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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C10L
管理番号 1218931
審判番号 不服2006-27657  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-07 
確定日 2010-06-21 
事件の表示 特願2003-573091「相互協力IVD性能を有するガソリン用燃料添加物混合物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月12日国際公開、WO03/74637、平成17年 9月15日国内公表、特表2005-527655〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2003年3月5日(パリ条約による優先権主張 2002年3月6日 (DE)ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成16年2月20日付けで手続補正がされ、平成18年2月14日付けで拒絶理由が通知され、同年8月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月5日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月7日に拒絶査定に対する審判が請求され、平成19年1月9日に審判請求書の手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、平成16年9月6日に特許協力条約第34条補正の翻訳文が提出された平成16年2月20日付け手続補正書及び平成18年8月14日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

【請求項1】
エンジン吸入システムを清浄にするためのガソリン燃料添加物としての、洗剤添加物成分(A)および合成キャリアオイル成分(B)の相互協力作用混合物を有し、
i)前記洗剤添加物成分(A)は約500?1300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されている少なくとも1個のポリアルケンモノアミンを含有し、洗剤添加物成分(A)は約30?180質量ppmの量で燃料に含まれており、および
ii)キャリアオイル成分(B)は以下の一般式I:
R-O-(A-O)_(x)-H (I)
(式中、
Rは直鎖または分枝状C_(6)?C_(18)-アルキル基を表し、
AはC_(4)アルキレン基を表し、および
xは5?35の整数を表す)で表される少なくとも1種の化合物からなり、前記キャリアオイル成分(B)は約10?180質量ppmの量で燃料に含まれている、相互協力作用添加物組み合わせの使用。
【請求項2】
成分(A)を50?150質量ppmの量で含有する請求項1記載の使用。
【請求項3】
成分(A)を70?130質量ppmの量で含有する請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
成分(B)を20?150質量ppmの量で含有する請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
成分(B)を60?130質量ppmの量で含有する請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
成分(A)がポリイソブテンアミンである請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
成分(B)が式Iの化合物であり、Rが直鎖または分枝状C_(8)?C_(15)-アルキル基である請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
成分(B)が式Iの化合物であり、Aがブチレンである請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
成分(B)が式Iの化合物であり、xが16?25の整数である請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
成分(B)が式Iの化合物であり、xが20?24の整数である請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
成分(B)がトリデカノールブトキシレートである請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載の相互協力作用燃料添加物混合物。

第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定における拒絶の理由は、本願の請求項1?12に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものを包含する。

第4 刊行物等及び記載事項
原査定の拒絶の理由で挙げられた引用文献は、次のとおりであり、以下に示す事項が記載されている。

引用文献1:特開平2-173194号公報
(以下、「刊行物1」という。)

(1-a)「(1)a)それ自体公知のアミノ基またはアミド基を含有する吸入系の洗浄もしくは清浄状態維持のための洗剤と、b)担体オイルとして、ba)分子量が500以上のプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドを主体とするポリエーテル、およびbb)100℃における最低粘度が2mm^(2)/sである、モノカルボン酸もしくはポリカルボン酸とアルカノールもしくはポリオールとのエステル、の混合物とから成る添加物を少量含有して成る内燃機関用燃料。」(特許請求の範囲第1項)

(1-b)「[産業上の利用分野]
本発明は、それ自体公知のアミノ基またはアミド基を含有する燃料吸入系の洗浄用もしくは清浄状態維持用の洗剤と、担体オイルとして、ポリエーテルおよびアルカノールエステルもしくはポリオールエステルの混合物とから成る添加物を少量含有して成る内燃機関用燃料に関する。」(1頁右欄6?12行)

(1-c)「[従来の技術]
洗剤をオットーエンジン(気化器、噴霧ノズル、吸入弁、混合物ディストリビュータ)の混合気形成・吸入系の洗浄用および清浄状態維持用の燃料添加物に対する作用物質として洗剤を使用することは公知である。」(1頁右欄13?18行)

(1-d)「[課題を解決するための手段]
意外にも、ポリエーテルと高沸点もしくは難揮発性脂肪族または芳香族カルボン酸エステルから成る一定の担体オイル混合物を使用することにより予期し得ない相乗効果が得られ、比較的少量の洗剤しか必要でないことが発見された。」(2頁右下欄2?7行)

(1-e)「アミノ基またはアミド基を含有する洗剤a)としては、例えば次のものが挙げられる。
A: 平均分子量1、000の反応性ポリイソブチレンをヒドロフォルミル化(オキシ化)してポリイソブチルアルコールにし、次いでアンモニアで還元的アミノ化することにより得られるポリイソブチルアミン」(3頁左上欄15行?右上欄1行)

(1-f)「ポリエーテル(ba)としては、一般的なポリアルキレンオキサイド乃至オキシドが挙げられる。担体オイルとして有効であるためには、ポリエーテルの分子量が少なくとも500を超えていなければならない。このポリエーテルの粘度はたいてい以下に説明するエステルよりも明らかに高い。ポリアルキレンオキサイドはたいていの場合高粘度指数にして使用される。こうすると、なかんずく本発明に従ってエステルと組み合わせた場合に、ポリアルキレンオキサイドはいわゆる「弁付着や弁固着」を生じる傾向のない添加剤パケットを処方するのに適した担体オイルになる。ポリアルキレンオキサイドの出発分子としては脂肪族および芳香族モノ-、ジ-またはポリアルコール、あるいはアミンもしくはアミドおよびアルキルフェノールが適している。適当なポリエーテルに対する好適なオレフィンオキサイド、プロピレンオキサイドおよびブテンオキサイド並びにこれらの混合物である。しかし、ペンテンオキサイドおよびそれより高級オキサイドも本発明に従って組み合わせることができるポリエーテルとして適している。」(3頁左下欄11行?右下欄11行)

(1-g)「(bb)のエステルは例えば脂肪族または芳香族モノ-もしくはポリカルボン酸と長鎖アルコールから得られるエステルである。これらは多かれ少なかれ粘性の液体である。燃料添加剤の担体オイルとしては最低粘度が100℃において2mm^(2)/sであるエステルしか適していない。」(4頁左上欄下から10?5行)

(1-h)「相乗作用を示すための比較試験
下記表1に種々の担体オイル系と組み合わせた洗剤の系統的試験の結果をまとめた。試験方法として、オペル・カデット・テスト(CEC-F-02-T-79)を使用した。被検燃料としてスーパーガソリン(西独ラフィネリーウエア(Raffinerieware)社製、ROZ98、0.15g Pb/l残留)を用いた。」(4頁右上欄16行?左下欄2行)

(1-i)「ポリエーテル単独を公知の洗剤と使用すると、脂肪族アルコールを主体とし、ブテンオキサイドでアルコキシ化したポリエーテルが、同様にプロピレンオキサイド/ブチレンオキサイド/混合オキサイドから出発したポリエーテルに対して、高い効果を有することが示された。第一の場合は、平均残留堆積物は68?82mg/弁、第二の場合は、より高いエーテルを使用した際に、84?93mg/弁であった。」(5頁左上欄3?11行)

(1-j)「

」(5頁下欄)

(1-k)「

」(6頁下欄)

(1-l)「

」(7頁上欄)

(1-m)「

」(8頁上欄)

(1-n)「

」(9頁下欄)

第5 当審の判断
1 引用発明
(1)刊行物1の記載内容の大略
刊行物1には、(1-a)に摘記したように、「a)それ自体公知のアミノ基またはアミド基を含有する吸入系の洗浄もしくは清浄状態維持のための洗剤と、b)担体オイルとして、ba)分子量が500以上のプロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドを主体とするポリエーテル、およびbb)100℃における最低粘度が2mm^(2)/sである、モノカルボン酸もしくはポリカルボン酸とアルカノールもしくはポリオールとのエステル、の混合物とから成る添加物を少量含有して成る内燃機関用燃料」について記載されるところ、この「混合物」とはガソリン燃料の添加物、といえ、「a)」のアミノ基等を有する成分は、洗剤として添加されるものであり、「b)」の担体オイル成分は、特定のポリエーテル「ba)」と特定のエステル「bb)」との混合物である。
そして、(1-b)、(1-c)に摘記したように、「オットーエンジン(気化器、噴霧ノズル、吸入弁、混合物ディストリビュータ)の混合気形成・吸入系の洗浄用および清浄状態維持用」に、すなわち、ガソリンエンジンのエンジン吸入システムを清浄にするために、用いられるものである。
そうすると、刊行物1には、ひとまず、
「エンジン吸入システムを清浄にするためのガソリン燃料添加物として、
a)アミノ基等を有する、洗剤成分、
b)担体オイル成分であって、特定のポリエーテルba)と特定のエス テルbb)との混合成分、
を少量含有して成る内燃機関用ガソリン燃料」
について記載されているといえるので、次に、a)、ba)、及びbb)の各成分が具体的にどのようなものであるのか検討する。

(2)「試験番号50」と、a)、ba)、及びbb)成分
刊行物1の各表には、「洗剤の型」(a)成分に相当)、「エステル型」(bb)成分に相当)、「エーテル型」(ba)成分に相当)が記載されているところ、(1-n)に摘記した「表4(続き)」中には、「試験番号50」が記載され、これは、「洗剤の型」として「A」を100ppm、「エステル型」として「G」を300ppm、「エーテル型」として「K」を100ppm用いたものであって、その結果、「弁への堆積オペル-カデットテスト」で弁への堆積が少なかったことが記載されている。
そこで、この「試験番号50」における各成分を検討するに、「A」は、(1-j)に摘記した「表1」中の「試験番号1」の洗剤として「ポリイソブチルアミン 分子量 約1、000 約C_(72)H_(145)NH_(2)(A)」である。
「G」は、(1-k)に摘記した「表2」中の「試験番号15」に示され、「トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステル」のことである。
また、「K」は、(1-m)に摘記した「試験番号29?32」において用いられており、その「弁への堆積オペル-カデットテスト」の結果は、「68?82mg/弁」となっているところ、摘記(1-i)の説明の「脂肪族アルコールを主体とし、ブテンオキサイドでアルコキシ化したポリエーテルが、同様にプロピレンオキサイド/ブチレンオキサイド/混合オキサイドから出発したポリエーテルに対して、高い効果を有することが示された。第一の場合は、平均残留堆積物は68?82mg/弁、第二の場合は、より高いエーテルを使用した際に、84?93mg/弁であった。」からすると、「弁への堆積オペル-カデットテスト」の数値からして、「第一の場合」が「K」について説明されているところといえる。そして、(1-k)、(1-l)に摘記した「エーテル型」の3種類のエーテル、すなわち、「試験番号18?20」に記載されたポリオールあるいはポリエーテルをみると、上記の「第一の場合」である「脂肪族アルコールを主体とし、ブテンオキサイドでアルコキシ化したポリエーテル」は「試験番号18」に示された「8モルブテン-1-オキサイドと反応させたトリデカノールから成るポリオール」のことであると解される。

「試験番号50」(摘記(1-n))で用いている「A」、「G」、「K」は上記のものであり、この試験は、(1-h)に摘記したように「担体オイル系と組み合わせた洗剤の系統的試験」であって、「被検燃料としてスーパーガソリン」を用いたものであるので、この試験は、
「ガソリン燃料に、
a)成分であるA:ポリイソブチルアミン 分子量 約1、000
約C_(72)H_(145)NH_(2) 100ppm
bb)成分であるG:トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステル
300ppm
ba)成分であるK:8モルブテン-1-オキサイドと反応させたトリデカノ
ールから成るポリオール 100ppm
の混合物を添加し、使用すること」
であるといえる。

(3)引用発明
「試験番号50」は刊行物1に記載された発明の実施例であるから、刊行物1には、「試験番号50」とした発明が記載されているといえる。すなわち、刊行物1には、上記(1)、(2)に示したことを合わせると、
「エンジン吸入システムを清浄にするためのガソリン燃料添加物としての、
a)アミノ基等を有する、洗剤成分であるA:
ポリイソブチルアミン 分子量 約1、000 約C_(72)H_(145)NH_(2)
100ppm
b)担体オイル成分であって、特定のポリエーテルba)であるK:
8モルブテン-1-オキサイドと反応させたトリデカノールから成る
ポリオール 100ppm
担体オイル成分であって、100℃における最低粘度が2mm^(2)/sである、
特定のポリエステルbb)であるG:
トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステル 300ppm
の混合物を使用すること」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

2 対比
そこで、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
両者ともに、「エンジン吸入システムを清浄にするためのガソリン燃料添加物としての添加物組み合わせの使用」であり、引用発明における「a)アミノ基等を有する、洗剤成分」は本願発明における「洗剤添加物成分(A)」に相当し、引用発明における「b)担体オイル成分」は本願発明における「合成キャリアオイル成分(B)」に相当する。
また、引用発明における「a)・・・であるA」のポリイソブチルアミンは、(1-e)に摘記したようにポリイソブチレン、すなわち、ポリアルケンから製造され、アミノ基は1個結合しているものであるから、ポリアルケンモノアミンであり、本願発明とその分子量範囲も共通し、含有量も本願発明のi)のものの範囲と重複するから、本願発明における「i)前記洗剤添加物成分(A)は約500?1300の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されている少なくとも1個のポリアルケンモノアミンを含有し、洗剤添加物成分(A)は約30?180質量ppmの量で燃料に含まれており」に相当する。
引用発明における「b)・・・ba)であるK」の「8モルブテン-1-オキサイドと反応させたトリデカノールから成るポリオール」とは、本願発明の式(I)と同様に、
R’-O-(A’-O)_(y)-H (ただし、yは8である。)
と表すことができ、ここで、R’はC_(12)であって、A’はC_(4)アルキレン基であって、含有量も本願発明のi)のものの範囲と重複するから、本願発明における「ii)キャリアオイル成分(B)は以下の一般式I:
R-O-(A-O)_(x)-H (I)
(式中、
Rは直鎖または分枝状C_(6)?C_(18)-アルキル基を表し、
AはC_(4)アルキレン基を表し、および
xは5?35の整数を表す)で表される少なくとも1種の化合物からなり、前記キャリアオイル成分(B)は約10?180質量ppmの量で燃料に含まれている」に相当する。

そうしてみると、両者は、
「エンジン吸入システムを清浄にするためのガソリン燃料添加物としての、洗剤添加物成分(A)および合成キャリアオイル成分(B)の混合物を有し、
i)前記洗剤添加物成分(A)は約500?1300の範囲内の数平均分子量を有するヒドロカルビル基で置換されている少なくとも1個のポリアルケンモノアミンを含有し、洗剤添加物成分(A)は約30?180質量ppmの範囲内の量で燃料に含まれており、および
ii)キャリアオイル成分(B)は以下の一般式I:
R-O-(A-O)_(x)-H (I)
(式中、
Rは直鎖または分枝状C_(6)?C_(18)の範囲内のアルキル基を表し、
AはC_(4)アルキレン基を表し、および
xは5?35の範囲内の整数を表す)で表される少なくとも1種の化合物からなり、前記キャリアオイル成分(B)は約10?180質量ppmの範囲内の量で燃料に含まれている、添加物組み合わせの使用」
である点で一致し、

ア キャリアオイル成分として、本願発明においては「一般式I」のものを必須の成分としているのに対し、引用発明においてはさらに「担体オイル成分であって、100℃における最低粘度が2mm^(2)/sである、特定のポリエステルbb)であるG:トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステル」をも必須の成分としている点、
イ 添加剤を組み合わせたものが、本願発明においては「相互協力作用」と明示されているのに対し、引用発明においてはこのような明示はされていない点、

で一応相違する。(以下、「相違点ア」、「相違点イ」という。)

3 相違点についての判断
(1)相違点アについて
本願発明は、「洗剤添加物成分(A)および合成キャリアオイル成分(B)」が一定量燃料に含まれていればよいのであるから、そもそも、他の添加剤成分の存在を排除するものではないところ、本願明細書には、特許請求の範囲に記載された発明を特定する事項に加えて、「他のガソリン燃料添加物(以下に清浄剤添加物と記載する)を含有することができる。」として、「(g)カルボン酸エステル基」が例示され(段落【0031】)、その具体例として、「カルボン酸エステル基(g)を有する添加物は有利にモノ-、ジ-またはトリカルボン酸と長鎖アルカノールまたはポリオールとのエステル、特にドイツ特許第3838918号に記載されるような100℃で2mm^(2)/sの最低粘度を有するエステルである。・・・典型的なエステルの員子は・・・およびイソトリデカノールのトリメリテートである。これらの生成物はキャリアオイル特性を有する。」(段落【0042】)とされている。
ここで、引用発明における「トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステル」も本願明細書に記載された「イソトリデカノールのトリメリテート」も、トリメリット酸の3個のカルボキシル基がいずれもイソトリデカノールでエステル化された化合物であって同じものである。
本願発明においては、この「カルボン酸エステル基(g)を有する添加物」を「清浄剤添加物」と認識しているが、同時に「キャリアオイル特性を有する」とも説明されるうえに、他の添加剤との混合物とした場合に、それが、清浄剤添加物であるかキャリアオイル成分であるかを区別することに、特に意味があるとはいえない。
すると、本願発明においても、100℃における最低粘度が2mm^(2)/sである、トリメリット酸トリイソ-トリデシルエステルを適当量添加する態様を含むものといえるから、この点において両者に差異があるとはいえない。
したがって、相違点アは実質的に相違していない。

(2)相違点イについて
引用発明においても、(1-d)に摘記したように、「予期し得ない相乗効果が得られ」るものであるうえ、上記相違点アに実質的に差がないのであって、組成としては全く同じ態様を包含するものであるから、両者ともに同じ作用効果を奏する態様を含むものといえる。
したがって、相違点イは実質的に相違していない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、相違点ア、イは、いずれも実質的に相違していない。

4 請求人の主張
請求人は、平成19年1月9日付け審判請求書の手続補正書において、「本発明の対象は・・・の相互協力作用する二成分の組合せからなる特定の添加剤組合せの使用に関するものです。
これに対して引用文献1の発明は・・・からなる三成分燃料添加物混合物の使用に関します。
すなわち本発明は引用文献1の発明と異なり、二成分混合物の使用に関するものです。」と主張し、この見解に基づいて本願発明の優位性を述べている。
しかしながら、上記「3 (1)」で相違点アについて判断したように、本願発明も三成分燃料添加物混合物の場合の態様を包含するものであるから、この点において両者に差異はなく、上記「3 (1)」に示したとおりである。
したがって、引用発明は三成分混合物であり本願発明は二成分混合物であるから両者は異なる発明である、という前提に立つ請求人の主張は採用できない。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-20 
結審通知日 2010-01-22 
審決日 2010-02-03 
出願番号 特願2003-573091(P2003-573091)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 細井 龍史
原 健司
発明の名称 相互協力IVD性能を有するガソリン用燃料添加物混合物  
代理人 山崎 利臣  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 杉本 博司  
代理人 久野 琢也  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  

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