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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1218032
審判番号 不服2008-30269  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-27 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2002-348659「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月2日出願公開、特開2004-180770〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成14年11月29日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成20年10月3日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、平成20年11月27日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月17日に手続補正がなされたものである。
また、当審において、平成21年10月2日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から平成21年12月1日に回答書が提出されている。

第二.平成20年12月17日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年12月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により補正された補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)は次のとおりである。
「 遊技盤に遊技状態に応じた映像を表示する遊技機であって、
前記遊技機の筐体は、前記遊技盤が設けられた中央部と、当該中央部よりも上方に設けられた上部と、前記中央部よりも下方に設けられた下部と、を備え、
前記上部は、その内部に、前記遊技盤に表示する前記映像の制御を行う映像処理部を有し、
前記中央部は、前面側に設けられた遊技部と、当該遊技部の背面側の空間内に設けられ、投影部からの投影光を前記遊技盤の背面側に対して反射させる鏡面を有するリフレクタと、を有し、
前記下部は、前面側を覆う下部板と、当該下部板の上端部から遊技者が椅子に座って対面可能に前記筐体の前方に向かって張り出して設けられ、玉受箱を載置可能な上面を有するテーブルと、前記中央部の前記空間と連通する空間と、当該空間の底部に設けられ、前記映像処理部によって制御が行われた映像を前記リフレクタに対して投影する前記投影部と、を有し、
前記遊技部は、前記筐体の前記中央部と嵌合された外枠と、当該外枠に対して開閉および着脱可能に設置された内枠と、を有し、
前記内枠は、透明樹脂によって形成された前記遊技盤と、当該遊技盤の下方であって前記内枠の下部に設けられた遊技球皿と、当該遊技球皿の背面であって前記投影光の通路外の位置に配置された賞球機構および発射機構と、を備え、
前記遊技盤の背面側には、前記映像を表示するスクリーンおよび当該スクリーンに前記リフレクタによって反射された映像を投影するフレネルレンズが配置され、
前記遊技盤の前面側には、遊技球を前記遊技盤上方に誘導するガイドレール、前記遊技球の進路を変更する遊技釘、前記遊技盤上に配置された図柄表示領域の上方に設けられた透明部材、前記図柄表示領域下方に設けられた始動入賞口、当該始動入賞口下方に設けられた大入賞口および遊技球を回収するアウト口が設けられ、
前記リフレクタは、前記中央部内における前記フレネルレンズの背面側に設けられ、
前記下部の前記空間の底部に設けられた前記投影部から投影された映像が、互いに連通する前記下部の空間および前記中央部の空間を通して前記リフレクタに対して投影され、当該リフレクタにより前記フレネルレンズに向けて反射され、当該フレネルレンズを透過して前記スクリーンに対して投影されるよう構成したことを特徴とする遊技機。」
(下線部は補正によって追加又は変更された箇所。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である、「遊技機の筐体」、及び「リフレクタ」について、その具体的構成を限定する補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法(以下「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に該当する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-137390号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、パチンコ、フライトシミュレーター、ドライビングゲーム等のアーケードゲーム等で用いられる画像表示装置に関するものである。
【0019】【課題を解決するための手段】この目的を達成するために本発明は、反射、または、半透過であって、遊戯のための突起物、動作物が装着された遊戯面と、動画または静止画を前記遊戯面背面から画像を投影して前記遊戯面に表示する表示手段とを備え、前記遊戯面に、前記表示手段により動画または静止画を表示出来るように構成されるものである。
【0031】(実施例2)図2に、本発明による遊戯面への、下面からの反射しての投影型画像表示装置の断面図を示す。
【0032】図2において、21は投影時の遊戯面であり、22は当たり判定装置、23は投影機、24は前面ガラス、25は玉打機、26は筺体、27は反射面である。
【0033】この動作としては、遊戯時に、使用者がまず前面ガラス24の前に座って、玉打機25で遊戯面21と前面ガラス24の間に玉を打ち上げ、当たり判定装置22に玉を打ち込もうとするものである。
【0034】このとき当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば遊戯面21に、投影機23からの動画又は静止画を、反射面27で屈折し表示して、当たり表示を行い、使用者に興奮を引き起こす画面を提供しながら、玉を出すように構成されている。

また、引用文献1の【図2】から、筺体26は、遊戯面21が設けられるとともに該遊戯面21の背面側の空間内に反射面27を有する上部分と、該上部分よりも下方に設けられ、前面側を覆う下部板と、前記上部分の前記空間と連通する空間と、当該空間に設けられ、動画又は静止画を前記反射面27に対して投影する投影機23を有する下部分と、を備えたものであることが見てとれる。
そして、段落【0034】を参酌すれば、前記下部分の前記空間に設けられた前記投影機23から投影された動画又は静止画が、互いに連通する前記下部分の空間および前記上部分の空間を通して前記反射面27に対して投影され、当該反射面27により前記遊戯面21に向けて屈折され、当たり表示を行うものであるということもできる。
さらに、引用文献1の【図2】、従来技術を示す【図5】及び段落【0033】からみて、引用発明の「遊戯面21」の前面側には、玉を遊戯面21上方に誘導するガイドレール、玉の進路を変更する釘及び当たり判定装置22が設けられていることが分かる。

摘記した上記の記載や図面等によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「 当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば、遊戯面21に投影機23からの動画又は静止画を表示して、当たり表示を行うパチンコであって、
前記パチンコの筺体26は、遊戯面21が設けられた上部分と、該上部分よりも下方に設けられた下部分と、を備え、
前記上部分は、前記遊戯面21の背面側の空間内に設けられ、投影機23からの動画又は静止画を屈折させる反射面27を有し、
前記下部分は、前面側を覆う下部板と、前記上部分の前記空間と連通する空間と、当該空間に設けられ、動画又は静止画を前記反射面27に対して投影する投影機23と、を有し、
前記パチンコは、半透過である前記遊戯面21と、玉打機25を備え、当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば玉を出すように構成され、
前記遊戯面21の前面側には、玉を遊戯面21上方に誘導するガイドレール、前記玉の進路を変更する釘及び当たり判定装置22が設けられ、
前記反射面27は、前記上部分内における前記遊戯面21の背面側に設けられ、
前記下部分の前記空間に設けられた前記投影機23から投影された動画又は静止画が、互いに連通する前記下部分の空間および前記上部分の空間を通して前記反射面27に対して投影され、当該反射面27により前記遊戯面21に向けて屈折され、当たり表示を行うパチンコ。」

(2)引用発明と本願補正発明との対比
引用発明の「パチンコ」は、本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、
「遊戯面21」は「遊技盤」に、
「動画又は静止画」は「映像」又は「投影光」に、
「筺体26」は「筐体」に、
「上部分」は「中央部」に、
「下部分」は「下部」に、
「投影機23」は「投影部」に、
「反射面27」は「リフレクタ」に、
「玉打機25」は「発射機構」に、
「玉を遊戯面21上方に誘導するガイドレール」は「遊技球を前記遊技盤上方に誘導するガイドレール」に、
「玉の進路を変更する釘」は「遊技球の進路を変更する遊技釘」に、各々相当する。

さらに、引用文献の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明の「動画又は静止画」は、「当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば」表示され、当たり表示を行うものであるから、本願補正発明の「遊技状態に応じた映像」に相当する。
よって、引用発明は、本願補正発明の「遊技盤に遊技状態に応じた映像を表示する遊技機」に相当する構成を有する。

b.引用文献1には「動画又は静止画」の制御を行う装置について記載されてはいないが、引用発明が「動画又は静止画」を表示させる以上、本願補正発明の「映像処理部」に相当する「動画又は静止画」の制御を行う“画像制御装置”を有していることは自明である。

c.引用文献1の【図2】や摘記した段落【0033】によれば、引用発明の「遊戯面21」の前面側には、釘や当たり判定装置22が設けられており、その「遊戯面21」が「上部分」の前面側に位置していることも明らかであるから、引用発明の「上部分」の前面側には、本願補正発明の「遊技部」に相当するものが設けられているといえる。そうすると、引用発明の「遊戯面21の背面側」は、本願補正発明の「遊技部の背面側」に相当するといえる。
また、同図から、引用発明の「屈折」は“反射”を含む概念の用語であることが明らかであり、「反射面27」が投影機23からの動画又は静止画を遊戯面21の背面側に対して反射させていることも同図から見てとれる。
よって、引用発明の「上部分」は、本願補正発明の「前面側に設けられた遊技部と、当該遊技部の背面側の空間内に設けられ、投影部からの投影光を前記遊技盤の背面側に対して反射させる鏡面を有するリフレクタ」に相当する構成を有しているということができる。

d.上記b.で述べたように、引用発明が「動画又は静止画」の制御を行う“画像制御装置”を有していることは自明であるから、引用発明の「動画又は静止画」は、その“画像制御装置”によって制御が行われたものであることも明らかである。
そして、引用発明の“画像制御装置”は、本願補正発明の「映像処理部」に相当するから、引用発明と本願補正発明は「前記下部は、前面側を覆う下部板と、前記中央部の前記空間と連通する空間と、当該空間に設けられ、前記映像処理部によって制御が行われた映像を前記リフレクタに対して投影する前記投影部と、を有し」ている点で共通している。

e.引用発明の「パチンコ」は、「当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば玉を出すように構成され」ているので、引用発明は、本願補正発明の「賞球機構」に相当する構成を有しているといえる。

f.引用発明の「当たり判定装置22」と、本願補正発明の「始動入賞口」又は「大入賞口」とは、いずれも“入賞装置”である点では共通している。
また、引用発明はパチンコである以上打ち込まれた玉を回収する必要があるので、引用発明には、本願補正発明の「遊技球を回収するアウト口」に相当するものが設けられていることも自明である。

g.引用発明において「動画又は静止画」が「反射面27により前記遊戯面21に向けて屈折され、当たり表示を行う」ということは、「動画又は静止画」が「反射面27により前記遊戯面21」の背面側に向けて反射され、「遊戯面21」の背面側に対して投影されることにほかならず、本願補正発明の「フレネルレンズ」及び「スクリーン」はともに「遊技盤の背面側」に配置されているから、引用発明と本願補正発明とは、“リフレクタにより前記遊技盤の背面側に向けて反射され、前記遊技盤の背面側に対して投影される”点では共通している。

以上を総合すると、両者は、
「 遊技盤に遊技状態に応じた映像を表示する遊技機であって、
前記遊技機の筐体は、前記遊技盤が設けられた中央部と、前記中央部よりも下方に設けられた下部と、を備え、
前記遊技盤に表示する前記映像の制御を行う映像処理部を有し、
前記中央部は、前面側に設けられた遊技部と、当該遊技部の背面側の空間内に設けられ、投影部からの投影光を前記遊技盤の背面側に対して反射させる鏡面を有するリフレクタと、を有し、
前記下部は、前面側を覆う下部板と、前記中央部の前記空間と連通する空間と、当該空間に設けられ、前記映像処理部によって制御が行われた映像を前記リフレクタに対して投影する前記投影部と、を有し、
賞球機構および発射機構と、を備え、
前記遊技盤の前面側には、遊技球を前記遊技盤上方に誘導するガイドレール、前記遊技球の進路を変更する遊技釘、入賞装置および遊技球を回収するアウト口が設けられ、
前記リフレクタは、前記中央部内における前記遊技盤の背面側に設けられ、
前記下部の前記空間に設けられた前記投影部から投影された映像が、互いに連通する前記下部の空間および前記中央部の空間を通して前記リフレクタに対して投影され、当該リフレクタにより前記遊技盤の背面側に向けて反射され、前記遊技盤の背面側に対して投影されるよう構成した遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明の「筐体」は「中央部よりも上方に設けられた上部」を備え、「上部は、その内部に、前記遊技盤に表示する前記映像の制御を行う映像処理部を有し」ているのに対し、引用発明の「筺体26」は「上部分」よりも上方に設けられた部分を備えていない点、及び「動画又は静止画」の制御を行う画像制御装置の配置が明らかでない点。
[相違点2]本願補正発明の「下部」は、「下部板の上端部から遊技者が椅子に座って対面可能に前記筐体の前方に向かって張り出して設けられ、玉受箱を載置可能な上面を有するテーブル」を有しているのに対し、引用発明はそのようなテーブルを有していない点。
[相違点3]本願補正発明の「投影部」は「空間の底部に設けられ」ているのに対し、引用発明の「投影機23」は空間の底部に設けられているか明らかでない点。
[相違点4]本願補正発明の「遊技部」は、「前記筐体の前記中央部と嵌合された外枠と、当該外枠に対して開閉および着脱可能に設置された内枠と、を有し、前記内枠は、透明樹脂によって形成された前記遊技盤と、当該遊技盤の下方であって前記内枠の下部に設けられた遊技球皿と、当該遊技球皿の背面であって前記投影光の通路外の位置に配置された賞球機構および発射機構と、を備え」ているのに対し、引用発明の「上部分」の前面側は、どのような構造になっているのか明らかでない点。
[相違点5]本願補正発明は、「遊技盤」が「透明樹脂によって形成され」、「遊技盤の背面側」には、「前記映像を表示するスクリーンおよび当該スクリーンに前記リフレクタによって反射された映像を投影するフレネルレンズが配置され」ているのに対し、引用発明は「遊戯面21」が「半透過」であるというだけで、「遊戯面21」の背面側は、どのような構造になっているのか明らかでない点。
[相違点6]本願補正発明の「遊技盤の前面側」には、「前記遊技盤上に配置された図柄表示領域の上方に設けられた透明部材、前記図柄表示領域下方に設けられた始動入賞口、当該始動入賞口下方に設けられた大入賞口」が設けられているのに対し、引用発明の「遊戯面21」の前面側には、「当たり判定装置22」は設けられているものの、「図柄表示領域」、「図柄表示領域の上方に設けられた透明部材」、「図柄表示領域下方に設けられた始動入賞口」及び「始動入賞口下方に設けられた大入賞口」は、設けられているか否か明らかでない点。

(3)相違点の検討及び判断
[相違点1について]
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-323126号公報(以下「引用文献2」という。)には、制御回路部308を複数のエリアに区分けした筐体の上部にすること(以下「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている(特に、【図24】(B)及び段落【0067】を参照)。
また、遊技機において、筐体内部に収納する部材の配置を、スペース、使用態様、部材間の関係等を考慮して決定することは、ごく普通に行われていることであるから、引用発明において、「上部分」よりも上方に収容部分を設け、“画像制御装置”をその収容部分の内部に配置して、上記相違点1に係る本願補正発明のような構成とすることは、遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)がスペース、使用態様、部材間の関係等を考慮して容易に想到し得る事項である。

[相違点2について]
遊技機において、遊技者が椅子に座って対面可能に、遊技機の筐体の前方に向かって張り出すテーブルを設け、その上面に玉受箱を載置可能とすることは、例えば、特開平11-207011号公報(特に、【図1】【図2】参照)及び特開平10-5432号公報(特に、【図1】【図3】及び段落【0013】を参照)に見られるように、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)である。
そうしてみると、引用発明の下部分前方の適宜の位置に玉受箱を載置可能なテーブルを設け、上記相違点2に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

[相違点3について]
投影光が上向きに放射される場合、投影装置を設置する位置としては、画像が投影される部分の下方の底面又は床面とするのが最も普通に選択される箇所であり、引用発明においても投影光は上向きとなっていることが明らかであるから、引用発明の「投影機23」を下部分の底面に設置し、上記相違点3に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者が適宜選択し得る設計的事項である。

[相違点4について]
パチンコ遊技機において、遊技盤を保持する内枠が、上皿(本願補正発明における「遊技球皿」に対応)、当該上皿の背面に賞球機構、発射機構等をも保持すること、及び当該内枠が、部品類の整備、点検、保守、交換、パチンコ台の交換等の為に、外枠に開閉自在、着脱自在に保持される構成とした、内枠と外枠から成る遊技部材配設構造は、例えば、特開平11-33188号公報(特に、【図1】、【図2】及び段落【0002】?【0003】)、特開平11-244494号公報(特に、【図1】及び段落【0002】)に記載されるように従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明の「玉打機25」や「当たり判定装置22への玉の打ち込みに成功すれば玉を出す」構成を投影機23からの動画又は静止画の投影経路外に配置することは、当然のことであるから、引用発明において、「遊戯面21」や「玉打機25」等を配設するに際して、周知技術2を適用し、上記相違点4に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者が適宜なし得る設計的事項である。

[相違点5について]
リフレクタからの反射映像を如何なる場所に投影するかは、引用文献1の段落【0040】に他の実施例についての記載ではあるが、「このとき当たり判定装置32への玉の打ち込みに成功すれば前面ガラス34の裏面または表面に焦点を合わせて、投影機33からの動画又は静止画を、前面ガラス34の裏面または表面に表示を行い」とあるように焦点を調節することにより適宜設定可能な設計的事項である。
また、引用発明のような背面投写型ディスプレイにおいて、投影光が入射するフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ及び透明板からなる透過型スクリーンを用いること(レンチキュラーレンズが本願補正発明におけるスクリーンに相当)は、例えば、特開平11-242293号公報(特に、【図16】及び段落【0004】)、特開2000-321675号公報(特に、【図4】及び【符号の説明】)に見られるように従来周知の技術(以下「周知技術3」という。)であり、透明樹脂はこのような装置において、ごく普通に用いられる材料である。
そうしてみると、引用発明の「半透過である遊戯面21」に代えて上記従来周知の透過型スクリーンを採用し、上記相違点5に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者が容易に想到し得る事項である。

[相違点6について]
遊技盤に「図柄表示領域」、「図柄表示領域の上方に設けられた部材」、「図柄表示領域下方に設けられた始動入賞口」及び「始動入賞口下方に設けられた大入賞口」等を配設することは、例えば、特開昭61-149183号公報(特に、第2、3図、第3頁左上欄第7?10行及び第4頁右上欄末行?同頁左下欄第9行)、特開平2-172484号公報(特に、第1?4図、第2頁左上欄下から5行目?同頁右上欄第4行及び第2頁右上欄下から2行目?同頁左下欄第2行)に見られるように従来周知の技術(以下「周知技術4」という。)であり、しかも、「図柄表示領域の上方に設けられた部材」を透明とすることによる格別の作用効果は認められないから、当該材質の選定は単なる設計変更である。
そうしてみると、引用発明における遊戯面21に周知技術4を適用し、上記相違点6に係る本願補正発明のような構成とすることは当業者にとって単なる設計的事項である。

(4)まとめ
以上のように相違点1?6は、いずれも当業者が容易に想到し得る事項又は当業者にとって単なる設計的事項であり、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1?4に基いて当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成20年12月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年10月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 遊技盤に遊技状態に応じた映像を表示する遊技機であって、
前記遊技機の筐体は、
前記遊技盤に表示する前記映像の制御を行う映像処理部を内部に有する上部と、
投影部からの投影光を前記遊技盤背面側に対して反射させるリフレクタおよび遊技部を有する中央部と、
前記中央部よりも下方に設けられ、前記中央部の空間と連通する空間、前面側を覆う下部板、当該下部板より突出して設けられたテーブルおよび前記連通する空間の底部に設けられ、前記映像処理部によって制御が行われた映像を前記中央部に対して投影する前記投影部を有する下部を備え、
前記遊技部は、前記筐体と嵌合された外枠、当該外枠に対して開閉および着脱可能に設置された内枠を有し、
前記内枠は、透明樹脂によって形成された前記遊技盤、遊技球皿、前記遊技球皿の背面に配置された賞球機構および発射機構を備え、
前記遊技盤には、当該遊技盤背面側に配置され、前記映像を表示するスクリーンおよび当該スクリーンに前記リフレクタによって反射された映像を投影するフレネルレンズ、前記遊技盤の前面側に配置され遊技球を前記遊技盤上方に誘導するガイドレール、前記遊技球の進路を変更する遊技釘、前記遊技盤上に配置された図柄表示領域の上方に設けられた透明部材、前記図柄表示領域下方に設けられた始動入賞口、前記始動入賞口下方に設けられた大入賞口および遊技球を回収するアウト口が設けられていることを特徴とする遊技機。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)引用発明と本願発明との対比及び判断
本願発明は、前記「第二」で検討した本願補正発明から、「遊技機の筐体」、及び「リフレクタ」について、その具体的構成に係わる限定を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(4)」に記載したとおり、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2記載の技術及び周知技術1?4に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第四.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2?5)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-31 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-22 
出願番号 特願2002-348659(P2002-348659)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 川島 陵司
深田 高義
発明の名称 遊技機  
代理人 内藤 嘉昭  
代理人 田中 秀▲てつ▼  
代理人 森 哲也  

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