容易になし得たことである。
そして、本願発明の構成によってもたらされる明細書に記載の効果も、引用発明、上記周知の技術手段および上記周知の手段から、当業者であれば予測できる範囲のものであって、格別なものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、その出願前に当業者が引用発明、上記周知の技術手段および上記周知の手段に基いて容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-31 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-22 
出願番号 特願2005-512272(P2005-512272)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A45D)
P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 康平  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 鈴木 洋昭
蓮井 雅之
発明の名称 頭髪,頭皮のセルフ自動洗髪並びにセルフ自動ケア装置  
代理人 樋口 盛之助  

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