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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41F |
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管理番号 | 1218091 |
審判番号 | 不服2008-8177 |
総通号数 | 127 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-04-03 |
確定日 | 2010-06-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 82544号「印刷機のインキ供給量調整方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年10月 3日出願公開、特開2000-272098〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成11年3月25日の出願であって、平成19年11月22日付け拒絶理由通知に対して、平成20年1月23日付けで意見書とともに手続補正書が提出されたところ、同年2月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月3日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年同月18日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 第2 平成20年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年4月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理 由] 1 本件補正について (1)本件補正前後の特許請求の範囲 本件補正は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであり、その補正前後の特許請求の範囲の記載は次のとおりのものである。 ア 本件補正前の特許請求の範囲(平成20年1月23日付け手続補正後のもの) 「 【請求項1】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量を調整し、 この調整した各インキツボキーの開き量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項2】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量を調整する調整手段と、 この調整手段によって調整された各インキツボキーの開き量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項3】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量を求め、 この求めた各インキツボキーの開き量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項4】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量を求める手段と、 この手段によって求められた各インキツボキーの開き量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項5】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を調整し、 この調整した各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶したインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項6】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を調整する調整手段と、 この調整手段によって調整された各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶されたインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項7】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を求め、 この求めた各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶したインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項8】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を求める手段と、 この手段によって求められた各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶されたインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項9】 請求項1,3,5および7の何れか1項において、 前記試験用刷版の各インキツボキーに対応する各エリア内の絵柄面積率に応じ、予め設定されている絵柄面積率とインキツボキーの開き量との関係に従って各インキツボキーの開き量を求め、この求めた開き量を各インキツボキーの開き量の設定値として、また予め設定されている基準インキ送り量から求められる回転量をインキツボローラの回転量の設定値として、前記試験用刷版を用いての印刷物の印刷を行うステップ を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項10】 請求項2,4,6および8の何れか1項において、 前記試験用刷版の各インキツボキーに対応する各エリア内の絵柄面積率に応じ、予め設定されている絵柄面積率とインキツボキーの開き量との関係に従って各インキツボキーの開き量を求め、この求めた開き量を各インキツボキーの開き量の設定値として、また予め設定されている基準インキ送り量から求められる回転量をインキツボローラの回転量の設定値として、前記試験用刷版を用いての印刷物の印刷を行う手段 を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項11】 請求項1,3,5および7の何れか1項において、 リセットスイッチの操作に応じて前記補正された絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを元の絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルに書き換えるステップ を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項12】 請求項2,4,6および8の何れか1項において、 リセットスイッチの操作に応じて前記補正された絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを元の絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルに書き換える手段 を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。」 イ 本件補正後の特許請求の範囲 「 【請求項1】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量を調整し、 この調整した各インキツボキーの開き量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項2】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量を調整する調整手段と、 この調整手段によって調整された各インキツボキーの開き量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項3】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量を求め、 この求めた各インキツボキーの開き量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項4】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量を求める手段と、 この手段によって求められた各インキツボキーの開き量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項5】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を調整し、 この調整した各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶したインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項6】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を調整する調整手段と、 この調整手段によって調整された各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶されたインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項7】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、 この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を求め、 この求めた各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶し、 この記憶した各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、 この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶したインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う ようにしたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項8】 インキツボキーを複数備え、これらインキツボキーとインキツボローラとの間よりインキツボ内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの並設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定する濃度測定手段と、 この濃度測定手段によって測定された各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるような前記各インキツボキーの開き量および前記インキツボローラの回転量を求める手段と、 この手段によって求められた各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量を記憶する記憶手段と、 この記憶された各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルおよび前記記憶されたインキツボローラの回転量を基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量およびインキツボローラの回転量の設定を行う設定手段と を備えたことを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項9】 請求項1,3,5および7の何れか1項において、 前記試験用刷版の各インキツボキーに対応する各エリア内の絵柄面積率に応じ、予め設定されている絵柄面積率とインキツボキーの開き量との関係に従って各インキツボキーの開き量を求め、この求めた開き量を各インキツボキーの開き量の設定値として、また予め設定されている基準インキ送り量から求められる回転量をインキツボローラの回転量の設定値として、前記試験用刷版を用いての印刷物の印刷を行うステップ を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項10】 請求項2,4,6および8の何れか1項において、 前記試験用刷版の各インキツボキーに対応する各エリア内の絵柄面積率に応じ、予め設定されている絵柄面積率とインキツボキーの開き量との関係に従って各インキツボキーの開き量を求め、この求めた開き量を各インキツボキーの開き量の設定値として、また予め設定されている基準インキ送り量から求められる回転量をインキツボローラの回転量の設定値として、前記試験用刷版を用いての印刷物の印刷を行う手段 を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。 【請求項11】 請求項1,3,5および7の何れか1項において、 リセットスイッチの操作に応じて前記補正された絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを元の絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルに書き換えるステップ を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整方法。 【請求項12】 請求項2,4,6および8の何れか1項において、 リセットスイッチの操作に応じて前記補正された絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを元の絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルに書き換える手段 を備えることを特徴とする印刷機のインキ供給量調整装置。」(審決注.補正箇所に下線を付す。) (2)補正内容 本件補正のうち、上記(1)で示した特許請求の範囲に対する補正は、請求項1に対してする以下ア及びイに示す補正内容を含む。 ア 本件補正前に「絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版」とあったものを、「絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版」とする。 イ 本件補正前に「各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、」とあったものを、「各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、」とする。 (3)補正目的について 上記各補正内容について検討する。 ア 補正内容アについて 補正内容アは、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「各エリアの濃度を測定」に関し、測定に使用する「試験用刷版」を限定するものであるから、「各エリアの濃度を測定」する工程を限定するものである。 イ 補正内容イについて 補正内容イは、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正」する工程を、実質的に変更するものではない。 ウ よって、本件補正のうち、補正内容ア及びイよりなる特許請求の範囲の請求項1に対してする補正は、全体として、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであると認め得るものであることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。 2 独立特許要件について (1)本願補正発明 本願補正発明は、上記「1(1)イ」において、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのものである。 (2)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-125181号公報(以下「引用文献」という。)には、図示とともに以下の事項が記載されていると認められる。(注.下線は審決において付す。) ア 「【請求項1】 印刷開始前に、絵柄面積率のデータおよびインキ壷ローラによるインキ送り量とインキ呼び出しローラの動作時間に基づいた刷り出しデータによりブレードの開き量を設定したことを特徴とする刷り出しインキ量調整方法。」 イ 「【0008】 【実施例】以下、本発明の一実施例を説明する。先ず、印刷品種の切り換えにあたって、刷版を交換するとともに、品種切り換え前のインキをインキ供給部であるインキ装置内から除去する、いわゆる壷返し動作を行う。以下、壷返し動作を説明する。インキ壷ローラには、インキ壷ローラの周面に接近させ側面を密接させてインキ壷ローラの軸方向に並設されインキ壷ローラの周面との間隙を個別に進退調節自在に形成された複数個の分割ブレードが設けられている。この分割ブレードは刷版の絵柄面積率に応じて、印刷品質管理制御部(以下、PQCと称する)からのブレードの開き量データ(以下、PQCデータと称する)制御信号により、個々のブレードの開き量が制御されてインキ量が調量される。」 ウ 「【0010】壷返し動作が終了したら、新たなインキ壷がセットされて、しかるのち、インキ呼び出し動作が起動される。・・・(後略)」 エ「【0014】インキ装置内へのインキ供給量が本刷り時のインキ量に近づいたら、以下に説明するように、本刷り時には、個々のブレードの開き量が設定される。すなわち、絵柄面積率読取装置(以下、PSSと称する)により読み取られた図1(a)に示す絵柄面積率のデータ(以下、PSSデータと称する)等の印刷情報をPQCにセットする。同図(a)に示すPSSデータは版胴の軸線左方向に向かって絵柄面積率が漸次高くなっており、このPSSデータでセットされたPQCから個々の分割ブレードにも同図(b)に示すように同じ傾きの本刷り時のブレードの開き量値Aがセットされる。個々のブレードの開き量はこのPQCデータに基づいてインキ壷ローラの周面に対して進退調節されて、ブレードのインキ壷ローラに対する開き曲線は同図Cに示すように、PSSで読み取られた絵柄面積率の曲線に対応して設定される。したがって、本刷りの印刷においては、PSSデータ、すなわち、絵柄面積率に対応した適正なインキ供給がなされる。 【0015】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、印刷開始前に、絵柄面積率のデータおよびインキ壷ローラによるインキ送り量とインキ呼び出しローラの動作時間に基づいた刷り出しデータによりブレードの開き量を設定して、インキの供給量を決めているので、印刷機の自動化が可能であるとともに、印刷品種切り換えにともなう色調合わせ時間の短縮、作業労力の軽減および損紙の低減を図ることが可能となる。」 オ 引用文献の明細書ならびに図面全体を参酌しつつ、上記アないしエを検討すると、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「印刷開始前に、絵柄面積率のデータおよびインキ壷ローラによるインキ送り量とインキ呼び出しローラの動作時間に基づいた刷り出しデータによりブレードの開き量を設定したことを特徴とする刷り出しインキ量調整方法であって、 インキ壷ローラの周面に接近させ側面を密接させてインキ壷ローラの軸方向に並設されインキ壷ローラの周面との間隙を個別に進退調節自在に形成された複数個の分割ブレードを備え、該分割ブレードは刷版の絵柄面積率に応じて、印刷品質管理制御部からのブレードの開き量データ制御信号により、個々のブレードの開き量が制御されてインキ量を調量するものであり、 印刷品種の切り換えに際し、壺返し動作を行った後、新たなインキ壺をセットして、 絵柄面積率読取装置により読み取られた、版胴の軸線左方向に向かって絵柄面積率が漸次高くなっている絵柄面積率のデータに基づく印刷情報を印刷品質管理制御部にセットすることにより、前記個々のブレードの開き量が進退調節されて、前記個々のブレードのインキ壷ローラに対する開き曲線が前記絵柄面積率読取装置で読み取られた絵柄面積率の曲線に対応して設定されて、絵柄面積率に対応した適正なインキ供給がなされる、 印刷機の刷り出しインキ量調整方法。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「インキ壺ローラ」,「ブレード」,「版胴の軸線左方向に向かって」,「進退調節」及び「刷り出しインキ量調整方法」は、それぞれ、本願補正発明の「インキツボローラ」,「インキツボキー」,「インキツボキーの併設方向に沿って」,「調整」及び「インキ供給量調整方法」に相当する。 イ 引用発明において「絵柄面積率が漸次高くなっている」ことと、本願補正発明において「絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する」こととは、「絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する」点で一致する。 ウ 引用発明の「印刷機」は、インキツボローラ(インキ壺ローラ)及びインキツボキー(分割ブレード)によってインキを「刷版」に供給するための「インキ壺」が構成されるものであって、「インキ壺」内のインキをインキツボローラ(インキ壺ローラ)とインキツボキー(分割ブレード)の間からインキツボローラ(インキ壺ローラ)に供給し、該インキツボローラ(インキ壺ローラ)を回転させることにより「刷版」にインキが供給し、「刷版」に供給したインキで印刷用紙に印刷するものであることは、当業者にとって自明である。 よって、引用発明の「印刷機」は、本願補正発明の「インキツボキーとインキツボローラとの間よりインキ壺内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機」に相当する。 エ 引用発明は「絵柄面積率読取装置により読み取られた、インキツボキーの併設方向に沿って絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する(版胴の軸線左方向に向かって絵柄面積率が漸次高くなっている)絵柄面積率のデータ」を使用して、インキツボキー(ブレード)の開き量を調整するものであるから、引用発明の印刷機で使用する「刷版」の絵柄面積率が上記データと同様にインキツボキーの併設方向に沿って絵柄面積率が連続的になだらかに上昇するものであることは、当業者に自明である。 よって、引用発明は本願補正発明の「絵柄面積率」が「連続的になだらかに上昇する絵柄」を備えた「刷版」を有している。 オ 引用発明は「個々のブレードのインキ壷ローラに対する開き曲線が絵柄面積率読取装置で読み取られた絵柄面積率の曲線に対応して設定され」るものであるところ、この「個々のブレードのインキ壷ローラに対する開き曲線」と「絵柄面積率の曲線」との対応関係は、「絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブル」といえることから、引用発明は「絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブル」を基に「印刷における各インキツボキー(ブレード)の開き量の設定を行う」といえる。 よって、引用発明は本願補正発明の「絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブル」を基に「印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う」との事項を備えている。 カ してみると、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「インキツボキーを複数備え、インキツボキーとインキツボローラとの間よりインキ壺内のインキをインキツボローラに供給し、このインキツボローラの回転によって供給されたインキを刷版へ供給し、この刷版に供給されたインキを印刷用紙に印刷する印刷機において、 前記インキツボキーの併設方向に沿ってその絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた刷版を有し、 前記各インキツボキーの開き量が調整されるものであって、 絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う、 印刷機のインキ供給量調整方法。」 キ 一方で、引用発明と本願補正発明とは以下の点で相違する。 (ア)相違点1 本願補正発明は「インキツボキーの併設方向に沿ってその絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版を用いて印刷された印刷物の前記各インキツボキーに対応する各エリアの濃度を測定し、この測定した各エリアの濃度値と予め記憶されている基準濃度値との差に基づいてその差がほゞ零となるように前記各インキツボキーの開き量を調整」するとの特定を有するのに対し、引用発明は「版胴の軸線左方向に向かってその絵柄面積率が漸次高くなっている(インキツボキーの併設方向に沿ってその絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する)絵柄を備えた刷版」を有するものであるものの、これにより印刷した印刷物の濃度を測定するかどうか明らかではなく、上記特定を有するものかどうか不明である点。 (イ)相違点2 本願補正発明は「調整した各インキツボキーの開き量を記憶し、この記憶した各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、この補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に以降の印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う」との特定を有するのに対し、引用発明は「絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを基に印刷における各インキツボキーの開き量の設定を行う」ものではあるものの、上記特定を有さない点。 (4)判断 上記各相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用発明は「印刷品種の切り換えに際し、壺返し動作を行った後、新たなインキ壺をセット」するものであるから、インキを交換したときの「ブレード(インキツボキー)の開き量」を調整するものである。 印刷機という技術分野において、インキを交換した場合にはインキツボキーの開き量を微調整する必要があるという課題は、例えば特開平8-11292号公報(特に段落【0005】参照。),特開昭61-44649号公報(特に1ページ右下欄13行?2ページ左上欄14行参照。),特開昭59-9058号公報(特に2ページ左上欄2行?10行参照。)等に記載されているように、本願の出願前において周知のものであったことから、引用発明がインキを変更するものである以上、個々のブレード(インキツボキー)の開き量を微調整する必要があるという上記課題を有するものであることは、当業者ならば当然把握していたものである。 ここで、印刷機という技術分野において、試験印刷を行い、その印刷物の濃度を測定し、その濃度値を予め記憶されている基準となる濃度値と比較してその差が小さくなるようにインキツボキーの開き量を調整する技術は、特開平11-70636号公報(特に段落【0015】?【0020】参照。),特開平10-315604号公報(特に段落【0017】参照。),特開平10-272761号公報(特に段落【0025】参照。)等に記載されているように本願の出願前に周知のもの(以下「周知技術1」という。)である。 したがって、引用発明において、個々のブレード(インキツボキー)の開き量を微調整するという課題を解決するために、上記周知技術1に基づいて、「版胴の軸線左方向に向かってその絵柄面積率が漸次高くなっている(インキツボキーの併設方向に沿ってその絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する)絵柄を備えた刷版」を用いて試験印刷を行い、その印刷物の濃度を測定し、その濃度値を予め記憶されている基準となる濃度値と比較してその差が小さくなるように個々のブレード(インキツボキー)の開き量を調整する構成を付加することは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 そして、試験印刷の際に使用する、「版胴の軸線左方向に向かってその絵柄面積率が漸次高くなっている(インキツボキーの併設方向に沿ってその絵柄面積率が連続的になだらかに上昇する)絵柄を備えた刷版」の絵柄面積率をどのような範囲のものとするかは、印刷機で本印刷に使用する刷版の絵柄面積率に応じて当業者が適宜設計することができたものであるところ、絵柄面積率の小さい刷版にも十分対応できるように、絵柄面積率が「ほゞ0%から」漸次高くなる刷版とすることも、当業者が適宜設計することができたものである。 上記のとおりであるから、引用発明及び上記周知技術1に基づいて、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 イ 相違点2について 印刷機という技術分野において、インキツボキーの開き量を微調整した場合に、以降の微調整作業を軽減するために、微調整したインキツボキーの開き量を記憶し、この記憶したインキキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブルを補正し、補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブルを使用して以降の印刷における各インキツボキーの設定を行う技術は、例えば特開平9-262965号公報(特に段落【0004】,【0038】?【0039】参照。「変換倍率カーブ」が「絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブル」に相当する。),特開平7-68740号公報(特に請求項1,段落【0008】,段落【0029】?【0032】参照。「プリセット関数」が「絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブル」に相当する。),特開平2-92638号公報(特に請求項1,4ページ右上欄3行?同ページ左下欄1行参照。「プリセット関数」が「絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブル」に相当する。)等に記載されているように、周知のもの(以下「周知技術2」という。)である。 上記アにて示したように、引用発明は、インキを交換したときの個々のブレード(インキツボキー)の開き量を微調整するという課題を有するものであるところ、このような微調整が少なくともインキを交換するごとに必要であることは当業者にとって自明である。よって、このような繰り返しなされる微調整作業を軽減するために、上記周知技術2である、微調整したインキツボキーの開き量を記憶し、この記憶したインキキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブルを補正し、補正した絵柄面積率-インキツボキー開き量テーブルを使用して以降の印刷における各インキツボキーの設定を行う構成を付加し、もって上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者ならば容易に想到することができたものである。 ウ 小括 上記のとおりであるから、相違点1ないし相違点2の構成は、当業者が、引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に想到することができたものであり、それにより得られる効果も、引用発明の奏する効果、周知技術1の奏する効果及び周知技術2の奏する効果から、当業者が予測することができた程度のものに過ぎない。 (5)独立特許要件についてのまとめ 本願補正発明は、当業者が、引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 補正却下の決定のむすび 上記「2」のとおり、本願補正発明は特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。 したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1ないし12に記載された発明は、前記「第2 1(1)ア」において、本件補正前の特許請求の範囲(平成20年1月23日付け手続補正後のもの)に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1(1)ア」にて請求項1として記載したとおりのものである。 2 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献およびこれらの記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記「第2 2(1)」で検討した本願補正発明から、 (1)発明を特定するために必要な事項である「各エリアの濃度を測定」する工程について、「絵柄面積率がほゞ0%から連続的になだらかに上昇する絵柄を備えた試験用刷版」を「絵柄面積率がなだらかに変化する絵柄を備えた試験用刷版」として、その限定を省き、 (2)発明を特定するために必要な事項である「各インキツボキーの開き量の設定を行う」工程について、「各インキツボキーの開き量より絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、」とあったものを「各インキツボキーの開き量を基に絵柄面積率-インキツボキー開き量変換テーブルを補正し、」としたもの に相当する。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2」の(1)ないし(5)に記載したとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-17 |
結審通知日 | 2010-03-30 |
審決日 | 2010-04-12 |
出願番号 | 特願平11-82544 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41F)
P 1 8・ 121- Z (B41F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 國田 正久 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
江成 克己 上田 正樹 |
発明の名称 | 印刷機のインキ供給量調整方法および装置 |
代理人 | 黒川 弘朗 |
代理人 | 山川 政樹 |
代理人 | 西山 修 |
代理人 | 山川 茂樹 |