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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1218560
審判番号 不服2008-14296  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-06 
確定日 2010-06-18 
事件の表示 特願2002-211907「携帯電話機を用いたカード決済システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年2月19日出願公開,特開2004-54651〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年7月22日の出願であって,平成20年1月28日付けの拒絶理由通知に対して,同年4月7日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされたが,同年4月24日付けで拒絶の査定がなされ,この拒絶の査定を不服として,同年6月6日に審判請求がなされるとともに同年7月4日付けで手続補正がなされ,当審による平成21年10月9日付けの審尋に対して,同年12月11日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成20年7月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年7月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
平成20年7月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により,特許請求の範囲の請求項1は,
「【請求項1】 決済機関のデータ処理装置とCAFISを介して接続する決済機関接続手段を備え,インターネット接続機能を有する携帯電話機とデータの送受信可能に接続できる決済情報処理装置と,
前記決済情報処理装置とデータの送受信可能に接続する決済情報装置接続手段と,カードリーダと回線を介して接続するカードリーダ接続手段を備えた,インターネット接続機能を有する携帯電話機と,
クレジットカードのデータを読み取る読取手段と,決済に必要な金額を含むデータの入力を受け付ける入力受領手段と,前記読取手段で読み取ったデータおよび前記入力受領手段で入力を受け付けたデータを暗号化する暗号化手段と,前記暗号化手段で暗号化されたデータを記憶する記憶手段と,を備え,前記記憶手段に記憶された暗号化されたデータを回線を介して前記携帯電話機に送信し,且つ前記携帯電話機から回線を介してデータを受領可能なカードリーダと,
を備えた携帯電話機を用いたカード決済システムであって,
前記携帯電話機は,前記カードリーダ接続手段により決済依頼,並びに
暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータを受領した際,前記決済情報装置接続手段により,前記決済情報処理装置に対し決済画面送信を要求し,前記決済情報処理装置から決済画面を受領した後,第1に与信判断に必要な金額を含むデータを前記決済情報処理装置に送信し,
前記決済情報処理装置が決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信可の判断を得た場合,与信可である旨の通知および追加項目の入力画面を受領し,第2に当該携帯電話機のキー操作により,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目を,当該携帯電話機から前記決済情報処理装置に直接送信することを特徴とする携帯電話機を用いたカード決済システム。」
と補正された。(アンダーラインは,補正された部分を示すものとして,手続補正書に表示されたものを援用したものである。)

上記補正は,「決済に必要なデータ」を「決済に必要な金額を含むデータ」と限定し,「与信判断に必要なデータ」を「与信判断に必要な金額を含むデータ」と限定し,「入力を受けた追加項目」を「当該携帯電話機のキー操作により,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目」と限定し,「前記決済情報処理装置に送信する」を「当該携帯電話機から前記決済情報処理装置に直接送信する」と限定するものであり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当すると認められる。

そこで,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-24737号公報(以下「引用例1」という。)には,以下(1a)?(1l)の記載がある。
(1a)「【請求項1】 電子商取引を行う際に使用される決済処理システムであって,
利用者に対して商品及び/または役務を提供する電子商取引を行うECモールサーバのバックエンドに設けられ,前記ECモールサーバにおける電子商取引における決済を代行する決済モールシステムと,
前記決済モールシステムに接続し,決済手段の種類に基づき前記決済モールシステムからの指示に応じて金融機関サーバにアクセスし,残高照会,与信チェック及び振替処理を実行する決済システムと,を有し,
ECモールサーバの利用者の個人情報が,個人情報を格納する個人情報格納手段から読み出され,通信網を介して前記決済モールシステム及び前記決済システムに伝達され,前記決済モールシステムは前記伝達された個人情報に基づいて前記決済を行い,前記決済システムは前記伝達された個人情報に基づいて前記金融機関サーバにアクセスする,決済処理システム。」【特許請求の範囲】
(1b)「ここでは,ICカードやそれに準じたICチップを内蔵する機器のことを総称して個人情報格納手段と呼ぶ。」【0019】
(1c)「ここで通信網18は,典型的にはインターネットである。図1では複数の通信網18があるように描かれているが,これはウェブサーバ14,ECモールサーバ15及び決済モールシステム16間の接続関係を明示するためであり,実際には,同一の通信網18に対して,上述した3通りのそれぞれの場合にしたがって,ウェブサーバ14,ECモールサーバ15及び決済モールシステム16が接続することになる。」【0029】
(1d)「ここでは,利用者は,個人情報(クレジットカード番号,口座番号,暗証番号など)や,データの暗号化/復号及びデジタル署名に使用される鍵などを格納したICカードをそれぞれ保持し,このICカードを用いて個人認証などを行うものとする。したがって,端末システムとしては,…ICカードリーダ等を備えたモバイル端末…などが挙げられる。」【0030】
(1e)「いずれにせよ端末システムは,…ICカードリーダ等やそれに相当する装置を内蔵あるいは外付けで装着したものである。」【0032】
(1f)「決済システム17は,クレジットカード端末,POS(point of sales)端末,デビットカード端末などとしての端末接続機能をシミュレートする端末オンラインサーバとして機能し,利用者の端末システムやECモールサーバ15からのデータをクレジットオンラインシステム11用のデータに変換してクレジットオンラインシステム11のセンタに接続し,各金融機関センタで与信チェックを行って決済処理を行うための仲介業務を実行する。決済システム17は,ECモールサーバ15から決済モールシステム16を経由して接続されるウェブインタフェースとしての機能も有する。」【0036】
(1g)「ECモールサーバ15は,利用者側に商品情報を提示し,利用者からの要求に応じて「買物カゴ」に商品を登録する。そして,利用者ごとに,買物カゴに登録された商品の情報と合計金額とを記憶する。…次に,ECモールサーバ15は,決済処理を行うために,合計金額とそのECモールサーバ15に係る加盟店情報とを決済モールシステム16…に送信し,決済モールシステム16に決済処理を依頼する。」【0039】
(1h)「決済モールシステム16は,ECモールサーバ15から決済処理を依頼されると,利用者に取引金融機関の選択を行わせるとともに,通信網を介して端末システム20からICカード21の内の口座番号等の情報を読み出す。その後,決済モールシステム16は,取引銀行及び口座番号の情報とともに口座残高の照会を決済システム17に依頼する。」【0040】
(1i)「決済システム17は,残高照会を依頼されると,通信網を介して端末システム20からICカード21の内の暗証番号等の情報を読み出し,クレジットオンラインシステム11に対して所定の手順(例えばCAFIS手順)により残高照会を行う。また,加盟店情報,利用者カード情報,売上金額などを記録する。」【0041】
(1j)「共同利用型のクレジットオンラインシステム11は,決済システム17から残高照会を依頼されると,該当する金融機関等の金融機関センタ12に対して決済業務サーバ13を介して残高照会を行う。その残高照会の結果は,クレジットオンラインシステム11を介して決済システム17に送られる。さらに残高照会の結果は,決済システム17から決済モールシステム16に送られる。」【0042】
(1k)「残高不足でなければその後,決済モールシステム16は,決済処理を実行する。決済処理の実行を決済モールシステム16から指示されると,決済システム17は,利用者の取引金融機関名及び口座,振込先口座番号,金額情報に基づいて,クレジットオンラインシステム11に対して所定の手順(例えばCAFIS手順)により決済実行を指示し,クレジットオンラインシステム11は,決済業務サーバ13を介して金融機関センタ12に与信チェックと振替処理を依頼し,与信チェック結果と振替結果とを受け取って,決済システム17に伝達する。決済システム17は,振替データに基づいて売上管理処理を行うとともに,振替結果を決済モールシステム16に伝達する。その後,決済モールシステム16からECモールサーバ15に対して,決済が完了したことが通知される。」【0043】
(1l)「ECモールサーバ15に接続して「買物カゴ」に商品情報を登録した時点で,ECモールサーバ15によって,利用者の端末システム20の表示装置上に,図示(a)で示すような画面(商品注文画面)が現れる。ここで利用者が端末システム20のポインティングデバイス(マウスなど)で「カードあり」のボタンをクリックすると,金額情報や振込先(加盟店)情報が決済モールシステム16に送られ,決済モールシステム16は,決済手段の選択を促すための選択画面(図4の(b))を端末システム20の表示装置上に表示する。ここで利用者が特定の金融機関を選択したとすると,次に,決済モールシステム16は,その金融機関で決済を行ってよいかどうかを確認するための確認画面(図4の(c))を,端末システム20の表示装置上に表示する。確認画面において利用者が「確認」のボタンをクリックすることにより,決済システムにデータが送られ,上述した残高照会及び決済処理が実行されることになる。」【0046】

上記(1d)に「個人情報」が「クレジットカード番号」を含むことも記載されているから,上記(1h)の「読み出」される「ICカード21の内の口座番号等の情報」に「クレジットカード番号」を含ませることは自明のことであり,「ICカード」を「クレジットカード」として機能させ,上記(1k)の「金融機関」,「口座」,「振替処理」を「クレジットカード会社」,「クレジットカード番号」,「立替払い契約処理」とすることも自明のことである。

したがって,上記(1a)-(1l)の記載及び図面の記載から,引用例1には,
「利用者が保持し,クレジットカード番号を含む個人情報を格納しクレジットカードとして機能するICカードと,
ICカードから情報を読み取り,読み取った情報をモバイル端末に送信するICカードリーダと,
ICカードリーダと接続され,インターネット接続機能を有するモバイル端末と,
利用者に対して商品を販売する電子商取引を行い,利用者が購入する商品の金額情報と加盟店情報とを決済モールシステムにインターネットを介して送信するECモールサーバと,
ECモールサーバから金額情報と加盟店情報とを受信して決済処理を依頼されると,利用者に取引金融機関の選択を促すための選択画面をインターネットを介して接続されたモバイル端末の表示装置に表示させ,利用者に取引金融機関の選択を行わせて,モバイル端末からクレジットカード番号を含む個人情報を受信し,決済システムに残高照会と決済処理の実行を指示する決済モールサーバと,
決済処理の実行を指示されると,利用者の取引金融機関名及びクレジットカード番号,加盟店情報,金額情報に基づいて,クレジットオンラインシステムを介して金融機関サーバにアクセスし,与信限度額のチェック,無効クレジットカードのチェックを含む与信チェックと立替払い契約処理を依頼し,与信チェック結果と立替払い契約処理結果を受け取る決済サーバと,
を有する決済処理システム。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく引用された特開2001-222595号公報(以下「引用例2」という。)には,以下(2a)-(2g)の記載がある。
(2a)「インターネット接続機能付き携帯電話機(以下,単に「携帯電話」という)2には,ICカード決済用端末装置(以下,単に「決済用端末」という)3が接続されている。携帯電話2は,ゲートウェイ4の制御により携帯電話あるいはネットワーク業者等のパケット通信網5を介してインターネット6に接続可能である。」【0018】
(2b)「なお,「決済」というのは,代金の受け渡しをし,売買取引を終えることをいうが,ICカードのうちクレジットカード又はデビットカードによる代金支払いの場合の決済には,カード番号と暗証番号とによるユーザ認証が行われ,信用照会され,代金が引き落とされることになる。ただ,デビットカードによる代金支払いの場合は,リアルタイムに代金を支払うことができるが,同じICカードでもクレジットカードによる代金支払いの場合は,後日代金が口座から引き落とされることになるのでクレジットカードによる代金支払いの場合の決済というのは,ユーザ認証がされ信用照会がされるまでを決済処理と区切ることができる。」【0019】
(2c)「宅配便業者が携帯電話2から入力した商品の支払先,金額等を携帯電話2の液晶画面に表示して代金支払者(商品購入者)へ確認させる。」【0025】
(2d)「決済用端末3のカード読取処理部31は,装着された代金支払者所有のICカードからカード番号を読み取る(ステップ201)。その後,携帯電話2のダイヤルボタンを押下させることで暗証番号を代金支払者に入力させる(ステップ202)。このとき,決済用端末3は,携帯電話2の液晶画面に「カードを入れて下さい。」「暗証番号を入れて下さい。」というメッセージを表示するようにしてもよい。本実施の形態においては,外部から改竄できる機会を極力少なくするために決済用端末3に不要な表示手段や入力手段を設けないようにしているので,携帯電話2の動作を制御して携帯電話2のダイヤルボタン及び液晶画面を有効利用しているが,決済用端末3に入出力手段が設けられているのであれば決済用端末3から入出力することができる。カード番号と暗証番号が入力されると,決済処理部33は,決済用端末3の識別情報,カード番号と暗証番号を含む決済用情報を暗号化して携帯電話2を介して端末対応センタ9へ送信する(ステップ202)。これにより,ユーザ認証,信用照会を端末対応センタ9へ依頼する。このとき,パケット通信モードに設定されている携帯電話2は,単なる無線通信機として動作し,決済用端末3からの決済用情報をそのまま端末対応センタ9に転送する(ステップ105)。」【0027】
(2e)「端末対応センタ9の決済処理制御部93は,パケット通信網5及びインターネット6を介して決済用端末3から送られてきた決済用情報を受信すると(ステップ301),その決済用情報をそのままあるいはデコードした後暗号化して共同決済センタ10へ転送することでユーザ認証,信用照会,決済を依頼する(ステップ302)。」【0028】
(2f)「共同決済センタ10では,必要に応じて決済用情報をデコード,暗号化し,特定されたクレジットオンラインシステム等にアクセスしてカード番号と暗証番号とで本人確認をし,信用照会あるいは決済をする。共同決済センタ10から照合結果が送られてくると(ステップ303),決済処理制御部93は,それを決済結果情報として決済用端末3へ送信する(ステップ304)。」【0028】
(2g)「決済用端末3は,端末対応センタ9が発信した決済結果情報(照合結果)を受信すると(ステップ203),印刷処理部32に送られてきた照合結果を内蔵プリンタから印字出力させる(ステップ204)。ユーザの確認がとれたときには出力結果が領収書となる。領収書が出力され,決済用端末3がコンテンツプロバイダ8へ決済が終了した旨(承認番号)を通知することによって決済処理が終了する。これに伴い,決済用端末3による携帯電話2の動作制御を終了して携帯電話2をパケット通信モードから解放されブラウザモードへ戻る(ステップ205,107)。」【0029】

上記(2d)のように「決済用端末3のカード読取処理部31は,装着された代金支払者所有のICカードからカード番号を読み取る」のであるから,上記の「決済用端末」はカードリーダとして機能するといえる。

したがって,上記(2a)-(2g)の記載及び図面の記載から,引用例2には,
携帯電話と接続されカードリーダとして機能する決済用端末が,代金支払者所有のICカードからカード番号を読み取り,携帯電話の入力手段を操作させて暗証番号を代金支払者に入力させ,カード番号と暗証番号が入力されると,決済用端末の識別情報,カード番号と暗証番号を含む決済用情報を暗号化して携帯電話により決済処理側へ送信し,決済処理側では,決済用情報を基に信用照会あるいは決済をして,その結果を結果情報として送信し,決済用端末は,結果情報を携帯電話により受信して,信用照会あるいは決済の結果を出力すること
が記載され,さらに,
代金支払者によるカード番号と暗証番号の入力の前に業者が商品の支払先,金額等を入力し携帯電話の画面に表示すること,
決済用端末に入出力手段が設けられているのであれば決済用端末から入出力できること
も記載されていると認められる。

特開2002-15230号公報(以下「周知例」という。)には,次の記載がある。
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は…オンライン決済時にアンケートデータを収集する方法及び記録媒体に関する。」
「【0020】まず,図5に示すように,商品の購入者が顧客端末1を用い,インターネット2を介してWEBサーバ3にアクセスすることで,ホームページを開く(ステップ501)。
【0021】このとき,顧客認証システム4により,アクセスのあった顧客(ユーザー)の認証を行う(ステップ502)。この場合,予め発行されている会員番号が送信されているか否かによる認証が行われる。ここでの認証は,図2の顧客データベース5の会員番号との照合によって行われる(ステップ503)。
【0022】予め発行されている会員番号が送信されていない場合には,顧客(ユーザー)の認証が行われないため,インターネットやその他の方法で登録を行ってもらう。つまり,上述した顧客(ユーザー)情報を送信してもらうことにより,顧客(ユーザー)に対し会員番号が発行される。そして,その新たな顧客(ユーザー)情報は,図2の顧客データベース5に登録される。
【0023】顧客(ユーザー)の認証又は新たな顧客(ユーザー)情報の顧客データベース5への登録を終えると,モニタリングAが開始される。
【0024】次いで,顧客(ユーザー)が上述したホームページを閲覧して商品の買い物を行うために,ホームページの所定の項目をクリックしつつ商品の情報を入手する(ステップ504)。
【0025】このとき,モニタリングAにより,顧客(ユーザー)のページビューのプロセスが図1のオンラインショッピング処理部6により,アンケート記録部7に記録される。また,このようなモニタリングAにより,購入を決断するにいたるまでのプロセスの全て記録することができる。
【0026】また,オンライン購入後においては,閲覧しているホームページにアンケート入力を促す内容が表示される。ここで,顧客(ユーザー)によりアンケート入力が行われると,その新たな顧客(ユーザー)情報が図2の顧客データベース5に登録される(ステップ505,506)。すなわち,ここでのアンケート入力は,商品評価,価格評価,小売店評価等である。
【0027】ここで,アンケート入力が行われなければ,買物終了となる(ステップ505,508)。これに対し,アンケート入力が行われると,ポイント追加の確認が行われた後,買い物終了となる(ステップ507,508)。」

上記の記載及び図面の記載から,周知例には,
オンライン決済において,顧客に商品購入後にアンケートの回答を提出してもらうこと
が記載されていると認められる。

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると,
(イ)引用発明の「金融機関サーバ」,「クレジットオンラインシステム」は,本願補正発明の「決済機関のデータ処理装置」,「CAFIS」に各々相当し,
(ロ)引用発明の「モバイル機器」は,本願補正発明の「携帯電話機」と「携帯機器」として共通し,
(ハ)引用発明の「決済サーバ」は,「クレジットオンラインシステムを介して金融機関サーバにアクセス」するのであるから,そのための接続手段を備えており,該手接続段は,本願補正発明の「決済機関接続手段」に相当し,
(ニ)引用発明の「決済モールサーバ」と「決済サーバ」とで,本願補正発明の「決済情報処理装置」に対応し,
(ホ)引用発明の「クレジットカードとして機能するICカード」は,本願発明の「クレジットカード」に相当し,
(ヘ)引用発明の「モバイル端末」は,「ICカードリーダと接続され」るのであるから,そのための接続手段を備えており,該接続手段は,本願補正発明の「カードリーダ接続手段」に相当し,
(ト)引用発明の「カードリーダ」は,「ICカードから情報を読み取」るのであるから,そのための読取手段を備えており,該読取手段は,本願補正発明の「読取手段」に相当し,
(チ)引用発明において,「ICカードリーダ」が,「クレジットカード番号を含む個人情報を格納しクレジットカードとして機能するICカード」から「情報を読み取り,読み取った情報をモバイル端末に送」り,「決済モールサーバ」が,「モバイル端末からクレジットカード番号を含む個人情報を受信」するのであるから,「モバイル端末」は,接続された「ICカードリーダ」から「クレジットカード番号を含む個人情報」を受領して,該「クレジットカード番号を含む個人情報」を「決済モールサーバ」に送信するといえ,ICカードリーダから受領される「クレジットカード番号を含む個人情報」は,本願補正発明の「クレジットカードのデータ」に相当し,また,決済モールサーバ送信される「クレジットカード番号を含む個人情報」の中の少なくとも「クレジットカード番号」は,「金融機関のサーバ」の「与信チェック」に利用されるのであるから,本願補正発明の「与信判断に必要な金額を含むデータ」と「与信判断に利用されるデータ」として共通し,
(リ)引用発明の「与信チェック結果」は,本願補正発明の「与信可の判断」と「与信の判断」として共通し,
(ヌ)引用発明の「決済処理システム」は,本願補正発明の「カード決済システム」に対応している。

したがって,両者は,
「決済機関のデータ処理装置とCAFISを介して接続する決済機関接続手段を備え,インターネット接続機能を有する携帯機器とデータの送受信可能に接続できる決済情報処理装置と,
前記決済情報処理装置とデータの送受信可能に接続する決済情報装置接続手段と,カードリーダと接続するカードリーダ接続手段を備えた,インターネット接続機能を有する携帯機器と,
クレジットカードのデータを読み取る読取手段を備え,データを前記携帯機器に送信するカードリーダと,
を備えた携帯機器を用いたカード決済システムであって,
前記携帯機器は,前記カードリーダ接続手段によりクレジットカードのデータを受領して,与信判断に利用されるデータを前記決済情報処理装置に送信し,
前記決済情報処理装置が決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信の判断を得ることを特徴とする携帯機器を用いたカード決済システム。」
である点で一致し,以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は,カードリーダ接続手段が,カードリーダと接続するのに回線を介して接続しているに対して,引用発明は,そうであるのか不明である点。
[相違点2]
本願補正発明は,携帯端末が,携帯電話機であって,カードリーダが,決済に必要な金額を含むデータの入力を受け付ける入力受領手段と,読取手段で読み取ったデータおよび入力受領手段で入力を受け付けたデータを暗号化する暗号化手段と,暗号化手段で暗号化されたデータを記憶する記憶手段と,を備え,携帯電話機に送信するデータが記憶手段に記憶された暗号化されたデータであり,且つ携帯電話機からデータを受領可能であり,さらに,携帯電話機が,カードリーダ接続手段により決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータを受領した際,決済情報装置接続手段により,決済情報処理装置に対し決済画面送信を要求し,決済情報処理装置から決済画面を受領した後,第1に与信判断に必要な金額を含むデータを前記決済情報処理装置に送信するものであるのに対して,引用発明は,そのようなものではない点。
[相違点3]
本願補正発明は,決済情報処理装置が,決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信可の判断を得た場合,与信可である旨の通知および追加項目の入力画面を受領し,第2に携帯端末のキー操作により,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目を,当該携帯端末から決済情報処理装置に直接送信するカード決済システムであるのに対して,引用発明は,そのようなものではない点。

4 判断
[相違点1]について検討する。
本願補正発明の「回線」について,本願明細書の発明の詳細な説明を参照すると,「前記カードリーダ5には通信ケーブル54が設けられており,この通信ケーブルの先端に携帯電話機9のデータ伝送端子に接続できる接続ソケット55が設けられ,通信ケーブル54を介してカードリーダ5より暗号化した出力情報を携帯電話機9に送り込むことができるようになっている。」【0012】と記載していることから,「通信ケーブル」を包摂するといえる。そして,情報処理機器において,関連する機器を接続するのに通信ケーブルを介して接続することが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,携帯機器のカードリーダ接続手段が,カードリーダと接続するのに回線を介して接続するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。
[相違点2]について検討する。
引用例2に,携帯電話と接続されカードリーダとして機能する決済用端末が,代金支払者所有のICカードからカード番号を読み取り,携帯電話の入力手段を操作させて暗証番号を代金支払者に入力させ,カード番号と暗証番号が入力されると,決済用端末の識別情報,カード番号と暗証番号を含む決済用情報を暗号化して携帯電話により決済処理側へ送信し,決済処理側では,決済用情報を基に信用照会あるいは決済をして,その結果を結果情報として送信し,決済用端末は,結果情報を携帯電話により受信して,信用照会あるいは決済の結果を出力することが記載され,さらに,決済用端末に入出力手段が設けられているのであれば決済用端末から入出力できること,代金支払者によるカード番号と暗証番号の入力の前に業者が商品の支払先,金額等を入力し携帯電話の画面に表示することも記載されており,決済するための情報に商品の金額を含ませることが例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,携帯端末を,利用者と業者との対面取引で用いられる携帯電話機とし,カードリーダに,決済に必要な金額を含むデータを受け付ける入力受領手段と,読取手段で読み取ったデータおよび入力受領手段で入力を受け付けたデータを暗号化する暗号化手段と,を設け,携帯電話機に送信するデータを暗号化されたデータとし,且つ携帯電話機からデータを受領可能とし,さらに,携帯電話機が,カードリーダ接続手段により決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を受領して,与信判断に必要な金額を含むデータを決済情報処理装置に送信するようにすることは,当業者が容易になし得たことである。
その際に,情報処理したデータを送信するのに,情報処理したデータを記憶手段に記憶し,記憶したデータを送信することが例示するまでもなく周知のことであり,また,クライアントがサーバに所定の項目のデータを送るのに,サーバに送信用画面を要求して受領し,送信用画面にデータを埋め込んで送ることも例示するまでもなく周知のことであるから,カードリーダに,暗号化手段で暗号化されたデータを記憶する記憶手段を設けて,記憶手段に記憶された暗号化されたデータを送信するようにし,さらに,カードリーダ接続手段により決済依頼,並びにクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータを受領した際,決済情報装置接続手段により,決済情報処理装置に対し決済画面送信を要求し,決済情報処理装置から決済画面を受領した後,第1に与信判断に必要な金額を含むデータを前記決済情報処理装置に送信するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が格別に思考することなくなし得たことである。
[相違点3]について検討する。
本願補正発明の「追加項目」について,本願明細書の発明の詳細な説明を参照しても,「一方,前記決済情報センター10の決済情報処理装置11は,データが入力された追加項目の入力画面データを受信すると(S812;YES),そのデータを前記決済機関12のデータ処理装置13に送り(S813),前記データ処理装置13に全ての処理が終了したか否かを確認する(S814)。」【0039】と記載しているが,追加項目の具体的内容は記載しておらず,アンケートの回答の項目でもよいといえる。
そして,決済機関による与信可否の判断結果を顧客に通知することは例示するまでもなく周知のことであり,さらに,周知例に見られるように,取引に伴い顧客にアンケートの回答を提出してもらうことが周知のことであり,また,クライアントがサーバに所定の項目のデータを提出するのに,サーバから入力画面を受領し,入力画面にデータを記入して送ることも例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,利用者にアンケートの回答を提出してもらうべく,決済情報処理装置が,決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信可の判断を得た場合,与信可である旨の通知および追加項目の入力画面を受領し,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目を,当該携帯端末から決済情報処理装置に送信するようにすることは,当業者が容易に推考し得たことである。
その際に,秘密にする必要性の低いデータを暗号化しないことは当業者が当然に考えることであり,また,携帯端末のキーを入力手段とすることも当業者が適宜になし得た設計的事項であるから,追加項目の入力を携帯端末のキー操作により入力するようにし,当該携帯端末から決済情報処理装置に直接送信するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
また,仮に,本願補正発明の「追加項目」が,決済機関による決済に必要な項目であるとしても,決済機関による与信可否の判断結果を顧客に通知することは例示するまでもなく周知のことであり,さらに,一般に情報を提出するのに複数段階に分けて提出することが例示するまでもなく周知のことであり,また,クライアントがサーバに所定の項目のデータを提出するのに,サーバから入力画面を受領し,入力画面にデータを記入して送ることも例示するまでもなく周知のことであるから,引用発明において,与信可の判断を得た後にも利用者に決済機関による決済に必要なデータを追加して提出してもらうべく,決済情報処理装置が,決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信可の判断を得た場合,与信可である旨の通知および追加項目の入力画面を受領し,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目を,当該携帯端末から決済情報処理装置に送信するようにすることは,当業者が容易に推考し得たことである。
その際に,秘密にする必要性の低いデータを暗号化しないことは当業者が当然に考えることであり,また,携帯端末のキーを入力手段とすることも当業者が適宜になし得た設計的事項であるから,追加項目の入力を携帯端末のキー操作により入力するようにし,当該携帯端末から決済情報処理装置に直接送信するようにして,本願補正発明のようにすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願補正発明の作用効果も,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項の作用効果から,当業者が容易に予測し得たことである。

したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項から,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年7月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成20年4月7日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 決済機関のデータ処理装置とCAFISを介して接続する決済機関接続手段を備え,インターネット接続機能を有する携帯電話機とデータの送受信可能に接続できる決済情報処理装置と,
前記決済情報処理装置とデータの送受信可能に接続する決済情報装置接続手段と,カードリーダと回線を介して接続するカードリーダ接続手段を備えた,インターネット接続機能を有する携帯電話機と,
クレジットカードのデータを読み取る読取手段と,決済に必要なデータの入力を受け付ける入力受領手段と,前記読取手段で読み取ったデータおよび前記入力受領手段で入力を受け付けたデータを暗号化する暗号化手段と,前記暗号化手段で暗号化されたデータを記憶する記憶手段と,を備え,前記記憶手段に記憶された暗号化されたデータを回線を介して前記携帯電話機に送信し,且つ前記携帯電話機から回線を介してデータを受領可能なカードリーダと,
を備えた携帯電話機を用いたカード決済システムであって,
前記携帯電話機は,前記カードリーダ接続手段により決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要なデータを受領した際,前記決済情報装置接続手段により,前記決済情報処理装置に対し決済画面送信を要求し,前記決済情報処理装置から決済画面を受領した後,第1に与信判断に必要なデータを前記決済情報処理装置に送信し,
前記決済情報処理装置が決済機関接続手段により決済機関のデータ処理装置にアクセスして与信可の判断を得た場合,与信可である旨の通知および追加項目の入力画面を受領し,第2に入力を受けた追加項目を前記決済情報処理装置に送信することを特徴とする携帯電話機を用いたカード決済システム。」

2 引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及び該引用例に記載された事項は,上記第2の2に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記第2で検討した本願補正発明は,本願発明の「決済に必要なデータ」を「決済に必要な金額を含むデータ」と限定し,「与信判断に必要なデータ」を「与信判断に必要な金額を含むデータ」と限定し,「入力を受けた追加項目」を「当該携帯電話機のキー操作により,先に送信した決済依頼,並びに暗号化されたクレジットカードのデータおよび決済に必要な金額を含むデータ以外の入力を受けた追加項目」と限定し,「前記決済情報処理装置に送信する」を「当該携帯電話機から前記決済情報処理装置に直接送信する」と限定したものである。
そうすると,本願発明の構成を全て含み,さらに構成を限定した本願補正発明が,上記第2の4に記載したとおり,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
したがって,本願発明は,引用発明,引用例2に記載された事項及び周知の事項に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-20 
結審通知日 2010-04-21 
審決日 2010-05-07 
出願番号 特願2002-211907(P2002-211907)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 満田付 徳雄  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 田代 吉成
山本 穂積
発明の名称 携帯電話機を用いたカード決済システム  
代理人 川井 隆  
代理人 仲野 均  

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