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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1218020
審判番号 不服2008-23963  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-18 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2002-234402「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 73294〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は平成14年8月12日に出願されたものであって、平成20年8月13日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年9月18日付けで本件審判請求がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成21年12月24日付けで、最後の拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成22年2月25日付けで、意見書及び手続補正書を提出した。

2.平成22年2月25日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年2月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
2.-1.補正内容
平成22年2月25日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正後における特許請求の範囲の記載は、下記のとおりである。
「【請求項1】変動表示手段の左中右の変動表示領域にて図柄を変動表示する変動表示ゲームの制御を行う表示制御手段を備え、この変動表示ゲームにおいて変動表示が停止した前記図柄の結果態様に関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記表示制御手段は、
多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面に各図柄をマッピングして各面に各図柄を表す図柄マッピング手段と、
仮想3次元空間の座標系内に、視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定して図柄オブジェクトの所定面の図柄を表示可能な図柄表示手段と、
表示する図柄の変動表示、停止表示を制御する図柄変動停止表示制御手段と、
を備え、
前記図柄表示手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄を同時に表示可能に視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定する複数図柄同時表示手段を含み、
前記図柄変動停止表示制御手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄をグループとして変動表示、停止表示を制御可能であり、
前記図柄オブジェクトの単一面の単図柄を変動表示、停止表示可能であって、
前記特別遊技状態を発生させた前記左中右の変動表示領域に停止表示されたすべての図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトである場合には、前記特別遊技状態を発生させた前記左右の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトであり、前記中の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトの場合よりも、次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されることを特徴とする遊技機。」

そして、本件補正前の特許請求の範囲は、平成20年9月18日付け手続補正書に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】変動表示手段の複数の変動表示領域にて図柄を変動表示する変動表示ゲームの制御を行う表示制御手段を備え、この変動表示ゲームにおいて変動表示が停止した前記図柄の結果態様に関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記表示制御手段は、
多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面に各図柄をマッピングして各面に各図柄を表す図柄マッピング手段と、
仮想3次元空間の座標系内に、視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定して図柄オブジェクトの所定面の図柄を表示可能な図柄表示手段と、
表示する図柄の変動表示、停止表示を制御する図柄変動停止表示制御手段と、
を備え、
前記図柄表示手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄を同時に表示可能に視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定する複数図柄同時表示手段を含み、
前記図柄変動停止表示制御手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄をグループとして変動表示、停止表示を制御可能であり、
前記図柄オブジェクトの単一面の単図柄を変動表示、停止表示可能であって、
前記特別遊技状態を発生させた前記複数の変動表示領域に停止表示されたすべての図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトである場合には、前記特別遊技状態を発生させた前記複数の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトを少なくとも一つ含む場合よりも、次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されることを特徴とする遊技機。」

上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「変動表示手段の複数の変動表示領域」を「変動表示手段の左中右の変動表示領域」と、変動表示領域の並び方向の限定を付加し、
さらに、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「複数の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトを少なくとも一つ含む」を「左右の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトであり、前記中の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクト」と、(次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されない場合の)単一面の単図柄の図柄オブジェクトが停止表示される変動表示領域の限定を付加したものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか以下検討する。

2.-2 引用刊行物の記載事項
当審において通知した最後の拒絶理由に引用した特開2002-200260号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「【0017】特別図柄表示器20の表示画面21は方形に形成され、この表示画面21に3つの図柄表示列(左図柄表示列110、中図柄表示列130、右図柄表示列150)が形成されるように構成されている。そして、図柄表示列110,130,150に表示された特別図柄の配列によって、遊技者に大当たり遊技を付与する大当たりか否かを報知する。具体的には、表示画面21の図柄表示列110,130,150に表示された特別図柄によって大当たり図柄配列(例えば、同じ図柄が3つ揃った場合)を形成した場合が「大当たり」であり、それ以外の図柄配列が形成された場合が「はずれ」である。なお、本実施の形態では、図柄表示列110,130,150に表示される特別図柄はいずれも「0」?「9」の計10種類である。
【0018】次に、第1実施の形態の特別図柄表示器20の表示画面21に表示される態様について、図3?図8を参照しながら詳細に説明する。なお、これらの図において、変動している図柄表示列を図中下向きの矢印で示している。遊技盤面12に打ち出されたパチンコ球が第1種始動口30に入賞すると、特別図柄表示器20の表示画面21の3つの図柄表示列110,130,150は、図3に示すように順変動方向(図2中の矢印40方向)にほぼ一斉に変動(例えば、図柄が認識できない程度の高速で)を開始する。そして、左図柄表示列110、右図柄表示列150、中図柄表示列130の順で図柄の変動を停止する。
【0019】なお、パチンコ機の遊技制御部では4[msec]毎に各種乱数が更新されており、第1種始動口30にパチンコ球が入賞すると、この入賞球を検知したタイミングで大当たり判定乱数、大当たり図柄用乱数が取得される。大当たり判定乱数は大当たりにするか否かの決定に用いられ、大当たり図柄用乱数は大当たりが決定した場合に大当たりの特別図柄の停止態様を決定する乱数である。また、はずれ図柄や、図柄の変動態様の決定には、左特別図柄乱数、中特別図柄乱数、右特別図柄乱数、リーチ判定用乱数、変動パターン用乱数が使用される。これらの乱数は、変動に先立って取得される。左特別図柄乱数、中特別図柄乱数、右特別図柄乱数は、はずれが決定している場合の、特別図柄の停止態様を決定する乱数である。リーチ判定用乱数は、はずれが決定している場合の、はずれリーチの演出を行うか否かを決定する乱数である。はずれリーチの演出を行うと決定された場合、左特別図柄乱数、中特別図柄乱数、右特別図柄乱数の中から1種類の乱数を捨て、はずれリーチが形成される特別図柄の停止態様を決定する。変動の態様を決定する際は、大当たりの場合、はずれリーチの演出を行う場合、単なるはずれの場合、それぞれについて、変動パターン用乱数を参照し、演出の種類、変動の態様を示す変動パターン番号を決定する。このようにして、パチンコ機の遊技制御部で決定された左、中、右特別図柄の停止態様、変動パターン番号は、特別図柄表示制御部にコマンドとして送信される。特別図柄表示制御部では、この左、中、右特別図柄の停止態様と変動パターン番号に従って図柄の変動や再変動を行う。」

イ.「【0013】図1において、本発明の遊技機としてのパチンコ機10の遊技盤面12上には、複合装置14、装飾ランプ16、第1種始動口30、中ゲート32、大入賞口34、下部第1種始動口62、一般の入賞口等が適宜に配置されている。第1種始動口30は始動口センサ56を有し、パチンコ球が入賞すると通常の入賞口と同様に賞球(賞品球)を払い出す。中ゲート32はゲートセンサ54を有し、パチンコ球が通過しても賞球を払い出さない。大入賞口34は蓋66を有し、当該蓋66はソレノイド50によって開閉される。また、大入賞口34はVゾーン52を有し、そのVゾーン52はVゾーンセンサ48を有する。大入賞口開放期間内にパチンコ球がVゾーン52に入賞すると、大当たり遊技を所要回数(例えば16回)内で継続することができる。上記大入賞口開放期間としては、例えば大入賞口34にパチンコ球が10個入賞するか、開放してから30秒間を経過するまでのいずれか早いほうが該当する。さらに蓋66の下部には、第1種始動口30と同等の機能を備えた下部第1種始動口62を配置している。下部第1種始動口62は始動口センサ56と同様の機能を備えた始動口センサ60を有する。」

ウ.「【0020】表示画面21に、例えば図4に示すような図柄配列「3,↓,7」が表示されると、中図柄表示列130が変動を停止して表示する図柄に関わらずはずれ図柄配列を形成することとなる。そこで、本実施の形態では、左図柄表示列110および右図柄表示列150が順に変動を停止して、はずれ図柄配列を形成するような図柄配列が一旦表示されても、遊技制御部から送信された変動パターン番号に従って表示されている図柄を再変動させる。なお、ここでいう「停止」には、所定の位置で完全に変動が止まっている場合以外に、所定の位置で小刻みに微動や揺動しているような場合も含むものとする。このような場合、一旦停止して表示された左図柄表示列110の図柄「3」および右図柄表示列150の図柄「7」を、遊技制御部から送信された変動パターン番号に従って再変動させる。そして、この再変動によって表示画面21にリーチ図柄配列や大当たり図柄配列を形成させることができる。なお、この図柄「3」および図柄「7」が本発明における所定図柄に対応している。
【0021】以下、第1実施の形態における左図柄表示列110および右図柄表示列150に表示されている図柄が再変動する際の変動態様について説明する。図4に示すように、再変動する際に、各構成面に図柄が配置された多面体120,160、本実施の形態では全構成面が六面である立方体が表示される。変動開始時には、まず一旦変動を停止した図柄がこれら多面体120,160の第1面121,161に表示される。すなわち、多面体120の構成面の一つに図柄「3」が表示され、多面体160の構成面の一つに図柄「7」が表示されている。そして、これら多面体120,160が回転軸110aおよび回転軸150aを回転中心として所定の方向、例えば左回り方向へ回転変動(再変動)して表示される。このような回転変動では、多面体120,160の構成面(六面)のうち最大で二面が表示されることとなる。すなわち、六面のうちの一面あるいは二面が表示されることとなる。また、これら多面体120,160の構成面には、10種類の図柄のうちの例えば6種類が配置されている。
【0022】具体的には、多面体120,160が回転変動する過程において例えば図5に示すような図柄が表示される。すなわち、左図柄表示列110では、回転変動開始前に第1面121に表示されていた図柄「3」に加え、回転変動開始後に第2面122に図柄「7」が表示される。また、右図柄表示列150では、回転変動開始前に第1面161に表示されていた図柄「7」に加え、回転変動開始後に第2面162に図柄「2」が表示される。また、多面体120,160の各構成面に配置され、これら多面体120,160が所定の方向へ回転変動する際に表示される図柄の配列は、本来の図柄の順列とは異なるようになっている。すなわち、左図柄表示列110および右図柄表示列150における図柄の配列は、例えば0,1,2…7,8,9といった連続した配列ではなく、本来の図柄の順列とは異なる配列で表示されることとなる。
【0023】このような場合、左図柄表示列110と右図柄表示列150に同じ図柄「7」が表示されており、この図柄「7」を用いてリーチ図柄配列「7,↓,7」を形成させることができる。なお、本実施の形態では、図5に示す状態から更に、左図柄表示列110および右図柄表示列150の立方体が回転変動する場合について説明する。今度は、左図柄表示列110および右図柄表示列150の多面体120,160が、回転軸110bおよび回転軸150bを回転中心として所定の方向、例えば前回り方向へ回転変動する。このような回転変動では、多面体120,160の構成面(六面)のうち最大で三面が表示されることとなる。
【0024】具体的には、多面体120,160が回転変動する過程において例えば図6に示すような図柄が表示される。すなわち、左図柄表示列110では、従前に第1面121に表示されていた図柄「3」および第2面122に表示されていた図柄「7」に加え、第3面123に図柄「6」が表示される。また、右図柄表示列150では、従前に第1面161に表示されていた図柄「7」および第2面162に表示されていた図柄「2」に加え、第3面163に図柄「3」が表示される。」

エ.「【0027】以上のように、第1実施の形態のパチンコ機によれば、表示画面21に一旦はずれ図柄配列を形成した場合でも、多面体120,160を回転変動させることで図柄の表示数を増加させリーチ図柄配列を形成させることができる。とりわけ、各多面体120,160を回転方向が異なる2つの回転軸を用いて回転変動させるため、図柄数の変更における自由度が増す。これにより、画面表示に今までにない新規な面白さをもたらすことができる。また、第1実施の形態のパチンコ機によれば、図柄が回転変動する際に表示される図柄(数字)が連続していなため、回転変動する際に増える図柄に意外性を持たせ、遊技者の期待感を増加させることができる。また、回転変動時に増える図柄にいわゆる確率変動図柄(例えば奇数)を用いることで、遊技者の抱く期待感を更に高めることができる。」

2.-3.引用文献1記載の発明の認定
記載事項ア.によれば、引用文献1には、左図柄表示列110、中図柄表示列130、右図柄表示列150からなる3つの図柄表示列を有する特別図柄表示器20を備え、特別図柄表示制御部によって、前記3つの図柄表示列において図柄の変動が行われ、大当たり図柄配列が表示された場合に、遊技者に大当り遊技を付与する点が記載されている。

記載事項イ.によれば、引用文献1には、大当たり遊技として大入賞口34にパチンコ球が10個入賞するか、開放してから30秒間を経過するまで、前記大入賞口34を開放する大入賞口開放期間を所要回数(例えば16回)内で継続することができる遊技機としてのパチンコ機10が記載されている。

記載事項ウ.によれば、引用文献1には、左図柄表示列110、右図柄表示列150に表示される図柄の変動態様として、図柄が多面体120、160の一面に表示されて一旦停止し、再変動し、次に二面に表示された態様で一旦停止し、その後、さらに再変動して、三面に表示されて一旦停止表示する点が記載されている。

記載事項エ.によれば、引用文献1には、図柄を表示する立方体上の面が増加することに伴い、増加して表示される図柄に、次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定される図柄である確率変動図柄を用いる点が記載されている。

以上を整理すると、引用文献1には、
「特別図柄表示器20の左図柄表示列110、中図柄表示列130、右図柄表示列150にて図柄を変動させる特別図柄表示制御部を備え、大当たり図柄配列が表示されると、遊技者に大入賞口34の所定回数の開閉を繰り返す大当たり遊技を付与し、
特別図柄表示制御部は、多面体120、160を用いた左図柄表示列110、右図柄表示列150において、一旦停止と再変動を繰り返すことで、図柄が表示される面と図柄が増加し、複数の面に複数の図柄を同時に表示可能であり、図柄として次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定される図柄を使用可能な遊技機。」が開示されていると認めることができる。(以下、「引用発明」という。)

2.-4. 本願補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定
引用発明における「特別図柄表示器20」は、本願補正発明における「変動表示手段」に相当する。
以下同様に、
「左図柄表示列110、中図柄表示列130、右図柄表示列150」は、「左中右の変動表示領域」に、
「特別図柄表示制御部」は、「表示制御手段」に、それぞれ相当する。
ここで、引用発明における「図柄の変動」は、本願補正発明の「変動表示ゲーム」に相当することは自明である。
また、引用発明における「大当たり図柄配列が表示されると、遊技者に大入賞口34の所定回数の開閉を繰り返す大当たり遊技」は、本願補正発明の「変動表示が停止した前記図柄の結果態様に関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態」に相当し、引用発明において前記大当たり遊技が付与されることは、本願補正発明の特別遊技状態が発生可能であることと、同じ意味であることは自明である。
そして、引用発明において図柄は変動、停止が行われているのであるから、本願補正発明の「図柄変動停止表示制御手段」に相当する表示制御手段を備えていることは自明である。
さらに、引用発明において、多面体の二面、三面上に図柄が表示されることから、本願補正発明の「複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクト」に相当する構成を有していることは自明である。
以上のことより、引用発明と本願補正発明とは、
〈一致点〉
「変動表示手段の左中右の変動表示領域にて図柄を変動表示する変動表示ゲームの制御を行う表示制御手段を備え、この変動表示ゲームにおいて変動表示が停止した前記図柄の結果態様に関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、表示する図柄の変動表示、停止表示を制御する図柄変動停止表示制御手段をさらに備え、多面体形状からなる図柄オブジェクトの単一面の単図柄を変動表示、停止表示及び、複数の面の複数の図柄をグループとして変動表示、停止表示を制御可能である遊技機。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願補正発明では、「多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面に各図柄をマッピングして各面に各図柄を表す図柄マッピング手段」を有しているのに対して、引用発明では前記の機能を有する図柄マッピング手段を有しているかが不明な点。

<相違点2>
本願補正発明では、「仮想3次元空間の座標系内に、視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定して図柄オブジェクトの所定面の図柄を表示可能な図柄表示手段」を有しているのに対して、引用発明では前記の機能を有する図柄表示手段を有しているかが不明な点。

<相違点3>
本願補正発明では「図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄を同時に表示可能に視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定する複数図柄同時表示手段」を有しているのに対して、引用発明では前記の機能を有する複数図柄同時表示手段を有しているかが不明な点。

<相違点4>
本願補正発明では、「特別遊技状態を発生させた前記左中右の変動表示領域に停止表示されたすべての図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトである場合には、前記特別遊技状態を発生させた前記左右の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトであり、前記中の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトの場合よりも、次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定される」のに対して、引用発明では「次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定される図柄である確率変動図柄を用いる」ことに関する記載はあるが、特別遊技状態を発生させた停止表示を構成する図柄オブジェクトの種類や図柄オブジェクトに表示される図柄の数によって決定されるものではない点。

2.-5.相違点の判断及び本願補正発明の進歩性の判断
(1)相違点1乃至3について
相違点1乃至3は、いずれも多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面における図柄の表示に関する技術事項であるから、併せて検討する。
弾球遊技機の技術分野において、「多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面に各図柄をマッピングして各面に各図柄を表す手段」、「仮想3次元空間の座標系内に、視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定して図柄オブジェクトの所定面の図柄を表示可能な表示手段」、「図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄を同時に表示可能に視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定する表示手段」は、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であり、多面体の図柄オブジェクトを用いその面上に単数または複数の図柄を表示している引用発明に周知技術1を適用して、相違点1乃至3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
周知技術1として、必要であれば特開平9-140884号公報(特に【0057】-【0069】)を参照されたい。

(2)相違点4について
ここでは「次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されること」を「確変状態」といい、さらに、停止表示されることによって確変状態を発生させる図柄を「確変図柄」ということとする。
まず、確変状態について検討する。
本願補正発明における確変状態は、左中右の変動表示領域に停止表示されたすべての図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトである場合に発生する。
そして、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトに表示される図柄の選択に特に条件がないため、確変図柄は特定の数字に依存していないことが認められるが、最初に停止する変動表示領域に複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトが表示されなければ、その時点で確変状態に移行しないことが判明してしまい、最初に特定の図柄が停止しなければ、その時点で確変状態に移行しないことが判明してしまう周知の確変図柄(よく知られているのは「3」、「5」、「7」のような奇数図柄)と同様に、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトが確変図柄の役割を担っている。
また、本願補正発明において多面体形状の図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示しているとき、多面体形状を表示している部分(多面体が立体に見える角度での各辺から構成される多面体の枠組み)は、図柄に付されたマークと考えることも可能であり、本願補正発明における図柄は、マークが同時に表示されたときに、確変図柄としての機能を有するということができる。
そして、特定の図柄を確変図柄と指定せずに、特定のマーク(印)とともに表示された図柄をその変動表示における確変図柄とすることは、遊技機の技術分野では周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
周知技術2として必要ならば、特開2000-153053号公報を参照されたい。(特に【0180】-【0185】、【図14】)
ここで、図柄と組み合わせることで確変図柄であることを遊技者に提示するマークとして、本願補正発明のように複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトを用いるか、周知技術2を示す文献のように図柄に付加する丸印を用いるかは、図柄表示のコンテンツの内容の差にすぎず、当業者が適宜選択する程度のことである。
さらに、当審において通知した最後の拒絶理由に引用した特開2000-350833号公報(以下、「引用文献2」という。)の【0068】には、大当たりを表示する図柄の組合せにおいて、中列に同時に表示される図柄の数に応じて、異なる当たり価値を遊技者に提供する遊技機が記載されているから、本願補正発明のように、単一面の単図柄の図柄オブジェクトが表示された場合と複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトが表示された場合とで、異なる当たり価値を遊技者に提供するに際して、提供する当たり価値をどのようなものにするか、どちらの図柄オブジェクトが表示された場合を遊技者にとって価値の大きい当たりとするかは、取り決めにすぎず、当業者が適宜選択する程度のことである。
よって、引用発明の複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトに周知技術2、及び引用文献2に記載される同時に表示される図柄の数と当たり価値の関係を適用して相違点4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

2.-6.進歩性のまとめ
以上のように、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された発明と周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、上記改正前の特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

4.本願発明
4.-1.本願発明の認定
平成22年2月25日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成20年9月18日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「変動表示手段の複数の変動表示領域にて図柄を変動表示する変動表示ゲームの制御を行う表示制御手段を備え、この変動表示ゲームにおいて変動表示が停止した前記図柄の結果態様に関連して遊技者にとって有利な特別遊技状態を発生可能な遊技機において、
前記表示制御手段は、
多面体形状からなる図柄オブジェクトの各面に各図柄をマッピングして各面に各図柄を表す図柄マッピング手段と、
仮想3次元空間の座標系内に、視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定して図柄オブジェクトの所定面の図柄を表示可能な図柄表示手段と、
表示する図柄の変動表示、停止表示を制御する図柄変動停止表示制御手段と、
を備え、
前記図柄表示手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄を同時に表示可能に視点と図柄オブジェクトとの相対位置を設定する複数図柄同時表示手段を含み、
前記図柄変動停止表示制御手段は、
図柄オブジェクトの複数の面の複数の図柄をグループとして変動表示、停止表示を制御可能であり、
前記図柄オブジェクトの単一面の単図柄を変動表示、停止表示可能であって、
前記特別遊技状態を発生させた前記複数の変動表示領域に停止表示されたすべての図柄オブジェクトが、複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトである場合には、前記特別遊技状態を発生させた前記複数の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトを少なくとも一つ含む場合よりも、次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されることを特徴とする遊技機。」

4.-2.引用文献と周知技術
当審において通知した最後の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2002-200260号公報)及び引用文献2(特開2000-350833号公報)の記載事項、ならびに周知技術1及び2は、前記2.に記載したとおりである。

4.-3.本願発明の進歩性の判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における
「変動表示手段の左中右の変動表示領域」から変動表示領域の並び方向の限定を省いて「変動表示手段の複数の変動表示領域」とし、
同様に「左右の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが複数の面の複数の図柄を同時に表示させる図柄オブジェクトであり、前記中の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクト」から (次回の特別遊技状態の発生確率が高く設定されない場合の)単一面の単図柄の図柄オブジェクトが停止表示される変動表示領域の限定を省いて「複数の変動表示領域に停止表示された図柄オブジェクトが単一面の単図柄の図柄オブジェクトを少なくとも一つ含む」としたものである。
そして、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、2.-6.に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された発明と周知技術1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-30 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-21 
出願番号 特願2002-234402(P2002-234402)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
河本 明彦
発明の名称 遊技機  
代理人 藤井 正弘  
代理人 後藤 政喜  
代理人 飯田 雅昭  
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