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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1218938
審判番号 不服2007-27696  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-09 
確定日 2010-06-21 
事件の表示 特願2005-257135「移動通信端末機のアンテナ装置及びその運営方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月23日出願公開、特開2006- 81181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成17年9月5日(パリ条約による優先権主張2004年9月7日、大韓民国)の出願であって、平成19年2月16日付けで拒絶理由が通知され、同年5月18日付けで手続補正されたが、同年7月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月9日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年11月8日付けで手続補正されたものである。

第2 本願発明
特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年11月8日付けで手続補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「移動通信端末機のアンテナ装置であって、該アンテナ装置は、
第1アンテナと、
該第1アンテナに接続されたアンテナ長調整部であって、該第1アンテナの長さを変化させるアンテナ長調整部と
を備え、
該アンテナ長調整部は、
複数の第2アンテナと、
複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、該第1アンテナと該複数の第2アンテナのうちの1つとの間に接続されている、複数のスイッチと、
制御部であって、
該第1アンテナの信号送受信品質を測定し、
該複数のスイッチのそれぞれを選択的に作動させて、複数の特有なスイッチ配置を生じさせ、
該複数の特有なスイッチ配置のそれぞれの信号送受信品質を測定し、
該複数の特有なスイッチ配置のうちの1つの特有なスイッチ配置であって、最も高い測定された信号送受信品質を有する特有なスイッチ配置を選択する
制御部と
を備える、アンテナ装置。」

第3 引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開2004-96341号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に、逆F型アンテナを有する情報処理装置に関する。」(2頁段落1)

ロ.「【0023】
【発明の好ましい実施形態】
図1は、本発明の実施形態による、例えばノートブック型パーソナル・コンピュータ(PC)およびPDAのようなモバイル情報処理装置10の構成の部分切り欠き図を示している。情報処理装置10は、表示部筐体20の内部における表示装置22の上辺にほぼ沿って配置された水平方向の逆F型アンテナ(Inverted-F Antenna)52と表示装置22の左側辺にほぼ沿って配置された垂直方向の逆F型アンテナ54とを含み、さらに主要部筐体30の内部におけるキーボード32の左側辺にほぼ沿って配置された水平方向の逆F型アンテナ56を含んでいる。3つの逆F型アンテナ52、54および56は、表示部筐体20の表示面と主要部筐体30のキーボード面が90度になるように表示部筐体20を開いたときに、それぞれのアンテナ方向が概ね互いに垂直になるように配置されている。逆F型アンテナ52、54および56は、接地点に並列に接続されている。3つの逆F型アンテナ52、54および56は、例えば偏波、周波数、スペースおよび角度ダイバーシティ(ダイバーシチ)のようなダイバーシティのために設けられている。逆F型アンテナ52、54および56は、送信および受信に用いることができる。
【0024】
図2は、本発明の実施形態による、図1に示された逆F型アンテナ52、54および56として用いられる逆F型アンテナ500の構成とその関連するコンポーネントとを例示している。逆F型アンテナ500は、RF信号放射および受信用の逆F型の主要導体エレメント502、エレメント502に直列に結合される、RF電磁波放射および受信用の中間の細長い長方形状の導体エレメント506および508および先端の細長い長方形状の導体エレメント510、および金属の接地導体518を含んでいる。エレメント502、506、508および510は、プリント板400上に、成形されたプレートとして実装されまたはストリップ・ラインとして形成されている。逆F型アンテナ500は、さらに、プリント板400上に配置されたアンテナ500の実効的長さLまたは共振周波数fの調整用のスイッチ・ユニット602、604および606を含んでいる。
【0025】
逆F型主要エレメント502は、細長いセグメント504と、セグメント504の一端に
おいてほぼ垂直方向に分岐していて接地点GPにおいて接地導体518に接続される短い基部セグメント512と、セグメント504の両端の間の位置でほぼ垂直方向に分岐していて接地導体518から分離している短い給電セグメント514とで形成されている。セグメント504とエレメント506、508および510とはほぼ直線上にあり、接地導体518のエレメント502側の則辺(上端縁)にほぼ平行に延びている。給電エレメント514は、その端部または給電点FPが例えば同軸ケーブルのような給電線またRF信号線は520に結合されている。
【0026】
スイッチ・ユニット602はセグメント504の他端とエレメント506の一端の間に結合される。スイッチ・ユニット604はエレメント506の他端とエレメント508の一端の間に結合される。スイッチ・ユニット606はエレメント508の他端とエレメント510の一端の間に結合される。
【0027】
逆F型アンテナ500の実効的長さLは、エレメント502のセグメント512の長さおよびセグメント504の長さ、およびエレメント502に電気的に結合されたエレメント506?510の長さの総和によって表される。エレメント504?514のそれぞれの長さは、典型的には約1cm?約10cmのオーダである。スイッチ・ユニット602、604および606は、図において誇張して大きく表されているが、エレメント502、および506?510と比較して遙かに小さい大きさまたはサイズ、例えば約1mm?数mmの大きさ(dimensions)を有する。
【0028】
給電エレメント514上のRF信号の電圧定在波比(VSWR)(=(1+|r|)/(1-|r|)、ここでrは複素電圧反射係数を表す)が適当な値に、例えば値2になるように、アンテナ500のエレメント502、506、508および510の形状および場合によっては関連するインダクタンス(誘導)およびキャパシタンス(容量)が調整されている。アンテナ500と給電線520がインピーダンスについて完全な整合状態にあるとき、VSWRは値1である。VSWRを値1より幾分大きくすると、RF信号の品質が幾分か低下するがアンテナ500の共振周波数帯域がより広くなる。
【0029】
情報処理装置10は、さらに、信号処理部302、RFチューナ304および制御デコーダ306を含んでいる。信号処理部302は、CPU、ROMおよびRAM等を含む、パーソナル・コンピュータ等の通常のプロセッサであればよい。情報処理部302は、RFチューナ304およびスイッチ制御デコーダ306に結合されている。RFチューナ304は給電線520に接続されている。制御デコーダ306はアンテナ500のスイッチ・ユニット602?606に結合されている。
【0030】
情報処理部302は、チャンネル識別またはチャンネル番号を表すデータをRFチューナ304に供給し、チャンネル識別に対応するアンテナ500の共振周波数fの調整用の制御信号を制御デコーダ306に供給する。制御デコーダ306は、その制御信号をデコードして、スイッチ・ユニット602?606を制御するのに適した別の制御信号、オン/オフ制御信号SC1、SC2およびSC3を、スイッチ・ユニット602?606にそれぞれ供給する。制御デコーダ306に供給される制御信号は、スイッチ・ユニット602?606のオン/オフ制御命令を含んでいてもよい。代替構成として、制御デコーダ306は、制御信号としてチャンネル識別を受け取って、そのチャンネル識別をデコードして、スイッチ・ユニット602?606を制御するのに適したその別の制御信号を供給してもよい。
【0031】
スイッチ・ユニット602は、制御信号SC1に応答して、エレメント502をエレメント506に結合またはそれから分離させて、アンテナ500の実効的長さLまたは共振周波数fを決定する。スイッチ・ユニット604は、制御信号SC2に応答して、さらにエ
レメント506をエレメント508に結合またはそれから分離させてアンテナ500の実効的長さLまたは共振周波数fを決定する。スイッチ・ユニット606は、制御信号SC3に応答して、さらにエレメント508をエレメント510に結合またはそれから分離させてアンテナ500の実効的長さLまたは共振周波数fを決定する。ユニット602?606は単極単投スイッチである。
【0032】
スイッチ・ユニット602がオフ状態のとき、アンテナ500の実効的な長さLは、セグメント512の長さL1とセグメント504の長さL2の和、即ち主要導体エレメント502のアンテナ長L1+L2である。スイッチ・ユニット602がオン状態で、スイッチ・ユニット604がオフ状態のとき、アンテナ500の実効的な長さLは、エレメント502の長さL1+L2およびエレメント506の長さL3の和である。スイッチ・ユニット602および604がオン状態で、スイッチ・ユニット606がオフ状態のとき、アンテナ500の実効的な長さLは、エレメント502の長さL1+L2、エレメント506の長さL3およびエレメント508の長さL4の和である。スイッチ・ユニット602?606がオン状態のとき、アンテナ500の実効的な長さLは、エレメント502の長さL1+L2、エレメント506の長さL3、エレメント508の長さL4およびエレメント510の長さL5の和である。このようにして、アンテナ500の送受信周波数帯域を変えることができる。アンテナ500の実効的な長さLは、概ね、送信または受信RF信号の波長λの4分の1に対応する。
【0033】
図2の実施形態によれば、スイッチをオンおよびオフするための簡単なディジタル回路を用いて、広い周波数帯域の小型の逆F型アンテナを実現できる。」(4頁段落23?6頁段落33)

ハ.「【0089】
図8は、本発明のさらに別の実施形態による、図1に示された逆F型アンテナ52、54および56の構成とその関連するコンポーネントとを例示している。アンテナ52、54および56の各々は、図2、3または6に示された逆F型アンテナ500、700または800の構成を有する。アンテナ52、54および56は、接地点に並列に結合されており、それぞれの給電線を介し、スイッチSW0を介し、例えば同軸ケーブルのような給電線522を介してRFチューナ304に結合されている。
【0090】
スイッチSW0は、ディジタル・スイッチ制御信号SC0に応答して、逆F型アンテナ52、54および56のいずれかを給電線522に選択的に結合する。情報処理装部302は、RF信号の送信または受信状態をモニタして、送信または受信状態の最も良好な逆F型アンテナを選択すればよい。
【0091】
制御デコーダ306は、スイッチ制御信号SC0をSW0に供給し、制御信号SC1、SC2...およびSC9等をそれぞれの共振周波数調整用のスイッチ・ユニット652?676に供給する。
【0092】
アンテナ52は、制御信号SC1?SC3等に応答して、最短の長さ(L1+L12)?最長の長さ(L1+L12+L13+L14+L15)の範囲の実効的長さを形成する。アンテナ54は、制御信号SC4?SC6等に応答して、最短の長さ(L1+L22)?最長の長さ(L1+L22+L23+L24+L25)の範囲の実効的長さを形成する。アンテナ56は、制御信号SC7?SC9等に応答して、最短の長さ(L1+L32)?最長の長さ(L1+L32+L33+L34+L35)の範囲の実効的長さを形成する。
【0093】
図9は、図8における逆F型アンテナ52、54および56の各々の可変実効的長さLと共振周波数fとの関係を示している。例えば、アンテナの長さLが6cmのとき共振周波数は1,250MHzとなり、アンテナの長さLが7cmのとき共振周波数は1,071MHzとなり、アンテナの長さLが8cmのとき共振周波数は938MHzとなり、アンテナ長が9cmのとき共振周波数は833MHzとなる。
【0094】
図10は、図9における共振周波数とVSWRの関係を示している。」(13頁段落89?14頁段落94)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0023】、【0024】の記載、上記摘記事項ハ.の【0089】の記載、図1、図2及び図8によれば、モバイル情報処理装置(10)は、逆F型アンテナ(52,54,56)を備えている。
また、逆F型アンテナ(52,54,56)は、逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)を有している。
また、逆F型アンテナ(52,54,56)は、複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)を有している。
また、逆F型アンテナ(52,54,56)は、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)を有している。そして、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)のそれぞれは、逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)と複数のエレメント(L13,L23,L33)又は複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)相互の間に接続されている。
また、上記摘記事項ハ.の【0090】?【0092】の記載、及び図8によれば、情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)は、逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)のRF信号送受信状態をモニタし、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)及びスイッチ(SW0)のそれぞれを選択的に作動させて、複数の特有なスイッチ配置を生じさせ、複数の特有なスイッチ配置のそれぞれのRF信号送受信状態をモニタし、複数の特有なスイッチ配置のうちの1つの特有なスイッチ配置であって、最も良好なモニタされたRF信号送受信状態を有する特有なスイッチ配置を選択していることが読み取れる。
また、複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)及びスイッチ(SW0)、情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)は、逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)に接続されその長さを変化させていることは明らかであるから、これらをまとめて逆F型アンテナ長調整部ということができる。

したがって、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「モバイル情報処理装置(10)の逆F型アンテナ(52,54,56)であって、該逆F型アンテナ(52,54,56)は、
逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)と、
該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)に接続された逆F型アンテナ長調整部であって、該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)の長さを変化させる逆F型アンテナ長調整部と
を備え、
該逆F型アンテナ長調整部は、
複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)と、
複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)であって、該複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)のそれぞれは、該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)と複数のエレメント(L13,L23,L33)又は複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)相互の間に接続されている、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)と、
スイッチ(SW0)と、
情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)であって、
該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)のRF信号送受信状態をモニタし、
該複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)及びスイッチ(SW0)のそれぞれを選択的に作動させて、複数の特有なスイッチ配置を生じさせ、
該複数の特有なスイッチ配置のそれぞれのRF信号送受信状態をモニタし、
該複数の特有なスイッチ配置のうちの1つの特有なスイッチ配置であって、最も良好なモニタされたRF信号送受信状態を有する特有なスイッチ配置を選択する
情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)と
を備える、逆F型アンテナ(52,54,56)。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「モバイル情報処理装置(10)」、「逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)」、「逆F型アンテナ長調整部」、「エレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)」、「スイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)」、「情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)」、「RF信号」及び「モニタ」は、その機能において、本願発明の「移動通信端末機」、「第1アンテナ」、「アンテナ長調整部」、「第2アンテナ」、「スイッチ」、「制御部」、「信号」及び「測定」にそれぞれ相当する。
b.引用発明の「複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)であって、該複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)のそれぞれは、該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)と複数のエレメント(L13,L23,L33)又は複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)相互の間に接続されている、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)」と、本願発明の「複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、該第1アンテナと該複数の第2アンテナのうちの1つとの間に接続されている、複数のスイッチ」とは、上記a.の対比を考慮すれば、いずれも、「複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、複数の第2アンテナのうちの特定の第2アンテナと接続されている、複数のスイッチ」という点で一致する。
c.引用発明の「送受信状態」と、本願発明の「送受信品質」とは、品質は状態の一種であるから、いずれも、「送受信状態」という点で一致する。
d.引用発明の「最も良好なモニタされたRF信号送受信状態」と、本願発明の「最も高い測定された信号送受信品質」とは、上記a.及びc.の対比を考慮すれば、いずれも、「特定のモニタされた信号送受信状態」という点で一致する。
e.引用発明の「逆F型アンテナ(52,54,56)」は、アンテナ装置の一種である。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>

「移動通信端末機のアンテナ装置であって、該アンテナ装置は、
第1アンテナと、
該第1アンテナに接続されたアンテナ長調整部であって、該第1アンテナの長さを変化させるアンテナ長調整部と
を備え、
該アンテナ長調整部は、
複数の第2アンテナと、
複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、複数の第2アンテナのうちの特定の第2アンテナと接続されている、複数のスイッチと、
制御部であって、
該第1アンテナの信号送受信状態を測定し、
該複数のスイッチのそれぞれを選択的に作動させて、複数の特有なスイッチ配置を生じさせ、
該複数の特有なスイッチ配置のそれぞれの信号送受信状態を測定し、
該複数の特有なスイッチ配置のうちの1つの特有なスイッチ配置であって、特定のモニタされた信号送受信状態を有する特有なスイッチ配置を選択する
制御部と
を備える、アンテナ装置。」

<相違点1>

「複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、複数の第2アンテナのうちの特定の第2アンテナと接続されている、複数のスイッチ」に関し、
本願発明は、「複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、該第1アンテナと該複数の第2アンテナのうちの1つとの間に接続されている、複数のスイッチ」であるのに対し、引用発明は、「複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)であって、該複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)のそれぞれは、該逆F型の主要導体エレメント(L1+L12,L1+L22,L1+L32)と複数のエレメント(L13,L23,L33)又は複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)相互の間に接続されている、複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)」である点。

<相違点2>

「アンテナ長調整部」に関し、
本願発明は、「複数の第2アンテナ」と、「・・・複数のスイッチ」と、「制御部」とを備えるのに対し、引用発明は、「複数のエレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)」と、「・・・複数のスイッチ・ユニット(652,654,656,662,664,666,672,674,676)」と、「情報処理部(302)及び制御デコーダ(306)」とを備えており、さらに、「スイッチ(SW0)」を備え、これに伴い、「スイッチ(SW0)」を選択的に作動させる点。

<相違点3>

「送受信状態」に関し、
本願発明は、「送受信『品質』」であるのに対し、引用発明は、「送受信状態」であるものの、状態が『品質』であるか否か不明である点。

<相違点4>

「特定のモニタされた信号送受信状態」に関し、
本願発明は、「最も高い測定された信号送受信品質」であるのに対し、引用発明は、「最も良好なモニタされたRF信号送受信状態」である点。

第5 判断
そこで、まず、上記相違点1について検討する。
引用発明の「複数のスイッチ・ユニット(602,604,606,652,654,656,662,664,666,672,674,676)」(複数のスイッチ)は、「該複数のスイッチ・ユニット(602,604,606,652,654,656,662,664,666,672,674,676)」(複数のスイッチ)のそれぞれを選択的に作動させて、「エレメント(L13,L14,L15,L23,L24,L25,L33,L34,L35)」(第2アンテナ)を接続して、逆F型アンテナ(52,54,56)(アンテナ装置)としての全体の長さを変化させているところ、複数の第2アンテナの接続関係の構成を、本願の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明特定事項の「前記複数の第2アンテナは、相互に異なる長さを有しており、並列に接続される」ような構成とすることは、設計の必要性に応じて格別の創意工夫を要することなく成し得る設計的事項にすぎないから、その上位概念に相当する本願発明のように「複数のスイッチであって、該複数のスイッチのそれぞれは、該第1アンテナと該複数の第2アンテナのうちの1つとの間に接続されている、複数のスイッチ」とすることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点2について検討する。
引用発明は、全体として、本願発明と同様な作用効果を奏するものであるが、逆F型アンテナ(52,54,56)(アンテナ装置)のうちの一つに着目してみても、逆F型アンテナ(アンテナ装置)として全体の長さを変化させているものであり、引用発明のスイッチ(SW0)を省いて、逆F型アンテナ(52,54,56)(アンテナ装置)のうちの一つとして構成しても同様な作用効果を奏するものであるから、本願発明のように「複数の第2アンテナ」と、「・・・複数のスイッチ」と、「制御部」とを備えるものとすることは当業者が容易に成し得ることである。

次に、上記相違点3及び4について検討する。
アンテナ装置において、測定する信号送受信状態として、「品質」を用いることは周知であり、引用発明に周知技術を採用することに格別の困難性は認められないから、引用発明に周知技術を適用して、本願発明のように、「送受信『品質』」とすることは当業者が容易に成し得ることである。その際、引用発明の「最も良好なモニタされたRF信号送受信状態」が、本願発明のように「最も高い測定された信号送受信品質」となることは当然である。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-01-28 
結審通知日 2010-01-29 
審決日 2010-02-09 
出願番号 特願2005-257135(P2005-257135)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 圭一郎西脇 博志  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 小宮 慎司
萩原 義則
発明の名称 移動通信端末機のアンテナ装置及びその運営方法  
代理人 山本 秀策  
代理人 安村 高明  
代理人 森下 夏樹  

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