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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F24H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24H
管理番号 1218630
審判番号 不服2008-3463  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-14 
確定日 2010-06-17 
事件の表示 特願2007-30300号「ヒートポンプ式給湯器」拒絶査定不服審判事件〔平成19年6月7日出願公開、特開2007-139415号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件に係る出願(以下、「本願」という。)は、平成13年1月16日に出願した特願2001-8115号(以下、「原出願」という。)の一部を平成19年2月9日に新たな特許出願としたものであって、平成20年1月7日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月15日)、これに対し、同年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年3月17日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成20年3月17日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成20年3月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前に
「給湯用水を貯留する貯湯タンク(2)と、
前記貯湯タンク(2)の下部から流出した給湯用水を循環させ、前記貯湯タンク(2)の上部に戻す流水配管(3)と、
吸引した冷媒を加圧して吐出する圧縮機(6)と、前記圧縮機(6)で加圧された冷媒と前記貯湯タンク(2)から前記流水配管(3)を介して供給された給湯用水との熱交換を行ない、冷媒の流れ方向と給湯用水の流れ方向とが対向するように構成された水熱交換器(7)と、前記水熱交換器(7)より流出した冷媒を減圧させる膨張弁(8)と、前記膨張弁(8)で減圧された冷媒を外気と熱交換させる空気熱交換器(9)とを有するヒートポンプサイクルと、
前記流水配管(3)に設けられ、給湯用水を循環させるウォータポンプ(4)と、
前記貯湯タンク(2)をバイパスするバイパス通路(19)と、
前記給湯用水の流路を前記貯湯タンク(2)側と前記バイパス通路(19)側とに切り替える水流路切替手段(20)と、
前記流水配管(3)の水温を検出する水温検出手段(16、17)と、
前記水流路切替手段(20)を前記貯湯タンク(2)側へ切り替え、前記ヒートポンプサイクルを稼動させるとともに、給湯用水の循環を行う通常のサイクル運転と、前記通常のサイクル運転が停止している状態において、
前記水温検出手段(16、17)にて検出される水温が所定値より低くなった時に、前記ヒートポンプサイクルを前記通常のサイクル運転時よりも低能力で稼動させるとともに、前記水熱交換器(7)で加熱された給湯用水が少ない流量で前記バイパス通路(19)を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転とを行うように、前記圧縮機(6)、前記水流路切替手段(20)および前記ウォータポンプ(4)を制御する制御装置(5)とを有することを特徴とするヒートポンプ式給湯器。」
とあったものを
「給湯用水を貯留する貯湯タンク(2)と、
前記貯湯タンク(2)の下部から流出した給湯用水を循環させ、前記貯湯タンク(2)の上部に戻す流水配管(3)と、
吸引した冷媒を加圧して吐出する圧縮機(6)と、前記圧縮機(6)で加圧された冷媒と前記貯湯タンク(2)から前記流水配管(3)を介して供給された給湯用水との熱交換を行ない、冷媒の流れ方向と給湯用水の流れ方向とが対向するように構成された水熱交換器(7)と、前記水熱交換器(7)より流出した冷媒を減圧させる膨張弁(8)と、前記膨張弁(8)で減圧された冷媒を外気と熱交換させる空気熱交換器(9)とを有するヒートポンプサイクルと、
前記流水配管(3)に設けられ、給湯用水を循環させるウォータポンプ(4)と、
前記貯湯タンク(2)をバイパスするバイパス通路(19)と、
前記給湯用水の流路を前記貯湯タンク(2)側と前記バイパス通路(19)側とに切り替える水流路切替手段(20)と、
前記流水配管(3)の水温を検出する水温検出手段(16)と、
前記水流路切替手段(20)を前記貯湯タンク(2)側へ切り替え、前記ヒートポンプサイクルを稼動させるとともに、給湯用水の循環を行う通常のサイクル運転と、前記通常のサイクル運転が停止している状態において、
前記水温検出手段(16)にて検出される水温が所定値より低くなった時に、前記ヒートポンプサイクルを前記通常のサイクル運転時よりも低能力で稼動させるとともに、前記水熱交換器(7)で加熱された給湯用流水が少ない流量で前記バイパス通路(19)を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転とを行うように、前記圧縮機(6)、前記水流路切替手段(20)および前記ウォータポンプ(4)を制御する制御装置(5)とを有するヒートポンプ式給湯器において、
前記流水配管(3)は、前記貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を前記水熱交換器(7)に流入させる冷水配管(3a)と、前記水熱交換器(7)から流出した給湯用水を前記貯湯タンク(2)の上部に戻す温水配管(3b)とを有し、
前記温水検出手段(16)が、前記バイパス通路(19)と前記冷水配管(3a)との接続部よりも前記水熱交換器(7)側となる位置に配されていることを特徴とするヒートポンプ式給湯器。」(下線は当審にて付与。以下、同様。)と補正することを含むものである。

上記補正について検討する。
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、温水検出手段の配置について、「流水配管(3)は、貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を水熱交換器(7)に流入させる冷水配管(3a)と、水熱交換器(7)から流出した給湯用水を貯湯タンク(2)の上部に戻す温水配管(3b)とを有し、温水検出手段(16)が、バイパス通路(19)と冷水配管(3a)との接続部よりも水熱交換器(7)側となる位置に配されていること」を限定するものであり、かつ、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて検討する。

2.刊行物に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-152193号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】熱交換器と、貯湯槽と、前記熱交換器より前記貯湯槽側へ湯を流す往き配管と、貯湯槽側から熱交換器へ水を流す戻り配管とから成る給湯装置であって、前記往き配管の途中から前記戻り配管へ連通するバイパス配管を切換弁を介して接続し、該切換弁の切換えにより前記往き配管の湯を前記バイパス配管及び前記戻り配管を通して前記熱交換器に循環させるようにしたことを特徴とする給湯装置。」(【特許請求の範囲】)
b)「【産業上の利用分野】本発明は、太陽熱を利用する集熱器やヒートポンプ式の集熱器を利用する給湯装置に関し、特に集熱器などに着霜した場合に行う除霜運転時に好適な給湯装置に関する。
【従来の技術とその問題点】従来より、図3に示すように、太陽熱を利用する集熱器51、四方弁64、及び圧縮機52等から成る集熱回路53と、貯湯槽54、循環ポンプ55、及び三方弁61等から成る給湯回路56と、集熱回路53と給湯回路56との間で熱交換する熱交換器57とを設けた給湯装置S0が知られている。ここで、貯湯槽54の最下部には熱交換器57へ送水するための送り口58が設けられ、この送り口58の近傍には熱交換器57から水が戻るための第1戻り口59が設けられ、また、貯湯槽54の最上部には熱交換器57から水が戻るための第2戻り口60が設けられており、第1戻り口59と第2戻り口60とを選択する三方弁61を備えている。さらに、通常の集熱運転時には第2戻り口60を選択し、集熱運転の立上り時、除霜運転時、または凍結防止運転時には、第1戻り口59を選択するように、三方弁61を切換える制御器62を備えたものとなっている(例えば、特公平6-50196号公報参照)。
ところで、上記給湯装置S0では、集熱器51に着霜が生じると、集熱器51の入口に設けられた蒸発温度センサー63の検知信号により、四方弁64を反転させて集熱回路53における逆サイクル運転を行わせ、熱交換器57から熱を吸収し集熱器51へその熱を放出することにより集熱器51に付着した霜を取り除くようにしている。
このとき、給湯回路56において、熱交換器57の出口湯温が非常に低下するので、熱交換器57の出口付近に設けられた湯温センサ65が湯温の低下を検知すると、制御器62は三方弁61を第2戻り口60側から第1戻り口59側に切換えて、貯湯槽54の下部から湯を熱交換器5へ送り出すようにしている。
しかしながら、上記除霜運転により貯湯槽54内の水を循環させることになるので、この循環により前に沸き上げた湯が冷却されてしまったり、冷却された湯を再度沸き上げる必要が生じるために、そのための設備や消費電力が余分に必要になるなど問題である。さらに、このような貯湯槽54内の水を循環させる構成は、循環口を多く必要とするので構造が複雑になるなどの問題点も有している。
そこで、本発明では例えば除霜運転時などにおいても貯湯槽下部の湯の温度が低下することのなく、除霜を効果的に行わせることが可能な給湯装置を提供することを目的とする。」(段落【0001】ないし【0006】)
c)「【実施例】本発明に係る一実施例を図面に基づき詳細に説明する。まず、図1に示す給湯装置Sの構成について説明する。主に大気熱を利用するヒートポンプ式の集熱器1、圧縮機2、四方弁3、熱交換器11等が配管接続されて成る集熱回路Aが構成されており、ここで、4は集熱器1の集熱効率を上げるために、集熱器1を構成する不図示のフィンへ送風するように設けられたファンであり、集熱器1のフィンの近傍にはフィンへの着霜を検知するための温度センサT1が設けられている。なお、5は熱媒の流量調整を行うための膨張弁、6は気化熱を発生させて圧縮機2の加熱を防止するためのインジェクションキャピラリ、7は圧縮機2に液体が入らないようにするための気液分離器である。なお、この温度センサT1は着霜を検出するために用いるものであって、集熱器1のフィンに直接設けてフィンの温度を測定してもよく、また集熱器1のフィン以外の箇所に設置するようにしてもよい。ここで、集熱器1のフィンもしくはその近傍に設置するのは着霜をもっともよく確認できるためである。また、温度センサ以外に湿度センサを設けて温度と湿度の両方の検出信号でもって集熱器への着霜を検出するようにしてもよい。
また、主に貯湯槽8、ポンプ9、及び電動の切換弁である三方弁10、熱交換器11等を配管接続して成る給湯回路Bが設けられており、熱交換器11は集熱回路Aと給湯回路Bとの間で熱交換させるものである。ここで、熱交換器11と貯湯槽8とは湯を熱交換器11から貯湯槽8側へ流す往き配管(P0,P1)と貯湯槽8側から熱交換器11側へ水を流す戻り配管P5とで配管接続されており、往き配管P1の途中から戻り配管P5へ連通するバイパス配管P3が三方弁10を介して接続されている。
貯湯槽8の最下部には、水道に減圧弁12を介して連結された給水口H1と、長期の停止などの際に回路内の水を抜くための排水弁13を介して、貯湯槽8から排水を行うための排水口H2とが設けられている。貯湯槽8の最上部には熱交換器11から三方弁10を介して導出された往き配管P1に接続された注入口H3が設けられ、制御器14による三方弁10の切り換え制御によって、熱交換器11を経由した水は往き配管P1かポンプ9側の接続されたバイパスP3のいずれかに導かれる。
熱交換器11の湯の出口側の往き配管P0には水温を検出する温度センサT2が設けられており、これら温度センサの検出信号に応じて制御器14による三方弁10の切り換え制御が行われる。また、制御器14はポンプ9にも接続されており、ポンプ9の発停を制御するようにもしている。なお、往き配管P1には給湯用の給湯配管P2が接続されており、この給湯配管P2から給湯できるようにしている。
次に、給湯装置Sの運転動作について説明する。まず通常の沸上運転の開始時について説明する。まず給水により貯湯槽8に水を満杯にする。そして制御器14の作動により、図1に示すような四方弁3を正転状態に維持して、集熱器1→圧縮機2→熱交換器11→集熱器1・・・のごとく熱媒が図示の矢印のように循環して集熱回路Aにおいて集熱運転が行われるが、特に冬期等、外気温が低い場合、集熱運転の開始時においては、給湯回路B内の構成部材が冷えているために、熱交換器11の出口側に設けられた温度センサT2による設定温度以下の検出信号でもって、制御器14により三方弁10を切換える。すなわち、三方弁10は配管P3を選択するように切換えられ、水は三方弁10→ポンプ9→熱交換器11→三方弁10・・・のごとく循環する。この循環は温度センサT2が所定温度以上を検出するまで、もしくは数分間だけ行う。
ここで、集熱回路Aにおける集熱運転とは集熱器1より出た低温低圧の蒸気が圧縮機2により高温高圧の蒸気にされ、これが熱交換器11に入って放熱を行って液体となり、この熱を給湯回路B側へ伝達する。そして、この液体が膨張弁5によって再び低温低圧の蒸気にされて集熱器1に入り、このような作動が繰り返されることをいう。
この給湯回路Bの循環により、各々の部材の温度が上昇したことを温度センサT2により検出すると、制御器14は三方弁10を切換えてバイパス配管P3に代えて往き配管P1を選択するように制御され、湯水は矢印のごとく循環する。これにより、貯湯槽8内の湯水はポンプ9を通って、熱交換器11により温められ、三方弁10から往き配管P1を通って注入口H3から貯湯槽8内へ順次湯を注入させて湯を蓄えてゆく通常運転が行われる。」(段落【0012】ないし【0018】)
d)「【発明の効果】以上のように、本発明の給湯装置によれば、集熱運転開始時、除霜運転時等において熱源として貯湯槽内を湯を用いることがないので、貯湯槽内の湯の温度を低下させることがなく、また従来のように湯の温度を元の温度以上にするための手段や時間が不要となるので、そのための設備コストが不要となる上、消費電力も少なくて済む優れた給湯装置を提供することができる。」(段落【0023】)
e)上記摘記事項cおよび【図1】の記載によると、ヒートポンプ回路が圧縮機2、熱媒と水とを対交流で熱交換させる熱交換器11、膨張弁5、集熱器1とを有し、また、熱媒を循環するように圧縮機2を制御し、かつ、水を循環するようにポンプ9を制御する制御器14とを有すること、ポンプ9が戻り配管P5に設けられたことが示されている。

上記aないしdの記載事項、eの認定事項及び図面の記載内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「貯湯槽と、
往き配管と戻り配管と、
圧縮機2、集熱回路Aにおける高温高圧の熱媒蒸気が放熱を行って液体となり、この熱を給湯回路B側へ伝達する、熱媒と水とを対交流で熱交換させる熱交換器11、膨張弁5、集熱器1とを有するヒートポンプ回路と、
戻り配管P5に設けられたポンプ9と、
往き配管P1の途中から戻り配管P5へ連通するバイパス配管P3と、
熱交換器11を経由した水を切り換え制御によって、往き配管P1かポンプ側に接続されたバイパス配管P3のいずれかに導く三方弁10と、
熱交換器11の出口側に設けられた温度センサT2と、
集熱回路Aにおいて集熱運転が行われ、三方弁10を往き配管P1を選択するように切換え、三方弁10から往き配管P1を通って貯湯槽8内へ順次湯を注入させて湯を蓄えてゆく通常運転と、
集熱運転の開始時に、温度センサT2による設定温度以下の検出信号でもって三方弁10をバイパス配管P3を選択するように切換え水を循環させ、
熱媒を循環するように圧縮機2を制御し、かつ、水を循環するようにポンプ9を制御する制御器14とを有するヒートポンプ回路を備えた給湯装置であって、
往き配管と戻り配管は、貯湯槽8側から熱交換器11へ水を流す戻り配管P5と、熱交換器11より貯湯槽8側へ湯を流す往き配管P0、P1とからなり、
温度センサT2が熱交換器11の出口側に設け、
冬期等、外気温が低い場合に各々の部材の温度を上昇させるヒートポンプ回路を備えた給湯装置。」

(2)同じく引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-137680号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「【請求項1】第1接続管を下部に、給湯管を上部に接続した貯湯槽と、循環ポンプ、これに連通した加熱源と、前記第1接続管と前記循環ポンプとを接続する往配管と、前記給湯管と前記加熱源とを接続する復配管と、前記第1接続管と前記給湯管を接続するバイパス管と、前記バイパス管に設け、沸き上げ温度の信号で閉成する機能、または凍結防止温度の信号で開成する機能の少なくとも一方を有する開閉弁と、前記循環ポンプ、前記加熱源と前記開閉弁の開閉を制御する制御部を備えた貯湯式電気温水器。
【請求項2】第1接続管を下部に、給湯管を上部に接続した貯湯槽と、循環ポンプ、これに連通した加熱源と、前記第1接続管と前記循環ポンプとを接続する往配管と、前記給湯管と前記加熱源とを接続する復配管と、前記第1接続管と前記給湯管を接続するバイパス管と、前記バイパス管に設けられた開閉弁と、沸き上げ温度または凍結防止温度の少なくとも一方の信号を出力する温度検知器と、この温度検知器の凍結防止の信号が入力した時、開閉弁を開成し、かつ循環ポンプと加熱源を動作させる制御、または沸き上げ温度の信号が入力した時、開閉弁を閉成する制御の少なくとも一方を有する制御部を備えた貯湯式電気温水器。」(【特許請求の範囲】)
b)「【産業上の利用分野】本発明は貯湯槽上部から湯を貯える貯湯式の電気温水器に関するものである。
【従来の技術】従来、この種の貯湯式電気温水器は図3に示す如く、貯湯槽21、循環ポンプ22、加熱器23、温度検知器24、制御部25からなる。そして、前記加熱器23で加熱した湯温が一定となるように前記加熱器23で加熱された湯温を検出した前記温度検知器24の信号で前記制御部25は前記循環ポンプ22の流量を制御して、前記貯湯槽21の上部から湯を蓄えていくものである。
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような構成では、
(1)冬期の厳寒時には配管が凍結して機器の信頼性に課題がある。
(2)さらに、運転開始直後において、前記加熱器23には熱容量があるため、所定温度に立ち上がるには少し時間を要する。すなわち、低温水が前記加熱器23から流出することになり、前記貯湯槽21に低温水が流入する恐れがある。そして、前記加熱器23の熱容量が小さくなっても、前記加熱器23と前記貯湯槽21の接続管長が長い場合には管内の低温水が前記貯湯槽21に流入することになる。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、冬期の凍結に対する機器の信頼性向上と、貯湯槽の湯温の安定化をはかることにある。」(段落【0001】ないし【0004】)
c)「図1において、1は貯湯槽、2は第1接続管であり、前記貯湯槽1の下部と接続されている。3は給湯管であり、前記貯湯槽1の上部と接続されている。4は循環ポンプ、5は循環ポンプに接続して連通した加熱源、6は熱源機であり、前記循環ポンプ4、前記加熱源5が収納されている。7は往配管であり、前記第1接続管2と前記循環ポンプ4を接続する。8は復配管であり、前記給湯管3と前記加熱源5を接続する。9はバイパス管であり、前記第1接続管2と前記給湯管3を接続する。10は開閉弁であり、前記バイパス管9に設けられている。11は温度検知器であり、前記開閉弁10の下流の前記バイパス管9に設けられている。12は制御部であり、前記温度検知器11の信号で前記循環ポンプ4、前記加熱源5、前記開閉弁10を制御する。すなわち、前記温度検知器11は湯の沸き上げ温度である所定温度の第1設定値と、往配管7の凍結恐れのある所定温度の第2設定値を有し、第1設定値の信号が入った制御部12は今まで開成されていた開閉弁10を閉成し、また、第2設定値の信号が入ると開閉弁10の開成と合わせて循環ポンプ4、加熱源5に通電せしめるものである。なお、13は出湯管、14は給水管である。
上記構成において、運転を始めると循環ポンプ4により前記貯湯槽1の低温水は前記第1接続管2を通り、前記循環ポンプ4を介して前記加熱源5に流入し、加熱される。そして、加熱された高温水(但し、所定温度に沸き上げられた湯、そして開閉弁10は閉じている)は前記給湯管3を通って、前記貯湯槽1に流入する。この沸き上げ運転を繰り返しながら、前記貯湯槽1の上部から湯を蓄えていく。次に、沸き上げ運転の停止後について説明する。冬期の厳寒時には前記往配管7及び前記復配管8の停止した湯はしだいに放熱して温度低下する。特に、低温水側の前記往配管7内の水温は低くなり、凍結する恐れもある。その場合に、前記温度検知器11の信号(第2設定値)を受けた前記制御部12は前記開閉弁10を開放するとともに前記循環ポンプ4と前記加熱源5を通電する。そして、前記加熱源5で昇温した水は前記復配管8を通り、前記バイパス管9、前記第1接続管2、前記往配管7、前記循環ポンプ4の系内を循環する。従って、凍結に対する機器の信頼性は向上する。」(段落【0010】、【0011】)
d)「したがって、次のような効果を期待できる。
(1)冬期の厳寒時には、前記温度検知器の信号で前記循環ポンプ、前記加熱源に通電し、前記開閉弁を開放して湯を循環させ、前記循環ポンプ、前記加熱源、前記往配管、前記バイパス管、前記復配管の系内の水を昇温させて、機器の信頼性を向上させる。
(2)また、機器の運転開始直後においては、前記貯湯槽に流入させるための湯が所定温度に達していることを前記温度検知器で検知し、前記加熱源から流出した高温水を給湯管を介して、前記貯湯槽に流入させる。従って、前記貯湯槽の沸き上げ湯温を安定化させることができる。」(段落【0016】)

上記aないしdの記載事項を総合勘案すると、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認められる。
「冬期の凍結に対する機器の信頼性向上を目的として、
沸き上げ運転の停止後、
温度検知器11の往配管7が凍結する恐れのある第2設定値を検知すると、制御部12はバイパス管9に設けられている開閉弁10を開放するとともに加熱源5を通電して、加熱源5で昇温した水が循環ポンプ4の系内を循環するように循環ポンプ4を通電する、
貯湯式電気温水器。」

(3)同じく引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である実願昭59-137091号(実開昭61-52154号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
a)「2.実用新案登録請求の範囲
熱源機のON-OFFを操作する運転スイツチに、ON位置、OFF位置に加えて凍結予防位置を設け、凍結予防位置に於いて前記熱源機を低能力運転に切換える構成としたことを特徴とする熱源機の操作装置
3.考案の詳細な説明
(産業上の利用分野)
本考案は貯湯式や半貯湯式等、器具本体に貯湯タンクを有する給湯機、暖房機等の熱源機に於ける操作装置に関するものである。
(従来の技術及び問題点)
貯湯タンクを有する熱源機は、凍結を予防するために、冬期に於いては不使用時でも低能力で運転しなければならない。」(第1頁第4行ないし同第18行)

上記aの記載事項を総合勘案すると、刊行物3には、次の技術事項が記載されているものと認められる。
「凍結を予防するために、冬期に於いて、
熱源機を低能力運転に切換える貯湯タンクを有する給湯機。」

3.対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「貯湯槽」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「貯湯タンク(2)」に相当し、以下、同様に、
「往き配管と戻り配管」は、往き配管P0、P1が熱交換器11より貯湯槽8側へ湯を流し、戻り配管P5が貯湯槽8側から熱交換器11へ水を流し、戻り配管と往き配管とを併せた配管は、貯湯槽8側から熱交換器11を介して貯湯槽8側へ湯水を流すものであるから、「流水配管(3)」に、
「圧縮機2」は「圧縮機(6)」に、
「熱回路Aにおける高温高圧の熱媒蒸気が放熱を行って液体となり、この熱を給湯回路B側へ伝達する、熱媒と水とを対向流で熱交換させる熱交換器11」は「圧縮機(6)で加圧された冷媒と前記貯湯タンク(2)から前記流水配管(3)を介して供給された給湯用水との熱交換を行ない、冷媒の流れ方向と給湯用水の流れ方向とが対向するように構成された水熱交換器(7)」に、
「膨張弁5」は「膨張弁(8)」に、
「集熱器1」は「空気熱交換器(9)」に、
「ヒートポンプ回路」は「ヒートポンプサイクル」に、
「戻り配管P5に設けられたポンプ9」は「流水配管(3)に設けられ、給湯用水を循環させるウォータポンプ(4)」に、
「往き配管P1の途中から戻り配管P5へ連通するバイパス配管P3」は「貯湯タンク(2)をバイパスするバイパス通路(19)」に、
「熱交換器11を経由した水を切り換え制御によって、往き配管P1かポンプ側に接続されたバイパス配管P3のいずれかに導く三方弁10」は「給湯用水の流路を貯湯タンク(2)側とバイパス通路(19)側とに切り替える水流路切替手段(20)」に、
「熱交換器11の出口側に設けられた温度センサT2」は、上記2(1)c)の記載によれば、往き配管P0、P1の水温を検出するものであるから、「流水配管(3)の水温を検出する水温検出手段(16、17)」に、
「集熱回路Aにおいて集熱運転が行われ、三方弁10を往き配管P1を選択するように切換え、三方弁10から往き配管P1を通って貯湯槽8内へ順次湯を注入させて湯を蓄えてゆく通常運転」は「水流路切替手段(20)を貯湯タンク(2)側へ切り替え、ヒートポンプサイクルを稼動させるとともに、給湯用水の循環を行う通常のサイクル運転」に、
「熱媒を循環するように圧縮機2を制御し、かつ、水を循環するようにポンプ9を制御する制御器14」は「水流路切替手段(20)およびウォータポンプ(4)を制御する制御装置(5)」に、
「ヒートポンプ回路を備えた給湯装置」は「ヒートポンプ式給湯器」に、
「貯湯槽8側から熱交換器11へ水を流す戻り配管P5」は「貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を水熱交換器(7)に流入させる冷水配管(3a)」に、
「熱交換器11より貯湯槽8側へ湯を流す往き配管P0、P1」は「水熱交換器(7)から流出した給湯用水を前記貯湯タンク(2)の上部に戻す温水配管(3b)」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物1に記載された発明の「集熱運転の開始時に、温度センサT2による設定温度以下の検出信号でもって三方弁10をバイパス配管P3を選択するように切換え水を循環させ」ることと本件補正発明の「通常のサイクル運転が停止している状態において、水温検出手段(16)にて検出される水温が所定値より低くなった時に、ヒートポンプサイクルを通常のサイクル運転時よりも低能力で稼動させるとともに、水熱交換器(7)で加熱された給湯用流水が少ない流量でバイパス通路(19)を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転」とは、前者において、集熱運転の開始時には、熱交換器により水は加熱されることから、両者は、「水温検出手段にて検出される水温が所定値より低くなった時に、水熱交換器で加熱された給湯用流水がバイパス通路を通過するように給湯用流水を循環させる運転」である点で共通する。

したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「給湯用水を貯留する貯湯タンクと、
前記貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を循環させ、前記貯湯タンクの上部に戻す流水配管と、
吸引した冷媒を加圧して吐出する圧縮機と、前記圧縮機で加圧された冷媒と前記貯湯タンクから前記流水配管を介して供給された給湯用水との熱交換を行ない、冷媒の流れ方向と給湯用水の流れ方向とが対向するように構成された水熱交換器と、前記水熱交換器より流出した冷媒を減圧させる膨張弁と、前記膨張弁で減圧された冷媒を外気と熱交換させる空気熱交換器とを有するヒートポンプサイクルと、
前記流水配管に設けられ、給湯用水を循環させるウォータポンプと、
前記貯湯タンクをバイパスするバイパス通路と、
前記給湯用水の流路を前記貯湯タンク側と前記バイパス通路側とに切り替える水流路切替手段と、
前記流水配管の水温を検出する水温検出手段と、
前記水流路切替手段を前記貯湯タンク側へ切り替え、前記ヒートポンプサイクルを稼動させるとともに、給湯用水の循環を行う通常のサイクル運転と、
水温検出手段にて検出される水温が所定値より低くなった時に、水熱交換器で加熱された給湯用流水がバイパス通路を通過するように給湯用流水を循環させる運転とを行うように、前記圧縮機、前記水流路切替手段および前記ウォータポンプを制御する制御装置とを有するヒートポンプ式給湯器において、
前記流水配管は、前記貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を前記水熱交換器に流入させる冷水配管と、前記水熱交換器から流出した給湯用水を前記貯湯タンクの上部に戻す温水配管とを有する
ヒートポンプ式給湯器。」

[相違点1]
水温検出手段にて検出される水温が所定値より低くなった時に、水熱交換器で加熱された給湯用流水がバイパス通路を通過するように給湯用流水を循環させる運転が、本件補正発明では、通常のサイクル運転が停止している状態において、水温検出手段(16、17)にて検出される水温が所定値より低くなった時に、ヒートポンプサイクルを通常のサイクル運転時よりも低能力で稼動させるとともに、前記水熱交換器(7)で加熱された給湯用水が少ない流量で前記バイパス通路(19)を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、集熱運転の開始時に、温度センサT2による設定温度以下の検出信号でもって三方弁10をバイパス配管P3を選択するように切換える点。

[相違点2]
温水検出手段の設置位置が、本件補正発明では、バイパス通路(19)と冷水配管(3a)との接続部よりも水熱交換器(7)側となる位置に配されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、熱交換器11の出口側に設けられる点。

4.当審の判断
(1)相違点1について
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「沸き上げ運転の停止後」は、その構成および機能からみて、本件補正発明の「通常の運転が停止している状態」に相当し、以下、同様に、
「温度検知器11」は「水温検出手段(16)」に、
「往配管7が凍結する恐れのある第2設定値を検知する」ときは「検出される水温が所定値より低くなった時」に、
「バイパス管9に設けられている開閉弁10を開放するとともに熱源を通電して加熱源5で昇温した水が循環ポンプ4の系内を循環するように循環ポンプ4を通電する」ことは、昇温した水を循環させることにより、冬期の凍結に対する機器の信頼性向上を図ることを目的とする凍結防止運転を行うものであるから、「加熱された給湯用流水がバイパス通路(19)を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転を行う」ことに、
「貯湯式電気温水器」は「給湯器」に、
それぞれ相当する。
そして、刊行物2に記載された発明の「加熱源5を通電する」ことと本件補正発明の「ヒートポンプサイクルを稼動させる」こととは、後者の「ヒートポンプサイクル」は加熱源であることから、両者は、「加熱源を稼動させ」る点で共通する。

したがって、刊行物2に記載された発明は、
「冬期の凍結に対する機器の信頼性向上を目的として、
通常の運転が停止している状態で、
水温検出手段にて検出される水温が所定値より低くなった時に、
加熱源を稼動させ、
加熱された給湯用流水がバイパス通路を通過するように給湯用流水を循環させる凍結防止運転を行う、
給湯器。」
と言い換えることができる。

そして、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明は、貯湯槽を備えた給湯器という同一の技術分野に属する発明であるとともに、冬期等の外気温が低い場合に、給湯器を構成する機器の温度を上昇させる機能を有する発明である点で共通する。
したがって、刊行物1に記載された発明における、集熱運転の開始時に行われる、温度センサT2による設定温度以下の検出信号でもって三方弁10がバイパス配管P3を選択するように切換え水を循環させる運転を、刊行物2に記載された発明に倣って、通常の運転が停止している状態で行われる凍結防止運転とすることは、当業者が容易になし得たものである。
ところで、貯湯槽を備えた給湯器の技術分野において、給水と熱媒とを熱交換させる熱交換器は、給水が受け取る熱量と等しい量の熱量を熱媒が給水へ与える働きをする。そして、熱媒が給水へ与える熱量は、ヒートポンプ回路を構成する圧縮機の能力に応じて増減するものであり、目標とする給水設定温度等の運転条件が定まれば、それに応じて、圧縮機の能力とポンプの能力とを両者の間に対応関係を持たせて決定することは、当業者が通常行う設計事項である。
一方、同じく、貯湯槽を備えた給湯器の技術分野において、冬期における凍結を予防するために、熱源機を低能力運転させることは、例えば、刊行物3に記載されているように、原出願前周知の技術事項である(他にも、特開平6-313620号公報の【請求項1】を参照。)。
ゆえに、上記刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用するに際して、圧縮機の能力とポンプの能力とを、上記周知の技術事項に倣って、圧縮機の能力を低能力とするとともに、圧縮機の能力に対応させてポンプ能力を決定し、上記相違点1において本件補正発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。

(2)相違点2について
水温センサについて、本願の願書に最初に添付した明細書および図面(以下、「当初明細書」という。)には、「ステップS5では、水温センサ16,17の検出信号を一定サイクルで取り込み、前記水回路の水温が凍結防止運転が必要な温度か否かを判定する。本実施形態では、3℃以下を凍結防止運転必要温度としており、3℃より高い場合はリターンして水温の判定のみを続行し、3℃以下となった場合はステップS6に進んで凍結防止運転を開始する」(段落【0038】)と記載されている。すなわち、当初明細書には、凍結防止運転が必要な温度か否かを判定するために、水温センサ16,17の検出信号を取り込むことが示されている。そして、水温センサの配されている位置は、【図3】の記載によれば、水熱交換器7の上流側と下流側ということになる。
一方、刊行物1に記載された発明は、温度センサT2が熱交換器11の出口側に設けられているが、これは、刊行物1の上記2(1)c)の記載によれば、冬期等の外気温が低い場合に給湯回路B内の構成部材が冷えていることを検出するためのものである。そして、刊行物1に記載された発明において、三方弁10がバイパス配管P3を選択し、水を循環させる運転時は、水はバイパス配管P3を含む閉ループ内を循環するものである。したがって、熱交換器出口温度が高くなれば、その高温水が循環して、熱交換器の入口側に達することから、熱交換器入口温度も高くなることは明らかである。
ゆえに、刊行物1に記載された発明において、温度検出手段を水が循環する閉ループのどの位置に配するかは、当業者が適宜なし得たものである。

(3)小括
本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
ゆえに、本件補正発明は、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年3月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年11月19日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、前記「第2[理由]1.本件補正について」の補正前の請求項1に記載されたとおりのものである。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項および刊行物に記載された発明は、前記「第2[理由]2.刊行物に記載された発明」に記載したとおりである。

(3)対比および判断
本願発明は、前記「第2[理由]」で検討した本件補正発明における温水検出手段の配置について、「流水配管(3)は、貯湯タンクの下部から流出した給湯用水を水熱交換器(7)に流入させる冷水配管(3a)と、水熱交換器(7)から流出した給湯用水を貯湯タンク(2)の上部に戻す温水配管(3b)とを有し、温水検出手段(16)が、バイパス通路(19)と冷水配管(3a)との接続部よりも水熱交換器(7)側となる位置に配されていること」との限定を省いたものである。
そうすると、実質的に本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]3.対比および4.当審の判断」に記載したとおり、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明および周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-15 
結審通知日 2010-04-20 
審決日 2010-05-06 
出願番号 特願2007-30300(P2007-30300)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F24H)
P 1 8・ 121- Z (F24H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大屋 静男  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
稲垣 浩司
発明の名称 ヒートポンプ式給湯器  
代理人 伊藤 高順  
代理人 碓氷 裕彦  
代理人 久保 貴則  
代理人 永井 聡  

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