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審決分類 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する A61M
審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する A61M
管理番号 1218543
審判番号 訂正2010-390017  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2010-02-22 
確定日 2010-06-10 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2647132号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2647132号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.手続の経緯
(1)本件特許第2647132号の請求項1?4に係る発明についての出願(以下、「本件出願」という。)は、昭和63年4月28日に出願され、平成9年5月9日にそれらの発明について特許権の設定登録がなされたものである。
(2)本件特許に対し、メディキット株式会社、東郷メディキット株式会社(以下、「関係無効審判請求人」という。)は、平成21年1月21日に特許無効審判(無効2009-800013)(以下、「関係無効審判」という。)を請求し、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出し、無効理由1?3により、本件特許の請求項1に係る発明についての特許を無効とするとの審決を求めた。この関係無効審判については、平成21年10月21日付けで、当該無効審判請求は成り立たない旨の審決がなされた。
(3)これに対し、メディキット株式会社は、平成21年11月26日付けで、知的財産高等裁判所に審決取消を求めて提訴し、当該訴訟は審理中である(「H21(行ケ)10381」)。
(4)関係無効審判の審決に対する訴えの提起のあった、平成21年11月26日から90日の期間以内である平成22年2月22日に、本件訂正審判が請求された。

2.訂正審判請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第2647132号発明(昭和63年4月28日特許出願、平成9年5月9日設定登録)の明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記のとおり訂正することを求めるものである。(以下、下線部は訂正箇所を示すものである。)

特許請求の範囲の請求項1において、
「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと、
該ハンドル内に配置されたニードルハブと、
鋭い自由端と、前記ニードルハブに連結された固着端とを有し、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと、
前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と、
前記ニードルハブから独立して移動可能であり、前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって、前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され、前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと、
から成ることを特徴とする、カニューレ挿入のための安全装置。」
と訂正する。

3.当審の判断
(1)訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張、変更について

訂正事項のうち、「カニューレを患者の定位置に案内し運ぶための」を付加する訂正は、該付加により訂正前の請求項1に記載された「ニードル」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項のうち、「カニューレ挿入のための」を付加する訂正は、該付加により訂正前の請求項1に記載された「安全装置」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項は、本件特許明細書第2欄第10?12行、第10欄第45?46行、第11欄第1?3行、第12欄第8?10行、第15欄第46?50行、第19欄第28?32行の記載事項に基づくものといえるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでない。

(2)独立特許要件について
上記したとおり、訂正事項は、請求項1についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正を含むものであるが、請求項2?4も請求項1を直接的あるいは間接的に引用していることにより、実質的に特許請求の範囲を減縮することとなるものである。
そこで、請求項1?4に係る発明について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものか否かについて、以下検討する。

(2-1)本件訂正発明
訂正後の請求項1?4に係る発明(以下、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明4」という。)は、訂正明細書の請求の範囲に記載されたとおりの次のものと認める。

「1.近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと、
該ハンドル内に配置されたニードルハブと、
鋭い自由端と、前記ニードルハブに連結された固着端とを有し、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと、
前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と、
前記ニードルハブから独立して移動可能であり、前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって、前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され、前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと、
から成ることを特徴とする、カニューレ挿入のための安全装置。
2.前記付勢手段はばねである特許請求の範囲第1項の安全装置。
3.前記ばねは、前記ニードルハブの回りにこれと同軸的に配置されている特許請求の範囲第2項の安全装置。
4.前記ラッチが前記ニードルハブに係合する特許請求の範囲第1項、第2項又は第3項に記載の安全装置。」

(2-2)訂正審判請求人、関係無効審判請求人の示した文献等
訂正審判請求人は、審判請求書において、特許法第29条関連で甲第1号証?甲第6号証を、特許法第29条の2関連で甲第8号証を提示している。
また、関係無効審判請求人は上申書において、特許法第29条関連で甲第1号証?甲第42号証を、また特許法第29条の2関連で、甲第1号証?甲第16号証を提示している(以後、これらの文献を訂正審判請求人の提示した甲第1?6号証、甲第8号証と区別するため、前者の甲第1号証?甲第42号証を甲第1-2号証?甲第42-2号証とし、後者の甲第1号証?甲第16号証を甲第1-3号証?甲第16-3号証とする。)。

<訂正審判請求人の提示した文献>
甲第1号証:特開昭62-72367号公報
甲第2号証:特開昭59-69080号公報
甲第3号証:米国特許第3572334号明細書、甲第3号証の抄訳
甲第4号証:米国特許第4160450号明細書、甲第4号証の抄訳
甲第5号証:特開昭50-27200号公報
甲第6号証:実願昭55-015351号(実開昭56-116961号) のマイクロフィルム
甲第8号証:特願昭63-98036号(特開昭63-290577号)
================================
<関係無効審判請求人の提示した文献1>
甲第1-2号証:特開昭62-72367号公報
甲第2-2号証:特開昭59-69080号公報
甲第3-2号証:米国特許第3572334号明細書、甲第3号証の部分翻訳文
甲第4-2号証:米国特許第4160450号明細書、甲第4号証の部分翻訳文
甲第5-2号証:特開昭50-27200号公報
甲第6-2号証:実願昭55-015351号(実開昭56-116961号) のマイクロフィルム
甲第7-2号証:特開2004-33733号公報
甲第8-2号証:米国特許第Re.36398号明細書
甲第9-2号証:JIS工業用語大辞典(第5版)、1660頁
甲第10-2号証:米国特許第4337576号明細書、抄訳
甲第11-2号証:本件特許出願明細書
甲第12-2号証:実願昭57-53295号(実開昭58-157142号) のマイクロフィルム
甲第13-2号証:米国特許第3306290号明細書、抄訳
甲第14-2号証:米国特許第2605766号明細書、抄訳
甲第15-2号証:特開昭58-7260号公報
甲第16-2号証:米国特許第4675005号明細書、抄訳
甲第17-2号証:米国特許第4692156号明細書、抄訳
甲第18-2号証:米国特許第4676783号明細書、抄訳
甲第19-2号証:特開昭63-290577号公報
甲第20-2号証:特開昭62-217976号公報
甲第21-2号証:米国特許第4664654号明細書、抄訳
甲第22-2号証:米国特許第4105030号明細書、抄訳
甲第23-2号証:米国特許第2427069号明細書、抄訳
甲第24-2号証:米国特許第2988055号明細書、抄訳
甲第25-2号証:米国特許第3039436号明細書、抄訳
甲第26-2号証:特開昭62-64344号公報
甲第27-2号証:実願昭61-157732号(実開昭63-62106号) のマイクロフィルム
甲第28-2号証:実願昭58-165927号(実開昭60-73509号) のマイクロフィルム
甲第29-2号証:ボールペン、ボクシーBX-100の画像
甲第30-2号証:実公昭49-18462号公報
甲第31-2号証:実公昭49-14469号公報
甲第32-2号証:米国特許第3727613号明細書
甲第33-2号証:米国特許第4464171号明細書
甲第34-2号証:米国特許第4488545号明細書
甲第35-2号証:人工透析研究会会誌、第15巻第1号(1982年1月31日発行)、抄本
甲第36-2号証:透析療法とその周辺知識、1979年12月10日第1刷、南江堂発行、108?109頁
甲第37-2号証:サーフロー留置針C型、テルモのカタログの写し
甲第38-2号証:ニプロ、セーフレットキャスのカタログの写し
甲第39-2号証:ジェルゴ、I.V.カテーテル、I.V.スタイレットのカタログの写し
甲第40-2号証:バソフィックス静脈留置針のカタログの写し
甲第41-2号証:写真撮影報告書、ブレード引込式ナイフ
甲第42-2号証:写真撮影報告書、ボールペン、BOXY
==================================
<関係無効審判請求人の提示した文献2>
甲第1-3号証:特願昭63-98036号(特開昭63-290577号)
甲第2-3号証:実公昭49-25514号公報
甲第3-3号証:実願昭52-162022号(実開昭54-87693号) のマイクロフィルム
甲第4-3号証:米国特許第3262449号明細書
甲第5-3号証:米国特許第4592744号明細書
甲第6-3号証:米国特許第4160450号明細書
甲第7-3号証:米国特許第3572334号明細書
甲第8-3号証:特公昭62-26787号公報
甲第9-3号証:実公昭49-18462号公報
甲第10-3号証:特公昭46-26717号公報
甲第11-3号証:人工透析研究会会誌、第15巻第1号(1982年1月31日発行)、抄本
甲第12-3号証:透析療法とその周辺知識、1979年12月10日第1刷、南江堂発行、108?109頁
甲第13-3号証:サーフロー留置針C型、テルモのカタログの写し
甲第14-3号証:ニプロ、セーフレットキャスのカタログの写し
甲第15-3号証:ジェルゴ、I.V.カテーテル、I.V.スタイレットのカタログの写し
甲第16-3号証:バソフィックス静脈留置針のカタログの写し

(2-3)特許法第29条第2項についての検討・判断
(i)甲第1号証ないし甲第6号証の記載内容

甲第1号証には、概略下記の事項が図面とともに記載されている。
(ア)「(1)皮下注射針またはその他の器具に関連した動きによるか、あるいはそのものの上に折り重ねることによって、前記の針またはその他の器具が正常に使用される第1の位置で、前記の針またはその他の器具、あるいはその支持体に接続させ、据えておくことができるようになっている1個のさやから成り、第2の位置では、さやが、針またはその他の器具を包み、かつその第2の位置に、さやを保持するようになっていることを特徴とする皮下注射針等の安全装置。」(【特許請求の範囲】(1))
(イ)「(5)針が、ハウジングによって支持されており、かつさやが、ハウジングに固着されていることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の皮下注射針等の安全装置。」(【特許請求の範囲】(5))
(ウ)「(6)さやが、針の長さ方向に平行に、ハウジングに対して動くことができ、それにより、さやが、針を包むように移動できることを特徴とする特許請求の範囲第(5)項に記載の皮下注射針等の安全装置。」(【特許請求の範囲】(6))
(エ)「(産業上の利用分野)
本発明は、皮膚の臨床的穿刺に用いられる皮下注射針またはその類似器具の安全装置に関する。」(2頁左上欄15?17行)
(オ)「(発明が解決しようとする問題点)
臨床オペレータ、臨床処理の監視者、および一般の人々を含むその他すべての関係者が、誤って傷つくことのないような方法で、皮下注射針またはそうした器具を処理することのできる装置が明らかに必要である。
本発明の目的は、そうした装置を提供することにある。」(2頁右上欄8?15行)
(カ)「本発明の安全装置は、皮下注射針に代表される穿刺器具の保護に、一般的に適用できるものであるが、そうした器具の中でも、皮下注射針は、最も広範に使用されている。
例えば、この装置は、生検針、傷針、すなわち、接着テープによるような皮膚表面に針を固定することのできる側面付属装置の付いた針の保護や、静脈カニューレや腰椎穿刺針の保護に適用することができる。」(2頁左下欄7?15行)
(キ)「本発明によるさやは、予め針に取り付けて提供するのが、好適かつ簡便である。
特に好適には、さやは、除去されないように、または容易に除去されることのないような方法で取り付けられる。例えば、さやを、針または針の支持体に接着するか、あるいは針または支持体にクリップで止めてもよい。」(2頁右下欄7?13行)
(ク)「(実施例)
本発明を、添付図面について、さらに説明する。
第1A図および第1B図に示した本発明の実施態様は、針(5)を支持しているプラスチック成形物の針ハウジング(4)と、ハウジング(4)の上を滑ることができるように支持された、さやと共に要素を構成する親指ガード(7)と合体したプラスチックさや(6)から成っている。」(3頁右上欄12?19行)
(ケ)「さや(6)は、拡大図により詳細に示してあるように、溝(8)に沿って滑る自動ばね栓(9)と合体している。さやが溝(8)の端までいくと、自動ばね栓(9)が、小さな「くぼみ」(10)に落ちて、滑動するさやを所定の位置に固定する。
さやの長さは、第1B図に示すように、それが所定の位置に固定された際、針の鋭利な先端がさやに完全に含まれるような長さである。」(3頁左下欄2?9行)
(コ)「ハウジング(4)は、どの標準的注射器胴部または連結器にも合うように設計されている。
使用後、保護さやを固定位置まで伸ばし、安全な方法で針を含む。」(3頁左下欄10?13行)

(サ)摘記事項(キ)、(ク)及び第1A,1B図の図示内容より、さや6は、中空であって、ある程度の長さを有するものであり、臨床オペレータ等の穿刺器具の操作者にとって、近い端及び遠い端を有していること、また、ハウジング4は、さや6内に配置されていることが把握できる。そして、摘記事項(エ)及び第1A,1B図の図示内容から、針5は鋭い自由端を有し、ハウジング4の遠い端で当該ハウジング4に支持される、前記鋭い自由端と反対の端部を有することが把握できる。
(シ)摘記事項(ウ)、(ク)及び第1A,1B図から、さや6を、針5の長さ方向に、ハウジング4に対して動かすときに、親指ガード7も一緒に動くように、さや6と一体に構成されていることが把握できる。
(ス)摘記事項(オ)、(ク)?(ケ)及び第1A,1B図から、さや6を針5を包むように前に動かすのは、操作者の手動によることも把握できる。
(セ)摘記事項(イ)及び(キ)の記載、また、甲第1号証記載の安全装置において、針5の穿刺時には、さや6は、針5あるいはハウジング4に対して、針5が露出するような位置に保持される必要があることは自明であることからみて、甲第1号証記載の安全装置においては、ハウジング4とさや6を、ハウジング4が一時的にさや6の遠い端に隣接した位置に保持される接着等による固着手段を有していることも把握できる。

上記記載事項からみて、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「近い端及び遠い端を有する中空のさや6と、
さや6内に配置されたハウジング4と、
鋭い自由端と、ハウジング4の遠い端で当該ハウジング4に支持される、前記鋭い自由端と反対の端部とを有する針5と、
ハウジング4を一時的に中空のさや6の遠い端に隣接して保持する接着等による固着手段と、
から成る皮下注射針等の安全装置。」

甲第2号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(ソ)「(1)可動コアを具えるか具えない皮下注射針を使用する、自動プランジャ復帰式の注射器にして、注射器本体(1)を、注射器前端(4)で一体化された2個の同軸的な円筒素子(2,3)で構成するともに、該本体(1)を上記前端(4)から、上記円筒素子(2,3)の前方に同軸線に設けられた中空の円錐台状の座部(5)まで延設し、両円筒素子(2,3)間の環状室(8)の一端を前記前端(4)で閉鎖し他端は開放し、円筒素子(3)の中心部に、両端が開放され前端が前記座部(5)に連通する円錐台部分(10)を終端とする円筒状空洞(9)を形成し、前記注射器本体(1)の内部に、2個の同軸的な円筒(14,15)からなる軸線方向に移動可能なプランジャ(13)を収納し、これら円筒(14,15)のうちの外方円筒(14)を前端で開放し、後端で環状部(17)により閉鎖し、内方円筒(15)を前端で閉鎖し、後端で上記環状部(17)を経て円板部即ちボタン(18)まで延設し、これら外筒(14)と内筒(15)の間の第2環状室(16)の後端を前記環状部(17)で閉鎖し、更に、上記内筒(15)の前端で、皮下注射針(7)の可動コア(6)のための固定点を画定し、上記可動コア(6)の基部を、外側面がアンダカット状で、前記円筒状空間(9)内を、それと協働して気密、液密のシールを構成しつつ摺動するパッキン(20)内に収納したことを特徴とする注射器。」(「特許請求の範囲」(1))
(タ)「(3)プランジャ(13)の外方円筒(14)の前端の前方にスプリング(21)を配設し、プランジャ(13)が注射器本体(1)内に押込まれると、上記スプリングが環状部(8)内で圧縮されるように構成したことを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の注射器。」(「特許請求の範囲」(3))
(チ)「本発明は、自動プランジャ復帰式のバイオプシー用の注射器、即ち、後の分析のために、患者の身体から組織や体液のサンプルを抽出する皮下注射器に関する。」(2頁左上欄9?12行)
(ツ)「従来、通常の皮下注射針を装着してバイオプシーに使用される通常の皮下注射器、或は移動コア等の装置を設けられた皮下注射器が知られている。
バイオプシーは、・・・、2段階で行われる。即ち、皮下注射器に適切に装着された針を、分析のためのサンプルを必要とする組織に刺す第1段階と、この組織から微細な粒子或は液滴を吸込む第2段階の2段階である。この操作には、一方の手で針及び注射器を確実に保持し、他方の手で注射器の可動部品、つまりプランジャを引出すことにより、分析用の前記組織または体液が針から吸込まれるための負圧を生じさせることが要求される。」(2頁左上欄13行?右上欄5行)
(テ)「図面において、1は注射器本体を示し、この注射器本体1は、2個の同軸的な円筒素子2,3で構成されている。これら円筒素子2,3は、注射器本体1の前端4で結合されて一体的な肩部となり、この肩部が前方に延ばされ、両素子2,3と同軸的な円錐台状の座部5とされている。6は、この座部5内を摺動させられる皮下注射針の可動コアを示す。7は通常の皮下注射針で、上記座部5に装着される。」(2頁右下欄8?16行)
(ト)「外方の円筒素子2の前記前端4から最も遠い端部は、2個の弾性変形が可能な、つまり可撓性を有する突起11に接続し、これら各突起11には戻り止め12が設けられている。」(3頁左上欄1?5行)
(ナ)「皮下注射針7の可動コア6は、プランジャ13の内筒15の前端に取付けられている。同コア6の基部は、外側面がアンダカット状のパッキン20に被覆されている。これは、注射器本体1の中心空洞9内で上記パッキン20を摺動させ、気密、液密のシールを構成させるためである。」(3頁右上欄1?6行)
(ニ)「第4図は本発明の他の実施例を示し、本実施例では前記実施例の円錐台状リップシール19にかえて、プランジャ13の外筒14の前端にスプリング21を設けている。」(3頁右上欄7?10行)
(ヌ)「次に、本発明による皮下注射器の作用を説明すると、皮下注射針7をバイオプシーのための患者の部位に挿入する前に、まずプランジャ13のボタン18に親指を当て、突起11で構成された戻り止め12に環状部が係合して弾性的に位置決めされるまで前方に押込む。この状態で、注射針7を、分析のために抽出すべき組織のサンプルの深さまで刺し込む。その後、上記突起11を横方向に押圧すると、環状部17が戻り止めから解放されてプランジャ13が戻される。この動作は、注射器本体1の環状室8の圧縮空気により自動的に行われるか、或はその時点まで圧縮されていたスプリング21を介して行なわれる。
このようにプランジャ13が戻る間に、注射器本体1の中心空洞9及び円錐台部分10には適当な負圧が発生し、少量の組織または流体が針7から吸込まれる。」(3頁左下欄1?17行)

上記記載事項からみて、甲第2号証には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「可動コア(6)を具える皮下注射針(7)を使用する自動プランジャ復帰式の注射器において、注射器本体(1)を、注射器前端(4)で一体化された2個の同軸的な円筒素子(2,3)で構成するとともに、前記注射器本体(1)の内部に、2個の同軸的な円筒(14,15)からなる軸線方向に移動可能なプランジャ(13)を収納し、これら円筒(14,15)のうちの外方円筒(14)を前端で開放し、後端で環状部(17)により閉鎖し、更に、上記内筒(15)の前端で、皮下注射針(7)の可動コア(6)のための固定点を画定し、上記可動コア(6)の基部を、外側面がアンダカット状で、前記円筒状空間(9)内を、それと協働して気密、液密のシールを構成しつつ摺動するパッキン(20)内に収納し、プランジャ(13)の外方円筒(14)の前端の前方にスプリング(21)を配設し、プランジャ(13)が注射器本体(1)内に押込まれると、上記スプリングが環状部(8)内で圧縮され、戻り止め(12)により固定されるように構成した注射器。」

甲第3号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(ネ)「The present invention relates to intravenous catheter placement units, more particularly to such units wherein the catheter passes internally through a sharpened needle and the needle normally remains on the unit during use.」(1欄33?36行):当審による仮訳(以下、同様)
「本発明は、静脈カテーテル留置装置に関し、より具体的には、カテーテルが鋭い中空ニードルの内部を通過し、通常の場合にニードルが使用中に装置上に残る装置に関する。」
(ノ)「All the prior art devices involve removable parts and necessitate the use of some kind of additional device to protect the catheter from the sharp edges of the needle point where such protection is even possible. In fact, all such devices which currently are being used leave the needle exposed on the catheter after the catheter has been fully inserted for use. Furthermore, many of these devices are quite complicated and difficult to operate.」(1欄58?65行):
「すべての先行技術器具は、取り外し可能な部分を含み、ニードルの先端の鋭い刃からカテーテルを保護するなんらかの種類の付加器具の使用を必要とする(このような保護が可能な場合において)。事実、現在使用されているすべてのこのような器具は、カテーテルが使用のために完全に挿入された後にカテーテル上にニードルが露出されたままとする。さらに、これらの器具の多くは、非常に複雑であり、扱いにくい。」
(ハ)「I have invented an intravenous catheter placement unit which has no removable parts except for those used in packaging the unit, provides for complete retraction of the needle and automatic protection of the catheter from injury by the sharp edges of the needle point as well as for sterile protection of the inserted catheter, and is designed for extremely simple two- or three-step operation.」(1欄66行?2欄2行):
「私は、装置を包装するために使用されるものを除いて取り外し可能な部分を持たない静脈カテーテル留置装置を発明した。この装置は、ニードルの完全な後退およびニードルの鋭い刃による損傷からのカテーテルの自動保護ならびに挿入されたカテーテルの殺菌保護を提供し、きわめて簡単な2ないし3段階操作で使用するように設計されている。」
(ヒ)「In the unit of my invention the needle is under precise control at all times and the needle point, when retracted, is held firmly in a fixed position with respect to the catheter tubing. This avoids any possibility that the sharp edges of the needle point will cut the catheter due to relative movement between them. The needle point is automatically fixed in this position upon retraction without the need for special adjustment or the use of any additional parts to protect the catheter.」(2欄3?11行):
「私の発明した装置では、ニードルは常に精確な制御下にあり、そしてニードルの先端は、後退したとき、カテーテル管に関して定位置に確実に保持される。これにより、ニードルの先端の鋭い刃がカテーテルとの相対運動によりカテーテルを切る可能性を排除する。ニードルの先端は、後退後に、カテーテルを保護するための特別の調整も付加部分の使用も必要とせずに、この位置に自動的に固定される。」
(フ)「After the catheter connector 44 is locked in position at the rear of the housing, as shown in FIGS. 11 and 12, the operator presses down on the leading end of the catheter 33 through the skin of the patient, as shown in FIG. 12, and the needle 30 is retracted into the housing merely by moving the flag or finger grip 42 to the rear, as shown in FIG. 12.」(6欄25?32行):
「図11及び図12に示されているように、カテーテルコネクタ44がハウジングの後方位置でロックされた後、操作者は、図12に示されているように患者の皮膚上からカテーテル33の先端を押し下げ、そして、単にフラグ又は指グリップ42を図12に示されるように後方に移動させるだけで、針30はハウジング内に引込まれる。」

甲第3号証には、(ネ)?(フ)から、「カテーテルを中空針の中に通して、カテーテルを静脈に挿入するタイプのカテーテルであって、カテーテルの使用の際にも針は装置上に残されたままであり、カテーテルを傷つけないために、後退させた針を固定する手段」が開示されている。

甲第4号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(ヘ)「The invention is in the field of catheter devices of outside-the-needle type, as employed for supplying liquids intravenously.」(1欄5?7行):
「この発明の分野は、静脈内液体供給のために使用されるニードル外カテーテル装置である。」
(ホ)「As originally constructed, outside-the-needle catheter devices have suffered from messy blood spillage and contamination during the time the venipuncture needle has been withdrawn from the catheter or cannula immediately after placement of the catheter in a vein and before the venoclysis set has been connected to the catheter. This has been highly undesirable for a variety of reasons. Besides being unsanitary and inconvenient, it has tended to frighten the patient.」(1欄16?24行):
「考案された当初において、ニードル外カテーテル装置には、カテーテルを静脈内に留置した直後および静脈注射セットがカテーテルに接続される前における静脈穿刺ニードルがカテーテルまたはカニューレから取り外されている状態において汚い血液漏出と汚染が生ずるという問題があった。これは、種々の理由からきわめて好ましくないことである。不衛生かつ不便である上に、それは患者を驚かせがちであった。」
(マ)「In accordance with the invention, the above-mentioned problems are effectively solved by providing an elongate needle-receiving housing having one end connected in liquid-tight manner to a catheter through which extends a stylet needle having an end enclosed by the housing. The housing is itself liquid-tight, except for an opening in its end opposite the catheter. A tube, usually supply tubing for a venoclysis liquid, extends through and substantially closes such opening and connects with the enclosed end of the needle. The needle is entirely free of the catheter, but remains within the housing, following withdrawal from the vein. Flow of liquid takes place via the interior of the housing.」(1欄44?56行):
「この発明に従って、端部をハウジングに囲まれた探り針を通したカテーテルに液密的に接続される一端を持つ細長いニードル収容ハウジングを設けることにより、上述の問題は、効果的に解決される。このハウジングは、カテーテルの反対側の他端の開口部を除いて、それ自体液密である。チューブ、通常の場合、静脈注射液の供給管が、この開口部を通して伸びて実質的に閉鎖し、ニードルの囲まれた端部と接続する。このニードルはカテーテルに全面的に自由に出入りできるが、静脈からの抜き取り後、ハウジング内に留まる。液体の流れは、このハウジング内部を経由して発生する。」
(ミ)「Means are provided by which the housing opening is closed liquid-tight. In one embodiment of the device, such means takes the form of a seat in the housing and a hub formation on the enclosed end of the needle for liquid-tight engagement with the seat when the needle is retracted into the housing. In other embodiments wherein the catheter is advanced relative to the needle, such means takes the form of a liquid-tight connection between the housing and the tube that enters the housing through the opening.」(1欄57行?2欄2行):
「ハウジング開口部を液密的に封鎖する手段を設ける。この装置の1つの実施態様では、このような手段は、ハウジング中の座部およびニードルがハウジング内に後退させられたときにおける当該座部との液密結合のためのニードルの囲まれた端部におけるハブ構造の形態をとる。カテーテルがニードルに対して相対的に前進される他の実施態様では、このような手段は、ハウジングと、開口部を経てハウジングに入るチューブ間との、液密結合の形態をとる。」
(ム)「The housing and at least the supply tubing for the venoclysis liquid are preferably of transparent or translucent material, usually a suitable synthetic resin plastic, whereby flash-back of blood can be observed to indicate a successful venipuncture. It is a feature of the invention that the needle is wholly withdrawn from the catheter following venipuncture, so danger of inadvertent transection of the catheter by the sharp end of the needle is minimized.」(2欄3?11行):
「ハウジングと少なくとも静脈注射液の供給管は、血液の逆流により正常な静脈穿刺を観察できる透明または半透明の材料製、通常の場合、適切な合成樹脂製とすることが望ましい。ニードルの鋭い先端によるカテーテルの不注意な切断の危険を最小化するために、静脈穿刺後にニードルがカテーテルから全面的に抜き取られることが本発明の1つの特徴である。」
(メ)「The device of the invention is used in much the same way as are conventional outside-the-needle catheter devices. A vein of the patient concerned is punctured in conventional manner by forcing the protruding point 13b of needle 13 and the beveled tip 10b of catheter 10 through overlying skin and flesh of the patient and into the vein, the backwardly protruding end 14b of rigid or semi-rigid connection tubing 14a being held firmly along with housing 11 during this time. Flash-back of blood, observable through transparent or semi-transparent needle hub 13c, portion 14a of connection tubing 14, and housing 11, indicates a successful venipuncture.」(3欄45?56行):
「この発明の装置は、在来のニードル外カテーテル装置とほとんど同じ方法で使用される。在来の方法に従って、ニードル13の突出先端13bとカテーテル10の傾斜先端10bを患者の被覆皮膚と肉を通して静脈に突き刺し、また、この操作中、剛体または半剛体接続管14aの後方突出端14bをハウジング11に沿って着実に保持することにより、関係患者の静脈が穿設される。透明または半透明のニードル・ハブ13c、接続管14の部分14a、ハウジング11を通して観察できる血液の逆流が正常な静脈穿刺を示す。」
(モ)「While still firmly holding end 14b of connection tubing 14 with one hand, housing 11 is pushed forwardly by the other hand to advance catheter 10 relative to needle shank 13a farther into the vein. Then housing 11 is held stationary while portion 14a is pulled backwardly until needle hub 13c is securely seated as a stopper against walls 11a behind detent ring 11b, as shown in FIG. 3. In preferred embodiments, needle shank 13a and pointed end 13b will be entirely withdrawn from catheter 10 and protectively encased by housing 11.」(3欄57?66行):
「片手で接続管14の端部14bを着実に保持し続けつつ、他方の手でハウジング11を前方に進めてカテーテル10をニードル軸13に対して相対的に進めることによりさらに静脈の中に前進させる。次に、ハウジング11を静止させたままで、図3に示すように、デテント・リング11bの後方の壁11aに対するストッパーとしてニードル・ハブ13cが確実に着座するまで部分14aを後方に引く。好ましい実施態様では、ニードル軸13aと鋭い先端13bは、カテーテル10から全面的に引き出され、ハウジング11内に保護するように格納される。」
(ヤ)「With the needle retracted in this manner, housing 11 is pushed forwardly to advance catheter 10 as far as desired into the vein. The device is then anchored in place in customary manner by the use of adhesive tape.」(3欄67行?4欄2行):
「この方法によりニードルが後退させられた状態で、ハウジング11を前方に押してカテーテル10を必要な深さまで静脈内に進める。次に、従来の方法に従い、接着テープを使用してこの装置を所定の位置に固定する。」

甲第4号証には、(ヘ)?(ヤ)から、「静脈穿刺針をカテーテルから引き抜いた時に、カテーテル装置が汚染された血液の流出を防ぐために、カテーテルと静脈注入セットの連結の際の血液漏れを防ぐためのもの」が記載されている。

甲第5号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(ユ)「本発明はナイフ、くし等のとび出し機構に係り、その目的はナイフの刀身部やくし等をそのケースよりワンタツチで出し入れし得るようにした機構を提供するにある。」(1頁右下欄3?6行)
(ヨ)「以下本発明をとび出しナイフとして具体化した手段の一例を図面について説明すれば図面中1はケース全体を示し、2は同ケース1において先端頭部3を平面かまぼこ状に膨出してなる刃収納部材、4は同刃収納部材2の頭部3先端面中央に開口した刃出入口、5は同じく刃収納部材2の刃出入口4より基端にかけて設けた刃ガイド溝を兼用する刃収納凹部、6は同刃収納凹部5内の一側に突設した支持軸であつて、後記操作レバー10の中央を傾動可能に軸支する。」(1頁右下欄8行?2頁左上欄1行)
(ラ)「10は基端に係止爪部11を有する操作レバーであつて前記刃収納部材2の刃収納凹部5内の支持軸6により中央の凹部10bを軸支され、同支持軸6を中心としてP矢印若しくは反P矢印方向へ若干傾動可能である。・・・12は前記刃収納部材2の刃収納凹部5内を案内され同刃収納部材2頭部3の刃出入口4より出入可能とした刀身部、」(2頁左上欄6?15行)
(リ)「次に本発明の作用及び効果について説明する。・・・そこで、この状態から操作ボタン18を上部カバー25のガイド機構26に沿つて、反Q矢印方向(後方)へ移動させると、・・・操作レバー10先端の刀身部12基端面に対する係合が解除されて、刀身部12は一気にコイルバネ16の引張力により第一係止爪20に引張られて後動しケース1内に収納される。」(2頁右下欄10行?3頁右上欄7行)

甲第6号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(ル)「握りやすいような外形を有し細長い筺体状に形成された外側ケース2とこの外側ケース2内に嵌合固定される内側ケース3と、この内側ケース3内に摺動自在に嵌合される刃先8とからなり、前記内側ケース3は刃先8が摺動自在に嵌合される溝10を有する枠体6と、この枠体6と合体されて内側ケース3を構成する枠体7とから成り、この枠体7はその外側面側に長方形状の凹部16が形成され、・・・凹部16内には・・・断面が円弧状の操作片5に嵌着される突片31を有する作動板24が収容され、この作動板24の外側にはその両端部を前記支持部25,25中に嵌合させた状態でコイルばね32が配置され、このコイルばね32の両端には前記作動板24の支持部25の外方端に接触させた状態で支持板34,34がそれぞれ固定され、・・・ていることを特徴とするとび出しナイフ」(実用新案登録請求の範囲)
(レ)「本考案の目的は刃先のとび出し及び収納をも片手のみによつて自由に行うことができるように構成したとび出しナイフを提供するにある。」(4頁5?7行)
(ロ)「この状態でナイフを使用し、刃先8を収納したい場合には、操作片5を後方に引けばよい。すると、作動板24が後退し、・・・また、作動板24の後退に伴なつて、・・・ コイルばね32の先端側の係止板34は突起35によつて係止された状態にある為、コイルばね32は伸び弾性エネルギーが蓄積される。
作動板24の後退が続くと・・・この結果、板ばね22はたわみ、その折曲部23は開口部19中に引き込まれる。従つて、刃先8の後端を係止しなくなり、コイルばね32の弾性エネルギーが開放され、係止板34が内側に引かれ、突起35を介して刃先8は勢いよくケース内に引き込まれる。」(16頁9行?17頁15行)

(ii)対比・判断
本件訂正発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「針5」は、上記摘記事項(エ)から皮下注射針であるから、本件訂正発明1の「ニードル」に相当する。引用発明の「ハウジング4」は、針5を支持するものであるから、本件訂正発明1の「ニードルハブ」に相当する。
引用発明の針5の「鋭い自由端と反対の端部」は、ハウジング4の遠い端で当該ハウジング4に支持される部分であるから、本件訂正発明1の「固着端」に相当する。
引用発明の「中空のさや6」については、甲第1号証の図1A,1Bの記載等を勘案すると、当該中空のさや6を滑動させるには親指ガード7に親指を当てるだけと認められ、主たる持ち手としての「ハンドル」は意味しないとしても、そのような滑動操作の際には、当該中空のさや6を補助的に持って使用する態様もあり得ることを考慮すると、その意味では本件訂正発明1の「中空のハンドル」又は「中空なハンドル」に相当するといえる。
引用発明の「固着手段」は、ハウジング4(ニードルハブ)を一時的に中空のさや6(中空のハンドル)の遠い端に隣接して保持するものである点において、本件訂正発明1の「ラッチ」とは、「一時的保持手段」として共通しているといえる。
また、引用発明の「皮下注射針等の安全装置」は本件訂正発明1の「安全装置」に相当する。

してみれば、両者は、本件訂正発明1の用語を用いて表現すると、
「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと、
該ハンドル内に配置されたニードルハブと、
鋭い自由端と、前記ニードルハブに連結された固着端を有するニードルと、
ニードルハブを一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持する一時的保持手段と、
から成る安全装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明1は、「ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段」を有しているのに対し、引用発明は、上記「付勢手段」に当たるものを有していない点。

<相違点2>
本件訂正発明1は、一時的保持手段として、「ニードルハブから独立して移動可能であり、ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって、ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され、ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチ」を有しているのに対し、引用発明は、一時的保持手段である「固着手段」は、接着等によるものであり、上記「ラッチ」のような構成ではない点。

<相違点3>
本件訂正発明1は、「カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードル」を有しているのに対し、引用発明は、単なる「ニードル」にすぎない点。

<相違点4>
本件訂正発明1は「カニューレ挿入のための安全装置」であるのに対し、引用発明は「安全装置」である点。

上記相違点について、判断する。
<相違点1について>
引用発明2は、「注射器本体(1)を、注射器前端(4)で一体化された2個の同軸的な円筒素子(2,3)で構成するとともに、前記注射器本体(1)の内部に、2個の同軸的な円筒(14,15)からなる軸線方向に移動可能なプランジャ(13)を収納し、…プランジャ(13)の外方円筒(14)の前端の前方にスプリング(21)を配設し、プランジャ(13)が注射器本体(1)内に押込まれると、上記スプリングが環状部(8)内で圧縮され」る「自動プランジャ復帰式注射器」であって、バイオプシー用の注射器である。その機構は、スプリングのバネ力によって自動的にプランジャを戻すものであるが、当該機構により移動されるのは、皮下注射針7ではなく、組織吸込みのための可動コア6であって、皮下注射針7はそのまま皮下に残っているものと把握できる。
してみると、移動させる対象が皮下注射針7ではなく組織吸込みのための可動コア6である引用発明2の機構を、中空のさや6(中空のハンドル)とハウジング4(ニードルハブ)を相対的に移動させるものであって、その移動対象が異なる引用発明において採用し、本件訂正発明1に想到することは容易とはいえない。
また、引用発明に引用発明2を適用する場合、引用発明2は、バイオプシー用の注射器であるから、引用発明2の構造のバイオプシー用注射器の皮下注射針7を皮膚から抜いた後の保護のために、引用発明のさや6を付加的に採用したものに過ぎないものとなり、本件訂正発明1とは異なる発明に到達して、本件訂正発明1には想到することは容易とはいえない。

さらに、甲第3号証に記載のものは、摘記事項(ネ)?(フ)からわかるように、カテーテルを中空針の中に通して、カテーテルを静脈に挿入するタイプのカテーテルであって、カテーテルの使用の際にも針は装置上に残されたままである。そして、カテーテルを傷つけないために、後退させた針を固定する手段が開示されているのであり、「注射針がその役割を果たした後に安全のため、注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するもの」ではない。
また、甲第4号証に記載のものは、摘記事項(ヘ)?(ヤ)からわかるように、静脈穿刺針をカテーテルから引き抜いた時に、カテーテル装置が汚染された血液の流出を防ぐために、カテーテルと静脈注入セットの連結の際の血液漏れを防ぐためのものであって、「注射針がその役割を果たした後に安全のため、注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するもの」ではない。
上記のことから、「カニューレまたはカテーテルを挿入するための注射針がその役割を果たした後には安全のため、注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術」が周知とはいえない。

よって、引用発明に引用発明2(甲第2号証記載の発明)及び甲第3号証、甲第4号証に記載された技術を適用して、本件訂正発明1の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することはできないものである。

<相違点2について>
「カニューレまたはカテーテルを挿入するための注射針がその役割を果たした後には安全のため、注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術」が周知とはいえないことは、<相違点1について>に記載したとおりである。
仮に、「カニューレまたはカテーテルを挿入するための注射針がその役割を果たした後には安全のため、注射針を中空なハンドルの近い端に向かって引っ込めて収納するという技術」が周知であると仮定したとしても、摘記事項(ト)(ヌ)からわかるように、引用発明2のバイオプシー用注射器において、付勢手段(スプリング21)とラッチ(戻り止め12)を有する機構が開示されているものの、引用発明2は、あくまでバイオプシー用の注射器であり、当該機構により移動されるのは、引用発明2に開示の皮下注射器針7ではなく、組織吸込みのための可動コア6である。したがって、移動させる対象が異なり、また、目的も異なる引用発明2の機構を引用発明において採用し、本件訂正発明1に想到することは容易とはいえない。

よって、引用発明2(甲第2号証記載の発明)及び甲第3、4号証に記載されたような周知技術を引用発明に適用して、本件訂正発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することはできないものである。

さらに、甲第5号証、甲第6号証に記載されたものは、ケースに入ったナイフの刀身部を出し入れする機構に関するものであり、操作ボタンを手動で後退させることにより、板ばねが徐々に後退し、当該板ばねの最も盛り上がった地点が、刀身部を支える操作レバーの支点を後方へと過ぎると、操作レバーが回動して刀身部から外れるという機構であり、ナイフの技術分野においてこのような機構が周知であったことが認められる。しかし、この周知の機構は、ケースに入ったナイフの刀身部を出し入れするために用いられるものであって、引用発明とはその属する技術分野が異なり、また引用発明における、臨床オペレータ等が、処理後、誤って、針で自分自身あるいは他の人を傷つけ、病気が媒介されたり、あるいは化学的または生物学的中毒を引き起こすという偶発事故を防ぐとの目的の点からみても共通するとはいえず、甲第5号証、甲第6号証に記載されたような周知技術を、引用発明と組み合わせる動機づけがない。
仮に、引用発明に「ナイフの刀身部をワンタッチでケース内に収める」という課題を当てはめて、具体的にそのような課題を解決しようと考えたとしても、ナイフの刀身部を出し入れするための周知技術の比較的複雑な機構を、ハウジング4に対して配置された「中空のさや6」を滑動させる引用発明の装置において採用し、本件訂正発明1のようなスプリングとラッチからなる比較的簡易な構成とすることは、容易に想到できることではない。

よって、引用発明に甲第5,6号証に記載された周知技術を採用して本件訂正発明1の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到することはできないものである。

なお、関係無効審判請求人の示した甲第1-2号証?甲第42-2号証に基づく周知事項等を検討しても、甲第1?6号証に基づいて相違点1及び2に係る発明特定事項に当業者が容易に想到することができないか、動機付けに欠くものであって、上記相違点についての判断を覆す根拠となるものではない。

以上の点から、相違点3、4について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到できたものではなく、独立して特許を受けることができないとすることはできない。

本件訂正発明2?4は、それぞれ本件訂正発明1を直接的あるいは間接的に引用した発明であり、本件訂正発明1が上記のとおり甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものではないのであるから、本件訂正発明2?4も、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、独立して特許を受けることができないとすることはできない。

(2-4)特許法第29条の2についての検討・判断
(i)特願昭63-98036号の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)の記載内容(甲第8号証の記載を援用する。)

(あ)「(1)開いた基部と実質的に閉じた末端部とを有する中空のシリンダ(24、62)と、その基部を介して前記シリンダ内に入れられる予め満たされたアンプル(14)とを含み、前記アンプルはその一方端部で封止キャップ(18)を有し、前記アンプルの前方に前記シリンダ内に位置決めされかつ前記アンプルと間隔を置かれた軸方向の整列で配置された両端皮下針(40)とを含む注射器(1、60)であって、前記注射器は
前記針の基部が前記アンプルの端部キャップを貫通しかつ前記針の末端部は前記シリンダの末端を通って外方向に突出するように前記シリンダを介して前記アンプルを軸方向にかつ末端方向に進めるための手段(8)と、
前記シリンダ内の末端に進められた位置で前記アンプルを解放可能に保持してロックされた位置に可動であるかまたは末端部に進められた位置から前記アンプルを離してロックされていない位置に可動であるロッキング手段(32、67)とを含み、そのため前記アンプルは前記シリンダを介して基部方向に変位されかつ前記針の末端部は前記シリンダ内に引込められ得ることを特徴とする、注射器。
………………………………………………
(7)前記両端針(40)が保持される針カートリッジ(21)をさらに特徴とし、前記針カートリッジは前記針を取囲む中空のスリーブ(22、66)と、前記針を前記アンプル(14)と軸方向に整列するように支持するための両端の基部(36)および末端(38)壁とを有する、請求項1ないし6記載の注射器。
………………………………………………
(9)前記針保持カートリッジ(21)はまた前記中空スリーブ(22、66)内に置かれかつ前記カートリッジの前記両端の壁(36、38)の間を延びる圧縮可能ばね手段(34)を含む、請求項7または8記載の注射器。
(10)前記壁(38)の一方がその反対の壁(36)に関連して前記ばね手段(34)の偏倚力に対して前記針保持カートリッジ(21)の中空のスリーブ(22、66)を介して可動であり、その結果前記ばね手段が前記両端の壁の間で圧縮されるようになり、前記アンプル(14)は前記シリンダ(24、62)を介して軸方向にかつ末端方向に進められ、その結果前記可動壁が前記中空のスリーブを介して動かされかつ前記ばね手段が圧縮されるようにされ、それによって前記針(40)の末端部は前記スリーブから外方向に力が加えられ前記針シリンダの末端部を通過して注射が行なわれ、
前記ばね手段は緩められた位置に戻って前記反対の壁から前記カートリッジの可動の壁を離して駆動し、それによって前記針の末端部は前記ロッキング手段が前記アンプルを末端方向に進められた位置から開放すると前記カートリッジスリーブ内に引込められる、請求項7ないし9記載の注射器。」(【特許請求の範囲】)
(い)「[技術分野]
この発明は液体の薬品の入った予め満たされたアンプルと、取外し可能針カートリツジ内に保持されかつ液体の薬品を目標とされる組織区域に注射する位置である末端方向に延ばされた位置から、針が注射器のシリンダ内に引き込まれかつそれによって保護される位置である基部方向に引込められた位置に、自動的に位置を代えるように適合される両端部皮下針とを有する歯科用注射器に関するものである。」(3頁左上欄18行?右上欄7行)
(う)「[発明の背景]
液体の薬品が入った予め満たされたアンプルと両端部の皮下針とを有する型の歯科用注射器はアンプルから患者の目標とされる組織区域にそのような薬品を注入するためのもので、先行技術で周知である。……しかしなから、注射が終わると針は典型的には注射器シリンダを介して形成された末端の孔から外方向に突出している軸方向に延びた位置にロックされている。
場合によっては、注射器は伝染病を保持している患者の処置をするために用いられるかもしれない。注射器を処分する前に皮下針は再利用を防ぐためにしばしば折られたりまたは破壊されたりする。歯医者で働いている人達は特に使用後の不注意な取扱いやまたは針を折ったり注射器を処分したりすることによって偶発的に感染の可能性を持った針に当たることが起こりやすい。」(3頁右上欄8行?左下欄7行)

(え)「この発明の歯科用注射器1の動作は図面の第3図ないし第5図を参照してここで説明される。第3図に見られるように、歯科医が1対の指(たとえば人差指と中指)を注射器シリンダ24の基部のフランジ28の耳状部分30の下に置く。フランジ28の耳状部分30に角度がつけられているので、歯科医の指はシリンダ24のロッキングアーム32に対して同等かつ反対の圧縮力(参照矢印48によって示される方向に)を与えるように自動的に位置決めされる。したがって、ロッキングアーム32はその通常のばねの偏倚力に逆らって回動することを引き起こされ、その結果それぞれのロッキングフィンガ33はシリンダ24内に形成されたスロット(第2図で42で示される)を通って回転される。
歯科医は親指を使って次に保持カラー8の基部でフランジ10を押して、シリンダ24の開いた基部を介して軸方向および末端方向(参照矢印50の方向)にカラー8を進める。保持カラー8はロッキングスカート12が内部に延びているロッキングアーム32のロッキングフィンガ33の下でパチンと受取られると、シリンダ内の軸方向に進められた位置にロックされる。保持カラー8の末端への動きによってアンプル14の端部キャップ18が針支持および整列部材38のレセプタクル(第2図で39で示される)内で受取られるまで、針カートリッジ21のスリーブ22を介して軸方向にかつ末端方向にアンプル14の対応する動きを引き起こす。アンプル14は端部キャップ18が針支持部材38のレセプタクル39の環状リップ41の下でパチンと受取られるとスリーブ22の軸方向に進められた位置にロックされる。
カートリッジ21のスリーブ22を介してアンプル14が軸方向および末端方向の進むことによって、アンプル(およびその内部の液体)が皮下針40と連絡し、その結果針の基部はアンプルがレセプタクル39内に受取られるとアンプル14の封止された端部キャップ18を貫通する。さらに、針40の末端部はばねシリンダ24から外方向に動きかつその末端部壁26を通過する。同様に、針支持および整列部材38はスリーブ22を介して軸方向および末端方向に駆動され、それによって圧縮ばね34は針支持部材38とカートリッジ21の末端プラグ36との間で(その通常の偏倚力に対して)圧縮される。
第4図では、歯科医はフランジ28の角度をつけられた耳状部分30の下に置いたままで親指を保持カラー8のフランジ10からピストンステム2の基部の指ループ4に置換える。保持カラー8のロッキングスカート12をロッキングアーム32によってシリンダ24内の軸方向に進められた位置にロックしたままで、歯科医は保持カラー8を介して末端方向(参照矢印52の方向)にピストンステム2を押し、その結果軸方向の力は指ループ4からアンプル14の基部のプランジャ16に移る。したがって、プランジャ16はアンプル14を介して軸方向および末端方向に動かされ、アンプル中の液体が針40を介して患者の目標の組織へと注入され得る。」(5頁右下欄13行?6頁左下欄11行)

(お)「第5図では、アンプル14の中身が患者の中に入りかつ針40が目標とされた組織区域から取外された後、歯科医はフランジ28の角度をつけられた耳30の下から指を外しかつ指ループ4から親指を外す。針40は即座にかつ自動的に完全に注射器シリンダ内に戻る。特に、歯科医の指をフランジ28の耳状部分30の下でロッキングアーム32と係合をはずすと、アーム32のロッキングフィンガ33は保持カラー8の円錐状ロッキングスカート12から外れる。
すなわち、ロッキングアーム32の通常のばねの偏倚力によってそのようなアームは注射器のシリンダ24の外方向にそこから離れて(参照矢印54の方向)回動するようになる。ロッキングフィンガ33をロッキングスカート12から外し、かつアンプル14の端部キャップ18を針支持および整列部材38のレセプタクル内にロックしたままにすると、先に圧縮さればね34は自由になりその解放された状態に戻る。しかしながら、ばね34内に蓄えられた位置エネルギによって針40と針支持部材38とアンプル14とピストンステム2と指ループ4との相互接続を含むピストンアセンブリは針カートリッジ21のスリーブ22を介して軸方向および基部方向に十分駆動される。
したがって、針40は針カートリッジスリーブ22内に完全に戻される(参照矢印56の方向)ように注射器シリンダ24の末端部壁26を介して引張られる。」(6頁左下欄12行?右下欄19行)

(あ)から(お)の記載事項から、
先願明細書に記載された、ロッキングアーム32とロッキングスカート12とからなる構造は、歯科医の指によりロッキングアーム32に圧縮力を与えている間、針40及び針支持部材38が末端部から基部方向に戻るのをロックさせ、圧縮力を取り去ると、ロックを解除して針40及び針支持部材38が末端部から基部方向に戻るようにさせている点で、「一時的保持手段」といえる。
その「一時的保持手段」は、針40及び針支持部材38から独立して移動可能であり、針40及び針支持部材38をばね34の力に抗して一時的に中空のシリンダ24の末端部にロックし、圧縮力を取り去ることにより、ロッキングアーム32がばねの偏倚力によって駆動され、ロッキングアーム32によるロッキングスカート12のロックを外し、針40及び針支持部材38をばね34によってシリンダ内に戻すことができ、ロッキングアーム32がばねの偏倚力により針40の長さよりも短い振幅で駆動され、針40の移動距離よりも短い距離のみ移動することが、先願明細書に記載されている。

上記記載事項から、先願明細書には次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。
「基部と末端部を有する中空のシリンダ24と、
シリンダ24内に配置された針40及び針支持部材38と、
鋭い自由端と、針支持部材38に支持される、反対側の鋭い自由端とを持つ針40と、
針40及び針支持部材38を中空なシリンダの基部に向かって付勢するばね34と、
針40及び針支持部材38から独立して移動可能であり、針40及び針支持部材38を圧縮力を与えることによって、ばね34の力に抗して一時的に中空のシリンダ24の末端部にロックし、針40及び針支持部材38を末端部に隣接して保持することができる一時的保持手段と、
圧縮力を取り去ることにより、ロッキングアーム32がばねの偏倚力によりロッキングスカート12のロックを外し、針40及び針支持部材38をばね34によってシリンダ内に戻すことができ、ロッキングアーム32がばねの偏倚力により針40の長さよりも短い振幅で駆動され、針40の移動距離よりも短い距離のみ移動する一時的保持手段と、
からなる注射器の安全装置。」

(ii)対比・判断
本件訂正発明1と先願発明とを対比する。
先願発明の「針40」及び「針支持部材38」とは、本件訂正発明1の「ニードル」と「ニードルハブ」に相当すると認められる。
先願発明の「基部」、「末端部」は、本件訂正発明1の「近い端」、「遠い端」にそれぞれ相当する。先願発明の「中空のシリンダ24」は操作者が手に握って把持するものだから、本件訂正発明の「中空のハンドル」に相当する。
先願発明の「ばね34」は、「針40及び針支持部材38」を中空なシリンダの基部に向かって付勢する付勢手段であるから、本件訂正発明1の「付勢手段」に相当する。
先願発明の「圧縮力を与えることによって、ばね34の力に抗して一時的に中空のシリンダ24の末端部にロックし、針40及び針支持部材38を末端部に隣接して保持することができる一時的保持手段」も、針40及び針支持部材38から独立して移動可能であり、針40及び針支持部材38をばね34の力に抗して一時的に中空のシリンダ24の端で保持するものであって、針40の長さよりも短い振幅で駆動され、針40の移動距離よりも短い距離のみ移動するものであるから、本件訂正発明1とは「ニードルハブから独立して移動可能であり、ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの端で保持するラッチであって、ニードルの長さよりも短い振幅で駆動され、ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチ」で共通する。

してみれば、両者は本件訂正発明1の用語を用いて表現すると、
「近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと、
該ハンドル内に配置されたニードルハブと、
鋭い自由端と、前記ニードルハブに連結された端部を有するニードルと、
ニードルハブを中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と、
ニードルハブから独立して移動可能であり、ニードルハブを付勢手段の力に抗して一時的に中空のハンドルの端で保持するラッチであって、ニードルの長さよりも短い振幅で駆動され、ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと、
からなる安全装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

<相違点1>
本件訂正発明1のラッチは、「手動により駆動される」のに対し、先願発明は「ラッチ(一時的保持手段)がばねの偏倚力によって駆動される」ものである点。

<相違点2>
本件訂正発明1は「カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードル」を有するのに対し、先願発明は、単なる「ニードル」にすぎない点。

<相違点3>
本件訂正発明1は「カニューレ挿入のための安全装置」であるのに対し、先願発明は「安全装置」である点。

上記相違点について、判断する。
<相違点1について>
ラッチが本件訂正発明1のように「手動により駆動される」ことと、先願発明のように「ばねの偏倚力によって駆動される」ことでは駆動機構及び作用効果が異なり、単なる課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な同一とはいえない。

<相違点2、3について>
先願発明の針40は、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶための針ではなく、注射器もカニューレ挿入のために用いられるものでもない。
そして、相違点2、3について、関係無効審判請求人は、甲第2-3号証?甲第2-16号証を示し、本件訂正発明の出願当時に注射器を安全に処理するために末端に延ばされた位置から注射器シリンダの基部に引込められた位置に皮下針を置換える注射器が周知であったこと、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶための針を有する注射器が周知であったことを説明している。
しかしながら、注射器を安全に処理するために末端に延ばされた位置から注射器シリンダの基部に引込められた位置に皮下針を置換える注射器と、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶための針を有する注射器とが周知としても、単なる注射器とカニューレ挿入のための注射器とでは、求められる課題も異なるものであり、相違点2、3は課題解決のための具体化手段における微差とはいえないので、実質的な同一とはいえない。

以上の点から、本件訂正発明1は、先願明細書記載の発明とは同一ではなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではないので、独立して特許を受けることができないとすることはできない。

本件訂正発明2?4は、それぞれ本件訂正発明1を直接的あるいは間接的に引用した発明であり、本件訂正発明1が上記のとおり先願明細書記載の発明とは同一ではなく、独立して特許を受けることができないとすることはできないものであるから、本件訂正発明2?4も、先願明細書記載の発明とは同一ではなく、独立して特許を受けることができないとすることはできない。

(2-5)まとめ
また、その他に、本件訂正発明1?4について、特許出願の際独立して特許を受けることができない理由も見当たらない。
以上のとおりであるから、本件訂正発明1?4は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
したがって、本件審判の請求は、平成6年法律第116号附則第6条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による特許法第126条第1項第1号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第2項ないし第4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】近い端及び遠い端を有する中空のハンドルと、該ハンドル内に配置されたニードルハブと、鋭い自由端と、前記ニードルハブに連結された固着端とを有し、カニューレを患者の定位置に案内し運ぶためのニードルと、前記ニードルハブを前記中空なハンドルの近い端に向かって付勢する付勢手段と、前記ニードルハブから独立して移動可能であり、前記ニードルハブを前記付勢手段の力に抗して一時的に前記中空のハンドルの遠い端に隣接して保持するラッチであって、前記ニードルの長さよりも短い振幅で手動により駆動され、前記ニードルの移動距離よりも短い距離のみ移動するラッチと、から成ることを特徴とする、カニューレ挿入のための安全装置。
【請求項2】前記付勢手段はばねである特許請求の範囲第1項の安全装置。
【請求項3】前記ばねは、前記ニードルハブの回りにこれと同軸的に配置されている特許請求の範囲第2項の安全装置。
【請求項4】前記ラッチが前記ニードルハブに係合する特許請求の範囲第1項、第2項又は第3項に記載の安全装置。
【発明の詳細な説明】
本発明は一般に医療器具に関し、更に詳細には静脈カニューレ等のカニューレを患者の身体に挿入するための装置に関する。
周知のごとく、静脈および動脈内管ならびに他の内在的カテーテルには無数のきわめて重要な医学的用途がある。また、このような装置すべてに関連して厳しい問題が進展してきていることも医学界では知られている。
その問題は恐るべき病気、特に人々の間での身体物質の交換により伝わる後天性免疫不全症候群(「エイズ」)や肝炎等の致命的にして現在では不治の病気の現在続いている存在から生じるものである。これらの病気は医療機関を注射用およびカテーテルまたはカニューレ挿入用に使い捨て針を専用するように仕向けた。
しかし、医療関係者自体にとっては感染した患者から引き抜いた後で針先端に不用意に触れることにおいて厳しい危険が残る。医療用針は極端に鋭利となるように且つ僅かな圧力のみで皮膚や肉を刺すように特定的に設計され製造される。
その結果、普通なら取るに足りないかすり傷やちくりと刺す傷にすぎないものが多くの医療者その他に厳しい病気あるいは死さえももたらす恐れがあるし、また実際にもたらしている。言うまでもなく、健康管理の専門家たちはこの危険によく気付いており、かかる不用意な刺しを避けるためにかなりの用心をしている。かくて、この危険は「確率」ベースではきわめて小さな値に低下している。それにもかかわらず、現場の医師や看護婦や技術者たちにとって危険にさらされる恐れはきわめて広範囲にわたるので時として刺しは避けがたい。実際問題として、このような個人が偶発的な刺しの発生率を例えば1年に1回、あるいは多分2,3年に1回以下に低下させることは事実上不可能である。
もちろん、すべてのかかる刺しが伝染可能な致命的病気をもつ患者による針の汚染を招来するとは限らない。にもかかわらず、これらの偶発事故で有為な数の医療職員が死ぬ-そしてもちろんより多数の人々が重病になる-に充分な医療関係者や充分なかかる患者がいるのである。
この問題の議論においては、注射器と併用される型式の針が普通目立ってくる。「皮下」という語は医療界での現在の用法からやや変化してきているが、本発明者は明確と簡単のために注射を与えるために注射器と併用される針を「皮下針」と称する

により、本発明者はすべてのかかる針をカニューレ挿入、即ち、本発明の分野に用いられる針と明瞭に区別するつもりである。

は刺し事故を避けるには比較的好都合である。
更に具体的には、皮下針を患者から引抜いた後では、その針を使用している人はある状況(例えば筋肉注射)においては両手をその針の適正な処理に利用しうる。通常の状況では彼または彼女は更に患者に注意する前にすばやくそれを包んで捨てることができる。
他の多くの状況(例えば静脈注射)においては皮下針を使用する人はほとんど常に、針が適正に蔽われうるまでその針を少なくとも保持すべく片手は自由である。ま

全な処置に時間があるまでその針を邪魔にならない所に一時的に置くのに通常少なくとも1秒程度の時間は見出すことができる。
(ここでの本発明者の議論はカニューレ挿入の手順と対照した場合の、注射または採血の手順における比較的低い危険に向けられていることが理解されよう。従って本発明者は筋肉注射に用いられたいったん適正に蔽われた皮下針は必然的に安全であると言うつもりはない。即ち、もちろん不用意な開包その他多くの種類の事故のある程度の可能性は残るのである。)

いう上記の一般的主張には例外がある。即ち、学習状況や緊急事態や、そして通常の操作が患者の精神的または肉体的状態によって複雑化する状況がある。しかし、

ない。
静脈または他のカニューレの挿入の手順は偶発的な刺しの回避にはそれほど好都合ではない。例えば患者の血管内にカニューレを据え付けた場合、カニューレは患者の血液を身体外部に搬送するための開いた経路を潜在的に形成する。
それ故、患者の血管はこの経路が典型的には患者の身体内へ注射されるべき流体で加圧されている嵌合用チューブに連結されるまでそして連結されている間はしっかりと閉塞されねばならない。実際には、医師、看護婦または技術者は通常、ちょうどカニューレの先端において患者の身体の外部に手動で押圧することにより血管を閉塞するものである。
この圧力はチューブがカニューレに取付けられるまで継続的に維持される。このことから理解されるように、医療者の両手が自由になる前に、両手が自由でない中間的な時間がある。
ある場合には、カニューレを据え付けるのに用いられる針は中空であり、チューブはその針の背に一時的に連結させればよい。しかしこれは実際には一時的な安心でしかない、何故なら結局チューブを針から除去し、針を患者から除去し、チューブをカニューレに再連結せねばならないからである。
またある場合には、針を使用する人は開包された針を一時的に置くための皿(トレー)を、患者の腕の届かないところに移動することなく予め身近に置くことができる。しかし、この選択は常に利用しうるわけではなく、いずれにせよこのようなトレーを使用することはそれ自体危険な提案である。
その結果、静脈チューブ等を頻繁に始動させる医療者は典型的には針を片手で蔽うことに熟達してくる。従来これは継続する問題への最も問題の少ない解決法であった。
それにもかかわらず、それはきわめて貧弱な解決法である。それは精密には遅かれ早かれ堕落する種類の措置であり、偶然のかすり傷や刺しに至るものであり、それによって統計的には厳しい病気や死に至るものである。
第16図は現代の市販されている標準カニューレ挿入キットを一般的に代表する装置を示す。健康管理業においてかかる従来装置に対して親しい用語は「I.V.挿入セット」-“intravenous″なる語のイニシャル-である。
針はステンレス鋼であり第16図で左端であるその前端においてきわめれ鋭い。針のシャンクは成形されたプラスチック円筒の前端内に永久的に固着され、針の鋭い端は図示のように円筒から前方へ突出している。円筒は典型的にはポリカーボネートで作ってよい。
後に明らかになる理由から、針には中空であることが、好ましいが必ずしもそうでなくてもよい。本発明者はこれらの物品の製造細部には通じていないが、針は圧嵌または縮み嵌合により、あるいはプラスチック円筒を針上の定位置に成形することにより、円筒に固着させてよいと思われる。
別個のカテーテル組立体または「カニューレ」が針の前方突起部分上にきわめてきっちりと、しかし除去可能に、嵌合している。カニューレのテーパした前部は患者の皮膚および肉を貫通して針と共に摺動する。
カニューレの後部またはハブは半径方向に拡大されて、静脈内供給管等の標準直径管のためのごく僅かにテーパした後方容器を画成するべく形成されている。カニューレ、または少なくともその針のシャンク上にきっちり嵌合されている部分は周知の商品名「テフロン」の下に市販されるごとき生物学的には不活性だがきわめてつるつるした材料でできている。ハブは典型的には高分子重量ポリプロピレン等でできている。使用に当たっては、針およびカニューレを共に患者の血管内に-あるいは場合によっては身体腔内、または膿瘍内、または流体連通を確立すべき個所ならどこへでも-挿入する。前述したように、次いで装置を使用する医療者は通常針先端のすぐ前方で患者の身体の外部に圧力を加えて血液の流出を防止する。
次いで医療者は針を引抜き、カニューレを身体内の定位置に残す。最後にカニューレの後端における容器内へ標準直径チューブを挿入することにより流体連通が完了する。
典型的なカニューレ挿入セットにおいては、円筒の後部は円筒とカニューレの材料の性質上の違いを参酌して、カニューレの後端ときわめて同様に形成されている。この成形によりカニューレではなく円筒への標準チューブの取付けが可能となる。
使用に当たって、管状部を取付けたままカニューレだけを患者の身体内に残すのが必要でないか望ましくない場合には-あるいはすぐそうすることが望ましくない場合には、鋼製の針を介して静脈内等の連結を行なえばよい。針を有利には中空にしたのはこのためである。
各挿入セット上には定位置に別個の安全カバー(不図示)を典型的には供給する。この別個の安全カバーは円筒をしっかりと把持すると共に針をすっかり蔽い、偶発的な刺しを防止し且つ使用前における環境内の諸物質による針の偶発的な汚染を防止する。
挿入セットを用いるには、この安全カバーを完全に除去して傍らに置かねばならない。
すでに概説したように、我々の関心の中心は次に、針が使用時に、患者内の物質により汚染されうるという可能性に移る。従って安全カバーを針の鋭い端上に再びかぶせて偶発的な刺しを防止し、特に、患者以外の人々と針上のありうべき汚染物との接触を防止すべきである。
ここが従来技術が有効でありえない点である。何故なら安全カバーを再びかぶせる過程は前述した危険を受けやすいからである。本発明者の知る限り、医療品市場はこの問題を解決することを目指した器具または装置を欠いている。
かりにも適切でありうる最も近い安全装置は、実際には異なる分野、即ち皮下針の分野にある。その装置はICUメディカル株式会社なる会社から“ICU High Risk Needle″の商品名の下に市販されている特殊な形態の皮下注射針である。
このICU装置には皮下針自体の軸上に担持された摺動外被が取付けられている。使用後に、この外被は針先端上で前進せしめられる。
この装置は疑いもなく有用な目的に役立つものであり、ここで関心のある問題に微かに類似した問題に向けられた明らかに唯一の商業的努力であるものを批判することは勿論本発明者の望むところではない。一方、その装置は明らかに言及しておくべき制約を有している。
第1に、ICU High Risk Needleは“high risk″の(高い危険の)患者であることが分かっている患者にのみ使用するために、特別の価格で特別の品目として提供されているものである。伝染可能な致命的病気をもつすべての患者が高い危険であると分かっているわけではない。
第2に、外被は針をぷつっと取外すに充分なてこの作用でもって横方向の力を不用意に加える恐れがあると思われる。針の途中に取付けられている。もし外被を完全に前進させないうちにそれが起きたら、偶発的な刺しの可能性はかなりのものとなる恐れがある。
第3に、外被が前進時に定位置にロックすること-あるいは、もしそうであっても、それが仕事場での正常な震動に耐えるに充分なほどしっかりとロックすることは、この製品についての使用説明書からは明らかではない。このような特徴がなければ、この装置はきわめて限定された保護を提供するとしか思えない。
最後に、すでに示唆したように、このICU製品はカニューレ等の挿入に用いるものとして設計されているものでもなく、また提供されているものでもない。それはかかる使用のためにはかなりの修正を要するものと思われる。
医療用針を遮蔽する装置のために多数の特許が発行されているが、それらは事実

脈内カニューレを据え付ける際に用いられる針に言及しているだけである。それは1986年6月3日にジャニン・シー・ジャガー等に特許された米国特許第4,592,744号である。このジャガー特許の導入部は例えば以下のように言及している。
「針後退手段、特に後退可能な針を有する皮下針を有する安全静脈穿刺装置、後

置。」
しかし、ひとたびこの特許の導入部を過ぎると、ジャガー等は彼等の開示を皮下お

いて二度と言及していないのである。
換言すれば、ジャガー特許は本発明の分野内の開示を包含していることを表わしているが、それがそうとは見えないのである。ジャガーの開示はカニューレを患者内に安全に挿入することに向けられたなんらの具体的な開示をも含んではいない。
ジャガー等は皮下針の医療者保護封入物内への後退を容易にする装置を図示説明

装置をも図示説明している。これらの装置のいずれにおいても、後退手順は比較的厄介である。
皮下装置において、針はハンドル内に嵌合される注射器の前端に比較的きっちりとした圧嵌により装着される。また針はハンドルの前部の穴を介して比較的緩い圧嵌状態で延びている。
使用後に、注射器をハンドルの後端からまるごと引抜き、針をハンドルとの前端圧嵌状態からハンドル内の空洞内へ後方に運ばねばならない。そしてハンドルの後端から逃げるには広すぎるフランジ内に針を担持し、従って注射器の前端とのきっちりとした圧嵌状態から引抜く。こうして針はハンドル内に捕捉される。

又はハンドル内に封入されている。針の後端はきっちりした摩擦嵌合状態で該容器上の弾性栓を貫通する。
しかる後、この容器を道具として用いて針をハンドルの前端からはずす。そして容器栓を針の後端から引抜き、これで血液サンプルを入れた容器をハンドルから取外すことができる。容器を引抜くにつれて、針はそのフランジによりハンドル内に捕捉される。
かくして上述したジャガー発明の2つの形態は使用者がハンドルの穴を介して実際に針をずっと引戻すことを必要とすることになる。そして針がハンドル空洞内に完全に収まるまでこの運動を続けねばならない。
後にすぐにわかるように、長さ約1インチ(2.54cm)を超える針の場合はこの操作は片手のみを用いて行なうのは困難である。この困難さは、よくあるように使用者の注意の一部のみをもって操作を行なうとすれば倍加する。
大抵の場合、必要な手動操作は次々と幾つかの運動を含まねばならない。必要とされるのは複雑な運動であり、その各段階は典型的には針の長さおよび使用者の手の大きさを比して比較的大きな振幅のものである。
生化学の問題としては、このような大振幅で複雑な運動の必要は明確で確実な、それ故安全な後退にとって本来的に不利である。これは煩瑣な状況下では医療者にとって特にそうである。

困難にする。まず、ジャガーの皮下針については、適正な後退は2つの摩擦レベル間の設計関係の維持に依存する。これらの関係はあまりにも容易に覆えされるものである。
例えば、それらは装置を使用する人の知識を超えて、保管中の温度変化により乱されうる。それらはまたハンドルの後部の大きな開口を介してハンドルと針フランジ間の露出した継目内への、血液やサンカロース溶液等の凝結性または粘着性物質の漏れによっても乱されうる。
そして必要な摩擦関係はまた注射器先端の、針フランジの後部におけるその嵌合容器内への不完全な挿入によっても乱されうる。その手順は、多くの場合製造家側の人によってではなくて現場の医療技術者により行なわれるものであって、少なくとも原理的には摩擦嵌合表面のいずれかを破損する恐れがある。
かかる状況において、針を後退させる-後退のための適正な手段を残すことなく-前に、注射器を針フランジから抜取ることができる。

ある。

ない。
いずれにせよ、カニューレ挿入装置に用いるためにジャガーの発明がどのように構成されるか、あるいはどのように機能するかは示唆されていない。前述したように、それは本発明の分野である。
他の幾つかの先行技術は皮下注射器の自動的または半自動的再外装のための装置を記載している。しかし、これらは静脈内カニューレの使用の可能性について言及さえしていない。
ハラーの米国特許第4,026,287号はこれらのうちでは比較的秀れたものの1つである。というのはそれは使用済みの針を一体的に頑丈な構体内の空洞内へ後退させるとを少なくとも規定しているからである。しかし、ハラーの装置は使用後に注射器プランジャを針フランジの背中の中へ螺入して、フランジのまわりのもろい密封具を破壊してから針を後退させることを必要とする。
ハラー特許はまた注射器筒内への指先の不用意な挿入に対しての保護もしていない。ハラーの注射器プランジャが筒の後部における戻り止めによってのみ保持されて定位置に残る恐れがあるということはもっと容易ならないことである。
かくしてハラー特許のプランジャは注射器が戻り止めを過ぎて偶発的に震動すると危険にも針を再び前進させ易い。加えて、ハラー特許の装置および以下に論じる他の装置の大部分は、その使用後の外被構成が初期または使用前の構成と少なくとも同じ長さ-あるいは場合によってはより長い-であることにおいて不利である。
捨てるべき装置、特にこじ開けると危険なものは、それほど突出させるべきではなく、また多段階構造を有するべきではない。このような構成は破損や潜在的には重大な事故を招く。
(なおついでに、ここの文脈ではハラー特許の発明の名称はやや誤解を招く恐れがある。その名称は「後退可能なカニューレを備えた注射器」である-しかし、彼女の用語「カニューレ」は内在的カテーテル・カニューレを指すのではなくて、注射器本体の前部を単に指すものである。)
ミッチェルの米国特許第4,631,057号も針を外被の密封されていない前端を介して指先に接近しうる状態に残すものである。ミッチェルの装置もハラーの装置と共に、装置をその安全戻り止めから震動ではみ出させることへの望ましくない感度と、加えて、使用後の同様な望ましくない突出した構成とを共有している。
戻り止めから震動ではみ出してしまうことへの同様な弱みおよび作用後の同様な突出した構成を持つが、指先挿入に対してはより良好な前部遮蔽を少なくとも設けている他の特許された装置として米国特許第4,573,976号(サンプソン)、第4,643,199号(ジェニングズ,ジュニアー等)および第4,643,200号(ジェニングズ,ジュニアー)がある。
針の後退位置からの震動によるはみ出しに対するもっと積極的な抵抗を与えることで言及に価するのは、サンプソン等の米国特許第4,425,120号である。その装置は使用に当たって手動操作が必要とされる複雑さでそのより良好な安全ロックに苦しむものである。
同様な観察は、リーソンの米国特許第3,890,971号にも当てはまるが、この特許は使用後の比較的コンパクトで安定した構成を、しかし再外装を行なうために比較的複雑な機構および大振幅の運動を代価にして提供するものである。
皮下注射器の単に視覚的な遮蔽または蔽いを与えるための数多くの装置も特許されている。これらの中には米国特許第2,876,770号(ホワイト)、第2,674,246号(バイアー)および第3,134,380号(アーマオ)がある。かかる装置は危険なほどに鋭くて汚染される可能性のある針の存在を効果的に隠すので、ここでの目的にしては実際には逆効果である。
従って従来技術は本発明の分野-医療用内在的カニューレ挿入-において現代的な条件下での使用に適した安全装置を提供できなかった。いかなる従来装置も患者内にあった装置部分との接触から人々を適切に保護するものではない。特に、いかなる従来装置もかかる保護の有効性にとって本質的な必要な確実で容易な操作を与えるものではない。
本発明はカニューレを患者内に挿入するに当たって使用される安全装置である。それはまたその後で、医療者や、屑取扱い者や、使用後の装置と偶然の接触を有するかもしれない他の人々を保護するのにも役立つものである。この装置は患者内にあった装置部分との接触からかかる個人のすべてを保護するものである。
本発明の装置は患者に突き刺し、且つカニューレを患者内の定位置に案内し運ぶための針を含む。この針は少なくとも1つの鋭い端を備えた軸を有する。
また本発明は少なくとも針の鋭い端を封入するようになされた中空ハンドルを有する。このハンドルは特に人々の指の届かないように鋭い端をそのように封入するようになされている。
加えて、本発明は鋭い端がハンドルから突出した状態で針の軸をハンドルに固着させるための幾つかの手段を含む。記述の一般性のために、本発明者はこれらの手段を「固着手段」と称することにする。
本発明は更に、固着手段を解除し且つ針の鋭い端をハンドル内に後退させるための幾つかの手段を含む。一般性のために、本発明者はこれらの手段を「解除および後退手段」と呼ぶことにする。これらの手段による針の後退は実質的に永久的である。本発明の解除および後退手段は簡単な一体的運動により手動で作動可能である。「簡単な一体的」運動により、本発明者は複合的でない運動、即ち、ただ1つの方向での単一段階の行程または移動を必然的に伴う運動を意味する。
この運動の振幅は針の長さよりも実質的に短い。あるいは、それは一般に使用者の指または手の大きさに比較して小さいと言ってもよい。
上記は最も一般的な形態での本発明についての説明である。しかし、理解されるように、本発明の効力を特に最適化するために本発明者が本発明に組みたい付加的な特徴がある。
かかる望ましく且つ好ましい特徴としては、ハンドル内に画成された保護すべき人々の指に比較して小さいが針を通すには充分に大きい穴がある。もう1つの好ましい特徴はハンドルの外部から操作可能で解除および後退手段の一部をなすトリガー機構である。
解除および後退手段はまた好ましくは、針の鋭い端をハンドル内へ後退させるように積極的に付勢するための例えばコイルばね等の幾つかの手段を含む、実際に後退が生じた後で、これらの付勢手段は好ましくは、針の鋭い端をハンドル内に後退された状態に保持するために作動し続ける。
本発明は好ましくは、針から延び針に固定され、且つ固着手段の一部をなすブロックを含む。このブロックは、針の鋭い端がハンドルから突出した状態で、ハンドル内に係止されるようになされている。
このブロックは、その存在時に、また解除および後退手段に応答して針をハンドル内へ引込ませる。解除および後退手段は好ましくは装置使用者の片手により作動可能である。また、使用者が作動時に装置を見ることなしにこれらの手段を作動することができるのも特に好ましい。
更に具体的には、ハンドル内およびブロック上にそれぞれ画成されるストッパ要素を設けることが好ましい。これらの要素は互いに係合してブロックが針を後退させるのを制止する。
また、手動操作可能な解除部材を含むトリガー機構を設けることが好ましい。このトリガー機構はストッパ要素を互いに係脱させてブロックを解除しこれによって針を後退させる。
前述したように、本発明の装置はカニューレと併用されるためのものである。カニューレは針上に嵌合しそれによって患者の身体内へ案内される。
従ってカニューレは本発明の環境の一部とみなしてもよい。しかし、幾つかの目的のためには、特許請求の範囲に示した程度まで、カニューレを本発明自体の一部とみなすことが適切である。
本発明の上記作動原理および利点のすべては添付図面を参照して以下の詳細な説明を考察することにより更に充分に理解されるであろう。
第1図および第2図に示すように、本発明の好ましい一実施例は成形された中空ハンドル10を含む。この実施例はまたハンドル10の前端にしっかり固定された鼻部片20と、ハンドル10内に摺動自在に配置されたキャリヤブロック30とを含む。
第1図および第2図の実施例はまた鼻部片20に近接してキャリヤブロック30をハンドルの前端近くに固着するラッチ40と、ブロック30により担持されハンドル10から鼻部片20を貫通して延びる針50とを含む。
本発明のこの実施例の各部は、特に製造の容易および経済性のために構成されている。従ってこの実施例の説明では構成の多くの細部を挙げておく。つまり、かかる細部のすべては当業者が本発明を現在もくろまれているごとく最上の態様で、特にきわめてコスト有効に実施しうるように含まれているものとする。
ハンドル10は好ましくはポリカーボネート等のプラスチックから射出成形されたものだが、必ずしもそうでなくてもよい。それはつまみストッパ15を形成すべく前端近くで半径方向に拡大された長い、全体的に真円筒形の外側グリップ表面11を含む。
そしてつまみストッパは第2図により良く見られるようにラッチ・ハウジング部15?19の後部である。つまみストッパ15は外側グリップ表面11よりずっと短いがそれと同軸状の真円筒である。
ラッチ・ハウジング部15?19の残余部分もその前端において幅広い横断方向ラッチ案内スロット16,18により二等分されていることを除けば、円形的に対称である。横断方向ラッチ案内スロット16,18は底面18と2つの対向側壁16とを有する。
装置の端から見て、ラッチ案内スロット16,18の各側壁16はつまみストッパ15の円形の弦に沿って形成されている。従って事実上ラッチ案内スロット16,18は第2図に明瞭に見られるようにラッチハウジング15?19の前部を2つの同一の直立柱に分割することになる。各柱は弦上の線分として形成されている。
同じく第2図により良く見られるように、ラッチハウジング15?19の前端近くには周方向溝19が形成されている。この溝19はラッチ案内スロット16,18の底面から離隔している。リッチハウジングの端部にはつまみストッパ15の直径よりも小さな直径のフランジ17がある。
溝19もフランジ17も縦断面を矩形として形成するのは好ましくない。むしろ、射出型からの除去を容易にすると共に鼻部片20とのスナップ組付けを容易にするために、溝19とフランジ17は縦断面を円弧として形成するのが好ましい。
ハンドル10内にはラッチ案内スロット16,18の底面で露出して縦方向中心孔12が形成されている。この孔はごく一般的には真円筒形であるが、好ましくは型からのハンドルの除去を容易にするためにハンドルの後端に向けて広がるごく僅かなテーパもしくはドラフトを有する。
しかし、孔12の後端の近くには、内方に円錐台状のストッパ表面14が形成されて孔12を僅かに挟めている。孔12の極端には、ハンドル10の後端にて開口する短い端部13がある。
前記孔の端部13は好ましくは後方に向かって外方に僅かにテーパしており、そして(図面にもかかわらず)針案内22と同じ長さ且つテーパである。円錐台状のストッパ表面14のテーパは僅かであり、該孔の長い部分12から該孔の端部13への直径方向総合差し込みはごく僅かである。
これらの構成細部のおかげで、ハンドルは後端の僅かな変形(膨張)により射出または他の型からぽんと抜くことができる。即ち、型内の別個のコア片は不要である。鼻部片20は2つの主要部分、即ち、比較的細長い前方針案内22と半径方向に拡大された後方天蓋21とを備えた真円的に対称な物品である。針案内22は針50の直径よりもやや大きな中心孔を有する。
針案内22の先端で、この中心孔は、細い穴23に挟まっている。この端部穴23の直径は(1)針の完全な安定化と(2)案内22と針との間の摺動空隙内での最小摩擦とのトレードオフとして選ばれている。
天蓋21は好ましくはつまみストッパ15の外面と合致する真円筒形外面を有する。この天蓋の後端にはラッチハウジング15?19の輪郭としっかり嵌合するような内部形状をもつ空洞が形成されている。
更に詳細には、この空洞の端にはラッチハウジング15?19の溝19内に正確に嵌合しそれと係合する内向きフランジまたはリップ24(第1図)がある。前述したラッチ案内スロット16の底面18からの溝19の離隔により、鼻部片20の内向きリップ24も底面18から同様に離隔している。その結果生じる隙間はラッチ40の作動のための軌道を画成する。
鼻部片は商品名「デルリン」の下に市販されているプラスチックで作ることができる。その材料は主としてそれが形成し易いから選択されるものである。
キャリヤブロック30はきわめて狭い中心穴を有し、この穴の中に針50がきっちりと把持されている。同じくデルリン製のブロック30は針上に圧嵌、縮嵌および/または接合するか、あるいは定位置に成形してよい。
キャリヤブロック30の外側は円形的に対称である。それは真円筒形でもよい突出筒31を有する。この筒31の後端には前端が筒31に対して半径方向に拡大された円錐台状のストッパ部分32がある。このストッパ部分はブロック30の後端に向けて内方にテーパしている。
ストッパ部分の円錐台状の後面は針を完全に後退させた時にハンドル10の前述した内側円錐台状ストッパ部分13に対して着座するようになされている。ストッパ部分32の前端には後述の目的上、筒31から半径方向外方への全体的に平板な環状段部を形成している。
ブロック30の前端部分33は筒部分31と同じ直径を有する。前端部分33と筒31との間には、しかし、周方向ラッチ溝が形成されている。従って前端部分33はラッチ溝に隣接し且つラッチ溝からすぐ前方にフランジを形成することになる。
ラッチ40は平坦なスライド部分41を有し、該スライドの一端には該スライド41に対して直角に屈曲または形成された短い押しボタン部分42を有する。スライド内には鍵穴形の切抜き43,44が画成されている。
この切抜きの拡大部43は押しボタン42により一層近い。押しボタン42と反対側のスライド41の端45は切抜き43,44の挟まった部分44をすぐ過ぎた所に位置する。ラッチは適当に選択された300シリーズのテンレス鋼で作ることができる。
軸51、鋭い先端52および後端53を備えた針50は一般に公知のものであり、同じくステンレス鋼製である。それはキャリヤブロック30内に進入してこれを貫通するに必要とされる余分の長さを見越して通常よりも長くされている。ブロック30は、針の後端53のごく近傍で針軸51上に固定されている。
最後に、第1図および第2図の好ましい実施例はキャリヤブロック筒31の外径を囲むような大きさのコイルばね61を含む。このばねは機構を完全に後退させた状態に保持するに充分長くあるべきである。ハンドル孔12の最小直径はこのばねの自由な膨張を有意に限定することなく、ばね61をちょうど囲むように選択されている。
装置を組立てるには、まずキャリヤブロック30を前述したように針50を固定する。次いで、キャリヤブロック30がばねに達するまで針50をばね61を介して挿入する。そしてこの同じ全体的運動を継続して、キャリヤブロックのフランジ33および筒31をばね61を介して挿入する。
この手順の結果、ばねの一端はキャリヤブロック筒31の後端における前記段部に対して着座する。
次に、キャリヤブロック30がスライド41に達するまで針をスライド41内の鍵穴形切抜き43,44内に挿入する。そしてこの同じ全体的運動を継続し、キャリヤブロックの前端においてフランジ33をスライド41内の鍵穴形切抜き43,44の拡大部分43に通す。
この手順の結果、スライド41はキャリヤブロック30内の周方向溝(筒31とフランジ33の間の)と縦方向に心合する。次に、鍵穴形切抜き43,44の狭い部分44がブロック30の周方向溝内に捕捉されるようにスライド41を押しボタン42に向けて横方向に移動させる。
次いで、針50、ばね60およびラッチ40を前述したようにキャリヤブロック30上に事実上螺合させた状態で、キャリヤブロック30をハンドル10の孔12の前端内へ後端から先に挿入する。
かくしてスライド41はラッチ案内スロット16,18の2つの側壁16間に嵌合して該スロットの底面18に当接する。次いで針を孔29および鼻部片20の空隙穴23から挿入し、次いでラッチ案内の成形された前端16,17,19を鼻部片29の天蓋21内に定位置に嵌め込む。
ここで鼻部片20の付加された長さによってハンドル10は事実上長くなっている。このようにして組立てたならば、ラッチ40のスライド部分41をラッチ案内スロット16,18の底面18(第2図)と鼻部片22の内画リップ19(第1図)との間に画成されている前記「軌道」内に位置せしめる。
押しボタン42をラッチ案内ハウジング15?19(あるいはもっと完全に言えば、15?21)から半径方向に外方へ充分に引く。これで針50は定位置にしっかりと固着されて、効果的に長くされたハンドルから前方へ延びる。
鼻部片20をハンドル10の端部上に定位置に嵌め込んだら、これら2部品を好ましくは音波溶接等により互いに固着させる(好ましければ、組立て前に自然に適用されたセメントにより、あるいは貫通ピン等により、それらを互いに保持させればよい)。この手順は取付けの永久性-従って後退後の針の捕捉の永久性-を保証するために望ましい。
本発明は第16図に示した従来のものと大体同様なカニューレを用いる。図に見られるごとく、本発明の安全挿入セットは従来の幾つかの挿入セットよりも僅かに長いので、カニューレハブを僅かに短くして本発明の全長を最小にすることが好ましい。
本発明の前方部分の精密な成形によっては、本発明と併用されるカニューレはかくて全く公知のものでもよく、あるいは有利にはハブの短縮により適合させてもよい。
本発明の図面の簡単化および明瞭化のために、図面からカニューレは省略した。しかし、第1図ないし第15図のすべては、第16図を参照することにより、針シャンク上に位置するカニューレを組込んだものとして受取るべきである。
ハンドル10の最後部孔13は好ましくはカニューレハブの内径と同じ直径を与えられるべきである。そして第1図ではそのように図示してはいないが、それはまた同じ全長を与えられるべきである。かくして中空針50を介しての一時的な流体連結性という従来の特徴は本装置においても保つことができる。
加えて、偶発的な破壊や使用前の針の汚染に対して保護するために、本発明の針のためのごく一般的に公知の安全化をも設けるべきである。このカバーは押しボタン42をトリガーすることなく該押しボタン上に嵌合するようになされねばならないし、また好ましくは、出荷その他の取扱いにおける振動によるスライド41の移動を妨げるために押しボタン42と天蓋21との間にも嵌合するようになされねばならない。
しかし使用者には、この安全カバーは捨ててよい。特に、針はそのカバーなしに自動的に包まれているから、カバーは本発明と一緒にかあるいは別々に捨ててよい。
この好ましい実施例の鼻部片針案内22および後部孔13の寸法は標準チューブと嵌合するように標準カニューレの寸法と同じにすべきである。両方とも長さ約0.6985cmで、前部において0.381cmから後部において0.508cmまでテーパすべきである。
第1図の好ましい実施例の他の寸法は大略以下の通りである(cm)。
ハンドルの後端から天蓋の前面までの長さ8.89天蓋の前面から針の先端までの長さ5.842鼻部片天蓋の外径1.27ハンドルグリップ表面の外径0.889トリガー近傍でのハンドル孔の内径0.4201後端近傍でのハンドル孔の内径0.4318キャリヤブロックの長さ1.5875キャリヤブロック・ストッパ部分の外径0.4191キャリヤブロック筒の外径0.3048上述の実施例はきわめて望ましいと考えられるが、原理的には種々の特徴を省略することができ、それでもなお本装置は最も広範にもくろまれるごとき本発明に対応する。例えば、引張ばね(図示のような圧縮ばねではなくて)を針の後端近くの小穴またはフックに固着させて、キャリヤブロックを介することなしに針を閉鎖されたハンドル内へ引き込んでもよい。
あるいは、前記ばねを省略し、針をラッチ解除時に重力の影響でハンドル内へ落ち込むようにしてもよい。更には、針を中空にすることは厳密には必要でなく、それは針を介して一時的な流体連結を行なうべく使用者の選択を維持したい場合にのみ重要である。
しかも、針の後端が初期にハンドル内にあることも必要でない。その代わりにラッチ解除時に装置の何らかの他の要素が針の後端をハンドル内へ引張り込めばよい。
一方、ラッチの起動後に、針の後端がハンドル内にくるようになることも必要ではなく、原理的には針の「背」はハンドルの後端から突出してもよい。しかし、この場合には、針が鼻部片を貫通して偶発的に前方へ再突出されるのを防止するための適正な手段を講じねばならない。
これらの変形例の大部分またはすべては、後にわかるように、第3図ないし第15図に示され以下に述べる本発明の他の実施例に適用可能である。確実な、最大限に安全な操作のためには、先の4つのパラグラフで述べた変形例のいずれをも採用しないことが好ましい。それにもかかわらず、それらのうちの幾つかまたはすべては注意深い設計により多分安全且つ便利なものとすることができるし、それらは従って本発明の特許請求の範囲にある幾つかのものの範囲内にある。
本発明者は第1図および第2図実施例の実物模型を作らせたが、その作動はすぐれていることが判明した。しかし、その実施例は改良を必要とするかもしれない。
例えば、第3図および第3a図に例示した変形例は好ましいと信じるが、本発明者は直接比較のために実物模型を構成したのではない。第3図および第3a図において、押しボタンはすべり止め周面146を備えて形成された環状線分プラスチック片142であり、鼻部片はその押しボタン146を収容すべく切抜かれた部分126,127を有する。
この構成は操作の容易のためには多分好ましいと思える。装置を使用する人間の指は常時はつまみストッパ15(第1図および第2図)の背後に保たれるので、偶発的にボタン146を作動することはありそうにない。
このような偶発事に際しても、患者または医療者には害はない。主な悪結果は経済的なものである。即ち、もう1つの挿入セットを入手しなければならない。装置の規則的な使用者はラッチの不用意なトリガーを回避することをすばやく知るだろう。
第3図に示したもう1つの工夫はラチェット形の戻り止め147を案内スロット16,18の側壁16に形成した対応する特徴部分(図示せず)と相互作用するようにスライドの縁上に設けたことである。これらの戻り止め147はトリガーがリセットされるのを防止し、それによりその針を再使用しようとする試みを思い止まらせる。
多分明瞭には図示されていないこの好ましい実施例のもう1つの望ましい特徴を次に挙げておく。トリガーが作動されていない時にハンドル10の内側孔12に対して流体密封を与えるように、キャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分32の大きな端の直径を僅かに増大させることが好ましい。
この配置は、ストッパ部分32の前方にあるばね、内部空洞等の多くの複雑な表面における衛生の維持への信頼を最小限に抑えることにより中空針を介しての効果的な流体連通を容易にする。
以下において具体的には示さなかった種々の特徴部分または要素が第3図および第3a図には現われている。それらの特徴部分または要素は第1図および第2図中で対応する参照数字-即ち、第3図および第3a図で接頭字「1」を付加したことによってのみ異なる数字-を有する品目と実質的に同一である。
第4図は本発明の他の実施例を示す。ここで対応する部分は接頭字「2」を付加したことで変化する参照数字を有する。
第4図ないし第6図の実施例において、ラッチはハンドルの後端を任意の表面、即ち、テーブル上面、使用者の腕、または患者の腕の一部に対して押しつけることによりトリガーされる。本発明のこの形態はテーブル上面その他の適当な積極作動表面を利用しうる環境において好ましいであろう。
しかし、寝具または患者の身体等のより柔らかい表面しか使用できない場合にはそれは不満足と判明するかもしれない。この実施例で望ましくないと判明するかもしれないもう1つの面はグリップ表面211の外径が僅かにより大きくなっていることである。
第4図ないし第6図のキャリヤブロック231?232は全体的に第1図のものと同様である。しかし、ここでは、ばね261は鼻部片222の内側表面に対して直接に着座している。
ハンドル210の後部を介して孔212内にラッチシリンダ241を挿入する。ラッチシリンダ241の大略前3分の1または半分は2つ(またはそれ以上)の可撓性フィンガ245に分割されており、これらはその前端において半径方向外方を指すリップまたはフランジ246となって終端している。
ハンドル210の内側の孔212は拡大されて、2つの明確な段部をなして装置の前部へ向かっている。孔212c(第5図および第6図)に対して外方の第1の段部はリップまたはフランジ246の捕捉のための棚となってラッチシリンダ241がハンドル211から後方へ落下するのを妨げる。
前記フィンガが孔212cに対して定位置にある時には、キャリヤブロックの円錐台状ストッパ部分232はフィンガ235の端部の内側により形成されるプリトリガ-ストッパ表面に対してばね261により押しつけられる。これが第4図に示すプリトリガ状態である。
孔212aに対して外方の第2の段部はキャリヤブロック・スロッパ部232からのフィンガの膨張のための半径方向逃げ場を与える。従って、ラッチシリンダ241の後端がその第4図位置から前方へ押圧されると、それはまずリップ246が第2の段部に達するまでキャリヤブロックおよび針を前方へきわめて僅かに駆動する。次いでリップ246は第5図に示した位置へ孔212aに対して外方にはねる。
これでもはやキャリヤブロック・ストッパ部分232はフィンガ245の端により形成されるプリトリガ・ストッパ表面に邪魔されることはなくなる。従ってブロック231,232は針250と共にコイルばね261により後方に推進される。
第5図はこの運動の開始直後におけるブロック231,232および針250を示す。図示のごとく、それらはラッチシリンダ241の孔232内へと後方に始動されたばかりである。
その結果、第6図に示すように、キャリヤブロック・ストッパ部分232はラッチシリンダ241の後部における内側ストッパ表面244と係合する。次いで針はハンドル210およびラッチシリンダ240内に完全に後退した状態に保持される。
第7図および第8図の実施例は中実の(即ち、中空でない)針350を採用しうる場合に有用である。かかる針は、前述したように、針を介して一時的な流体連結を予めトリガーすることの望ましさを考慮に入れる必要がなければ満足である。
中実の針を使用することによりいくらかのコスト節約がもたらされ、この節約は内側で流体密且つ清潔でなくてもよい機構を使用することにより更に高めることができる。かかる1つの機構を第7図および第8図に示す。
ここで針キャリヤブロックは簡単なスプール、即ち、2つのフランジ332を分離する短い、首部縮小した筒331である。言い換えると、キャリヤ・ブロック筒331,332に沿って一部に周方向溝331が形成されている。
針後退スリーブ340がシリンダ311の外部上を摺動する。後退スリーブ341からはハンドル310の壁311,312のスロット311sを介してキャリヤブロック330の溝331内へと後退作動ピン342が延入している。
第7図および第8図の実施例でカニューレの挿入前および挿入時には、堅い戻り止め(不図示)がブロック330、針350およびスリーブ340をハンドル310の前に保持する。第7図に示したこの状態はカニューレが患者の身体中の定位置にくるまで継続する。
そして装置の使用者はハンドル310の後端を中実表面に対してしっかりと保持し、手で後退スリーブ340を戻り止めから後方へ引張る。使用者が後退スリーブを動かすにつれて、その後退ピン342がキャリヤブロック330および針をそれに対応して後方へ移動させる。
スリーブ340がハンドル310の後部まで完全に作動されると、確実動作ラチェット型戻り止めがスリーブが前進するのを防止するようになる。かくてこれらの戻り止めが針をその後退位置にロックする。
第9図および第10図に更に他の実施例を示す。第1図ないし第6図の可動ラッチ要素は図示の装置のそれぞれのハンドルに装着され、そして第7図および第8図ではかくのごときラッチはないが、第9図および第10図の可動ラッチ要素はキャリヤブロックに装着されている。
更に詳細には、キャリヤブロックの外側の案内穴内には半径方向に延びるラッチ耳435(第10図)が係止されているが、ばね436により半径方向外方に付勢されている。これらのラッチ耳435はハンドル壁411,412の厚い部分412cと係合してキャリヤブロック431および針の後方への運動を防止する。
使用後に、使用者はラッチ作動フィンガ446をハンドル外部411の両側で絞る。これらのフィンガの先端には内方に延びる小さなボス447が形成されている。
使用者がフィンガ446を内方に絞ると、ボス447はラッチ耳435をばね436の作用に抗して内方へ強制して、該耳を厚い壁部分412cから係脱される。付いでコイルばね461が第1図ないし第6図の実施例と同様にキャリヤブロックおよび針を後方に推進する。
厚い壁部分412cを過ぎたら、ラッチ耳は再びキャリヤブロックから半径方向外方に付勢される。従って、ブロックがハンドルの後端に達し針が完全に蔽われると、ラッチ耳は後部ストッパ414と係合して後退を停止させる。
第11図および第12図は本発明のキャリヤブロックおよびばね実施例が一般的性格のいかなる機械的配置をも一般的に含みうることを概略的に示すために含まれているものである。これらの図面において、解除自在なラッチ要素544はキャリヤブロック530をハンドル・シリンダ511の前端に一時的に固着させる。
図示の一般的配置において、針の鋭い端552は前方穴523を貫通してハンドルの前端521から突起している。ばね561がキャリヤブロック530を後方に付勢している。
いかなるこのような構成も(図示の一般的関係内にはない他のものも)現在のところ本発明の範囲内にあると信じる。可動ラッチ要素をキャリヤブロック530に装着するかハンドル510に装着するか、あるいはその双方に装着するかは重要でない。
一般的に言って、かかる装置の全長は2つの距離の和である。この2つの距離のうち第1の距離はカニューレの狭い部分の長さの2倍-カニューレの必要長により本質的に固定される距離である。
第2の距離は鼻部片の前部から針の後部までの距離である。鼻部片の前部から針の後部までの距離はカニューレハブと完全に圧縮されたばねとキャリヤブロックの後部ストッパ表面との長さの和に等しい。
これらの長さは、一般的に言って、注意深い設計によりある程度まで制御可能である。それらは最小限に抑えるべきである。
第13図、第13a図および第13b図は2つのラッチ要素638,644をそれぞれキャリヤブロック630およびハンドル壁611に装着した構成を示す。要素638も644も半径方向または縦方向には移動しない。
しかし、ブロック630およびハンドルの相対回転を与える作動機構は存在する。この機構が作動されると,それは2つの要素638,644を相殺してキャリヤブロック630を後退のために解除する。
この作動機構はキャリヤブロック630の後部周の両側内へ切り込まれた1対の螺旋表面637を含む。これらの構体に必要な盛上げが図示のような平板端壁638および円筒形内壁639により与えられている。
作動機構はまたハンドルの端壁(不図示)の穴を介して前記螺旋表面に対して強制される1対の作動ピン641を含む。使用者が作動ピン641を操作すると、ブロックは第13b図に矢印で示したようにハンドル内で回転する。
本発明の他の実施例を第14図および第15図に示す。ここで可動ラッチ要素はハンドル壁711自体の一部から切抜きとして形成された可撓性フィンガ744である。これらのラッチフィンガ744はキャリヤブロック730の後側と係合して、それをコイルばね761の作用に抗して係止する。
ブロック730を後退のために解除するには、使用者はハンドルの後部の作動ボタン749を前方を押す。これはあるいはまた、第4図ないし第6図で説明したように、ハンドルを反作用表面に対して後方へ押すことによって行なってもよい。
ここでボタン749は作動ピン741を案内路712d,712e内でハンドルに対して前方へ相対移動させる。そして作動ピンはラッチフィンガ744を半径方向外方へ強制して、ブロック730を解除する。図面の説明で述べたように、これらの図面は単に概略的なものにすぎない。
上記の開示は単に例示的なものにすぎず、特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の好ましい一実施例の、主として縦断面による側立面図であって、カニューレを始動させるための突出位置に針を固着させて示す図、
第2図は第1図実施例の各部の一端で遮断して描いた拡大分解斜視図、
第3図は第2図の各部の若干の変形形態の同様の図、
第3a図は第3図各部を組立てた場合の概略的な端立面図、
第4図は本発明の第2実施例の主として縦断面による側立面図であって、カニューレを始動させるに当たって使用される突出位置に針を示す図、
第5図は第4図の実施例の同様の図であって、解除機構を作動してから数分の1秒後における装置を、針が第4図位置から後退位置へごく僅かに始動された状態で示す図、
第6図は第4図の実施例の同様の図であって、針を完全に後退せしめた状態で示す図、
第7図は本発明の第3実施例の同様の図であって、カニューレを始動させるに当たって使用される突出位置に針を示す図、
第8図は第7図実施例の同様の図であって、針を完全に後退させた状態で示す図、
第9図は本発明の第4実施例の主として縦断面によると共に2つの領域で遮断して描いた概略的な拡大側立面図、
第10図は同実施例の第9図の10-10線に沿って見た概略的な拡大立面断面図、
第11図は本発明のある一群の実施例の概念的に一般化された形態の主として縦断面によると共に2つの領域で遮断して描いた概略的な拡大側立面図であって、カニューレを始動させるに当たって使用される突出位置に針を示す図である。本発明の他の多くの実施例-そのうちのすべてではないが幾つかのものは本明細書中に図示説明されている-が第11図により一般化された形態で表わされている実施例群外であることに注意されたい。
同じ注意はある一群の実施例の第11図の一般化された形態の概略的斜視図である第12図にも等しく適用される。
第13図は本発明の第5実施例のきわめて概略的な拡大斜視図、
第13a図および第13b図はそれぞれ第13図実施例の同様な概略的側立面図および端立面図、
第14図は本発明の第5実施例の主として縦断面によると共に2つの領域で遮断して描いたやや概略的な拡大側立面図であって、カニューレを始動させるに当って使用される突出位置に針を示す図、
第15図は第14図の15-15線に沿って見た断面による同実施例の概略的な拡大立面図であるが、針を後退させた状態で示す図、
第16図で従来技術を表わす縦断面による概略的な拡大立面図である。
[主要部分の符号の説明]
10;210;310;510……中空ハンドル
14;414……ストッパ表面
23;123;523……穴
30;231;232;332;431;530;630;730……キャリヤブロック
32;132;232;332……ストッパ部分
40;140;240……ラッチ
50;250;350;550……針
61;261;361;461;561……コイルばね
340……針後退スリーブ
342……後退作動ピン
435……ラッチ耳
744……ラッチフィンガ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2010-06-01 
出願番号 特願昭63-107382
審決分類 P 1 41・ 832- Y (A61M)
P 1 41・ 851- Y (A61M)
最終処分 成立  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 吉澤 秀明
高木 彰
増沢 誠一
蓮井 雅之
登録日 1997-05-09 
登録番号 特許第2647132号(P2647132)
発明の名称 安全後退用針を備えたカニューレ挿入装置  
代理人 本多 広和  
代理人 中村 閑  
代理人 本多 広和  
代理人 日野 真美  
代理人 黒川 恵  
代理人 杉山 共永  
代理人 片山 英二  
代理人 杉山 共永  
代理人 日野 真美  
代理人 黒川 恵  
代理人 中村 閑  
代理人 片山 英二  
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