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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2007800236 審決 特許
不服20056940 審決 特許
不服200521514 審決 特許
不服20045852 審決 特許
不服2006724 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1219347
審判番号 不服2006-27347  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-04 
確定日 2010-06-30 
事件の表示 特願2001-326622「タチキニンNK3受容体アンタゴニストとしてのキノリン誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年6月26日出願公開、特開2002-179594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年5月23日(パリ条約による優先権主張 1994年5月27日 イタリア(IT)、1995年3月14日 イタリア(IT))を国際出願日とする特願平8-500287号の一部を、平成13年10月24日に新たな出願としたものであって、平成17年12月27日付け拒絶理由通知に対応して平成18年7月10日付けで意見書の提出とともに明細書の特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされたが、同年8月30日付けで拒絶査定がなされ(謄本の送達は同年9月5日)、これに対して、同年12月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

2.本願発明
本願請求項1?6に係る発明は、上記平成18年7月10日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである 。

「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミドまたはその塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)の治療用医薬組成物。」(以下、「本願発明」という。)

3.原査定の拒絶理由
原査定の拒絶の理由は、
「この出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」
という理由を含み、以下の点を指摘している。

本願明細書の発明の詳細な説明には、「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミドまたはその塩もしくは溶媒和物」が請求項に記載された各種疾患の治療に有用であることを示す具体的なデータは一切なく、また、NK_(3)受容体アンタゴニストという特性と上記各種疾患の治療との関係が広く知られたものでもないから、上記化合物が請求項に記載された種々の疾患の治療に有用であるとは認められない。

4.当審の判断
特許法第36条第4項(平成6年改正前)は、「発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成及び効果を記載しなければならない。」と規定している。
そこで、本願明細書の発明の詳細な説明に、当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度に、本願発明の目的、構成及び効果が記載されているか否かを検討する。

本願発明は、「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミドまたはその塩もしくは溶媒和物」を有効成分とし、「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)の治療」を用途とする医薬用途発明に関するものであると認められる。
ところで、医薬用途発明においては、一般に、有効成分の名称や化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、発明の詳細な説明に有効量、投与方法、製剤化に関する事項がある程度記載されている場合であっても、それだけでは当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを当業者が知ることができないから、発明の詳細な説明に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をして、その用途を裏付ける必要があり、それがなされていない発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たさないものであるというべきである。
そこで、本願明細書の発明の詳細な説明において、本願発明の医薬としての有用性が、薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載により裏付けられているか否かについて以下検討する。

本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の治療効果の確認に関し、「症状を治療する本発明の化合物の治療能力は、齧歯類疾病モデルを用いて評価し得る。」(段落【0039】)と記載されており、一般的な試験方法について言及されているものの、「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)」という本願発明の医薬組成物が対象とする各疾患についての治療効果を確認するための具体的な試験方法やその結果は何ら記載されておらず、本願発明の上記医薬用途における有用性を裏付ける薬理データは記載されていない。

次に、本願明細書の発明の詳細な説明において本願発明の医薬用途の有用性を裏付ける薬理データと同視すべき程度の記載があるか否かについて検討する。
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の医薬用途に関連する事項として、以下の(ア)?(エ)の事項が記載されている。(下線は合議体が付した。)
(ア)「NK_(3)リガンドとしての本発明の化合物の活性は、モルモットおよびヒトNK_(3)受容体に対する放射性同位体標識NK_(3)リガンド[^(125)I]-[Me-Phe^(7)]-NKBまたは[^(3)H]-センクタイド(Senktide)の結合を阻害するその能力によって決定する(・・・・・)。用いた結合アッセイにより、平衡条件におけるNK_(3)受容体に対する[^(125)I]-[Me-Phe^(7)]-NKBおよび[3H]-センクタイドの特異的結合を50%低下させるのに要する個々の化合物の濃度(IC_(50))が決定される。結合アッセイにより、2回または3回で2-5の別々に行った実験の平均IC_(50)が、試験した各化合物について供される。本発明の最も潜在的な化合物は、1-1000nMの範囲でIC_(50)値を示した;特に、[^(3)H]-センクタイドの置換によるモルモット髄膜において、実施例22、47、48および85の化合物は、各々、5.6、8.8、12.0および4.8(n=3)のKi(nM)を示す。」(段落【0039】)
(イ)「本発明の化合物のNK_(3)-アンタゴニスト活性は、モルモット回腸のセンクタイド-誘導収縮(・・・・・)およびウサギ単離虹彩括約筋(・・・・・)の収縮ならびにヒトNK_(3)受容体-媒介Ca^(++)移動(・・・・・)を阻害するその能力によって決定する。モルモットおよびウサギイン・ビトロ(in-vitro)機能性アッセイにより、試験した各化合物について、3-8別々に実験した平均KB(KBとは、センクタイドの濃度-応答曲線を2倍右方向にシフトさせるのに要した個々の化合物の濃度)が供される。ヒト受容体機能性アッセイにより、アゴニストNKBによって誘導されたCa^(++)移動を50%低下させるのに要した個々の化合物の濃度(IC_(50)値)が決定される。このアッセイにおいて、本発明の化合物は、アンタゴニストとしてふるまう。」(段落【0039】)
(ウ)「選択的ペプチド性NK_(3)受容体アンタゴニストは知られており(Drapeau,1990,Regul. Pept.,31,125-135)、ペプチド性NK_(3)受容体アゴニストに関する知見は、NKBは、NK_(3)受容体を活性化することによって、気道、皮膚、脊髄および黒色-線条体経路における神経入力の調節に重要な役割を有することを示している(MyersおよびUndem,1993,J. Phisiol.,470,665-679; Countureら,1993,Regul. Peptides,46,426-429; MccarsonおよびKrause,1994,J. Neurosci.,14(2),712-720; Arenasら,1991,J. Neurosci.,11,2332-8)」(段落【0002】)
(エ)「ここに本発明者らは、新規なクラスの選択的、非-ペプチドNK_(3)アンタゴニストを発見した。このアンタゴニストは、公知のペプチド性NK_(3)受容体アンタゴニストより代謝的観点から遥かに安定で、肺疾患(喘息、慢性閉鎖性肺疾病-COPD-、気道過敏感症、咳き)、(例えば、アトピー性皮膚炎ならびに皮膚じんま疹および発赤のような)皮膚疾患および痒疹(itch;麻疹)、神経性炎症ならびにCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)の治療において潜在的な治療有効性を有する。」(段落【0003】)

これらの記載について検討するに、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」は、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0084】の表に記載された「実施例85」の化合物であるから、上記(ア)には、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」が、NK_(3)受容体に対するリガンドとしての活性(結合活性)を有するものであることが記載されている。
そして、上記(イ)には、NK_(3)受容体アンタゴニスト活性を確認するためのモルモット及びウサギのイン・ビトロ(in-vitro)機能性アッセイとヒト受容体機能性アッセイにおいて、「本発明の化合物は、アンタゴニストとしてふるまう。」と記載されており、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」は、NK_(3)受容体アンタゴニスト活性を有するものと一応推認することができる。
一方、上記(ウ)には、選択的ペプチド性NK_(3)受容体アンタゴニストが知られていたこと、及びニューロキニンB(NKB)によるNK_(3)受容体の活性化が、気道、皮膚、脊髄及び黒色-線条体経路における神経入力の調節に関与していることが記載されているだけであり、NK_(3)受容体アンタゴニストが「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)」の各疾患の治療に有用であることを客観的に理解できる事項は記載されていない。
そして、上記(エ)には、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」が、肺疾患等の治療において、潜在的な治療有効性を有するとの主観的な見解が記載されているに過ぎず、しかも潜在的な有用性があるというだけであり、その具体的な根拠は何も示されていない。
また仮に、ニューロキニンB(NKB)によるNK_(3)受容体の活性化と、肺疾患等の間に一応の因果関係が推定されたとしても、その推定だけで、NK_(3)受容体アンタゴニストにより、ニューロキニンB(NKB)のNK_(3)受容体への結合を阻害しさえすれば、「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)」という多様な疾患について治療効果が得られるとまでの推論が成立するとはいえない。
そうすると、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」が、NK_(3)受容体アンタゴニスト活性を有するものと一応推認することができるとしても、そのことからは、本願発明の医薬組成物が「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)」の全ての疾患の治療に有用であると、当業者が理解できるとはいえない。
したがって、上記(ア)?(エ)は、本願発明の医薬用途の有用性を裏付ける薬理データと同視すべき程度の記載ということはできない。

そして、上記の記載を含む本願明細書の発明の詳細な説明の全記載を精査しても、本願発明の有効成分である「N-(α-エチルベンジル)-3-ヒドロキシ-2-フェニルキノリン-4-カルボキシアミド」が、「肺疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患-COPD-、気道過敏感症、咳)、皮膚疾患および痒疹(例えば、アトピー性皮膚炎および皮膚膨疹および発赤)、神経性炎症およびCNS疾患(パーキンソン病、運動疾患、不安症および精神病)の治療」に有用であることを客観的に理解するに足りる具体的な薬理データの記載は見出せず、本願の優先権主張日当時の技術常識を考慮しても、それと同視すべき程度の記載も見出すことはできない。

よって、本願明細書の発明の詳細な説明には、当業者が容易に本願発明の実施をすることができる程度に、本願発明の目的、構成及び効果が記載されているということはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-29 
結審通知日 2010-02-02 
審決日 2010-02-16 
出願番号 特願2001-326622(P2001-326622)
審決分類 P 1 8・ 531- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大宅 郁治小森 潔  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 井上 典之
弘實 謙二
発明の名称 タチキニンNK3受容体アンタゴニストとしてのキノリン誘導体  
代理人 田中 光雄  
代理人 青山 葆  
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