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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1218777 |
審判番号 | 不服2007-15729 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-06-06 |
確定日 | 2010-06-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第156966号「非接触給電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月26日出願公開、特開平11- 54349〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成10年6月5日(優先日:平成9年6月6日、出願番号:特願平9-163534号)の出願であって、平成19年4月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月6日に審判請求がなされるとともに、同年7月6日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成21年12月21日付けで審尋がなされたが、回答書が提出されなかったものである。 第2 平成19年7月6日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年7月6日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 平成19年7月6日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1を補正後の請求項1として、 「【請求項1】 磁性体コアとしては1対の外部磁性体コアと1つの内部磁性体コアを備えた断面E字形状の磁性体コアを有し、外部磁性体コアと内部磁性体コアの間の2つの空隙に夫々張設された1対の1次給電線に高周波電流を流すことにより、内部磁性体コアに巻回した2次巻線に、前記磁性体コアに発生する磁界を介して電圧が誘起され、1次給電線から2次巻線に非接触で電力を伝送する非接触給電装置において、 前記2次巻線はボビンを有し、かつ、前記内部磁性体コアの先端部側面に、外部磁性体コア方向に磁束を誘導する追加磁性体コアを取り付け、前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部のボビンに密接して取り付けたことを特徴とする非接触給電装置。」と補正するものである。 上記補正は、補正前の請求項1に「前記2次巻線はボビンを有し、かつ、」及び「前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部のボビンに密接して取り付け」を限定するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 独立特許要件について (1)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された特開平8-340650号公報(拒理の引用文献1。以下「刊行物1」という。)には、「移動体の無接触給電設備」(発明の名称)に関して、図3及び図4とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は、引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下同様。) 「【請求項1】 移動体が走行する走行路に沿って、コンデンサと共振して高周波の正弦波電流を流す線路を敷設し、前記線路に直列、または並列にインダクタンスを可変自在としたコイルを接続し、前記移動体にこの線路の周波数に共振し、起電力が生じるピックアップコイルを設けたことを特徴とする移動体の無接触給電設備。」 「【0014】前記ブラケット12は、案内レールBの車輪案内部7とローラ案内部8からそれぞれ内方へ突設されたツメ部7A,8Aに、その上下端部を嵌合させ、上下端に設けたねじ孔12Aに止めネジ12Bをら合させ、その先端を案内レールBに食い込ませることにより、固定している。前記誘導線路14は、絶縁した細い素線を集めて形成した撚線(以下、リッツ線と呼ぶ)を絶縁体、たとえば塩化ビニールなどの樹脂材により被覆して形成され、被覆には図3に示すように、極性を示すマーク15が印刷されている。 【0015】また、ピックアップユニットPは、図4に示すように、断面がE形のフェライト21を5個、その中央の凸部21Aが横向きにして横方向(図1において案内レールBに沿う方向)に並べ、各フェライト21の中央の凸部21Aに、フェライト板22を載置し、このフェライト板22ごと非磁性体のプレート23を介してベース体24にねじ24Aにより固定している。また横方向に並べたフェライト21の中央の凸部21Aの上下面に渡って、たとえば10?20ターンの上記リッツ線を巻いてピックアップコイル25を形成し、またベース体24の側部に取付け部材26を取付けて構成されている。また、両端のフェライト21とプレート23の折りかえし部間にウレタンゴム26Aを挿入している。前記取付け部材26によりピックアップユニットPを、図3に示すように、ピックアップユニットPのフェライト21の中央の凸部21Aの中心Lがほぼ誘導線路ユニットXの一対の誘導線路14の中央で、案内レールBに対して垂直に位置するように調整して車体Vに固定している。誘導線路14に通電(交流)されると、ピックアップコイル25に起電力が発生する。」 さらに、図3(a)には、「E形のフェライトの外側の凸部と中央の凸部21Aの間の2つの空隙に夫々張設された1対の誘導線路14」が記載されている。 以上から、刊行物1には、「断面がE形のフェライト21を5個、その中央の凸部21Aが横向きにして横方向に並べ、各フェライト21の中央の凸部21Aに、フェライト板22を載置固定し、横方向に並べたフェライト21の中央の凸部21Aの上下面に渡って、リッツ線を巻いてピックアップコイル25を形成し、E形のフェライト21の外側の凸部と中央の凸部21Aの間の2つの空隙に夫々張設された1対の誘導線路14を設け、該誘導線路14に高周波の正弦波電流が通電されると、ピックアップコイル25に起電力が発生する無接触給電設備。」(以下「引用発明」という。)が記載されている。 (2)本願補正発明と引用発明との対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の「フェライト21」、「外側の凸部」、「中央の凸部21A」、「断面がE形のフェライト21」、「誘導線路14」、「ピックアップコイル25」、「無接触給電設備」、「フェライト板22」は、それぞれ、本願補正発明の「磁性体コア」、「外部磁性体コア」、「内部磁性体コア」、「断面E字形状の磁性体コア」、「1次給電線」、「2次巻線」、「非接触給電装置」、「追加磁性体コア」に相当する。 (b)引用発明の「外側の凸部と中央の凸部21A」を備えた「E形のフェライト21」は、本願補正発明の「磁性体コアとしては1対の外部磁性体コアと1つの内部磁性体コアを備えた断面E字形状の磁性体コア」に相当する。 (c)引用発明の「E形のフェライト21の外側の凸部と中央の凸部21Aの間の2つの空隙に夫々張設された1対の誘導線路14」は、本願補正発明の「外部磁性体コアと内部磁性体コアの間の2つの空隙に夫々張設された1対の1次給電線」に相当する。 (d)引用発明の「フェライト21の中央の凸部21Aの上下面に渡って、リッツ線を巻いてピックアップコイル25を形成し」たものは、本願補正発明の「内部磁性体コアに巻回した2次巻線」に相当する。 (e)引用発明において、E形のフェライト21に発生する磁界を介してピックアップコイル25に起電力が発生することは、明らかであるから、引用発明の「該誘導線路14に高周波の正弦波電流が通電されると、ピックアップコイル25に起電力が発生する無接触給電設備」は、本願補正発明の「1次給電線に高周波電流を流すことにより、内部磁性体コアに巻回した2次巻線に、前記磁性体コアに発生する磁界を介して電圧が誘起され、1次給電線から2次巻線に非接触で電力を伝送する非接触給電装置」に相当する。 (f)引用発明の「フェライト21の中央の凸部21Aに、フェライト板22を載置固定し」たことは、本願補正発明の「前記内部磁性体コアの先端部」に、「追加磁性体コアを取り付け」たことに相当する。 (g)刊行物1の図3(a)及び図4(c)を見れば明らかなように、フェライト板22はピックアップコイル25の開放端部に取り付けられているので、引用発明の「フェライト21の中央の凸部21Aに、フェライト板22を載置固定し」たことは、本願補正発明の「前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部」に「取り付けた」ことに相当する。 よって、両者は、 「磁性体コアとしては1対の外部磁性体コアと1つの内部磁性体コアを備えた断面E字形状の磁性体コアを有し、外部磁性体コアと内部磁性体コアの間の2つの空隙に夫々張設された1対の1次給電線に高周波電流を流すことにより、内部磁性体コアに巻回した2次巻線に、前記磁性体コアに発生する磁界を介して電圧が誘起され、1次給電線から2次巻線に非接触で電力を伝送する非接触給電装置において、 前記内部磁性体コアの先端部に、追加磁性体コアを取り付け、前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部に取り付けたことを特徴とする非接触給電装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1]本願補正発明は、「断面E字形状の磁性体コアを有し」ているのに対して、引用発明は、「断面がE形のフェライト21を5個、その中央の凸部21Aが横向きにして横方向に並べ」ている点。 [相違点2]本願補正発明は、「前記2次巻線はボビンを有し」ているのに対して、引用発明のピックアップコイル25は、そのような構成を備えていない点。 [相違点3]本願補正発明は、「内部磁性体コアの先端部側面に」「追加磁性体コアを取り付け」ているのに対して、引用発明は、「フェライト21の中央の凸部21Aに、フェライト板22を載置固定し」ている点。 [相違点4]本願補正発明は、「外部磁性体コア方向に磁束を誘導する追加磁性体コア」であるのに対して、引用発明のフェライト板22は、そのような記載がない点。 [相違点5]本願補正発明は、「前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部のボビンに密接して取り付け」ているのに対して、引用発明は、そのような記載がない点。 そこで、上記相違点について検討する。 [相違点1について] (a)本願補正発明は、「磁性体コアとしては・・・断面E字形状の磁性体コアを有し」と記載され、断面E字形状の磁性体コアが1個とは特定されていない。 さらに、引用発明において、「断面がE形のフェライト21を5個、その中央の凸部21Aが横向きにして横方向に並べ」たものは、断面がE形のフェライト5個合わせて実質的に1個の「断面E字形状の磁性体コア」とみることができるので、相違点1については、本願補正発明と引用発明は、実質的には相違していない。 (b)仮に、相違しているとしても、引用発明において、断面がE形のフェライトを1個のみにしたり、断面がE形のフェライトの5個分を1個の断面がE形のフェライトとしたりすること、すなわち、1個の「断面E字形状の磁性体コア」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 [相違点2について] (a)巻線をボビンを用いて行うことは、以下の周知例1?4(拒理の引用文献2?5)にも示されるように周知技術であるから、引用発明において、ピックアップコイルをボビンに巻き、本願補正発明のように、「前記2次巻線はボビンを有し」ているとの構成を備えることは、当業者が適宜なし得たことである。 ・周知例1:実願平05-024040号(実開平06-082838号)のCD-ROM ・周知例2:実願平04-025482号(実開平05-077925号)のCD-ROM ・周知例3:実願平02-120162号(実開平04-076022号)のマイクロフィルム ・周知例4:特開平09-035954号公報 [相違点3について] (a)請求人は、請求の理由で本願補正発明の効果として、「2次巻線が内部磁性体コアから抜けたり、取り付け位置からずれたりするのを防止し、2次巻線の放熱性が良く、また、製作が容易で、かつ、作業性、信頼性を向上させた非接触給電装置」である旨主張しているが、請求人主張の効果は、引用発明のように、フェライト板22をフェライト21の中央の凸部21Aの端部に取り付けた場合にも同様に奏する効果であり、格別の効果とは認められない。 (b)また、「内部磁性体コアの先端部側面に」「追加磁性体コアを取り付け」た構成も格別困難を伴う構成とも認められず、単なる設計事項ともいえるものである。 (c)よって、引用発明において、本願補正発明のように「内部磁性体コアの先端部側面に」「追加磁性体コアを取り付け」る構成とすることは、当業者が適宜なし得たことである。 [相違点4について] (a)刊行物1の図3(a)及び図4(c)を見れば明らかなように、E形フェライトの中央の凸部21Aと外側の凸部間の距離に比べ、フェライト板22と外側の凸部間の距離が短くなっており、そのような構造のフェライト板22により磁束がE形フェライトの外側の凸部方向へも誘導されることは、当業者に自明のことである。 このことは、以下の周知例5の図5の磁束分布図及び「鉄心の中央脚部につば34を設けることにより、従来装置に比べ、磁束が1.0/0.81=1.23倍になる」ことからも明らかである。 ・周知例5:特開平09-093704号公報(図4,図5、及び「【0025】図3から図5にかけては同1条件で有限要素法による磁気解析結果を図示したものである。図3は本発明装置によるもの(以下、モデル1とする)、図4は従来装置によるもの(以下、モデル2とする)、図5は鉄心の中央脚部につば34を設けたもの(以下、モデル3とする)である。【0026】前記解析結果によると、コイル33に鎖交する磁束をモデル3に於いて1.0とすると、モデル2に於ては磁束が0.81、モデル1に於ては磁束が1.42となり、本発明装置による効果が明示されている。」) よって、相違点4については、本願発明と引用発明は、実質的には相違していない。 (b)また、非接触給電装置において、磁性体コア脚部につば部を設けて、対向するコア脚部方向に磁束を誘導することにより、磁気結合を改良することは、上記周知例5のほかに以下の周知例6,7にも示されるように周知技術であるから、引用発明のフェライト板22を、本願補正発明のように、「外部磁性体コア方向に磁束を誘導する追加磁性体コア」とすることは、当業者が適宜なし得たことであるともいえる。 ・周知例6:特開平05-207606号公報(図5) ・周知例7:特開昭53-124813号公報(第3図) [相違点5について] (a)[相違点2について]において検討したとおり、引用発明において、ピックアップコイルをボビンに巻き、本願補正発明のように、「前記2次巻線はボビンを有し」ているとの構成を備えることは、当業者が適宜なし得たことである。 (b)そして、刊行物1の図3(a)及び図4(c)を見れば明らかなように、フェライト板22はピックアップコイル25の開放端部に密接して取り付けられているので、引用発明において、ピックアップコイル25をボビンに巻いた場合も、フェライト板22をピックアップコイル25の開放端部のボビンに密接して取り付けることは、当業者が適宜なし得たことである。 したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明 平成19年7月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年3月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 磁性体コアとしては1対の外部磁性体コアと1つの内部磁性体コアを備えた断面E字形状の磁性体コアを有し、外部磁性体コアと内部磁性体コアの間の2つの空隙に夫々張設された1対の1次給電線に高周波電流を流すことにより、内部磁性体コアに巻回した2次巻線に、前記磁性体コアに発生する磁界を介して電圧が誘起され、1次給電線から2次巻線に非接触で電力を伝送する非接触給電装置において、 前記内部磁性体コアの先端部側面に、外部磁性体コア方向に磁束を誘導する追加磁性体コアを取り付けたことを特徴とする非接触給電装置。」 第4 刊行物に記載された発明 刊行物1の記載事項及び刊行物1に記載された発明は、上記「第2 2(1)」で認定したとおりである。 第5 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から「前記2次巻線はボビンを有し、かつ、」及び「前記追加磁性体コアは、前記2次巻線の開放端部のボビンに密接して取り付け」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2(2)」で検討したとおり、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由(ただし 相違点2,5を除く。)により、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-02 |
結審通知日 | 2010-04-07 |
審決日 | 2010-04-20 |
出願番号 | 特願平10-156966 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01F)
P 1 8・ 121- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 正文 |
特許庁審判長 |
橋本 武 |
特許庁審判官 |
河口 雅英 高橋 宣博 |
発明の名称 | 非接触給電装置 |
代理人 | 斎藤 春弥 |
代理人 | 高橋 陽介 |