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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L |
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管理番号 | 1218893 |
審判番号 | 不服2009-4194 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-26 |
確定日 | 2010-06-24 |
事件の表示 | 特願2002-2805号「配管カバー装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月25日出願公開、特開2003-207091号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成14年1月9日の出願であって、平成21年1月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年3月26日付けで明細書を補正する手続補正がなされたものである。 II.平成21年3月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年3月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「地中から立ち上げられ、建物の外壁等の設置対象物内に進入する給水給湯管を被覆する配管カバー装置であって、 設置対象物に対して間隔をあけて当該設置対象物に沿って設置され、内部に給水給湯管を収容する配管カバーと、 前記配管カバー内の給水給湯管を前記設置対象物内に配管すべく、当該設置対象物に形成された配管孔と連通して該設置対象物に固定され、前記給水給湯管を内包する固定カバーと、 前記配管カバーと固定カバーとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する給水給湯管を覆う連結カバーとからなり、 前記固定カバーにおける連結カバーが接続される被接続部は、その筒軸が、前記設置対象物に対して斜め方向に穿設された配管孔の延長上に配置されるように傾斜して設けられており、 前記連結カバーは、配管カバー及び固定カバーに対して外嵌可能な分割体にて構成され、相互に組み付けることによって鈍角に屈曲した筒状体を形成し、配管カバーと固定カバーとの間で露出するエルボを覆うものであって、その一端に配管カバーとの接続部を、他端に固定カバーとの接続部を備えてなり、 この連結カバーにおける固定カバーとの接続部は、前記配管カバーと当該配管カバーが設置される前記設置対象物との間隔に応じて、当該設置対象物に対する離間及び近接を可能とすべく、当該設置対象物に対して傾斜した方向に筒状体を設置する固定カバーへ、当該筒状体の軸方向に対して摺動可能に接続されることを特徴とする配管カバー装置。」(なお、下線部は補正箇所を示す。) 上記補正は、補正前の請求項1(平成20年7月28日付けの手続補正は平成21年1月30日付けで決定をもって却下されたので、平成19年11月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1)に記載された発明を特定するために必要な事項である「固定カバー」について、「前記固定カバーにおける連結カバーが接続される被接続部は、その筒軸が、前記設置対象物に対して斜め方向に穿設された配管孔の延長上に配置されるように傾斜して設けられており」との限定を付加したものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例の記載事項 (1)特開平11-280985号公報 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-280985号公報(以下、「引用例1」という。)には、「配線・配管用保護カバー」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下付き文字は普通サイズの文字で表記した。 ア.「本発明の第2実施例について説明する。第2実施例は、図10に示されるように、ダクトD2を用いて建物外壁Wとの間に所定の隙間を有してエアコン用冷媒管Q(図14参照)を収容配管する場合において、該冷媒管Qの上端の屈曲部を収容するための付属ダクトである屈曲短円筒状のエルボパイプPに本発明を実施した例である。」(段落【0016】) イ.「図11ないし図14に示されるように、エルボパイプPは、その周壁部20の部分において横断面視において等しく2分割された内側エルボパイプ分割体P1と外側エルボパイプ分割体P2とで構成される。内側及び外側の各エルボパイプ分割体P1,P2は、それぞれ前記カップリングCの基台C1及び蓋体C2に相当する。内側エルボパイプ分割体P1は、上面及び外面に開口した各半円筒体が相互に直交する形状に連結されて、相互に直交する前記各半円筒体の上端及び外側端となる各端面11a,11bは、側面視において、いずれの円筒体の端面に対しても135°の角度で交差する傾斜端面12で接続されていて、該傾斜端面12の部分を肉厚方向に沿って2等分した場合に、その内側の部分に直角二等辺三角形状の内側結合解除防止片13が設けられている。従って、内側結合解除防止片13の肉厚は、内側エルボパイプ分割体P1の一般部の略半分であり、該内側結合解除防止片13と内側エルボパイプ分割体P1の外周面との間には、前記傾斜端面12の部分において肉厚の略半分の段差が形成されているが、内側結合解除防止片13と内側エルボパイプ分割体P1の内周面とは、連続面となっている。 また、図12及び図13に示されるように、内側エルボパイプ分割体P1を構成する前記各半円筒体の各端面には、その全長に亘って外側係合片14がそれぞれ形成されている。このため、内側エルボパイプ分割体P1には、計4枚の外側係合片14が設けられており、各外側係合片14は、当該係合片14が形成されている部分を肉厚方向に2等分した場合において、その外側の部分に設けられている。よって、外側係合片14の肉厚は、内側エルボパイプ分割体P1の一般部の略半分であって、各外側係合片14の内側面には、該外側係合片14の全長の略3分の1程度の長さの外側係合爪14aが設けられている。 一方、外側エルボパイプ分割体P2は、下面及び内面に開口した各半円筒体が相互に直交する形状に連結されて、相互に直交する前記各半円筒体の下端及び内側端となる各端面15a,15bは、側面視において、いずれの円筒体の端面に対しても135°の角度で交差する傾斜端面16で接続されていて、該傾斜端面16の部分を肉厚方向に沿って2等分した場合に、その外側の部分に直角二等辺三角形状の外側結合解除防止片17が設けられている。従って、外側結合解除防止片17の肉厚は、外側エルボパイプ分割体P2の一般部の略半分であり、該外側結合解除防止片17は、外側エルボパイプ分割体P2の外周面に対しては連続面となっているが、その内周面に対しては、肉厚の半分の段差を有して接続している。また、外側エルボパイプ分割体P2の計4箇所の各端面15a,15bには、その全長に亘って内側係合片18が設けられている。各内側係合片18は、当該係合片18が形成されている部分を肉厚方向に2等分した場合に、その内側の部分に設けられていて、各内側係合片18の外側面には、そのほぼ全長に亘って内側係合爪18aが設けられている。」(段落【0017】?【0019】) ウ.「このため、図10に示されるように、建物外壁Wとの間に所定の間隔をおいてエアコン用冷媒管QがダクトD2に収容配管されていると共に、外壁Wに固定されたソケットSを通って前記ダクトD2(上記ア.の記載及び図14からみて「冷媒管Q」の誤記と認められる。以下同様)が外壁Wに貫通されて、該ダクトD2(「冷媒管Q」の誤記)の屈曲部のみが露出している状態において、当該露出部を前記エルボパイプP内に収容するには、以下のようにして行う。まず、内側及び外側の各エルボパイプ分割体P1,P2を前記ダクトD2(「冷媒管Q」の誤記)の前記屈曲部を挟んで配置しておいて、各エルボパイプ分割体P1,P2を互いに近接させて、図17に示される状態から、外側エルボパイプ分割体P2の外側結合解除防止片17の内側に、内側エルボパイプ分割体P1の内側結合解除防止片13を挿入当接させて、両防止片17,13を互いに重ね合わせる。この状態において、両エルボパイプ分割体P1,P2を互いに押し込むと、それぞれに設けられた外側係合爪14aと内側係合爪18aとが互いに当接し(図18参照)、その後において、両エルボパイプ分割体P1,P2を更に押し込むと、その周壁部20が相互に逆方向に僅かに弾性変形する。そして、各係合爪14a,18aが相互に通過した後において、両エルボパイプ分割体P1,P2の周壁部は、原形状に復元して、各係合爪14a,18aが互いに係合する(図15及び図19参照)。」(段落【0020】) エ.「なお、上記各実施例は、いずれもエアコン用冷媒管の直状部を収納する保護カバー(直状カバー)を接続するための付属ダクトに対して本発明を実施した例であるが、該直状カバーに対して本発明を実施することも可能である。また、給水管、或いは電線を収納するための各保護カバーに対して本発明を実施することも可能である。」(段落【0027】) オ.図10には、建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて建物外壁Wに沿って設置されたダクトD2、建物外壁Wに固定されたソケットS、ダクトD2とソケットSを連結するエルボパイプPとからなる配線・配管用保護カバーが図示されている。ソケットSは、建物外壁Wに形成された配管孔と連通して該建物外壁Wに固定されていることは明らかである。 カ.図14には、直角に屈曲した筒状体を形成し、ダクトD2とソケットSとの間で露出する冷媒管Qのエルボを覆うものであって、その一端にダクトD2との接続部を、他端にソケットSとの接続部を備えたエルボパイプPが図示されている。 キ.上記ウ.の「外壁Wに固定されたソケットSを通って前記ダクトD2(上記ア.の記載及び図14からみて「冷媒管Q」の誤記と認められる。以下同様)が外壁Wに貫通されて」との記載からみて、ソケットSは、建物外壁Wに形成された配管孔と連通して外壁Wに固定され、冷媒管Qを収容するものであることは明らかである。 これら記載事項及び図示内容を総合し、本願補正発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて設置され、建物外壁Wを貫通する冷媒管Qを収容する配線・配管用保護カバーであって、 建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて建物外壁Wに沿って設置され、内部に冷媒管Qを収容するダクトD2と、 前記ダクトD2内の冷媒管Qを建物外壁W内に配管すべく、当該建物外壁Wに形成された配管孔と連通して該建物外壁Wに固定され、前記冷媒管Qを収容するソケットSと、 前記ダクトD2とソケットSとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する冷媒管Qを覆うエルボパイプPとからなり、 前記エルボパイプPは、ダクトD2及びソケットSに対して外嵌可能な分割体P1,P2にて構成され、相互に組み付けることによって直角に屈曲した筒状体を形成し、ダクトD2とソケットSとの間で露出する冷媒管Qのエルボを覆うものであって、その一端にダクトD2との接続部を、他端にソケットSとの接続部を備えてなる配線・配管用保護カバー。」 (2)特開平7-97819号公報 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-97819号公報(以下、「引用例2」という。)には、「屋外配管カバー」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。 ク.「【従来の技術】従来、例えば、特開平4-143336号公報に記載されているように、高層ビル等では、建物内に配管用垂直空間が設けられ、垂直空間内に上水、汚水等の種々の配管が施される。しかしながら、一般の低層の建物においては、建物の壁面上に半筒状屋外配管カバーが設けられ、屋外配管カバーにより建物壁面上に配管用垂直空間が設けられ、この配管用垂直空間内に上水、汚水等の種々の配管が施される。 【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の屋外配管カバーにおいては、上端開口部は開口部を閉塞する蓋体が設けられているが、蓋体は屋外配管カバー本体に固定的に設けられているために蓋体の位置調整は不可能であり、蓋体取付位置と蓋体を取付けるべき受木桟位置との位置ずれがあるときは、屋外配管カバー全体の取付けの手直しが必要であり、煩瑣なものであった。 本発明は、従来の屋外配管カバーにおけるこのような問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、上記の問題を解決し、蓋体を取付けるべき受木桟との位置がずれたときも容易に蓋体の位置を調整することかできる屋外配管カバーを提供するにある。」(段落【0002】?【0004】) ケ.「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明屋外配管カバーは、半筒状屋外配管カバー本体と、その上端開口部を覆うキャップ状蓋体とからなる屋外配管カバーにおいて、キャップ状蓋体は天板及び側壁からなり、該側壁が半筒状屋外配管カバー本体の上端部に摺動自在とされていることを特徴とするものである。」(段落【0005】) コ.「【作用】請求項1記載の本発明に係る屋外配管カバーにおいては、キャップ状蓋体は天板及び側壁からなり、該側壁が半筒状屋外配管カバー本体の上端部に摺動自在とされているので、キャップ状蓋体の側壁を半筒状屋外配管カバー本体の上端部に摺動させることにより、その位置を調整することができる。」(段落【0008】) サ.「〔実施例の作用〕次に、図1に示す本発明部屋外配管カバーの作用について説明する。図2に示すように、建物3の窓のサッシ31の下方の壁面32上に図示しない竪方向の配管の上に屋外配管カバー本体1を被せ、その上端の大径部11の外側にキャップ状蓋体2を被嵌し、キャップ状蓋体2の側壁21を大径部11の外側に摺動させてキャップ状蓋体2の高さを調整し、取付立上部23の取付孔24が建物3の受け木桟32の位置に合致するところで取付孔24から取付ねじ4をねじ込むことによりキャップ状蓋体2を固定することができる。」(段落【0013】) 3.対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その意味、機能または構造からみて、引用発明の「建物外壁W」は本願補正発明の「(建物の外壁等の)設置対象物」に相当し、以下同様に、「配線・配管用保護カバー」は「配管カバー装置」に、「ダクトD2」は「配管カバー」に、「ソケットS」は「固定カバー」に、「エルボパイプP」は「連結カバー」に、「分割体P1,P2」は「分割体」に、それぞれ相当する。 引用発明の「冷媒管Q」と本願補正発明の「給水給湯管」とは、どちらも「配管」である点で共通するから、引用発明の「建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて設置され、建物外壁Wを貫通する冷媒管Qを収容する配線・配管用保護カバー」と本願補正発明の「地中から立ち上げられ、建物の外壁等の設置対象物内に進入する給水給湯管を被覆する配管カバー装置」とは、「地中から立ち上げられ、建物の外壁等の設置対象物内に進入する配管を被覆する配管カバー装置」である点で共通し、引用発明の「建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて建物外壁Wに沿って設置され、内部に冷媒管Qを収容するダクトD2」と本願補正発明の「設置対象物に対して間隔をあけて当該設置対象物に沿って設置され、内部に給水給湯管を収容する配管カバー」とは、どちらも「設置対象物に対して間隔をあけて当該設置対象物に沿って設置され、内部に配管を収容する配管カバー」の点で共通し、引用発明の「前記ダクトD2内の冷媒管Qを建物外壁W内に配管すべく、当該建物外壁Wに形成された配管孔と連通して該建物外壁Wに固定され、前記冷媒管Qを収容するソケットS」と本願補正発明の「前記配管カバー内の給水給湯管を前記設置対象物内に配管すべく、当該設置対象物に形成された配管孔と連通して該設置対象物に固定され、前記給水給湯管を内包する固定カバー」とは、どちらも「前記配管カバー内の配管を前記設置対象物内に配管すべく、当該設置対象物に形成された配管孔と連通して該設置対象物に固定され、前記配管を内包する固定カバー」である点で共通し、引用発明の「前記ダクトD2とソケットSとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する冷媒管Qを覆うエルボパイプP」と本願補正発明の「前記配管カバーと固定カバーとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する給水給湯管を覆う連結カバー」とは、どちらも「前記配管カバーと固定カバーとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する配管を覆う連結カバー」である点で共通する。 また、引用発明の「前記エルボパイプPは、ダクトD2及びソケットSに対して外嵌可能な分割体P1,P2にて構成され、相互に組み付けることによって直角に屈曲した筒状体を形成し、ダクトD2とソケットSとの間で露出する冷媒管Qのエルボを覆うものであって」と本願補正発明の「前記連結カバーは、配管カバー及び固定カバーに対して外嵌可能な分割体にて構成され、相互に組み付けることによって鈍角に屈曲した筒状体を形成し、配管カバーと固定カバーとの間で露出するエルボを覆うものであって」とは、どちらも「前記連結カバーは、配管カバー及び固定カバーに対して外嵌可能な分割体にて構成され、相互に組み付けることによって屈曲した筒状体を形成し、配管カバーと固定カバーとの間で露出するエルボを覆うものであって」の点で共通する。 したがって、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。 [一致点] 「地中から立ち上げられ、建物の外壁等の設置対象物内に進入する配管を被覆する配管カバー装置であって、 設置対象物に対して間隔をあけて当該設置対象物に沿って設置され、内部に配管を収容する配管カバーと、 前記配管カバー内の配管を前記設置対象物内に配管すべく、当該設置対象物に形成された配管孔と連通して該設置対象物に固定され、前記配管を内包する固定カバーと、 前記配管カバーと固定カバーとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する配管を覆う連結カバーとからなり、 前記連結カバーは、配管カバー及び固定カバーに対して外嵌可能な分割体にて構成され、相互に組み付けることによって屈曲した筒状体を形成し、配管カバーと固定カバーとの間で露出するエルボを覆うものであって、その一端に配管カバーとの接続部を、他端に固定カバーとの接続部を備えてなる配管カバー装置。」 そして、両者は次の点で相違する(かっこ内は対応する引用発明の用語を示す。)。 [相違点] 相違点1:配管に関して、本願補正発明では、配管が「給水給湯管」であるのに対して、引用発明では、配管が「冷媒管Q」である点。 相違点2:本願補正発明は、連結カバーが「鈍角に」屈曲した筒状体を形成しており、「固定カバーにおける連結カバーが接続される被接続部は、その筒軸が、前記設置対象物に対して斜め方向に穿設された配管孔の延長上に配置されるように傾斜して設けられており」、固定カバーが「設置対象物に対して傾斜した方向に筒状体を設置する」ものであるのに対して、引用発明は、連結カバー(エルボパイプP)が直角に屈曲した筒状体を形成しており、設置対象物(建物外壁W)に対して斜め方向に配管孔が穿設されているかどうか明らかでなく、ソケットS(固定カバー)が建物外壁W(設置対象物)に対して傾斜した方向に筒状体を設置するものでない点。 相違点3:本願補正発明は、「連結カバーにおける固定カバーとの接続部は、前記配管カバーと当該配管カバーが設置される前記設置対象物との間隔に応じて、当該設置対象物に対する離間及び近接を可能とすべく、当該設置対象物に対して傾斜した方向に筒状体を設置する固定カバーへ、当該筒状体の軸方向に対して摺動可能に接続される」のに対して、引用発明は、その点が明らかでない点。 4.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用例1には、「給水管、或いは電線を収納するための各保護カバーに対して本発明を実施することも可能である」(上記エ.参照)と記載され、引用発明を給水管に適用することが示唆されているから、引用発明を給水給湯管のための配管カバー装置とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。 (2)相違点2について 建物内に冷媒管などの配管を引き込むために配管施工を行う場合、施工箇所によっては建物外壁Wに斜め方向に配管孔を穿設せざるを得ないことはよくあることであり、しかも、壁内に配管を進入させるために、その壁に傾斜した配管孔を穿設することは、例えば特開2000-199584号公報(図11及び図12参照)、特開2000-352066号公報(図1参照)、特開2001-173869号公報(図8参照)などに見られるように従来周知の技術的手段にすぎないから、建物外壁Wに対して斜め方向に配管孔を穿設することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得ることであるということができる。 一方、引用発明においては、建物外壁Wに対して斜め方向に配管孔が穿設されているかどうか明らかでないものの、ソケットSが「建物外壁Wに形成された配管孔と連通して該建物外壁Wに固定され」ている(上記オ.参照)ことからみて、少なくともソケットS(固定カバー)におけるエルボパイプP(連結カバー)が接続される被接続部は、その筒軸が、建物外壁W(設置対象物)に対して穿設された配管孔の延長上に配置されるように設けられていることは明らかである。 そうすると、引用発明において、配管施工に際し必要に応じて建物外壁Wに対して斜め方向に配管孔を穿設し、それに伴って、ソケットS(固定カバー)におけるエルボパイプP(連結カバー)が接続される被接続部を、その筒軸が、建物外壁W(設置対象物)に対して斜め方向に穿設された配管孔の延長上に配置されるように傾斜して設けることは、当業者であれば容易になし得ることであるということができる。そして、その際に、筒軸の方向に合わせて引用発明のエルボパイプP(連結カバー)を鈍角に屈曲したものとすることは、当業者にとって設計的事項にすぎないというべきである。そのようにしたものは、ソケットS(固定カバー)が建物外壁W(設置対象物)に対して傾斜した方向に筒状体を設置するものとなることは明らかである。 したがって、相違点2に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。 (3)相違点3について 引用例1の図14を見ると、ソケットSがエルボパイプP内に挿入された状態が図示されており、エルボパイプPの内面には、図9に図示されているような抜け防止のための突条8などが何も設けられておらず、ソケットSとエルボパイプPとが接着などによって固定されているというような記載もないことからみて、このソケットSをエルボパイプP内に浅く又は深く挿入することも可能であると解されるから、エルボパイプPの筒状体はソケットSに対して摺動可能であるということができる。 また、引用発明は、「建物外壁Wとの間に所定の隙間をあけて設置され、建物外壁Wを貫通する冷媒管Qを収容する配線・配管用保護カバー」であり、このような保護カバーを設置施工する場合、冷媒管などの配管と建物外壁Wとの間隔が施工箇所によって様々であることは一般によく知られていることであるから、建物外壁Wとの間隔に対応し得るようにすることについて十分な動機付けがあるといえる。そして、設置対象物に対する間隔を調整できるようにするために保護カバーを摺動可能に構成すること、言い換えれば設置対象物に対する離間及び近接を可能とすべく保護カバーを摺動可能に構成することは、例えば引用例2などに見られるように従来周知の技術的手段にすぎない。 そうすると、引用発明において、エルボパイプP(連結カバー)におけるソケットS(固定カバー)との接続部が、ダクトD2(配管カバー)と当該ダクトD2(配管カバー)が設置される建物外壁W(設置対象物)との間隔に応じて、当該建物外壁Wに対する離間及び近接を可能とすべく、当該建物外壁Wに対して筒状体を設置するソケットSへ、当該筒状体の軸方向に対して摺動可能に接続される構成とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。なお、設置対象物に対して「傾斜した方向に」筒状体を設置することについては、上記「(2)相違点2について」で述べたとおりである。 したがって、相違点3に係る本願補正発明のように構成することは、当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願補正発明の効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 なお、審判請求人は、平成21年4月27日付けの手続補正により補正された審判請求の理由の中で、「本願発明の配管カバー装置は、固定カバーに対し、連結カバーが傾斜した方向に摺動可能、つまり、固定カバーと連結カバーとが傾斜した方向に重複する部分を有することに特徴があります。このような傾斜した方向の重複部分は、連結カバーを壁面方向に前後させる場合にも、上下させる場合にも、連結カバーを固定カバーに拘束する働きをします。これにより、単に摺動方向を水平あるいは垂直としたことに比べ、双方の重複部分が傾斜して存在し、壁面に対して連結カバーを上下させる方向に力が作用しても、引用文献2に比べ、上下への連結カバーの離脱防止の機能が向上し、更に、壁面に大して離接する方向(近づけたり遠ざけたり方向に)に力が作用しても、この方向への連結カバーの離脱防止の機能が向上するという、単に、引用文献を組み合わせただけでは、容易に想到しえない、格別、顕著な効果が発揮されるものと考えます。加えて、このような配管カバー装置の場合に最も生じやすい、連結カバーを壁面から遠ざけるようにする力に対しても連結カバーの離脱防止機能が向上するという、格別、顕著な効果が発揮され、この効果は産業上の意義の高いものであります。」と主張している。しかしながら、固定カバーと連結カバーとが傾斜した方向に重複する部分を有する構成は、上記「(2)相違点2について」及び「(3)相違点3について」で述べたとおり、当業者が容易に想到できたものであり、また、審判請求人が主張する「上下への連結カバーの離脱防止の機能が向上し、更に、壁面に大して離接する方向(近づけたり遠ざけたり方向に)に力が作用しても、この方向への連結カバーの離脱防止の機能が向上する」という効果も、当業者が予測し得る範囲内のものである。周知技術として示した特開2000-352066号公報の図1、あるいは特開2001-173869号公報の図8などを見ればわかるように、そのような効果は、従来周知のものが有する構造上当然の効果にすぎず、格別顕著な効果とはいえない。 よって、審判請求人の主張は採用できない。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成19年11月28日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。 「地中から立ち上げられ、建物の外壁等の設置対象物内に進入する給水給湯管を被覆する配管カバー装置であって、 設置対象物に対して間隔をあけて当該設置対象物に沿って設置され、内部に給水給湯管を収容する配管カバーと、 前記配管カバー内の給水給湯管を前記設置対象物内に配管すべく、当該設置対象物に形成された配管孔と連通して該設置対象物に固定され、前記給水給湯管を内包する固定カバーと、 前記配管カバーと固定カバーとを連結すべく両者間に取り付けられ、前記両者間に位置する給水給湯管を覆う連結カバーとからなり、 前記連結カバーは、配管カバー及び固定カバーに対して外嵌可能な分割体にて構成され、相互に組み付けることによって鈍角に屈曲した筒状体を形成し、配管カバーと固定カバーとの間で露出するエルボを覆うものであって、その一端に配管カバーとの接続部を、他端に固定カバーとの接続部を備えてなり、 この連結カバーにおける固定カバーとの接続部は、前記配管カバーと当該配管カバーが設置される前記設置対象物との間隔に応じて、当該設置対象物に対する離間及び近接を可能とすべく、当該設置対象物に対して傾斜した方向に筒状体を設置する固定カバーへ、当該筒状体の軸方向に対して摺動可能に接続されることを特徴とする配管カバー装置。」 2.引用例の記載事項 引用例の記載事項及び引用発明は、前記II.2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記II.1.の本願補正発明から、「固定カバー」についての限定事項である「前記固定カバーにおける連結カバーが接続される被接続部は、その筒軸が、前記設置対象物に対して斜め方向に穿設された配管孔の延長上に配置されるように傾斜して設けられており」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3.及び4.に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そうすると、本願発明が特許を受けることができないものである以上、請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-16 |
結審通知日 | 2010-04-20 |
審決日 | 2010-05-07 |
出願番号 | 特願2002-2805(P2002-2805) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 雄二 |
特許庁審判長 |
川本 真裕 |
特許庁審判官 |
山岸 利治 大山 健 |
発明の名称 | 配管カバー装置 |
代理人 | 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所 |