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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N
管理番号 1218036
審判番号 不服2008-31414  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-11 
確定日 2010-06-10 
事件の表示 特願2004- 45115「光照射装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月29日出願公開、特開2004-212402〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成16年2月20日の出願であって、平成20年11月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審で平成22年2月10日付けで拒絶理由を通知し、これに対し、同年3月16日付けで手続補正書が提出されたものものであって、その請求項1に係る発明は、上記平成22年3月16日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「 【請求項1】
光源装置から光ファイバ束を介して供給された光を照射対象部位に照射する光照射装置であって、
前記光ファイバ束の先端部を光ファイバ束用ヘッド要素と、ボールレンズを保持するボールレンズ用ヘッド要素とを備え、これらヘッド要素を互いに嵌合させて、その嵌合深さを変更することにより、前記光ファイバ束の先端部と前記ボールレンズとの距離が変化可能であり、
前記ボールレンズ用ヘッド要素を前記光ファイバ束用ヘッド要素の外側に嵌め合わせてなり、
前記光ファイバ束用ヘッド要素と前記ボールレンズ用ヘッド要素との間に、これらヘッド要素を互いに嵌合させた状態において、前記ボールレンズを前記光ファイバ束の先端部から離間する方向に付勢するコイルスプリングが配設され、当該コイルスプリング及び前記ボールレンズを、前記光ファイバ束用ヘッド要素の内周面に添接させた状態で配設していることを特徴とする光照射装置。」

第2 引用刊行物およびその記載事項
1 本願出願日前に頒布され、当審での拒絶の理由に引用された刊行物である特開2000-182420号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 クラッド材がシリカの多孔質骨格からなるシリカエアロゲル又は空気で形成される光ファイバの光入射端を、ランプを内蔵する光源ボックスに接続し、光ファイバの光出射端に凸レンズを備えて成ることを特徴とする光ファイバ照明装置。
【請求項2】 光ファイバの光出射端と凸レンズとの距離を調整自在に形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ照明装置。」
・・・」

(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光ファイバを用いて光源部と照射部を分離するようにしたエンドライト照明装置に関し、詳しくは読書灯、ヘッドライト、手元灯などのタスクライトや、美術館、博物館で用いられる照明装置、水中照明や高所照明で用いられる照明装置に関するものである。」

(3)「【0025】図1は、上記のように形成される光ファイバ4を用いた照明装置の一例を示すものであり、・・・。
【0026】また光ファイバ4は逆J字状に屈曲してあり、光ファイバ4の先端の光出射端8には凸レンズ9が設けてある。凸レンズ9は光出射端8の先方に位置するようにレンズ取付け具28で光ファイバ4に取り付けられるものである。この凸レンズ9は、球面あるいは非球面のコンデンサレンズであれば特に限定されることはなく、その形状は得たい照射スポット径に合わせて適宜選択することができる。・・・」

(4)「【0028】図5は光ファイバ4の光出射端8と凸レンズ9との間の距離を調整できるようにした実施の形態を示すものであり、レンズ取付け具28は固定体29と可動体30とで形成してある。固定体29は筒体の先部に先端面で開口する調整用凹部31を凹設して形成してあり、調整用凹部31の内周に雌ねじ32が設けてある。また可動体30は後部に調整用突部33を設けると共に連通し合う先部の大径孔35と後部の小径孔34を有する筒状に形成してあり、調整用突部33の外周には雄ねじ36が設けてある。凸レンズ9は大径孔35内に取り付けて固定してある。そして固定体29は光出射端8が調整用凹部31に突出するように光ファイバ4の先端部の外周に固定して取り付けるようにしてあり、小径孔34に光ファイバ4の光出射端8を差し込んだ状態で、調整用凹部31の雌ねじ32に調整用突部33の雄ねじ36をねじ込むことによって、固定体29に可動体30を装着するようにしてある。
【0029】このものにあって、可動体30を回して調整用凹部31の雌ねじ32に対する調整用突部33の雄ねじ36のねじ込み深さを深くすると、図5(a)のように光ファイバ4の光出射端8と凸レンズ9との間の距離が短くなり、また可動体30を回して調整用凹部31の雌ねじ32に対する調整用突部33の雄ねじ36のねじ込み深さを浅くすると、図5(b)のように光ファイバ4の光出射端8と凸レンズ9との間の距離が長くなる。このように光ファイバ4の光出射端8と凸レンズ9との間の距離を調整することによって、光出射端8から出射される光の凸レンズ9による集光度を変化させて照明のスポット径を自在に調節することができるものである。凸レンズ9と光ファイバ4の光出射端8との間の距離の調整に関しては、用いる凸レンズ9の形状や焦点距離によって変わるが、適宜選択すればよい。・・・。」

上記(1)?(4)の記載と図1、5等を参照すると、上記刊行物1には、
「光ファイバ4の光入射端を、ランプを内蔵する光源ボックスに接続した、光ファイバ照明装置において、
光ファイバ4の先端部の外周に固定して取り付ける固定体29と可動体30とを備え、
固定体29は筒体の先部に先端面で開口する内周に雌ねじ32が設けてある調整用凹部31を凹設して形成してあり、
可動体30は後部に、外周には雄ねじ36が設けてある調整用突部33を設けると共に連通し合う先部の大径孔35内に凸レンズ9が取り付けて固定して形成してあり、
調整用凹部31の雌ねじ32に調整用突部33の雄ねじ36をねじ込むことによって、固定体29に可動体30を装着し、ねじ込み深さにより光ファイバの光出射端8と凸レンズ9との距離を調整自在に形成して成る光ファイバ照明装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

2 本願出願日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平11-134916号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0016】光ファイバ束の一端は光入射端として光源に接続され、もう一端は光出射端として標識板の手前に配置される。一つの光源に対して、通常は複数の光ファイバ束の光入射端が接続される。」

3 本願出願日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭58-163632号(実開昭60-70807号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「2 実用新案登録請求の範囲
ハウジングに対して着脱自在のスリーブ内に挿入された球レンズと光フアイバ端末のフエルールとの間、又はレセプタクル内に挿入された球レンズと光/電変換素子との間に圧縮スプリングを介在し、このスプリングにより、上記球レンズをスリーブ又はレセプタクル内に形成された先細テーパ状の環状座面に圧接させるようにしたことを特徴とする集光レンズ付き光コネクタ。」(第1頁4?12行)

(2)「第2図は、本考案のコネクタの光回転センサへの適用例を示すものであつて符号Aは光を断続的に透過させるスリツト又は小穴付の回転円板を、Bは円板Aの通過溝を有するハウジングを示し、このハウジングの片面側に取付けた光プラグ10に本考案の特徴をなす構造が採用されている。即ち、ハウジングBに対して着脱自在のスリーブ11には、先細テーパ状で環状のレンズ受け座面11aを有する中心穴11bが形成され、そこに、球レンズ12とスプリング13及び袋ナツト14を介してスリーブ11に固定される光フアイバ15先端のフエルール16が順に挿入されている。そして、スプリング13はスリーブ11とフエルール16の接続が完了した図の状態では既に圧縮されており、このため、レンズ12はスプリング13に押されて座面11aに圧接し、その面のテーパ作用により自動調心されて定位置に確実に保持されることになる。」(第3頁14行?第4頁11行)

(3)図2には、ボールレンズを光ファイバの先端部から離間する方向に付勢するコイルスプリングが配設され、当該コイルスプリング及び前記ボールレンズを、前記先細テーパ状の中心穴に配設している光コネクタが記載されている。

第3 当審の判断
1 対比
(1) 引用発明と本願発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「光源ボックス」は、本願発明の「光源装置」に相当することが明らかである。
(2) 引用発明の「光ファイバ照明装置」は、「光ファイバ4の光入射端を、ランプを内蔵する光源ボックスに接続し」ているのであるから、光源ボックスから光が供給されることは明らかであり、照明装置が照射対象部位を照射することは技術常識であるから、本願発明の「光源装置から光ファイバ束を介して供給された光を照射対象部位に照射する光照射装置」と、「光源装置から光ファイバを介して供給された光を照射対象部位に照射する光照射装置」である点で共通する。
(3) 引用発明の「固定体29」は、「光ファイバ4の先端部の外周に固定して取り付ける」のであるから、本願発明の「光ファイバ束用ヘッド要素」と「光ファイバ用ヘッド要素」である点で共通する。
(4) 引用発明の「可動体30」は、「先部の大径孔35内に凸レンズ9が取り付けて固定して形成してあ」るのであるから、本願発明の「ボールレンズを保持するボールレンズ用ヘッド要素」と「レンズを保持するレンズ用ヘッド要素」である点で共通する。
(5) 引用発明の「固定体29は筒体の先部に先端面で開口する内周に雌ねじ32が設けてある調整用凹部31を凹設して形成してあり、
可動体30は後部に、外周には雄ねじ36が設けてある調整用突部33を設け」て「形成してあり、
調整用凹部31の雌ねじ32に調整用突部33の雄ねじ36をねじ込むことによって、固定体29に可動体30を装着し」、「ねじ込み深さにより光ファイバの光出射端8と凸レンズ9との距離を調整自在に形成して成る」は、「雄ねじ」が「雌ねじ」の内側に嵌め合わせてなるのであるから、本願発明の「ヘッド要素を互いに嵌合させて、その嵌合深さを変更することにより、前記光ファイバ束の先端部と前記ボールレンズとの距離が変化可能であり、前記ボールレンズ用ヘッド要素を前記光ファイバ束用ヘッド要素の外側に嵌め合わせてなり」と「ヘッド要素を互いに嵌合させて、その嵌合深さを変更することにより、前記光ファイバの先端部と前記レンズとの距離が変化可能であり、前記レンズ用ヘッド要素を前記光ファイバ用ヘッド要素に嵌め合わせてな」る点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「光源装置から光ファイバを介して供給された光を照射対象部位に照射する光照射装置であって、
前記光ファイバの先端部を光ファイバ用ヘッド要素と、レンズを保持するレンズ用ヘッド要素とを備え、これらヘッド要素を互いに嵌合させて、その嵌合深さを変更することにより、前記光ファイバの先端部と前記ルレンズとの距離が変化可能である光照射装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
光源装置からの光を供給する媒体について、本願発明では「光ファイバ束」であるのに対して、引用発明では「光ファイバ」である点。

(相違点2)
「レンズ」の種類と、光ファイバ用ヘッド要素と前記レンズ用ヘッド要素を互いに嵌合させた状態でのヘッド要素間について、本願発明では「レンズ」の種類が「ボールレンズ」であり、ヘッド要素間は「ボールレンズを光ファイバの先端部から離間する方向に付勢するコイルスプリングが配設され、当該コイルスプリング及び前記ボールレンズを、前記光ファイバ用ヘッド要素の内周面に添接させた状態で配設している 」のに対して、引用発明では「レンズ」の種類が「凸レンズ」であり、ヘッド要素間にはコイルスプリングを有さず、レンズを光ファイバ用ヘッド要素の内周面に添接していない点。

(相違点3)
レンズ用ヘッド要素と光ファイバ用ヘッド要素に対する嵌め合わせ関係について、本願発明ではレンズ用ヘッド要素が光ファイバ用ヘッド要素の「外側に嵌め合わせてなる」のに対して、引用発明ではレンズ用ヘッド要素が光ファイバ用ヘッド要素の「内側に嵌め合わせてなる」点。

2 相違点についての判断
(1)相違点1についての検討
光照射装置の光源装置からの光を供給する媒体として、光ファイバ束を用いるものは、刊行物2に記載されている。
してみると、引用発明の光ファイバに、刊行物2記載の光ファイバ束を適用して、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものと認められる。

(2)相違点2についての検討
「第2 3(2)」の「第2図は、・・・スリーブ11には、先細テーパ状で環状のレンズ受け座面11aを有する中心穴11bが形成され、そこに、球レンズ12とスプリング13・・・が順に挿入されている。・・・このため、レンズ12はスプリング13に押されて座面11aに圧接し」との記載および「第2 3(3)」に記載したように、ボールレンズを用い、「ボールレンズを光ファイバの先端部から離間する方向に付勢するコイルスプリングが配設され、当該コイルスプリング及び前記ボールレンズを、先細テーパ状の中心穴内に配設している」構成は、刊行物3に記載されている。
また、例えば、上記刊行物3の第3図、特開平7-84156号公報の図2、および特開2003-126033号公報の図2(特に、ボールレンズ30とコイルばね32)に記載されているように、コイルスプリング及びボールレンズを、先細テーパ状の中心穴内周面に添接させた状態で配設することは周知であるといえる。
してみると、引用発明において、上記刊行物3に記載の構成および周知技術を適用することにより、相違点2における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る事項であるというべきである。

(3)相違点3についての検討
一般に、2つの部材を嵌合する場合に、2つの部材の内のどちらを外側にするかは、どちらでも設計可能であり、効果上、格別顕著な差異はない。
してみると、引用発明において、レンズ用ヘッド要素が光ファイバ用ヘッド要素の「外側に嵌め合わせてなる」構成に変更することは、当業者が必要に応じて適宜成し得る設計事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果は、引用発明、刊行物2、3記載の発明から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

第4 むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-03-31 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-21 
出願番号 特願2004-45115(P2004-45115)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田邉 英治荒巻 慎哉  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 宮澤 浩
信田 昌男
発明の名称 光照射装置  
代理人 赤澤 一博  

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