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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1218898 |
審判番号 | 不服2009-9380 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-04-30 |
確定日 | 2010-06-24 |
事件の表示 | 特願2002-247343「不正払出管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月18日出願公開、特開2004- 81574〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願の経緯概要は以下のとおりである。 特許出願 平成14年8月27日 審査請求 平成17年8月1日 拒絶理由 平成20年9月19日 手続補正 平成20年11月28日 拒絶査定 平成21年3月27日 審判請求 平成21年4月30日 手続補正 平成21年5月22日 第2.平成21年5月22日付の手続補正について 平成21年5月22日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成20年11月28日付の手続補正書における請求項1?4(以下「補正前の請求項1」?「補正前の請求項4」という。)に対して、補正前の請求項2を削除すると共にその内容を補正前の請求項1に加えて新たに請求項1とし、補正前の請求項3,4については項を繰り上げて新たに請求項2,3としたものであって、その他に実質的に限定された事項は何らないから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号において規定する「請求項の削除」を目的とするものに該当すると認められる。 第3.本願発明について 上記したように、本件補正後の請求項3は、補正前の請求項4において補正前の請求項2を引用した場合のものである。 そして、原査定時においては、補正前の請求項4に対しては引用文献1-5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとされており、さらに平成20年9月19日付の拒絶理由通知書も参照すれば、当時の請求項3(原査定時の請求項4に対応する)に対しては「引用文献1及び5、引用文献2及び5、又は、引用文献3及び5」が挙げられている。 そこで、以下では、本件補正後の請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)について検討することとする。 本件補正後の請求項3は請求項1を引用するものであり、そして、本願発明は、本件補正後の請求項1に請求項3の内容を加えた形で書き下した次のとおりのものであると認める。 「遊技媒体の払い出しに関する不正行為を検出する異常検出手段と、 前記異常検出手段による不正行為の検出回数を計数する制御手段と、 前記異常検出手段が不正行為を検出すると、当該検出についての前記制御手段による計数結果が1回目であれば、表示によるアラーム出力を行うとともに、その状態を継続させ、当該検出についての前記制御手段による計数結果が2回目であれば、前記1回目とは異なる表示によるアラーム出力を行う異常出力手段とを備え、 前記1回目となる検出から所定時間が経過しても前記2回目となる検出が無ければ、前記制御手段による計数結果および前記異常出力手段が継続しているアラーム出力をリセットし、 前記異なる表示によるアラーム出力は、同一の表示装置が行う異なる表示態様によるものである ことを特徴とする不正払出管理装置。」 第4.当審の判断 1.引用発明について 原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された特開2001-327659号公報(以下「引用文献2」という。)には図面と共に、以下の記載がある。 【0022】【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1に、本発明の第1実施形態にかかるスロットマシン(以下、パチスロ機という)のセキュリティ装置の全体構成を示す。 【0023】パチンコ店には、パチスロ機10が複数台設置されている。各パチスロ機10には、内部にコイン払出機としてのホッパー11が設けられており、このホッパー11からコインが払い出される。また、各パチスロ機10からは、コインの投入を示すIN信号(この実施形態ではコインの投入枚数を示す信号としている)、コインの払い出し枚数を示すOUT信号、ホッパー11内にコインがない状態(空状態)を検出する図示しない空スイッチからの信号などが出力される。さらに、この実施形態では、各パチスロ機10のホッパー11のコイン払出口13に光センサ14が取り付けられており、払い出されたコインに応じたパルス信号(1パルス/枚)が出力される。 【0029】そして、10ゲーム以内に後述する軽警報(注意喚起程度の警報)が3回連続したか否かを判定する(ステップ105)。軽警報であっても、10ゲーム以内に3回連続して軽警報が出されたときには、何らかのホッパー払出異常が生じたものと考えられる。その場合にはホッパー払出異常と判定して、重警報処理を行う(ステップ106)。なお、ステップ105の判定に用いるゲーム数および軽警報の連続回数は、上記した数に限らず他の値にすることも可能である。 【0032】…光センサ14によって検出されたホッパー11の払出枚数(以下、ホッパー払出枚数という)… 【0038】また、OUT信号がないときにホッパー払出枚数が1枚以上あった場合には、クレジットの払い出しの他、ホッパー払出異常によることもあり得るため、軽警報処理を行う(ステップ113)。この場合、10ゲーム以内に3回連続して軽警報となると、何らかのホッパー払出異常が生じたものと考えられるため、ステップ105に到来したときその判定がYESになり、重警報処理を行う(ステップ106)。 【0039】なお、ステップ117の軽警報処理においては、コンピュータ20内に軽警報の記録を行うとともに、ホールコンピュータに軽警報を知らせる信号を送出する処理を行う。また、ステップ106の重警報処理においては、警報ランプ(外部に異常を知らせる手段)21を点灯させるとともに、ホールコンピュータに重警報を知らせる信号を送出する処理を行う。警報ランプ21が点灯した場合には、リセットスイッチ22によってその警報を解除することができる。なお、上記した軽警報処理、重警報処理において、例えばホールコンピュータに送出する信号の時間幅を変えることで、ホールコンピュータに軽警報であるか重警報であるかを知らせることができる。 よって、引用文献2の記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献2には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「コインの払い出し枚数を示すOUT信号がないときに、ホッパー11のコイン払出口13に取り付けられた光センサ14によって検出されたコインの払出枚数が1枚以上になったときに軽警報とし、 10ゲーム以内に軽警報が3回連続したか否かを判定し、10ゲーム以内に3回連続して軽警報となると重警報処理を行い、 上記判定に用いるゲーム数および軽警報の連続回数は、上記した数に限らず他の値にすることも可能であり、 軽警報処理においては、コンピュータ20内に軽警報の記録を行うとともにホールコンピュータに軽警報を知らせる信号を送出する処理を行い、重警報処理においては、警報ランプ21を点灯させるとともにホールコンピュータに重警報を知らせる信号を送出する処理を行う スロットマシンのセキュリティ装置。」 2.対比 ここで、本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「コイン」は本願発明における「遊技媒体」に相当し、引用文献2の段落【0031】等からみて引用発明もスロットマシンのコインの払出に関して不正行為に対する警報処理を行っているものであるから、引用発明の「スロットマシンのセキュリティ装置」は本願発明の「不正払出管理装置」に相当するものである。 また引用発明から次の点も云える。 (a)本願発明における「不正行為」とは、発明の詳細な説明における段落【0016】?【0017】を参照すれば、不正行為を検出するための「異常検出センサ11」として、「メダル払出機構の駆動源への電流のオン/オフを基にしてその駆動源の動作時間を検知するもの」、「メダル払出機構の動作回数を基にしてそのメダル払出機構が排出したメダル枚数を検知するもの」が挙げられ、正当なメダルの払い出しと判断できない払い出しを不正行為として検出するものであるから、引用発明における「コインの払い出し枚数を示すOUT信号がないときに、ホッパー11のコイン払出口13に取り付けられた光センサ14によって検出されたコインの払出枚数が1枚以上になったとき」とは、本願発明における「遊技媒体の払い出しに関する不正行為を検出」したときに相当するものであると判断できる。よって、引用発明が本願発明における「遊技媒体の払い出しに関する不正行為を検出する異常検出手段」を備えることは明らかである。 (b)引用発明においては「10ゲーム以内に軽警報が3回連続したか否かを判定し、10ゲーム以内に3回連続して軽警報となると重警報処理を行」っている。よって、引用発明が本願発明における「前記異常検出手段による不正行為の検出回数を計数する制御手段」を備えることは明らかである。 (c)引用発明においては「軽警報処理においては、コンピュータ20内に軽警報の記録を行うとともにホールコンピュータに軽警報を知らせる信号を送出する処理を行い、重警報処理においては、警報ランプ21を点灯させるとともにホールコンピュータに重警報を知らせる信号を送出する処理を行う」ものであって、「軽警報」及び「重警報」における処理とは本願発明における「アラーム出力」に相当し、そして「軽警報」における処理内容と「重警報」における処理内容とは互いに異なっている。そして引用発明における「重警報処理」とは、軽警報が「10ゲーム以内に3回連続」した場合に行われるから、軽警報が「複数回目」の場合であると云える。よって、引用発明と本願発明とは「前記異常検出手段が不正行為を検出すると、当該検出についての前記制御手段による計数結果が1回目であれば、アラーム出力を行うとともに、当該検出についての前記制御手段による計数結果が複数回目であれば、前記1回目とは異なるアラーム出力を行う異常出力手段」を備える点で共通している。 したがって、本願発明と引用発明は、 「遊技媒体の払い出しに関する不正行為を検出する異常検出手段と、 前記異常検出手段による不正行為の検出回数を計数する制御手段と、 前記異常検出手段が不正行為を検出すると、当該検出についての前記制御手段による計数結果が1回目であれば、アラーム出力を行うとともに、当該検出についての前記制御手段による計数結果が複数回目であれば、前記1回目とは異なるアラーム出力を行う異常出力手段とを備える不正払出管理装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 上記一致点におけるアラーム出力が1回目の場合について、本願発明はアラーム出力が「表示による」ものであり、かつ「その状態を継続させ」るものであって、 上記一致点における「前記1回目とは異なるアラーム出力」が、本願発明においては「前記1回目とは異なる表示によるアラーム出力」であり、 さらに、本願発明においては「前記異なる表示によるアラーム出力は、同一の表示装置が行う異なる表示態様によるもの」であるのに対して、 引用発明においてはかかる構成がない点。 [相違点2] 上記一致点における「複数回目」が、本願発明では2回目であるのに対して、 引用発明では「10ゲーム以内に3回連続」した場合であり、 また、本願発明においては、「前記1回目となる検出から所定時間が経過しても(前記)2回目となる検出が無ければ、前記制御手段による計数結果および前記異常出力手段が継続しているアラーム出力をリセット」するのに対して、 引用発明おいては不明である点。 3.相違点にかかる検討 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 原査定の拒絶の理由において引用文献5として引用された特開2001-300072号公報(以下「引用文献5」という。)においては、遊技球の排出処理において、排出用パルスモータ620が排出カウンタに設定されている値の排出に必要なだけ動作するように制御し、基本排出(1回目の排出動作)では目標数の遊技球排出ができなかった場合(排出カウンタ>0)、予備異常報知を開始し、遊技機1の第2報知ランプ32をゆっくり点滅させ、その後、補正排出の結果、排出カウンタの値が0であれば予備異常報知を終了させ、所定回数の補正排出が行われても排出カウンタに残存数がある場合、異常対応処理に進み、前記第2報知ランプ32を所定のパターンで予備異常報知のときよりも素早く点滅させるという技術(以下「引用文献5記載の技術」という)が記載されている(引用文献5の【図8】及び段落【0097】?【0110】等の記載を参照)。 ここで、予備異常報知における「ゆっくり点滅」とは「表示による」報知であって、また異常対応処理における「所定のパターンで素早く点滅」とは、予備異常報知のときとは「異なる表示による」報知である。そして、予備異常報知及び異常対応処理におけるいずれの点滅も第2報知ランプ32において行われているから「同一の表示装置が行う異なる表示態様による」ものである。 さらに、引用文献5記載の技術においては、予備異常報知を開始させた後、排出カウンタの値が0であれば予備異常報知を終了するものであるから、予備異常報知としての「ゆっくり点滅」は「その状態が継続」されるものであることは明らかである。 そして、引用文献5記載の技術も、遊技媒体の計数カウンタによる払出し異常に対応するための警報処理である点で引用発明と共通し、かつ2段階の警報(報知)を行う点でも共通する(引用発明における「軽警報」及び「重警報」は、引用文献5記載の技術における「予備備異常報知」及び「異常対応処理」に対応する。)から、引用発明に引用文献5記載の技術を適用して、本願発明の相違点1にかかる構成とすることは当業者にとって容易に想到できたことである。 [相違点2について] 引用発明においても「上記判定に用いるゲーム数および軽警報の連続回数は、上記した数に限らず他の値にすることも可能」である。そしてどの程度をもって警報段階を変えるかは当業者の設計事項であって、そして軽警報が「2回連続」すなわち「2回目」を当該判定基準として選択することに何ら困難性はない。 また、引用発明においても、軽警報が「10ゲーム以内に3回連続」という場合に重警報とするという判定を行っているから、最初の軽警報から10ゲーム経過して軽警報が2回以内の場合については重警報に該当しないという判定を行っていることは明らかである。そして上記したように重警報とするタイミングを軽警報が2回目とした場合について検討すると、1回目の軽警報から10ゲーム経過して2回目の軽警報が発生しなかった場合については1回目の軽警報のカウントは不要になるのであるから、そのカウント結果(計数結果)をリセットすることは当然の処理に過ぎない。 さらに、[相違点1について]において検討したように、引用発明に引用文献5記載の技術を適用して、1回目の軽警報後において表示による報知が継続している場合について検討すれば、1回目の軽警報のカウントをリセットする場合は、それと同様に継続している報知についてもリセットすることは、当業者にとって何ら格別の困難無く設計できる範囲のことに過ぎない。 なお、引用発明においては、「ゲーム数」の経過の有無を判別にあたっての基準としているが、不正行為の検出にあたって「所定時間」に複数回検出されたか否かを基準として用いている例も周知である(以下「周知技術」という。例えば特開2001-246145号公報の段落【0013】、特開2001-120714号公報の段落【0051】を参照。)から、引用発明における「ゲーム数」に代えて「所定時間」とすることも適宜なし得る設計変更の範囲に過ぎない。 よって、本願発明の相違点2にかかる構成とすることは、引用発明、引用文献5記載の技術及び周知技術に基づき、当業者にとって容易に想到できたことである。 4.当審の判断についてのむすび そうすると、相違点1,2にかかる本願発明の構成は、引用発明、引用文献5記載の技術及び周知技術から、当業者が容易に想到できたものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献5記載の技術及び周知技術から、当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、原査定の理由に基づき、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第5.むすび 以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-21 |
結審通知日 | 2010-04-27 |
審決日 | 2010-05-11 |
出願番号 | 特願2002-247343(P2002-247343) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 三成、郡山 順、安久 司郎 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
池谷 香次郎 吉村 尚 |
発明の名称 | 不正払出管理装置 |
代理人 | 磯野 道造 |