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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G |
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管理番号 | 1218892 |
審判番号 | 不服2009-3756 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-19 |
確定日 | 2010-06-24 |
事件の表示 | 特願2004-172350「現像ローラ及びそれを備えた画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月22日出願公開、特開2005-352115〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は平成16年6月10日の出願であって、平成20年9月11日付けで通知した拒絶理由に対し、同年11月14日付けで手続補正書が提出されたが、平成21年1月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月23日付けで手続補正書が提出され、その後、当審の審尋に対する回答書が同年12月7日付けで提出されたものである。 上記の平成21年3月23日付けの手続補正により、請求項1中の「紫外線硬化型樹脂」が、「紫外線により硬化された紫外線硬化型樹脂」(下線は当審で付与)に補正されたが、この補正事項は、平成20年9月11日付けの拒絶理由通知及び平成21年1月9日付けの拒絶査定で指摘した記載不備に対応するためになされたものであり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当し、適法である。 2.本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1?11に係る発明は、平成21年3月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。 「【請求項1】 シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の樹脂被覆層とを備えた現像ローラにおいて、 前記樹脂被覆層が非紫外線硬化型のケイ素含有樹脂と紫外線により硬化された紫外線硬化型樹脂とを含んでなることを特徴とする現像ローラ。」 3.引用刊行物 これに対し、本願出願前に頒布された特開2002-310136号公報(原査定の拒絶の理由における引用文献1、以下、「引用刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 発泡体層又は発泡体層とスキン層とからなる弾性層を有する発泡体ローラの弾性層の表面に1層以上の樹脂層からなるソリッド層を設けるに際し、該樹脂層の少なくとも1層を紫外線硬化型樹脂を塗布し硬化させて形成することを特徴とする発泡体ローラの製造方法。」 (b)「【0015】発泡体ローラを製造する方法としては、メカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法などがある。メカルカルフロス(当審注:「メカニカルフロス」の誤記と思われる)により発泡体ローラを製造するには、あらかじめ金属製等のシャフトを配置し、予熱した内面が円筒状の金型に、機械的攪拌により発泡させた発泡体原料を注入し、反応硬化させるか、あるいは金型に発泡体原料を注入し、不活性ガスを混入しながらかつ機械的攪拌を加えながら反応硬化させればよい。(以下略)」 (c)「0022】本発明の製造方法で製造された発泡体ローラは、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ機、レーザビームプリンタ、カラーレーザビームプリンタ、トナージェットプリンタなどの画像形成装置に帯電ローラ,現像ローラ,転写ローラ,給紙ローラ、トナー供給ローラ等として装着して好適に使用される。」 これらの記載から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「金属製等のシャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に設けられた少なくとも1層の樹脂層からなるソリッド層とを備えた現像ローラにおいて、 前記樹脂層からなるソリッド層が、紫外線により硬化された紫外線硬化型樹脂を含んでなる現像ローラ。」 4.対比・判断 本願発明と引用発明とを比較する。 引用発明の「金属製等のシャフト」、「樹脂層からなるソリッド層」は、それぞれ本願発明の「シャフト」、「樹脂被覆層」に相当する。 してみると、両者は、 「シャフトと、該シャフトの外周に形成された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも一層の樹脂被覆層とを備えた現像ローラにおいて、 前記樹脂被覆層が紫外線により硬化された紫外線硬化型樹脂を含んでなる現像ローラ。」 の点において一致し、 以下の点で相違する。 ・相違点 本願発明では、樹脂被覆層が「非紫外線硬化型のケイ素含有樹脂」を含んでなるのに対し、引用発明では含んでいない点。 上記相違点について検討する。 引用刊行物には、段落【0002】に「低硬度の高分子弾性フォームからなる弾性層は、摩擦係数が比較的大きいため、熱的,物理的にトナーが表面に付着し易い。それ故、トナーフィルミングが生じて十分な帯電性を得ることができず、画出枚数の増加と共に画質が低下してくるという問題を有している。」と記載されており、摩擦係数が大きいことが問題を生じさせることが示されているといえる。 また、現像ローラではないが、感光体に接触するローラにおいて、摩擦係数が大きいことによるトナー融着や感光体の汚染といった問題を解決するために、かかるローラの表面層に非反応性シリコーンオイルを添加することは周知(必要であれば、原審の拒絶理由における引用文献2である特開2002-214876号公報の段落【0003】?【0005】、同じく原審の拒絶理由における引用文献3である特開2002-214883号公報の段落【0003】?【0005】等参照)である。 さらに、現像ローラの表面層に非反応性シリコーンオイルを添加することも周知(必要であれば、特開平11-128834号公報、特開2003-84561号公報等参照)である。 してみると、引用発明において、上記周知技術を適用して、現像ローラ表面に摩擦を低減するために、非反応性シリコーンオイルを添加し、本願発明のような構成とすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。 また、効果の点においても、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用刊行物に記載の事項、及び上記周知技術から予測し得る程度のものであって、格別のものではない。 したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 なお、審判請求人は審尋に対する回答書において、本願発明の進歩性について以下のような主張をしている。 「また、引用文献1は、乾燥工程の省略のために紫外線硬化型樹脂の使用を教示するため、引用文献1には、当業者が非紫外線硬化型の樹脂を使用する上での阻害要因が存在するといえます。即ち、引用文献1を読んだ当業者は、引用文献1の[0003]の記載から、非紫外線硬化型の樹脂を使用する場合には、それを溶解させるための溶剤又は水が必要で、これら溶剤又は水を揮発させて樹脂を硬化させるために、長い乾燥工程が必要になり、引用文献1の課題を解決できなくなることを予想するはずです。 一方、引用文献2及び3は、非反応性シリコーンオイルの使用を教示し、該シリコーンオイルは、非反応性であるため、それを含んだ溶剤系又は水系の塗料を調製、塗布、乾燥させる必要があります。従って、引用文献1と引用文献2及び3を読んだ当業者は、引用文献1の課題を解決するために、引用文献2及び3に記載の非反応性シリコーンオイルの使用が適当ではないと考えるはずです。 従って、引用文献1と引用文献2及び3とは、組み合わせることができず、また、引用文献1には、当業者が非紫外線硬化型のケイ素含有樹脂を使用する上での阻害要因も存在するため、当業者といえども、引用文献1?3からは、樹脂被覆層に非紫外線硬化型のケイ素含有樹脂(特徴事項(B))と紫外線硬化型樹脂(特徴事項(C))とを併用するという本願請求項1に係る発明の構成を容易に想到することができません。 」 上記審判請求人の主張を検討する。 感光体に接触するローラの表面層に非反応性シリコーンオイルを添加することについての周知例として挙げた特開2002-214876号公報、特開2002-214883号公報における非反応性シリコーンオイルの含有量は、それぞれウレタン変性アクリル樹脂やフッ素樹脂100重量部に対して0.05?30重量部であることから、ごくわずかな量の添加であっても、摩擦を低減するという効果が得られることが見てとれる。 してみると、引用発明において、摩擦の低減を図りたいと考える当業者であれば、乾燥工程の省略との併存に支障を及ぼさない程度の非反応性シリコーンオイルを含有させることに想到することに、困難性は認められない。本願の明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例においても、非紫外線硬化型のケイ素含有樹脂の含有量が少量に留まっていることもその裏付けであるといえる。 よって、上記審判請求人の主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-16 |
結審通知日 | 2010-04-20 |
審決日 | 2010-05-07 |
出願番号 | 特願2004-172350(P2004-172350) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G03G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河内 悠 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
一宮 誠 柏崎 康司 |
発明の名称 | 現像ローラ及びそれを備えた画像形成装置 |
代理人 | 澤田 達也 |
代理人 | 来間 清志 |
代理人 | 冨田 和幸 |
代理人 | 杉村 憲司 |