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審決分類 |
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1217939 |
審判番号 | 不服2008-7350 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-26 |
確定日 | 2010-06-10 |
事件の表示 | 特願2002- 9081「インクジェット装置の洗浄方法および洗浄機構を有するインクジェット装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月29日出願公開、特開2003-211687〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年1月17日の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成18年5月11日付けで手続補正がされたが、平成20年2月18日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成20年3月26日付けで審判請求がされるとともに、平成20年4月4日付けで明細書の特許請求の範囲について手続補正がされたものである。 その後、当審により平成21年12月24日付けで前置報告書の内容を通知する審尋がされたところ、平成22年2月16日付けで回答書が提出された。 第2 平成20年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年4月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正による請求項1についての補正 本件補正による請求項1についての補正は、補正前(平成18年5月11日付けの手続補正書参照)に 「【請求項1】 洗浄液を用いて、インクの貯蔵タンクと、インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを含むインクジェット装置を洗浄するための洗浄方法であって、長さ方向に分割可能としたインクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを実質的に分離させた状態で、少なくともインクの供給路を分割した状態で洗浄することを特徴としたインクジェット装置の洗浄方法。」 とあったものを、 「【請求項1】 洗浄液を用いて、インクの貯蔵タンクと、インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを含むインクジェット装置を洗浄するための洗浄方法であって、長さ方向に分割可能としたインクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを実質的に分離させた状態で、少なくともインクの供給路を分割した状態で洗浄するとともに、前記インク供給路の途中に、洗浄状態を検知するためのセンサを備えたことを特徴としたインクジェット装置の洗浄方法。」 と補正するものである。 該補正は、発明を特定するために必要な事項として、補正前の請求項1に記載されていなかった、「『インク供給路の途中に』備えた『洗浄状態を検知するためのセンサ』」を新たに付加するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。 そして、本件補正前の請求項2?24のうちに本件補正後の請求項1に相当するものが存在しないから、同項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものにも該当しない。 また、同項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正及び同項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。 したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 しかしながら、該補正は、発明を特定するために必要な事項である「インクの供給路」を、「インク供給路の途中に、洗浄状態を検知するためのセンサを備えた」ものに限定することにより、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと解する余地がある。 そこで、念のため、本件補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか( 平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。 2 独立特許要件について 2-1 本願補正発明の認定 本件補正後の請求項1に係る発明は、本件補正後の請求項1に記載されたとおりのものと認める。(以下「本願補正発明」という。) 2-2 引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された特開昭56-155770号公報(以下「引用例」という。)には、以下の記載A.?C.が図示と共にある。 A.「インクタンクとヘッドの間にインクの流れ方向に順次粗い塵埃から細い塵埃を取るように粗いフィルタから細かいフィルタを配置したインクジェット記録装置のインク供給装置において、前記インクタンクと前記粗いフィルタの間及び前記ヘッドと前記細かいフィルタの間にそれぞれ切換弁を設け、該切換弁を介して洗浄液供給装置から洗浄液を前記インク供給方向と逆方向に流したことを特徴とするインクジェット記録装置のインク供給装置。」(1頁左下欄5?14行) B.「このように構成されたインクジェット記録装置では、インクタンク6のインクはインク供給ポンプ5でフィルタ4_(3),4_(2),4_(1)を介してインク供給管3からインクヘッド1に送られ、駆動回路8でヘッド1の電歪振動子7を駆動すると、ノズル2からインクが噴出し」(1頁右下欄9?14行) C.「切換弁15_(1),15_(2)を通常のインク供給経路より洗浄液供給経路へ切換える。続いて洗浄液供給ポンプ16をポンプ駆動回路18によって動作させ、洗浄液タンク17から切換弁21,15_(1),フィルタ4_(1),4_(2),4_(3)、切換弁15_(2)を通って排液タンク20へインクの流れと逆の方向に洗浄液をインク供給管3の中に流すと」(2頁右上欄11?18行) 上記記載A.?C.及び引用例全体の記載から、引用例には、次の発明が記載されていると認めることができる。 「洗浄液を用いて、インクタンクと、ノズルからインクを噴出するヘッドと、インクタンクからヘッドにインクを供給するインク供給管と、を含むインクジェット記録装置を洗浄するための洗浄方法であって、インク供給管とヘッドの間及びインク供給管とインクタンクの間をそれぞれ切換弁で閉じた状態でインク供給管を洗浄するインクジェット記録装置の洗浄方法。」(以下「引用発明」という。) 2-3 対比 引用発明の「インクタンク」、「ノズルからインクを噴出するヘッド」、「インク供給管」、「インクジェット記録装置」は、それぞれ本願補正発明の「インクの貯蔵タンク」、「液滴吐出ヘッド」、「インクの供給路」、「インクジェット装置」に相当する。 してみれば、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。 <一致点> 「洗浄液を用いて、インクの貯蔵タンクと、インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを含むインクジェット装置を洗浄するための洗浄方法であって、インクの供給路を洗浄するインクジェット装置の洗浄方法。」 <相違点1> 本願補正発明は「長さ方向に分割可能としたインクの供給路」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 <相違点2> 本願補正発明は「インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを実質的に分離させた状態で、少なくともインクの供給路を分割した状態で洗浄する」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 <相違点3> 本願補正発明は「インク供給路の途中に、洗浄状態を検知するためのセンサを備えた」と特定されているのに対し、引用発明は前記特定を有しない点。 2-4 判断 <相違点1>について 液体の供給路を所望の長さとするために、複数の液体供給手段(例えばパイプやホース)を接続分離自在とする(例えばパイプ端部にフランジを設けねじ止めしたりホースのジョイントを用いたりする)ことは慣用手段である。 よって、引用発明において、本願補正発明の相違点1に係る構成を備えることは、当業者が適宜なし得たことである。 <相違点2>について (i)本願補正発明の相違点2に係る構成のうち前段の「インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを実質的に分離させた状態で、」の意味する構成はかならずしも明確でないが、本願明細書には次の記載がある。 「【0039】2.洗浄方法 (1)分離方法 インクジェット装置を洗浄する洗浄方法にあたって、インクの供給路と、液滴吐出ヘッドとを実質的に分離させる方法としては、以下のような方策が挙げられる。 【0040】(1)脱着機構 図1に示すように、液滴吐出ヘッド22のインク供給路側に、液滴吐出ヘッド22の脱着機構6が設けてあり、当該液滴吐出ヘッド22を、インクの供給路5からはずせることが好ましい。このように実施することにより、汚染した洗浄液およびインクの塊等が、液滴吐出ヘッド内に流入することを完全に防止することができる。したがって、洗浄した場合であっても、液滴吐出ヘッドに対する影響が少ないインクジェット装置の洗浄方法を効率的かつ経済的に提供することができる。なお、好ましい脱着機構として、バンド構造や、ピンチコック等が挙げられる。 【0041】(2)弁構造 また、図1に示すように、液滴吐出ヘッド22のインク供給路側に、洗浄液が液滴吐出ヘッド22内に流入することを防止するための弁構造7を設けることが好ましい。」 してみると、該構成は、液滴吐出ヘッドとインク供給路の間を弁で閉じることを含む。 一方、引用発明は、インク供給管とヘッドの間を切換弁で閉じた状態でインク供給管を洗浄する。 よって、引用発明は、該構成を備えている。 (ii)本願補正発明の相違点2に係る構成のうち後段の「少なくともインクの供給路を分割した状態で洗浄する」の意味する構成はかならずしも明確でないが、本願明細書には次の記載がある。 「【0029】また、本発明の洗浄機構を有するインクジェット装置を構成するにあたり、インクの供給路が、長さ方向に、分割できることが好ましい。このように構成することにより、インクの供給路の長さが長い場合であっても、短く分割した状態で洗浄することができるため、インクの供給路の洗浄を十分に実施することが可能なインクジェット装置を提供することができる。」 してみると、該構成は、インクの供給路を分割して洗浄することと解される。 しかしながら、液体の供給路を適宜分割して洗浄することは周知である。 その例として、本願出願前に頒布された、特開平7-198100号公報(以下「周知例1」という。)、特開昭63-44492号公報(以下「周知例2」という。)、特開平3-12230号公報(以下「周知例3」という。)及び特開平4-104859号公報(以下「周知例4」という。)を挙げることができる。 特に、周知例1?4の以下の記載を参照されたい。 周知例1について 「【請求項2】 各種機器が設置されてタンク内の製品流体を特定位置へ供給する配管システムの配管に設置され、上記配管システムを上記機器の特性に応じて複数のブロックに分割可能とする仕切り弁と、 上記各ブロックに接続されて洗浄媒体を供給可能とする洗浄媒体供給ラインと、 上記各ブロックに接続されて、各ブロックを洗浄した後の洗浄媒体を排出可能とし、洗浄媒体の濁度を検出可能な濁度センサを備えた洗浄媒体排出ラインと、 上記仕切り弁を開操作して上記配管システムを複数のブロックに分割し、上記濁度センサの検出値に基づいて各ブロックの洗浄完了を判定し、洗浄完了後上記タンクに近いブロックから順次そのブロックの仕切り弁を開操作して各ブロックへ上記製品流体を供給する制御装置と、 を有することを特徴とする洗浄媒体・製品流体切換装置。」 (配管システムを仕切り弁で複数のブロックに分割して洗浄している。) 周知例2について 「第1洗浄切換弁30は、ミックスタンク20側((A)?(B)通)、第2洗浄切換弁31は排水側((A)?(D)(B)?(C)が通)に切換わって、定置洗浄装置1より送られてくるすすぎ液、あるいは殺菌液により、ミックスタンク20のすすぎ、あるいは加熱殺菌を行なう。」(3頁左下欄5?10行) 「ミックスタンク20のすすぎ、あるいは加熱殺菌が充分行なわれたことを確認後、第1洗浄切換弁30は、バイパス配管側((B)?(C)通)、第1バイパス切換弁35は第2洗浄切換弁31側((X)?(Y)通)に切換え、すすぎ液/殺菌液は、ミックスタンク20をバイパスし、液処理装置22、クツションタンク23のすすぎ/加熱殺菌を行なう。」(3頁右下欄5?12行) (送液配管をミックスタンクを含む部分、クツションタンクを含む部分等に弁で分割して洗浄している。) 周知例3について 「第1図に示す配管構造にする。まず、吸着法を用いた分離操作における吸着および溶出、ゲル濾過法を用いた分離操作におけるローディングおよび分画の方法を説明する。分離対象物質を含むあるいは含まないバッファー1を配管3、充#4層4.3方バルブ5、配管6.3方バルブ7、充填層4、配管8の順に通液することにより、分離操作を行う。この操作は従来の方法と同一である。次に、吸打法あるいはゲル濾過法を用いた分離操作における洗浄の方法を説明する。洗浄用のバッファーlを配管3、充填層4、3方バルブ5、配管8を通る流路および配管2.3方バルブ7、充填層4、配管8と通る流路に同時に通液する。」(3頁左下欄5?10行) (第1図において、分離操作における流路1,2,3,4,5,6,7,4,8を、弁5,7で2つの流路1,2,3,4,5,8及び1,2,7,4,8に分割して洗浄している。) 周知例4について 「糊供給用管路1上には、開閉弁V5および第1三方弁V6が設けられている。開閉弁V5は管路1aと1bとの間を開閉する機能を有し、第1三方弁V6は、糊供給用管路1に洗浄液供給用管路4を切り替えて接続する機能を有する。」(4頁右下欄1?6行)及び第11図 したがって、引用発明において、該構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 上記(i)及び(ii)より、引用発明において、本願補正発明の相違点2に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点3>について 洗浄液供給路の途中に、洗浄状態を検知するためのセンサを備えることは周知である。 例えば、上記「<相違点2>について」における周知例1の摘記中には「洗浄媒体の濁度を検出可能な濁度センサを備えた洗浄媒体排出ライン」とある。 また、本願出願前に頒布された特開平10-339699号公報の図1に示された液管理装置は、洗浄液が導入路1、導入路1a、管路5a、管路13a、吸光度計14、管路13b、洗浄液排出路15を通って流れ、吸光度の値及び変化量に基づき、洗浄液の洗浄力を管理するものである。 したがって、引用発明において、本願補正発明の相違点3に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 括り 以上のことから、引用発明において、本願補正発明の相違点1?3に係る構成を備えることは、周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 また、かかる発明特定事項を採用することによる効果も、当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 1 本願発明の認定 平成20年4月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年5月11日付けで補正された請求項1に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 2 引用例の記載 引用例及びその記載事項は、上記「第2 平成20年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について 2-2 引用発明の認定」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、上記「第2 平成20年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「インクの供給路」について、「インク供給路の途中に、洗浄状態を検知するためのセンサを備える」との限定を省いたものに相当する。 すると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成20年4月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [理由] 2 独立特許要件について」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 |
審理終結日 | 2010-04-08 |
結審通知日 | 2010-04-13 |
審決日 | 2010-04-27 |
出願番号 | 特願2002-9081(P2002-9081) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 572- Z (B41J) P 1 8・ 121- Z (B41J) P 1 8・ 57- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大仲 雅人、横林 秀治郎 |
特許庁審判長 |
江成 克己 |
特許庁審判官 |
藏田 敦之 星野 浩一 |
発明の名称 | インクジェット装置の洗浄方法および洗浄機構を有するインクジェット装置 |
代理人 | 宮坂 一彦 |
代理人 | 上柳 雅誉 |
代理人 | 須澤 修 |