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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1219156
審判番号 不服2008-27024  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-10-23 
確定日 2010-06-24 
事件の表示 特願2003- 57235「立体映像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月24日出願公開、特開2004-264761〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
(1)手続の経緯
本願は、平成15年3月4日を出願日とする出願であって、 平成20年8月26日付けで手続補正がなされ、同年9月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月23日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

(2)本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成20年8月26日付けの手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「視差のある複数の映像を交互に並べて表示し、与えられる照明光を表示した映像によって映像光とする液晶表示器と、液晶表示器に照明光を与える照明器と、液晶表示器と照明器の間に配置され、照明光の進路を規制して、複数の映像を照明する照明光の進行方向を相違させるバリアを表示する液晶パネルを備え、照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する立体映像表示器において、
照明器側の液晶パネルの偏光板をコレステリックフィルムと1/4波長位相差板に置換したことを特徴とする立体映像表示装置。」

2 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-94968号公報(以下「刊行物1」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

ア 「【請求項2】 右目用画像及び左目用画像を表示する画像表示手段と、
前記画像表示手段の前方もしくは後方に配置されてバリアストライプを形成するバリア手段とを備える3次元画像表示装置において、
前記画像表示手段及びバリア手段の間に設けられた光学調整層を備えることを特徴とする、3次元画像表示装置。」

イ 「【0002】
【従来の技術】従来、観察者に特殊なメガネを使用させることなく3次元画像を観察させ得る3次元画像表示装置として、パララックス・バリア方式の画像表示装置が知られている。この方式では、バリア・ストライプと称されている細かいストライプ状の遮光スリットが画像表示装置の前方、すなわち観察者側に配置される。観察者が、バリアストライプを介して観察した場合、観察者の右目に右目用画像が、左目には左目用画像が見えることになり、それによって、3次元画像の観察が可能とされる。」

ウ 「【0018】また、本発明で用いられるバリア手段としては、従来よりパララックス・バリア方式において採用されている適宜のバリア構成部材を用いることができ、例えば、液晶表示素子またはAlもしくはCrなどを用いたストライプバリアなど例示することができ、特に限定されるものではない。」

エ 「【0026】図1を参照して、画像表示手段としての液晶表示パネル10の前方に、バリア手段としての液晶アクティブバリアパネル20が配置されている。また、液晶表示パネル10と上記液晶アクティブバリアパネル20とは、光学調整層30により光学的に一体化され、かつ物理的にも一体化されている。
【0027】液晶表示パネル10は、本実施例では、アクティブマトリクス型液晶表示装置により構成されている。すなわち、液晶表示パネル10は、一対のガラス基板11,12を所定距離を隔てて対向させ、その間に液晶13を充填した構造を有する。ガラス基板11とガラス基板12との間隔は、スペーサ14により定められている。また、液晶13に電圧を印加するために、共通電極15がガラス基板11上に、表示電極16がガラス基板12上に形成されている。共通電極15及び表示電極16は、ITOなどの透明導電性材料により構成されている。
【0028】また、アクティブマトリクス型液晶表示を行うために、上記ガラス基板11,12の外側には、それぞれ、偏光板17,18が貼り付けられている。他方、液晶アクティブバリアパネル20は、液晶装置を用いて構成されており、一対のガラス基板21,22間に液晶23を充填した構造を有する。ガラス基板21,22間の距離は、スペーサ24により定められている。また、液晶23を用いてバリアを構成するために、ガラス基板21上に共通電極25が、ガラス基板22上にバリアストライプ電極26が形成されている。共通電極25及びバリアストライプ電極26は、例えばITOなどの透明導電性材料により構成されている。」

オ 「【0034】本実施例の3次元画像表示装置では、3次元画像を表示する場合には、液晶表示パネル10において、右目用画像及び左目用画像が図面上横方向に交互に表示される。これは、共通電極15と表示電極16との間に電圧を印加することにより、液晶13の液晶分子を右目用画像領域及び左目用画像領域において配向を制御することにより行い得る。
【0035】液晶アクティブバリアパネル20では、共通電極25とバリアストライプ電極26との間に電圧を印加することにより、液晶分子の配向方向が変化される。その結果、バリアストライプ電極26上の領域が液晶表示パネル10から入射してきた光を遮断するストライプ状のシャッターとして機能する。すなわち、バリアストライプ電極26が設けられている領域が、バリアストライプを構成することになる。
【0036】従って、液晶表示装置10で発生した右目用画像が、観察者Aの左目に入射しないように、かつ左目用画像が右目に入射しないように、上記液晶アクティブバリアパネル20により遮断される。すなわち、液晶アクティブバリアパネル20は、右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入射することを遮断するために設けられている。
【0037】なお、本実施例では、バリアストライプ電極26と、共通電極25との間に電圧を印加した際に、両者が対向している領域がバリアとして機能するように構成されていたが、逆に、バリアストライプ電極26間の領域がバリアとして機能するように構成してもよい。もっとも、本実施例では、共通電極25とバリアストライプ電極26との間に電圧を印加しない場合には、液晶アクティブバリアパネル20はバリアとしての機能を有しないため、液晶表示パネル10において2次元画像を表示した場合に、通常の2次元画像の表示装置として用いることもできる。
【0038】本実施例の特徴は、上記液晶表示パネル10と、液晶アクティブバリアパネル20とが、光学調整層30を用いて光学的に一体化されていることにある。本実施例では、光学調整層30は、熱硬化性樹脂としてのシリコーン接着剤を用いて一体化されていることにある。このようなシリコーン接着剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング・シリコン社製、自己接着性透明シリコーンポッティング材SE1740A/Bなどを用いることができる。この種のシリコーン接着剤の屈折率は、1.4程度であり、従って、空気の屈折率1.0に比べると、液晶表パネル10や液晶アクティブバリアパネルを構成している部材の屈折率とほぼ同等である。すなわち、光学調整層30の屈折率は、液晶表示パネル10のガラス板11や偏光板17、及び液晶アクティブバリアパネル20のガラス板22と同等の屈折率を有する。
【0039】従って、光学調整層30と、偏光板17との界面あるいは光学調整層30とガラス板22との界面において、液晶表示パネル10から液晶アクティブバリアパネル20側に透過してくる光の不要な屈折や反射が生じ難い。同様に、所望でない干渉縞も発生し難い。」

カ 「【0044】上記実施例では、バリア手段としてのアクティブバリアパネル20が画像表示手段としての液晶表示パネル10の前方に配置されていたが、本発明では、バリア手段は画像表示手段の前方に構成される必要は必ずしもなく、後方に配置されていてもよい。」

キ 上記アないしカの記載に照らして図1をみると、ガラス基板21の外側には「27」で示される部材が配されていることがみてとれる。

ク 上記アないしキから、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「右目用画像及び左目用画像を表示する画像表示手段と、前記画像表示手段の前方もしくは後方に配置されてバリアストライプを形成するバリア手段とを備え、前記画像表示手段及びバリア手段の間に設けられた光学調整層を備える、パララックス・バリア方式の3次元画像表示装置において、
前記画像表示手段の前方に前記バリア手段を配置する場合には、前記画像表示手段としての液晶表示パネルの前方に、前記バリア手段としてパララックス・バリア方式において採用されているバリア構成部材としての液晶アクティブバリアパネルが配置されており、液晶表示パネルと液晶アクティブバリアパネルとは、光学調整層により光学的にも物理的にも一体化されており、液晶表示パネルは、一対のガラス基板11,12を所定距離を隔てて対向させ、その間に液晶13を充填した構造を有し、ガラス基板11,12の外側にはそれぞれ偏光板17,18が貼り付けられており、液晶アクティブバリアパネルは、一対のガラス基板21,22間に液晶23を充填した構造を有し、該液晶23を用いてバリアを構成するために、ガラス基板21上に共通電極が、ガラス基板22上にバリアストライプ電極が形成され、ガラス基板21の外側には「27」で示される部材が配されており、
前記液晶表示パネルにおいて、右目用画像及び左目用画像が交互に表示され、液晶13の液晶分子を右目用画像領域及び左目用画像領域において配向を制御し、前記液晶アクティブバリアパネルでは、共通電極とバリアストライプ電極との間に電圧を印加することにより液晶分子の配向方向が変化し、バリアストライプ電極上の領域が液晶表示パネルから入射してきた光を遮断するストライプ状のシャッターとして機能することにより該バリアストライプ電極が設けられている領域がバリアストライプを構成し、該液晶アクティブバリアパネルは、右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入射することを遮断するために設けられおり、光学調整層とガラス板22との界面において、液晶表示パネルから液晶アクティブバリアパネル側に透過してくる光の不要な屈折や反射や所望でない干渉縞が発生し難く、
前記バリア手段は、前記画像表示手段の前方に構成される必要は必ずしもなく、後方に配置されていてもよい、3次元画像表示装置。」

(2)同じく特開平8-146416号公報(以下「刊行物2」という。)には、図とともに下記の事項が記載されている。

ア 「【請求項4】反射板、光源、400?700nmの範囲で選択反射を示すコレステリック液晶層からなる円偏光板、1/4波長板、および拡散板もしくは集光板が、この順に配置されてなることを特徴とする液晶ディスプレイ用バックライト装置。
・・・
【請求項12】配向した液晶層が電極を有する基板に挟持され、液晶相を挟持する基板の一方の外側に偏光板が配置されてなる液晶セルと、液晶層を挟持する基板の他方の外側に配置された請求項1?10のいずれかに記載の液晶ディスプレイ用バックライト装置とを用いることを特徴とする液晶表示装置。」

イ 「【従来の技術】・・・
【0003】・・・。一方、ツイストネマチック(TN)モードやスーパーツイストネマチック(以下、STNということがある。)モードでの表示が一般的であるので、光源からの光は偏光板を通して直線偏光とし、液晶表示装置に入射させる必要がある。したがって、偏光板を通過することにより、光源からの光量は半分以下になってしまうという問題があった。」

ウ 「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、400?700nmの範囲で選択反射を示すコレステリック液晶層と1/4波長板とを組み合わせることで、光源から発せられる光量の利用効率を高められることを見出し、さらにこれらを液晶パネルと組み合わせることで、高輝度の液晶表示装置が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」

エ 「【0050】次に、本発明のバックライト装置を用いた液晶表示装置について説明する。該液晶表示装置の例を図6および図7に示す。図中、番号9は本発明のバックライト装置、10、11は偏光板、12は液晶セルを示す。図6、図7において、液晶表示装置の光学特性をより改良するために偏光板と液晶セルの間に位相差フィルムなどが配置されていてもよい。また、図6の配置においてはバックライト装置から出射される直線偏光の振動面と偏光板10の透過軸とのなす角がほぼ0になるように配置することが必須である。
【0051】
【発明の効果】本発明の液晶ディスプレイ用バックライト装置は、コレステリック液晶層からなる円偏光板をバックライト装置に組み込むことで、光源からの光の一部を円偏光として直接透過させ、逆方向の円偏光は反射シートや反射カバーで反射させることで透過できる円偏光とし、光源からの直接透過する円偏光に加えることから、これを直線偏光に変換することができ、光源から発する光量の利用効率を高めることができ、さらにこれを用いた液晶表示装置は高輝度であり、工業的価値が大きい。」

オ 上記アないしエの記載、及び、図6(偏光板10を有する)に照らして図7をみると、液晶セル12は、その表示側に偏光板11を配置し、前記表示側とは反対側に偏光板を介することなく直線偏光を出射する液晶ディスプレイ用バックライト装置を配置するものであることがみてとれる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「液晶表示パネル」、「液晶アクティブバリアパネル」及び「3次元画像表示装置」は、それぞれ、本願発明の「液晶表示器」、「液晶パネル」及び「立体映像表示装置」に相当する。

(2)引用発明は、バリアストライプ電極上の領域が液晶表示パネルから入射してきた光を遮断するものであるところ、液晶表示パネルへ光を与える光源が存在することは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「液晶表示器に照明光を与える照明器」を備えているといえる。

(3)引用発明の「液晶表示パネル」は、画像表示手段であって、液晶分子を右目用画像領域及び左目用画像領域において配向を制御し、右目用画像及び左目用画像が交互に表示するものであるところ、引用発明の「3次元画像表示装置」がパララックス・バリア(視差バリア)方式であることに照らせば、前記右目用画像及び前記左目用画像が、それぞれ視差のある複数のものであることが自明であるから、引用発明の「液晶表示パネル」は、本願発明の「液晶表示器」と、「視差のある複数の映像を交互に並べて表示」する点で一致しする。また、上記(2)の検討に照らせば、引用発明の「液晶表示パネル」は、本願発明の「液晶表示器」と、「与えられる照明光を表示した映像によって映像光とする」点で一致する。

(4)引用発明の「液晶アクティブバリアパネル」は、バリアストライプ電極上の領域が、液晶表示パネルから入射してきた光を遮断するストライプ状のシャッターとして機能することにより該バリアストライプ電極が設けられている領域がバリアストライプを構成するものであって、右目用画像が左目に、左目用画像が右目に入射することを遮断するために設けらるものであるから、上記「入射してきた光」につき、その進路を規制し、その進行方向を相違させるバリアを表示するものといえる。しかるところ、上記(2)の検討に照らせば、引用発明は、本願発明の「照明光の進路を規制して、複数の映像を照明する照明光の進行方向を相違させるバリアを表示する液晶パネルを備え」との事項を備える。

(5)「照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する」ことの技術上の意義について、本願明細書には、「視差のある2つの映像を表示して、一方の映像光を左眼に導き他方の映像光を右眼に導くことにより、立体的な映像を提供する立体映像表示装置が提案されている。立体映像を提供するためには、左眼用の映像光が左眼のみに入射し、右眼用の映像光が右眼のみに入射するようにする必要があり、その一法として、光の進路を規制するバリアを用いることが行われている。左眼用の映像と右眼用の映像を並べて表示し、大きなバリアでそれらの映像光の進路を規制することもできるが、そのようにすると左眼用の映像光と右眼用の映像光の進行方向に過大な角度差が生じて、自然な立体映像を提供することは難しい。」(段落【0002】)、「そこで、左眼用の映像と右眼用の映像を一部分ずつ交互に並べて表示し、両映像の各部分に対応する複数の開口を有するバリアを用いるパララックスバリア方式の立体映像表示装置が知られている。」(段落【0003】)との記載があり、本願発明の「照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する」ことの技術上の意義は、左眼用の映像光と右眼用の映像光の進行方向に過大な角度差が生じないようにすることにより、自然な立体映像を提供することと認められ、パララックスバリア方式の立体映像表示装置であれば、「照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する」ものといえる。しかるところ、引用発明の「3次元画像表示装置」がパララックス・バリア方式であるから、引用発明は、本願発明の「照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する」との事項を備えているといえる。

(6)引用発明は、「画像表示手段(液晶表示パネル)」の前方もしくは後方に配置されてバリアストライプを形成する「バリア手段(液晶アクティブバリアパネル)」とを備え、前記「バリア手段(液晶アクティブバリアパネル)」が「前記画像表示手段(液晶表示パネル)」の後方に配置されていてよいから、上記(2)の検討に照らせば、引用発明は、本願発明の「液晶表示器と照明器の間に配置され」る「液晶パネル」を備えているといえる。

(7)以上(1)ないし(6)によれば、本願発明と引用発明とは、
「視差のある複数の映像を交互に並べて表示し、与えられる照明光を表示した映像によって映像光とする液晶表示器と、液晶表示器に照明光を与える照明器と、液晶表示器と照明器の間に配置され、照明光の進路を規制して、複数の映像を照明する照明光の進行方向を相違させるバリアを表示する液晶パネルを備え、照明光の進行方向を維持して左右の眼に異なる映像の映像光を導いて、立体的な映像を提供する立体映像表示器。」
の点で一致し、以下の点で相違するものと認められる。

本願発明は、「照明器側の液晶パネルの偏光板をコレステリックフィルムと1/4波長位相差板に置換した」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものではない点(以下「相違点」という。)。

4 判断
上記相違点について検討する。
(1)引用発明の「液晶表示パネル」は、一対のガラス基板11,12を所定距離を隔てて対向させ、その間に液晶13を充填した構造を有し、ガラス基板11,12の外側にはそれぞれ偏光板17,18が貼り付けられているものであるから、該「液晶表示パネル」において発生する右目用画像及び左目用画像が、特定の直線偏光を有することは自明である。

(2)しかるところ、上記2(1)オによれば、刊行物1には、「なお、本実施例では、バリアストライプ電極26と、共通電極25との間に電圧を印加した際に、両者が対向している領域がバリアとして機能するように構成されていたが、逆に、バリアストライプ電極26間の領域がバリアとして機能するように構成してもよい。もっとも、本実施例では、共通電極25とバリアストライプ電極26との間に電圧を印加しない場合には、液晶アクティブバリアパネル20はバリアとしての機能を有しないため、液晶表示パネル10において2次元画像を表示した場合に、通常の2次元画像の表示装置として用いることもできる。」(段落【0037】)と記載されているから、引用発明において、バリアストライプ電極と、共通電極との間に電圧を印加した際に、両者が対向している領域がバリアとして機能するように構成される場合には、「液晶アクティブバリアパネル」が、前記右目用画像及び左目用画像が有する特定の直線偏光と平行な直線偏光を生じるものであり、バリアストライプ電極間の領域がバリアとして機能するように構成る場合には、「液晶アクティブバリアパネル」が、前記右目用画像及び左目用画像が有する特定の直線偏光と直交する直線偏光を生じるものであることが明らかである。

(3)ここで、引用発明は、「液晶表示パネル」と「液晶アクティブバリアパネル」とが、「光学調整層」により光学的にも物理的にも一体化されるものであって、該「光学調整層」と「ガラス板22」とが「界面」を形成し、該「界面」において、液晶表示パネルから液晶アクティブバリアパネル側に透過してくる光の不要な屈折や反射や所望でない干渉縞が発生し難いものであり、「ガラス板22」側において、前記右目用画像及び左目用画像が有する特定の直線偏光と平行又は直交する直線偏光を生じるものではないところ、引用発明においては、前記右目用画像及び左目用画像が有する特定の直線偏光と平行又は直交する直線偏光が「ガラス基板21」側において生じるものである。そして、ガラス基板が直線偏光を生じさせるものではないという技術常識に照らせば、「ガラス基板21」の外側に配された「「27」で示される部材」が、直線偏光を生じさせるもの、すなわち偏光子であることは明らかである。

(4)そして、引用発明は、「画像表示手段の前方もしくは後方」に「バリア手段」が配置されるものであるところ、上記(3)の検討を踏まえると、引用発明の画像表示手段である「液晶表示パネル」の後方に、バリア手段である「液晶アクティブバリアパネル」を配置するに際しては、「光学調整層」と一対のガラス基板のうち何れか一方が界面を形成し、他方のガラス基板の外側に配された「「27」で示される部材」すなわち偏光子は、「液晶アクティブバリアパネル」のうち最も照明器に近い場所に配置すべきものであることが理解できる。

(5)他方、上記2(2)によれば、刊行物2には、光源からの光を直線偏光とする偏光板を通過することにより光源からの光量が半分以下になってしまうという問題を解決するために、コレステリック液晶層からなる円偏光板と1/4波長板とを組み合わせることで光源から発せられる光量の利用効率を高めた、直線偏光を出射する液晶ディスプレイ用バックライト装置を、液晶セルの表示側とは反対側に偏光板を介することなく配置する技術事項が開示されているといえる。

(6)「照明器側の液晶パネルの偏光板をコレステリックフィルムと1/4波長位相差板に置換した」ことの技術上の意義について、本願明細書には、「立体映像を提供するときは、バリアによって失われる照明光があり、非立体的な通常の映像を提供するときよりも照明光が減少するから、明るい立体映像を提供するために、できるだけ照明光の損失を抑えるのが望ましい。ところが、図2に示した立体映像表示装置9では、バリア表示用の液晶パネル21に導く直線偏光を生成するために偏光板22を用いており、このため、照明器30が発した照明光の1/2は偏光板22によって吸収されて失われる。」(段落【0014】)、「この立体映像表示装置では、照明器が発する照明光は、まず、コレステリックフィルムに入射して、回転方向が互いに逆で一方は透過し他方は反射される2種の円偏光に分離される。コレステリックフィルムを透過した円偏光は、1/4波長位相差板を透過することにより直線偏光となって、バリア表示用の液晶パネルに入射する。」(段落【0018】)、「本発明によれば、コレステリックフィルムと1/4波長位相差板を用いることにより、照明器が発する照明光の大部分を、バリア表示用の液晶パネルの照明に利用することができて、明るい立体映像を提供することが可能である。」(段落【0028】)との記載があり、本願発明の「照明器側の液晶パネルの偏光板をコレステリックフィルムと1/4波長位相差板に置換した」ことの技術上の意義は、明るい立体映像を提供するためにできるだけ照明光の損失を抑えるのが望ましいので、バリア表示用の液晶パネルに導く直線偏光を生成するための光学部材として、照明器が発する照明光の1/2が失われる偏光板に代えて、照明器が発する照明光の大部分をバリア表示用の液晶パネルの照明に利用できる、コレステリックフィルムと1/4波長位相差板を用いることと認められる。

(7)光源から発せられる光量の利用効率を高める課題は、画像表示装置、とくにバリア手段を有する3次元画像表示装置において当然考慮すべきものであるから、引用発明において上記(5)の技術事項を適用して、上記(4)の最も照明器に近い場所に配置される偏光子(「27」で示される部材)に代えて、コレステリック液晶層からなる円偏光板と1/4波長板とを組み合わせたものを配置し、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、刊行物2に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

(8)効果
本願発明の奏する効果が、引用発明及び刊行物2に記載された事項から当業者が予測可能な域を超える程の格別顕著なものとは認められない。

(9)まとめ
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-16 
結審通知日 2010-04-20 
審決日 2010-05-10 
出願番号 特願2003-57235(P2003-57235)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 稲積 義登
右田 昌士
発明の名称 立体映像表示装置  
代理人 上柳 雅誉  
代理人 宮坂 一彦  
代理人 須澤 修  

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