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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04Q |
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管理番号 | 1217958 |
審判番号 | 不服2006-14523 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-06 |
確定日 | 2010-06-09 |
事件の表示 | 特願2002-113987「時間的・空間的な制約を有する情報提供方式」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月13日出願公開、特開2002-359863〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成14年3月13日(優先日:平成13年3月14日、出願番号:特願2001-120385号)の出願であって、平成18年5月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成18年7月6日に拒絶査定に対する審判が請求されるとともに、同年8月4日付けで手続補正がなされたものである。 その後、当審において平成21年9月15日付けで拒絶理由を通知したところ、同年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出され、さらにその後、当審において平成21年12月17日付けで最後の拒絶理由を通知したところ、平成22年2月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 平成22年2月22日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年2月22日付け手続補正(以下、「本件補正1」という。)を却下する。 [理由] 1.平成22年2月22日付けの手続補正 本件補正1は、少なくとも、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1について、以下のように補正しようとするものである。 「【請求項1】 情報提供者側の情報提供手段と、この情報提供手段との間で、交信を行う特定のエリアに設置されたところの近接無線通信手段である無線LAN通信手段を備えた情報発信基地局と、この情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段と、前記情報発信基地局との間で交信を行う近接無線通信手段である無線LAN通信手段及び高速移動通信を可能とする広域無線通信手段であるセルラ通信手段を併せて具備した携帯情報端末機とを用い、前記情報発信基地局はその存在信号を前記無線LAN通信手段を介して外部へ発信すると共に、当該情報発信基地局からの情報内容を前記表示手段へ表示し、前記携帯情報端末機は前記情報発信基地局からの存在信号を自動検知して当該情報発信基地局からの発信情報が受信可能であることを使用者に知らしめ、使用者が前記セルラ通信手段に優先して前記情報発信基地局との通信を選択した場合には、前記情報発信基地局との間の通信を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを可能とし、この通信を行うに当たり前記情報発信基地局からの情報を取得するための認証処理を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを特徴とする、時間的・空間的な制約を有する情報提供方式。」 (アンダーライン表示は審判請求人による。) 前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、本件補正1により、「情報提供者側の情報提供手段と、」との記載が付加され、「近接無線通信手段」に、「この情報提供手段との間で、交信を行う特定のエリアに設置されたところの」との記載が付加され、「表示手段」について、「前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された」との記載が削除され、「近接無線通信手段」に、「前記情報発信基地局との間で交信を行う」との記載が付加され、「情報内容」に、「当該情報発信基地局からの」との記載が付加され、「情報基地局」が「情報発信基地局」とされたものを含むものである。 2.補正の適否 (a)当審による拒絶理由通知 当審で、平成21年12月17日付けで通知した最後の拒絶理由は、以下のとおりのものである。 『平成21年11月30日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない。 記 <最後> (1)請求項1に係る発明について 平成21年11月30日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)において、本願の請求項1に係る発明は、「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」との記載が付加され、また、「情報内容を前記表示手段へ表示し」との記載が付加されている。 上記「この情報発信基地局からの情報を表示するところの」は、「表示手段」を修飾しているものと解される。そして、「この情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段」は、「表示手段が、情報発信基地局から送信された情報を表示する」という意味内容を表したものと解される。しかし、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「表示手段が、情報発信基地局から送信された情報を表示すること」は記載されていない。 詳述すると、本願明細書における発明の詳細な説明には、請求項1に記載された「表示手段」について、以下の記載がされている。 「【0017】 図3は、本発明に係る情報提供方式の第2の実施例を示す説明図であり、請求項3に記載したように、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること、又は無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供を行い、無線LAN通信手段の基地局からの情報提供の存在やその補足情報などの周知化を図るように構成されている。これにより、他情報提供手段との連携も可能となり、(店舖等)又は駅などの公共建築物周辺での画像表示手段として情報提供手段との交信を促す情報を表示しうる。」 この記載からすると、「表示手段」は、「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること」、又は「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供」を行い、「無線LAN通信手段の基地局からの存在やその補足情報などの周知化を図る」ように構成されているものであり、公共建築物周辺での「画像表示手段」として、情報提供手段との交信を促す情報を表示しうることが、記載されるのみである。 ここで、上記下線で示した「情報発信」とは、「基地局」から「携帯情報端末機」への情報発信を意味するものであり、「基地局」から「表示手段」への情報発信を意味するものではないことは明らかである。 すなわち、本願明細書に記載された「表示手段」は、基地局から携帯情報端末機への情報発信が行われていること、又は、基地局から携帯情報端末機への情報発信に対する補足情報の提供を行い、基地局から携帯情報端末機への情報提供の存在や、その補足情報などの周知化を図るように構成されていることが記載されるのみであって、当該「表示手段」が、本件補正による請求項1のように、「情報発信基地局からの情報を表示する」こと、換言すれば、情報発信基地局から送信された何らかの情報を表示手段が表示することは記載されていない。 したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 ところで、本件補正による請求項1には、上記「表示手段」について、「近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」とも記載されているが、「表示手段」が「通信可能エリア内に設置された」ものであることは、当初明細書等に記載がない。特に、図3を参照しても、図3の右側の図において、画像表示手段は、無線LAN基地局の扇形の通信エリアの外に位置しているから、「画像表示手段」は、無線LAN基地局の「通信エリア内」に設置されているものとは解せない。この点においても、本件補正は明細書の記載を逸脱した内容を含んでいる。 なお、上記指摘した理由の特許法第17条の2第3項(新規事項の追加)が解消することにより、当審によって先に通知(平成21年9月15日付け拒絶理由通知書)した拒絶の理由も解消するものではない。』 (b)意見書及び手続補正書の内容 これに対して、審判請求人による平成22年2月22日付けの手続補正書及び意見書の内容は、以下のとおりである。 (ア)補正された特許請求の範囲 本件補正1後の特許請求の範囲の請求項1は、上記「1.平成22年2月22日付けの手続補正」における「本願補正発明」の記載のとおりである。 (イ)意見書の内容 また、審判請求人は意見書において、当審による前記最後の拒絶理由通知の指摘に対して、主に次のように反論している。 『(2)まず、「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」の件ですが、審査官殿は、出願時の明細書の段落[0017]と図3を根拠にして、そこに前記構成の表示手段は記載されていないと、認定しておられます。 しかしながら、段落[0017]の上から3行目乃至6行目にかけてのところには、「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること、」と記載されており、さらに、図3には、売場という無線LAN通信手段の基地局を備えたエリア内に当該表示手段が設置されることが図示されています。つまり、図3には、売場Cというエリア内に画像表示手段と無線LAN基地局が図示されています。そこにおいて本願請求項1でいう「表示手段」は情報表示手段のことであり、情報発信局が無線LAN通信手段の基地局のことであることは明らかであります。 このことから、本願請求項1に記載された「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線手段による通信可能エリア内に設置された表示手段と、」という構成要件が、出願当初の明細書と図面に記載されていることは明らかであります。しかしながら、同日付提出の手続補正書において「前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された」の部分を削除いたしました。 (3)次に、「近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」につきましては、同じく同日付提出の手続補正書で、これを「この情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段」というように訂正をいたしました。 (4)そして、本願請求項1を下記のように訂正致しました。 「[請求項1] 情報提供者側の情報提供手段と、この情報提供手段との間で、交信を行う特定のエリアに設置されたところの近接無線通信手段である無線LAN通信手段を備えた情報発信基地局と、この情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段と、前記情報発信基地局との間で交信を行う近接無線通信手段である無線LAN通信手段及び高速移動通信を可能とする広域無線通信手段であるセルラ通信手段を併せて具備した携帯情報端末機とを用い、前記情報発信基地局はその存在信号を前記無線LAN通信手段を介して外部へ発信すると共に、当該情報発信基地局からの情報内容を前記表示手段へ表示し、前記携帯情報端末機は前記情報発信基地局からの存在信号を自動検知して当該情報発信基地局からの発信情報が受信可能であることを使用者に知らしめ、使用者が前記セルラ通信手段に優先して前記情報発信基地局との通信を選択した場合には、前記情報発信基地局との間の通信を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを可能とし、この通信を行うに当たり前記情報発信基地局からの情報を取得するための認証処理を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを特徴とする、時間的・空間的な制約を有する情報提供方式。」 (5)以上の訂正によって、本願請求項1発明に対する特許法第17条の2第3項の拒絶理由は解消されたものと思います。』 (c)当審の判断 (c-1)特許法第17条の2第3項に規定する要件について 上記(b)(イ)によると、要するに、審判請求人は、出願当初の明細書の段落【0017】の上から3行目乃至6行目にかけて、「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること、」と記載されている点、さらに、図3には、売場という無線LAN通信手段の基地局を備えたエリア内に当該表示手段が設置されることが図示され、つまり、図3には、売場Cというエリア内に画像表示手段と無線LAN基地局が図示されており、そこにおいて本願請求項1でいう「表示手段」は情報表示手段のことであり、情報発信局が無線LAN通信手段の基地局のことであることは明らかである点を根拠として、本件補正1後の請求項1に係る発明(本願補正発明)に対する特許法第17条の2第3項の拒絶理由(新規事項の追加)は解消されたものであることを、主張している。 しかしながら、審判請求人による上記平成22年2月22日付けの手続補正書及び意見書は、当審による前記最後の拒絶理由を依然として解消していない。 詳述すると、本願の請求項1に係る発明(本願補正発明)は、本件補正1により、「情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段」との記載がなされ、また、「情報発信基地局からの情報内容を前記表示手段へ表示し、」との記載がなされており、これらの記載は、「表示手段」が、「情報発信基地局からの情報(内容)」、すなわち、「情報発信基地局から送信された情報(内容)」を「表示する」という意味内容を表したものと解される。 しかし、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「表示手段が、情報発信基地局から送信された情報(内容)を表示する」ことは記載されていない。 特に、当初明細書等の段落【0017】には、本願の請求項1に記載された「表示手段」について、以下のように記載されている。 「【0017】 図3は、本発明に係る情報提供方式の第2の実施例を示す説明図であり、請求項3に記載したように、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること、又は無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供を行い、無線LAN通信手段の基地局からの情報提供の存在やその補足情報などの周知化を図るように構成されている。これにより、他情報提供手段との連携も可能となり、(店舖等)又は駅などの公共建築物周辺での画像表示手段として情報提供手段との交信を促す情報を表示しうる。」 この記載からすると、「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、」は、「行われている」を修飾しているのではなく、「行い、」に係っているとするのが正解である。 つまり、上記段落【0017】の「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること、又は無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供を行い、」の意味は、 <1>=「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること」 <2>=「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報」 とすれば、 「<1>又は<2>の提供を、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって行い、」ということである。 すなわち、「表示手段」は、「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること」、又は「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供」を行い、「無線LAN通信手段の基地局からの存在やその補足情報などの周知化を図る」ように構成されているものであり、公共建築物周辺での「画像表示手段」として、情報提供手段との交信を促す情報を表示しうることが、記載されるのみである。 換言すれば、当初明細書等の【発明の実施の形態】の記載における段落【0014】?【0016】には、「携帯情報端末機の使用者が特定の無線LAN通信手段の基地局に対する通信可能領域に入った場合には、無線LAN通信手段の基地局及び携帯情報端末機がこれを自動検知すると共に、携帯情報端末機の使用者に対して当該無線LAN通信手段の基地局からの発信情報が受信可能であることを知らしめ、」と記載され、また、「情報提供者が意図した情報の提供は、地域的あるいは空間的には無線LAN通信手段の基地局からの通信可能エリアを限定し、時間的には無線LAN通信手段の基地局からの情報提供日時を限定し、不特定多数の顧客が入手しうるその他の情報との差別化を図ることを可能とする。通信可能エリアとは、無線LAN通信手段の基地局からの発信情報が受信可能なエリアであり、情報提供者側が特定の目的を遂行するためのエリアである」と記載されていることから、上記段落【0017】における「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信」とは、「基地局」から「携帯情報端末機」への情報発信を意味するものであり、「基地局」から「表示手段」への情報発信を意味するものではない。 すなわち、当初明細書等における「表示手段」に関しては、基地局から携帯情報端末機への情報発信が行われていること、又は、基地局から携帯情報端末機への情報発信に対する補足情報の提供を行い、基地局から携帯情報端末機への情報提供の存在や、その補足情報などの周知化を図るように構成されていることが記載されるのみであって、当該「表示手段」が、本件補正1による請求項1のように、「情報発信基地局からの情報を表示する」、換言すれば、情報発信基地局から送信された何らかの情報を表示手段が表示する、とは解されない。 したがって、本件補正1により、「情報発信基地局からの情報を表示するところの表示手段」との記載がなされ、また、「情報発信基地局からの情報内容を前記表示手段へ表示し、」との記載がなされた点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 よって、本件補正1は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、依然として、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない。 (c-2)特許法第17条の2第4項に規定する要件について 本件補正1は、上記「1.平成22年2月22日付けの手続補正」において示したように、請求項1に記載の「表示手段」について、「前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された」との記載が削除されたものであるから、本件補正1により、「表示手段」が「近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された」点の限定は省かれており、したがって、請求項1は拡張されており、当該補正は、特許法第17条の2第4項第2号が規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 また、当該補正が、同項第1号、第3号及び第4号のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。 よって、本件補正1は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない 3.むすび 以上のとおりであるから、本件補正1は、上記(c-1)に示したように、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではないから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである また、本件補正1は、上記(c-2)に示したように、補正の目的が、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 平成21年11月30日付けの手続補正 平成22年2月22日付けの手続補正(本件補正1)は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年11月30日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 近接無線通信手段である無線LAN通信手段を備えた情報提供者側の情報発信基地局と、この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段と、近接無線通信手段である無線LAN通信手段と高速移動通信を可能とする広域無線通信手段であるセルラ通信手段とを併せて具備した携帯情報端末機とを用い、前記情報発信基地局はその存在信号を前記無線LAN通信手段を介して外部へ発信すると共に、情報内容を前記表示手段へ表示し、前記携帯情報端末機は前記情報発信基地局からの存在信号を自動検知して前記情報発信基地局からの発信情報が受信可能であることを使用者に知らしめ、使用者が前記セルラ通信手段に優先して前記情報発信基地局との通信を選択した場合には、前記情報発信基地局との間の通信を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを可能とし、この通信を行うに当たり前記情報基地局からの情報を取得するための認証処理を前記無線LAN通信手段同士を介して行うことを特徴とする、時間的・空間的な制約を有する情報提供方式。」 (アンダーライン表示は審判請求人による。) 本願発明は、本件補正2により、「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」との記載が付加され、「情報内容を前記表示手段へ表示し、」との記載が付加されたものを含むものである。 第4 当審による拒絶理由通知 平成21年12月17日付けで当審において通知した最後の拒絶理由通知は、上記「第2 平成22年2月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の(a)で示したように、本件補正2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない、というものである。 第5 当審の判断 本願発明において、本件補正2により付加された「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」、及び「情報内容を前記表示手段へ表示し、」との記載は、「表示手段」が、「情報発信基地局からの情報(内容)」、すなわち、「情報発信基地局から送信された情報(内容)」を「表示する」という意味内容を表したものと解される。 しかしながら、当初明細書等には、「表示手段が、情報発信基地局から送信された情報(内容)を表示することは記載されていない。 審判請求人は平成22年2月22日付けの意見書において、上述した「第2 平成22年2月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の(b)(イ)で示したように、出願当初の明細書の段落【0017】の上から3行目乃至6行目にかけて、「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること、」と記載されている点、さらに、図3には、売場という無線LAN通信手段の基地局を備えたエリア内に当該表示手段が設置されることが図示され、つまり、図3には、売場Cというエリア内に画像表示手段と無線LAN基地局が図示されており、そこにおいて本願請求項1でいう「表示手段」は情報表示手段のことであり、情報発信局が無線LAN通信手段の基地局のことであることは明らかである点を主張している。 しかしながら、当初明細書等の段落【0017】に記載された「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、」は、「行われている」を修飾しているのではなく、「行い、」に係っているとするのが正解である。 つまり、上記段落【0017】の「プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって、無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること、又は無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供を行い、」の意味は、 <1>=「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行なわれていること」 <2>=「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報」 とすれば、 「<1>又は<2>の提供を、プラズマディスプレイ(PDP)や液晶ディスプレイ(LCD)などの情報表示手段によって行い、」ということである。 すなわち、「第2 平成22年2月22日付けの手続補正についての補正却下の決定」の「2.補正の適否」の(c-1)において既述したように、「表示手段」は、「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信が行われていること」、又は「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信に対する補足情報の提供」を行い、「無線LAN通信手段の基地局からの存在やその補足情報などの周知化を図る」ように構成されているものであり、公共建築物周辺での「画像表示手段」として、情報提供手段との交信を促す情報を表示しうることが、記載されるのみである。 換言すれば、当初明細書等の【発明の実施の形態】の記載における段落【0014】?【0016】には、「携帯情報端末機の使用者が特定の無線LAN通信手段の基地局に対する通信可能領域に入った場合には、無線LAN通信手段の基地局及び携帯情報端末機がこれを自動検知すると共に、携帯情報端末機の使用者に対して当該無線LAN通信手段の基地局からの発信情報が受信可能であることを知らしめ、」との記載、また、「情報提供者が意図した情報の提供は、地域的あるいは空間的には無線LAN通信手段の基地局からの通信可能エリアを限定し、時間的には無線LAN通信手段の基地局からの情報提供日時を限定し、不特定多数の顧客が入手しうるその他の情報との差別化を図ることを可能とする。通信可能エリアとは、無線LAN通信手段の基地局からの発信情報が受信可能なエリアであり、情報提供者側が特定の目的を遂行するためのエリアである」との記載がされていることから、当初明細書等の段落【0017】における「無線LAN通信手段の基地局からの情報発信」とは、「基地局」から「携帯情報端末機」への情報発信を意味するものであり、「基地局」から「表示手段」への情報発信を意味するものではない。 すなわち、当初明細書等における「表示手段」に関しては、基地局から携帯情報端末機への情報発信が行われていること、又は、基地局から携帯情報端末機への情報発信に対する補足情報の提供を行い、基地局から携帯情報端末機への情報提供の存在や、その補足情報などの周知化を図るように構成されていることが記載されるのみであって、当該「表示手段」が、本件補正2による本願発明のように、「情報発信基地局からの情報を表示する」、換言すれば、情報発信基地局から送信された何らかの情報を表示手段が表示する、とは解されない。 したがって、本件補正2により、「この情報発信基地局からの情報を表示するところの前記近接無線通信手段による通信可能エリア内に設置された表示手段」との記載がなされ、また、「情報内容を前記表示手段へ表示し、」との記載がなされた点は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものではない。 よって、本件補正2が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしてない、とした平成21年12月17日付けの拒絶理由は妥当なものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願は、平成21年11月30日付けの手続補正(本件補正2)が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-12 |
結審通知日 | 2010-03-23 |
審決日 | 2010-04-09 |
出願番号 | 特願2002-113987(P2002-113987) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
WZ
(H04Q)
P 1 8・ 572- WZ (H04Q) P 1 8・ 55- WZ (H04Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉村 博之、小河 誠巳 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
近藤 聡 角田 慎治 |
発明の名称 | 時間的・空間的な制約を有する情報提供方式 |
代理人 | 伊藤 捷雄 |
代理人 | 伊藤 捷雄 |
代理人 | 伊藤 捷雄 |