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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1217984
審判番号 不服2009-2298  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-03 
確定日 2010-06-09 
事件の表示 特願2000-347419「折り畳みコンテナー」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月28日出願公開、特開2002-154535〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年11月15日の出願であって,平成20年12月24日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年2月3日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。
特願2000-134514号(特開2001-315773号)」

上記特許出願を,以下,「先願」という。

第3.当審の判断
1.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という)は,平成20年7月16日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「底部と,底部の相対する長辺部にヒンジ部材を介して連結された長側壁と,同じく底部の相対する短辺部にヒンジ部材を介して連結された短側壁とからなり,且つ,折り畳み状態においては,底部の上に,一対の長側壁が,その先端部分が重なるように折り畳まれ,更にその上に,短側壁が折り畳まれるように構成された折り畳みコンテナーにおいて,一対の長側壁の内壁面には,それぞれ,略中程から先端に向かって,外側に傾斜した傾斜面が形成されており,且つ,最初に折り畳まれる長側壁の内壁面に形成された前記傾斜面が,底部の上面に面接触状に接触するように構成されているとともに,後から折り畳まれる長側壁の内壁面に形成された前記傾斜面が,最初に折り畳まれる長側壁の外側面に面接触状に接触するように構成されていることを特徴とする折り畳みコンテナー。」

2.先願発明
本願の出願日前にされた特許出願であって,本願の出願後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下,「先願明細書等」という)には,次の事項が記載されている(特開2001-315773号参照)。
(a)「【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題点に鑑みて発明したものであり,折り畳みコンテナにおいて,箱状に組み立てた状態における高さを高くできるとともに折り畳み状態における嵩を低くでき,しかも,安定した状態で折り畳むことができる折り畳みコンテナを提供することを課題とするものである。」
(b)「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため本発明折り畳みコンテナは,矩形状の底板1の対向する一対の辺にそれぞれ回動自在に取付けた一対の第1の側板2と,対向する他の一対の辺に回動自在に取付けた一対の第2の側板3とを,一対の第1の側板2を倒した上に一対の第2の側板3を倒した状態で折り畳み且つ一対の第2の側板3を起立させた後に一対の第1の側板2を起立させて箱形状に組み立てる折り畳みコンテナであって,一対の第1の側板2乃至一対の第2の側板3の一方の対または両方の対が倒した状態で重複するように設定し,重複する対をなす側板の回動枢支位置の高さが同じで,且つ,倒した状態で重複する対をなす側板同士の重複部15を該側板の重複していない他の部分よりも薄くして成ることを特徴とするものである。このような構成とすることで,対となる側板同士を重複させるといえども側板の他の部分に比べて薄くなった部分で重複させるので,箱状に組み立てた状態における折り畳みコンテナの高さを高くできるとともに折り畳み状態における嵩を低くできるものである。しかも,折り畳みコンテナの折り畳み状態における嵩を低くしたにもかかわらず,重複する対をなす側板の回動枢支位置の高さを同じ高さ位置とすることで,重複する対をなす側板として同一金型で成形したものであっても使用することが可能となるものであり,また,折り畳み時に対となった2枚の側板のうちどちらを先に倒しても折り畳むことが可能なような構成とすることもできるものである。」
(c)「【0014】
合成樹脂製の長方形状の底板1の対向する長辺側の辺には長辺側の側板2aが回動自在に取付けてあり,また,底板1の対向する短辺側の辺には短辺側の側板3aが回動自在に取付けてある。」
(d)「【0015】
長辺側の側板2aは底板1の長辺と直交する方向の長さが底板1の短辺側の長さの略1/2以上の長さとなっていて,回動して折り畳んだ場合,対となった長辺側の側板2a同士が一部重複するようになっている。」
(e)「【0017】
ここで,対となった長辺側の両側板2aの底板1への各枢支部分の高さ位置(横軸部9a,9aの高さ位置)は同じ高さ位置となっている。また,対となった短辺側の側板3aの底板1への各枢支部分の高さ位置(横軸部9b,9bの高さ位置)は同じ高さ位置となっている。そして,短辺側の側板3aの底板1への枢支位置(横軸部9b,9bの高さ位置)と長辺側の側板2aの底板1への枢支部分の高さ位置(横軸部9a,9aの高さ位置)とは高さを違わせてあり,長辺側の側板2aの枢支部分の高さ位置よりも短辺側の側板3aの枢支部分の高さ位置を高くしてあり,折り畳むに当たっては,先に底板1の上に長辺側の側板2aを折り畳んで重ね,次に,短辺側の側板3aを折り畳んで長辺側の側板2aの上に重ねるようになっている。」
(f)「【0022】
上記のように・・・図1に示す実施形態においては,長辺側の側板2aの先端部(上端部)の重複部15の内面部を段落して段部10を形成することで重複部15を他の部位よりも薄肉に形成してある。ここで,添付図面に示す実施形態においては薄くなった重複部には長辺側の側板2aの他の部位よりも多くの補強リブ16を設けて補強してあって,薄くなった部分の強度の低下を防止してある。」(段落【0022】)
(g)「【0025】
ここで,箱状に組み立てた折り畳みコンテナを折り畳むに当たっては,先ず,対をなす長辺側の側板2aのうちのいずれか一方を回動して倒すことで該一方の長辺側の側板2aを斜めに傾斜させた状態でその一部を底板1の上面側に当接する。次に,他方の長辺側の側板2aを回動して倒すことで該他方の長辺側の側板2aをその一部を先に倒して斜めに傾斜させた一方の長辺側の側板2aに重複させるものである。」
(h)「【0026】
ここで,図1に示す実施形態においては,少なくとも重複部15の先端部イと基部ロとにおいて長辺側の側板2a同士が当接しており,重複部15において少なくとも先端部イと基部ロとで当接して重複することで,重複部15に上方から荷重がかかっても確実に荷重を受けることができるようになっている。図1においてはさらに,長辺側の側板2aの重複部15の基部ロが先端部イよりも厚くなるように次第に長辺側の側板2aの重複部の厚みを変化させてあり,このようにすることで,対を構成する長辺側の側板2a同士が倒した状態で該長辺側の側板2aの縦横方向において互いに平行状態で重複して互いに面接触するものである。ここで,面接触とは面同士が接触して重複する場合だけでなく,一方が面で他方が長辺側の側板の縦方向及び横方向に形成した縦横のリブ又は格子状のリブの際に面と縦横のリブ又は格子状のリブが接触する場合,または,長辺側の側板2aの縦方向及び横方向に形成した縦横のリブ又は格子状のリブの際に縦横のリブ又は格子状のリブ同士が接触する場合とがあり,いずれの場合も対をなす長辺側の側板2a同士が当該長辺側の側板2aの縦横方向において互いに平行状態で重複することになる。」
(i)「【0029】
上記のように対となった長辺側の側板2aを折り畳んだ後,回動枢支位置の高さが同じ対となった短辺側の側板3aを回動して倒し,図1,図2,図3に示すように,両短辺側の側板3aを水平に倒した状態で先に倒して重ねた対の長辺側の側板2aのうちの上の長辺側の側板2aに当接するものである。このように,回動枢支位置の高さが同じ対となった両短辺側の側板3aを水平に倒した状態で先に倒して重ねた対の長辺側の側板2aのうちの上の長辺側の側板2aに当接することで,長辺側の側板2a上に短辺側の側板3aを最も嵩低く折り畳むことができるものである。」
(j)「【0038】
図11(a)には本発明の他の実施形態が示してある。すなわち,本実施形態においては,対をなす側板(添付図面においては長辺側の側板2a)を折り畳んだ状態で,先端部が重複するようになっており,重複部15が該側板の重複しない部分よりも薄くなっており,さらに,重複部15の基部が先端部よりも厚くなっているのは前述の実施形態と同様であるが,これに加え,更に該側板の重複しない部分の一部又は全部を重複部15側に向かうにしたがって次第に薄くなるように構成し,更に,重複部15にかけて連続して薄くなるようにしてある。」
(k)図11(a)を参照すると,下側に位置する側板2aの重複部は,リブとして形成された先端部イと基端部ロの箇所において,上側に位置する側板2aの下面に当接するほか,該先端部イと該基端部ロの間に形成されたリブ16の箇所においても,上側に位置する側板2aの下面に当接することが看てとれる。

記載事項(j)によれば,図11(a)に示される実施形態は,側板2aの重複しない部分の一部又は全部を重複部15側に向かうにしたがって次第に薄くなるようにし,さらに重複部15にかけて連続して薄くなるように構成されたものである点を除けば,図1?10に示される実施形態と同様な構成となっていることが理解されるから,図1?10に示される実施形態について記載された記載事項(c)?(i)の内容は,図11(a)に示される実施形態にもあてはまる。また,記載事項(a)及び(b)の内容がいずれの実施形態についてもあてはまることは明らかである。
以上の点を踏まえて,図11(a)に示される実施形態に着目すると,先願明細書等には,次の発明が記載されているといえる。

「長方形状の底板1の二つの長辺に同一高さに配置された横軸9aを介して長辺側の側板2aが回動自在に取付けられるとともに,該底板1の二つの短辺に同一高さに配置された横軸9bを介して短辺側の側板3aが回動自在に取付けられ,底板1の上に一対の長辺側の側板2aを折り畳んで重ねた後に,一対の短辺側の側板3aを水平に倒した状態で長辺側の側板2aの上に重ねることができるようにした折り畳みコンテナであって,長辺側の側板2aを折り畳むに際しては,先ず,いずれか一方の側板2aを回動して倒すことで該側板2aを傾斜させた状態でその先端側を底板1の上面側に当接させ,次に,他方の側板2aを回動して倒すことでその先端側を一方の側板2aに重複させ,該重複部において,先に倒した側板2aに形成された3つのリブの上端と後で倒した側板2aの下面との間で両側板2aは互いに面接触し,各側板2aは,重複しない部分の一部又は全部が重複部側に向けて次第に薄くなるように,かつ,重複部も先端側に向けて次第に薄くなるように形成されている折り畳みコンテナ。」

3.対比・判断
本願発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「底板1」,「長辺側の側板2a」及び「短辺側の側板3a」は,それぞれ本願発明の「底部」,「長側壁」及び「短側壁」に相当する。先願発明において,側板2aを折り畳んだときの該側板2aの下面は,本願発明の「長側壁の内壁面」に該当し,先願発明において,側板2aを折り畳んだときの該側板2aの上面,すなわち複数のリブの上端は,本願発明の「長側壁の外側面」に該当する。
また,先願発明の長辺側の側板2aは,重複しない部分の一部又は全部が重複部側に向けて次第に薄くなるように,かつ,重複部も先端側に向けて次第に薄くなるように形成されており,該側板2aの折り畳み状態における下面は,少なくともその略中程から先端に向かって,外側に傾斜した傾斜面が形成されているといえる。
したがって,本願発明と先願発明は,本願発明の表記にしたがえば,
「底部と,底部の相対する長辺部にヒンジ部材を介して連結された長側壁と,同じく底部の相対する短辺部にヒンジ部材を介して連結された短側壁とからなり,且つ,折り畳み状態においては,底部の上に,一対の長側壁が,その先端部分が重なるように折り畳まれ,更にその上に,短側壁が折り畳まれるように構成された折り畳みコンテナーにおいて,一対の長側壁の内壁面には,それぞれ,略中程から先端に向かって,外側に傾斜した傾斜面が形成されており,後から折り畳まれる長側壁の内壁面に形成された前記傾斜面が,最初に折り畳まれる長側壁の外側面に面接触状に接触するように構成されている折り畳みコンテナー。」
である点で一致し,次の点で一応相違する。
[相違点]
本願発明は,最初に折り畳まれる長側壁の内壁面に形成された傾斜面が,底部の上面に面接触状に接触するように構成されているのに対して,先願発明は,先に倒した長辺側の側板2aの先端側が底板1の上面側に当接するものではあるが,面接触状に当接するか否かは必ずしも明らかではない点。

なお,本願発明における「一対の長側壁の内壁面には,それぞれ,略中程から先端に向かって,外側に傾斜した傾斜面が形成されており」は,一対の長側壁の内壁面の基端から略中程の一部又は全部に傾斜面が形成される形態を排除するものではなく,例えば,略中程から先端に向かう部分の傾斜面とは異なる傾斜面が基端から略中程に形成される形態(後述するように,先願発明はこのような形態に該当する)を含むものである。
また,本願明細書の段落【0015】に「長側壁2aや底部1の上面1cが,リブ構造に形成されていたり,長側壁2aや底部1の上面1cに透孔が形成されている場合には,リブ構造により形成されるリブ孔や透孔部分は,当然のことながら接触することはないので完全な面接触ではないが,本実施例においては,上述した従来の折り畳みコンテナーのように,長側壁2a’が,底部1’の上面1c’と,その先端角部2a2’においてのみ,略線状に接触するようなことはなく,本実施例においては,多くの細い線状の面の集合面のような,実質的に面接触状に接触することになる。また,図1?図4に示されている実施例のように,長側壁2a,2bの外壁面2a3,2b3に,縦横に走るリブ4が形成されている場合には,最初に折り畳まれたリブ4が形成された長側壁2aの外側面2a3と,後から折り畳まれる長側壁2bの内壁面2b1に形成された傾斜面2b2とが重なり合う際には,最初に折り畳まれた長側壁2aの外側面2a3に形成されているリブ4のために,完全な面接触とはならないが,上記と同様に,多くの細い線状の面の集合面のような,実質的に面接触状に接触することになる。」と記載されていることから理解されるように,本願発明でいう「面接触状」は,複数のリブと平面部が当接する形態を含む概念である。そして,本願の図2?4に示される実施例から明らかなように,長側壁の長手方向に形成されるリブが3本のものでも,リブと平面部とにより「面接触状」に当接させることが可能である。

上記相違点について検討する。
先願発明は,一対の長辺側の側板2aが同一高さに配置された横軸9aを介して底板1に回動自在に取付けられるものであること,一対の長辺側の側板2aを折り畳むに際しては,先ず,いずれか一方の側板2aを回動して倒し,次に,他方の側板2aを回動して倒せばよいものであって,折り畳み順序に制約がないものであること,また,先願明細書等に「重複する対をなす側板の回動枢支位置の高さを同じ高さ位置とすることで,重複する対をなす側板として同一金型で成形したものであっても使用することが可能となるものであり,また,折り畳み時に対となった2枚の側板のうちどちらを先に倒しても折り畳むことが可能なような構成とすることもできる」と記載されていること(記載事項(b)参照)を考慮すると,先願発明の一対の長辺側の側板2aは,図11(a)に示される断面形状において左右対称であり,したがって同一形状のものであると考えられる。
また,先願発明は,短辺側の側板3aを水平に倒した状態で長辺側の側板2aの上に重ねることができるものであること,先に倒した長辺側の側板2aの重複部に形成された3つのリブの上端と後で倒した長辺側の側板2aの下面との間で両側板2aは互いに面接触するものであること,また,前述のとおり,一対の長辺側の側板2aは同一形状であることを考慮すると,図11(a)において,後で倒された長辺側の側板2aに形成されている3つリブの上端を結ぶ線は直線であって水平方向を向いていると考えられ,さらに,一対の長辺側の側板2aの下面は重複部において平面となっている(湾曲していない)と考えられる。
そうしてみると,断面形状が同一で先細りの二枚の側板2aが互いに逆向きとなるように重ねられた該二枚の側板2aの上端を連ねる面が水平方向を向いているのであるから,該二枚の側板2aの重複部における下面,すなわち先に倒した側板2aの重複部における下面も水平方向を向いているというべきである。
したがって,先願発明において,先に倒した長辺側の側板2aの先端側は底板1の上面側に面接触状に当接するというべきであるから,上記相違点は,実質的な相違点とはいえない。
なお,先願発明において,長辺側の側板2aの下面は,重複部を含む領域において一つの平面を形成しており,それ以外の領域は該平面とは異なる平面または曲面となっていると考えられる。この意味において,略中程から先端に向かう部分の傾斜面とは異なる傾斜面が基端から略中程に形成されているといえる。

4.むすび
以上のとおり,本願発明は,先願明細書等に記載された発明と実質的に同一である。
また,本願の発明者は先願の発明者と同一ではなく,また,本願の出願の時において,本願の出願人は先願の出願人と同一でもない。
したがって,本願発明は,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。
原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-18 
結審通知日 2010-03-30 
審決日 2010-04-12 
出願番号 特願2000-347419(P2000-347419)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 豊島 ひろみ
鳥居 稔
発明の名称 折り畳みコンテナー  
代理人 平井 保  

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