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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1219103 |
審判番号 | 不服2007-21474 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-02 |
確定日 | 2010-06-24 |
事件の表示 | 特願2004- 96916「文書管理プログラム及び文書管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月13日出願公開、特開2005-284667〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成16年3月29日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年4月1日付け手続補正書の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。 「文書データの管理を行う文書管理プログラムであって、 前記文書管理プログラムが管理する文書データの中から、文書データの指定を受け付ける文書データ指定受付ステップと、 指定された文書データを利用した処理を受け付ける文書データ利用処理受付ステップと、 指定された文書データを複製して保存する複製保存ステップと、 前記複製に関連付けて、前記文書データ利用処理に応じた付帯情報と、前記文書データが利用されるたびに更新されるバージョン番号とを保存する付帯情報保存ステップとをコンピュータに実行させ、 前記文書データ利用処理は、FTP送信、プリンタ送信、アプリケーション送信のうちのいずれかである ことを特徴とする文書管理プログラム。」 2.当審で通知した拒絶理由に引用した引用例 一方、当審において平成22年1月29日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開2002-163213号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、電子メール情報を管理する方法に係わり、特に一連の関連する電子メール情報と、これらに添付される文書ファイルとをまとめて管理する方法に関する。」 (イ)「【0014】以下、図1を用いて詳細に説明する。まず、構成要素を説明する。第1の実施形態のシステムは文書管理サーバ10と、クライアント20と、メールサーバ30とで構成する。文書管理サーバ10はサーバ計算機、クライアント20はパソコンなどの計算機兼端末装置、メールサーバ30はサーバ計算機である。 【0015】文書管理サーバ10は、記憶装置11と、登録部12と、検索部13とで構成される。クライアント20は、メールクライアント22、OAソフトウェア23及びブラウザ24の各プログラムで構成される。メールサーバ30は、従来のメールサーバ機能に転送部31のプログラムを付加して構成される。」 (ウ)「【0021】図1の情報の格納例を用いて格納手順を以下に説明する。利用者がクライアント20のメールクライアント22を操作し、メールを送信する。ここで、メールクライアント22は電子メール情報15をメールサーバ30に送信する。次にメールサーバ30の転送部31は電子メール情報15が着信することによって起動し、電子メール情報15の内容に識別情報(例“[重要001]”)が含まれているかを判別する。識別情報が含まれている場合、文書管理サーバ10に電子メール情報15を転送する。なおメールサーバ30は、電子メール情報15をその宛先へ送信するために蓄積するという従来のメールサーバの機能を有している。電子メール情報15が文書管理サーバ10に着信することによって、登録部12が起動する。登録部12は、電子メール情報15を記憶装置11へ格納するために以下の処理を行う。」 (エ)「【0022】登録部12は受け取った電子メール情報15の識別情報を判別し、同じ識別情報を持つ電子メール情報15を集めた情報識別単位14を特定する。次に、電子メール情報15に添付してある文書ファイル16を取り出す。次に、取り出した文書ファイル16と同一のファイル名のファイルが存在するかを確認する。次に、同一のファイルが存在しなければ、電子メール情報15と文書ファイル16を該当する情報識別単位14にそのまま第1版として格納する。また、同一の文書ファイル16が存在する場合は、既に格納されている文書ファイル16の版歴を取得し、同一ファイルの新しい版として格納する。図1の101に示す例では、既に“文書ファイルA”の版歴が2版まで格納されているため、同一ファイルの3つめの版である“文書ファイルA(3版)”として格納する。」 (オ)図8の「81 添付文書ファイル参照画面」には、「指定した添付文書ファイル」、「関連する電子メールの一覧」及び「電子メール3の詳細」がそれぞれ表示され、該「電子メール3の詳細」の欄には、送信日、宛先、送信者、件名及び本文が示されている。 したがって、これらの記載事項によれば、引用例には以下の発明(以下「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30からなるシステムであって、 利用者がクライアント20からメールを送信し、 クライアント20が電子メール情報15をメールサーバ30に送信し、 メールサーバ30が電子メール情報15をその宛先へ送信するために蓄積すると共に、文書管理サーバ10に転送し、 文書管理サーバ10が着信した電子メール情報15に添付してある文書ファイル16を取り出して格納すると共に、 前記格納に関連付けて、前記文書ファイル16が添付された電子メール情報15の送信日、宛先、送信者、件名及び本文を保存すると共に、同一の文書ファイル16が存在する場合には、既に格納されている文書ファイル16の版歴を取得して同一ファイルの新しい版として格納するシステム。」 3.対比 本願発明と引用例記載の発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。 (あ)引用例記載の発明の「文書ファイル16」は、本願発明の「文書データ」に相当するものである。 (い)引用例記載の発明の文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30からなるシステムは、文書ファイル16を管理するシステムであるから、文書ファイルの管理を行う文書管理システムと呼ぶことができる。引用例記載の発明の文書ファイル16(文書データ)を管理する文書管理システムと、本願発明の文書データを管理する文書管理プログラムとは、共に文書データを管理する文書管理手段である点で共通する。 (う)引用例記載の発明の「版歴」は、本願発明の「バージョン番号」に相当するものである。 (え)引用例記載の発明の文書ファイル16は電子メール情報15に添付されているものである。引用例には明記はされていないが、引用例記載の発明においては、利用者が送信したい文書ファイル16を指定して電子メール情報15に添付し、送信する指示を出すものであることは明らかである。また、指定された文書ファイル16が添付された電子メール情報15を送信することは、指定された文書ファイル16を利用した処理であるといえるから、引用例記載の発明は(利用者から)文書ファイル16の指定を受け付け、指定された文書ファイル16を利用した処理を受け付けるものであるといえる。 (お)引用例記載の発明のメールサーバ30は指定された文書ファイル16が添付された電子メール情報15をその宛先へ送信すると共に、文書管理サーバ10に転送する、すなわち複製するものである。また、引用例記載の発明の文書管理サーバ10は着信した上記電子メール情報15から上記指定された文書ファイル16を取り出して蓄積する、すなわち保存するものである。したがって、引用例記載の発明の文書管理システムは、指定された文書ファイル16を複製して保存するものであるといえる。 (か)引用例記載の発明の文書ファイル16が添付された電子メール情報15を送信することは、上記(え)に記載したとおり、文書データ利用処理といえるから、該電子メール情報15の送信日、宛先、送信者、件名及び本文は、文書データ利用処理に応じた付帯情報であるといえる。 (き)引用例記載の発明において、同一の文書ファイル16が存在する場合は、既に格納されている文書ファイル16の版歴を取得し、同一ファイルの新しい版として格納することは、前記文書ファイル16が利用されるたびに更新される版歴(バージョン番号)を保存するものであるといえる。 したがって、本願発明と引用例記載の発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「文書データを管理する文書管理手段であって、 文書データの指定を受け付け、 指定された文書データを利用した処理を受け付け、 指定された文書データを複製して保存し、 前記複製に関連付けて、前記文書データ利用処理に応じた付帯情報と、前記文書データが利用されるたびに更新されるバージョン番号とを保存する手段。」である点。 (相違点1) 本願発明は文書管理プログラムであるのに対し、引用例記載の発明は文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30からなる文書管理システムであって、文書管理プログラムではない点。 (相違点2) 本願発明は文書管理プログラムが管理する文書データの中から、文書データの指定を受け付けるのに対し、引用例記載の発明はそのような構成にはなっていない点。 (相違点3) 本願発明の文書データ利用処理は、FTP送信、プリンタ送信、アプリケーション送信のうちのいずれかであるのに対し、引用例記載の発明の文書データ利用処理はメール送信であって、FTP送信、プリンタ送信、アプリケーション送信のうちのいずれかではない点。 4.当審の判断 (相違点1)について 文書管理システムを、サーバ、クライアントなどの複数の計算機で構成するか、一つの計算機で構成するかは当業者が適宜選択する設計事項である。そして、引用例記載の発明の文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30からなる文書管理システムでは、それぞれの計算機を文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30として動作させるためのプログラムが動作していることは明らかであるから、計算機(コンピュータ)を、引用例記載の発明の文書管理サーバ10、クライアント20、メールサーバ30からなる文書管理システムとして動作させるためのプログラム全体を、文書管理プログラムと称することは当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点2)について 引用例には、電子メール情報15に添付される文書ファイル16がどのように管理されているかは明記されていないが、上述したとおり、コンピュータを引用例記載の発明の文書管理システムとして動作させるためのプログラムを文書管理プログラムと称した場合、上記文書ファイル16を該文書管理プログラムで管理するようにすることは当業者が普通に考えることであるといえるから、前記文書管理プログラムが管理する文書データの中から、文書データの指定を受け付ける構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (相違点3)について、 文書データのFTP送信、プリンタ送信、及びアプリケーション送信はいずれも、文書データのメール送信と同様に慣用技術であり、それらの送信後に同一の文書データを再入手する課題はメール送信と同じといえるから、引用例記載の発明の文書ファイル16をメール送信する構成を、FTP送信、プリンタ送信、アプリケーション送信のいずれかの構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-23 |
結審通知日 | 2010-04-27 |
審決日 | 2010-05-10 |
出願番号 | 特願2004-96916(P2004-96916) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 匡、浜岸 広明 |
特許庁審判長 |
長島 孝志 |
特許庁審判官 |
田口 英雄 池田 聡史 |
発明の名称 | 文書管理プログラム及び文書管理装置 |
代理人 | 中島 司朗 |