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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1219022
審判番号 不服2008-20107  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2010-06-25 
事件の表示 特願2003-399872「二重ドラム缶用の内装缶および同内装缶を備える二重ドラム缶並びに同二重ドラム缶の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月23日出願公開、特開2005-162220〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成15年11月28日の出願であって,平成20年7月1日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年9月8日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願の日前の特許出願であって,その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。
特願2003-317394号(特開2005-81400号)」
上記特許出願を,以下,「先願」という。

第3.平成20年9月8日付けの手続補正についての却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成20年9月8日付けの手続補正(以下,「本件補正」という)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,平成20年2月4日付けで補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲については,補正前に,
「【請求項1】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に装着して使用される二重ドラム缶用の内装缶であって,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をそれぞれストレートな輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してある二重ドラム缶用の内装缶。
【請求項2】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に装着して使用される二重ドラム缶用の内装缶であって,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をそれぞれストレートな輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してあって,前記外装缶の胴カールにおける上半部を胴カールの外周面に倣って塑性変形せしめることにより前記フランジ構成部で覆い,かつ胴カールの下半部における少なくとも胴カールの下縁よりも内方まで前記延出部により巻き込んで外装缶内に装着される二重ドラム缶用の内装缶。
【請求項3】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶と,この外装缶内に装着される内装缶とよりなり,同内装缶は,その胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をそれぞれストレートな輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してあって,上記外装缶の胴カールの外側に,この胴カールの外周面に沿って内装缶の開口上端縁部を少なくとも上記胴カールの下縁よりも内方まで巻き込んで内装缶を外装缶に係合せしめてなる二重ドラム缶。
【請求項4】前記内装缶の開口上端縁部と,外装缶の胴部外周面との間に間隙を形成してなる請求項3に記載の二重ドラム缶。
【請求項5】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に,薄手の金属製にして,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をそれぞれストレートな輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してある内装缶を挿入して,内装缶の開口上端部を外装缶の開口部から上方へ突出させ,この内装缶における外装缶の開口部から突出する部分を,外装缶の上記胴カールまわりに,胴カールの外周面に倣って塑性変形せしめることにより塑性変形せしめて巻付け,内装缶の開口上端縁部を少なくとも上記胴カールの下縁よりも内方まで巻き込んで内装缶を外装缶に係合せしめる二重ドラム缶の製造方法。」
とあるのを

「【請求項1】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に装着して使用される二重ドラム缶用の内装缶であって,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をいずれも外側へ広がることなく上方へストレートに延びる輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してある二重ドラム缶用の内装缶。
【請求項2】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に装着して使用される二重ドラム缶用の内装缶であって,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をいずれも外側へ広がることなく上方へストレートに延びる輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してあって,前記外装缶の胴カールにおける上半部を胴カールの外周面に倣って塑性変形せしめることにより前記フランジ構成部で覆い,かつ胴カールの下半部における少なくとも胴カールの下縁よりも内方まで前記延出部により巻き込んで外装缶内に装着される二重ドラム缶用の内装缶。
【請求項3】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶と,この外装缶内に装着される内装缶とよりなり,同内装缶は,その胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をいずれも外側へ広がることなく上方へストレートに延びる輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してあって,上記外装缶の胴カールの外側に,この胴カールの外周面に沿って内装缶の開口上端縁部を少なくとも上記胴カールの下縁よりも内方まで巻き込んで内装缶を外装缶に係合せしめてなる二重ドラム缶。
【請求項4】前記内装缶の開口上端縁部と,外装缶の胴部外周面との間に間隙を形成してなる請求項3に記載の二重ドラム缶。
【請求項5】開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に,薄手の金属製にして,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をいずれも外側へ広がることなく上方へストレートに延びる輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してある内装缶を挿入して,内装缶の開口上端部を外装缶の開口部から上方へ突出させ,この内装缶における外装缶の開口部から突出するストレートに形成された輪状の部分を,外装缶の上記胴カールまわりに,胴カールの外周面に倣って塑性変形せしめて巻付け,内装缶の開口上端縁部を少なくとも上記胴カールの下縁よりも内方まで巻き込んで内装缶を外装缶に係合せしめる二重ドラム缶の製造方法。」
と補正するものである。

請求項1,請求項2,請求項3及び請求項5の補正は,いずれも,「ストレートな輪状」を「外側へ広がることなく上方へストレートに延びる輪状」に限定するものである。請求項4については,記載自体に変更はないが,請求項3を引用するものであるから,実質的に上記と同じ内容の補正がなされたといえる。また,これらの補正が産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.先願発明
本願の出願日前にされた特許出願であって,本願の出願後に出願公開がされた先願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下,「先願明細書等」という)には,図面とともに,次の事項が記載されている。
(a)「【0001】
本発明は,ドラム缶の再利用(リサイクル)又は再使用(リユース)を効率よく行うための新規な二重構造ドラム缶及びその製造方法に関する。」
(b)「【0009】
本発明が解決しようとする問題点は,従来の二重構造ドラム缶は内缶と外缶との係合部に締結バンド及び溶接等の固着手段が必要であり,製造コスト及び製造時間等を増大する原因となっていたことである。本発明は,締結バンド及び固着作業を一切不要にすることにより,製造コスト等を従来よりも大幅に下げることができる新規な二重構造ドラム缶とその製造方法を提供することを目的とする。」
(c)「【0015】
本発明に係る二重構造ドラム缶の製造方法は,略円筒状で上端部に天カール部が設けられ底部は底板を取付けて閉じられた外缶に対し,円筒状に成形された缶胴材に底部は底板を取付け,天部はオープンとした円筒形の内缶を成形する工程S1と,前記内缶を前記外缶に内挿する工程S2と,前記内缶の天部を前記外缶の天カール部におけるカール面に沿うように巻き締める工程S3と,を含むことを特徴とする。
【0016】
この場合,内缶を外缶に挿入する工程S2の前に,内缶の天部を予め外側に広げるための端部処理を少なくとも一度以上行うことが好ましい。このような端部処理は必ずしも無くてもよいが,この処理により,巻き締め工程S3が容易となる。端部処理は,より具体的には,鼻殺し,半円カール,フランジ出しなどの処理があり,外缶の天カール部に内缶の天部の少なくとも一点を1つ又は2つ以上のローラ等で押し付け,ドラム又はローラ等のいずれかを回転させて全周に亘って巻き締めを行うことができる。」
(d)「【0019】
(第1の実施例)-二重構造ドラム缶の構造-
図1は,本発明に係る二重構造ドラム缶の胴体部分の一例を示す断面図を示したものである。ブリキ製の内缶1が,外缶2に内装されている。外缶2には,天カール部2aが設けられ,内缶の天部1aが,この天カール部2aのカール面に沿うように巻き締められて固定されている。
【0020】
図2は,図1における内缶1と外缶2の係合部(図1において破線で示したA部)を拡大した断面図である。外缶2は図2のように天カール部を有しており,内缶1は該天カール面に沿うように巻き締められている。その結果,巻き締められた天カール面において内缶1と外缶2とがぴったりと密着し結合される。この内缶の天部1aの巻き込み量は,外缶の天カール部2aのカール中心Oから見て,水平面X-Xより大きく巻き込まれていなければならない。図2のように,係合部の断面を領域I乃至領域IVに分割した場合,本発明では,領域I(カール中心Oを通る水平面となす角αが90度以上180度以下)までカールしている。なお,そのためには,後述する製造方法により,外缶に内缶を挿入した後,内缶の天部を領域Iまで曲げ加工する処理が必要不可欠となる。ただし,αが135度より大きいところまでカールすると,これより大きくなるにつれて内缶を取り外すことが困難となってくるので,理想的には90度乃至135度程度が好ましい。」
(e)「【0030】
以上の各工程はいずれも一般的な公知技術を適宜用いることができ,適宜修正・変更等を行うことができる。
本実施例では,後述の外缶の天カール部に内缶の天部を巻き込んで固定する処理を容易にするため,天部にも予め端部処理(鼻殺し工程)を施している。図5(b)の缶胴材天部は,内ローラ21a及び外ローラ21bにより,端部直径を押し広げられる様子を示している。この端部処理工程を『鼻殺し工程』と呼ぶ。」
上記記載事項(c)における「このような端部処理は必ずしも無くてもよい」との記載及び記載事項(e)によれば,内缶の天部を予め外側に広げるための端部処理を施すことなく,すなわち,図5(b)に示される鼻殺し工程などの端部処理を施すことなく,内缶を外缶に挿入する実施形態も想定されている。
以上を総合すると,先願明細書等には,次の発明が記載されているといえる(以下,「先願発明」という)。
「円筒状に成形された缶胴材に底板を取付け,天部はオープンとした円筒形の内缶を成形し,該内缶の天部を予め外側に広げるための端部処理を施すことなく,上端部に天カール部2aが設けられ底部が閉じられた円筒状の外缶に該内缶を内挿し,その後,内缶の天部を外缶の天カール部2aにおけるカール面に沿うように巻き締めることにより製造される二重構造ドラム缶であって,内缶の天部の巻き込み量が,外缶の天カール部2aのカール中心Oから見て,水平面から90度乃至135度の範囲とされる二重構造ドラム缶。」

3.対比・判断
本願補正発明と先願発明とを対比する。
先願発明の「天カール部2a」,「外缶」及び「内缶」は,それぞれ本願補正発明の「胴カール」,「外装缶」及び「内装缶」に相当する。
先願発明の二重構造ドラム缶の製造工程には,天部をオープンとした円筒形の内缶を外缶に内挿する工程が含まれており,このときの内缶には天部を予め外側に広げるための端部処理が施されていない。また,先願発明は,内缶の天部の巻き込み量が,外缶の天カール部2aのカール中心Oから見て,水平面から90度乃至135度の範囲とされるものである。したがって,先願発明において,外缶に内挿される内缶は,全体として径が一様な円筒形であって,その上部は,外缶の天カール部2aの上半部に掛け止めされるフランジを構成するための部分と,天カール部2aの下半部を巻き込むための部分に割り当てられ,これらの部分は外側へ広がることなく上方へストレートに延びているといえる。そして,内缶が外缶に内挿されたとき,これらの部分が外缶の開口部から上方へ突出することは明らかである。
そうしてみると,本願補正発明は,先願発明と対比して相違するといえる点が見あたらないから,先願発明と同一というべきである。そして,本願の発明者は先願の発明者と同一ではなく,また,本願の出願の時において,本願の出願人は先願の出願人と同一でもないから,本願補正発明は,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成20年2月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。
「開口端縁に外向きの胴カールを有するドラム缶よりなる外装缶の内側に装着して使用される二重ドラム缶用の内装缶であって,胴部の上部に,この胴部と同径にして上記外装缶の胴カールの上半部に掛け止めされるフランジ構成部に続いて,胴カールの下半部を巻き込むための巻き込み代に相当する延出部をそれぞれストレートな輪状に備え,前記フランジ構成部と延出部は内装缶が外装缶内に挿入された際に外装缶の開口部から上方へ突出する位置に形成してある二重ドラム缶用の内装缶。」

第5.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。
してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,先願発明と同一であるから,本願発明も,同様に,先願発明と同一である。

第6.むすび
以上のとおり,本願発明は,先願明細書等に記載された発明である先願発明と同一であって,特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-09 
結審通知日 2010-04-20 
審決日 2010-05-06 
出願番号 特願2003-399872(P2003-399872)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 鳥居 稔
村上 聡
発明の名称 二重ドラム缶用の内装缶および同内装缶を備える二重ドラム缶並びに同二重ドラム缶の製造方法  
代理人 加藤 恒久  
代理人 加藤 恒久  
代理人 加藤 恒久  

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