• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1219420
審判番号 不服2007-24115  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-03 
確定日 2010-07-01 
事件の表示 特願2002-214155「ネットワークのノードとそのノードで使用される方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-134154〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件出願は、平成14年7月23日(パリ条約による優先権主張2001年7月31日、米国)の出願であって、平成19年5月2日付けで手続補正がなされたが、平成19年5月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年9月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成19年10月3日付けで手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年10月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正は補正前の平成19年5月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「単一方向ネットワークまたは双方向ネットワークのノードで使用される方法であって、
接続要求を受領するステップと、
少なくとも1つの所定のシーケンスを用いて、隣接するノードに接続するリンク資源を割り当てるステップとを含み、
前記少なくとも1つの所定のシーケンスは、近隣のノードとの折衝により得られることを特徴とする方法。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「単一方向ネットワークまたは双方向ネットワークのノードで使用される方法であって、
接続要求を受領するステップと、
少なくとも1つの所定のシーケンスを用いて、隣接するノードに接続する光ネットワークリンク資源を割り当てるステップとを含み、前記少なくとも1つの所定のシーケンスは、隣接するノードが用いるシーケンスとは異なるシーケンスであり、さらに、
前記少なくとも1つの所定のシーケンスは、近隣のノードとの折衝により得られることを特徴とする方法。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、
「リンク資源」を「光ネットワークリンク資源」に限定するとともに「少なくとも1つの所定のシーケンス」を「隣接するノードが用いるシーケンスとは異なるシーケンス」と限定することにより特許請求の範囲を減縮するものであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)及び平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明
原査定の拒絶理由に引用された特開昭51-62908号公報(以下、「引用例」という。)には「両方向回線制御方式」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

「本発明は通話線とは別に設けた信号線により局間の制御を行う共通線信号方式を採った場合の、通話用両方向回線の制御方式に関するものである。
従来の共通線信号方式における両方向回線の選択方法を第1図および第2図により説明する。第1図において、(1)?(20)はA局、B局間に設けられた両方向回線であって、各両方向回線(1)?(20)の両端はそれぞれ両方向トランクBWTA、BWTBを介してネットワークNWA,NWBに収容されている。CPUA、CPUBは交換機の中央処理装置、SGUA、SGUBは信号の送受信が同時に行なえる信号送受信装置、MA,MBは記憶装置でその内容を第2図に示す。記憶装置MA,MBの内容は、回線番号とその回線の使用中表示よりなる。使用中表示の0は対応数回線の空き状態を、1は閉塞状態を示す。
今、A局で呼が発生するとA局の中央処理装置CPUAは記憶装置MA上に表示されている両方向回線(1)?(20)ごとに設けられた空き表示を調べて空き回線に対応する両方向トランクBWTAを選択し、その両方向トランクBWTAの番号情報を被呼者番号に付与し信号送受信装置SGUAから共通信号線SLを通してB局へ転送し、その後の接続をB局へ依頼する。B局で呼が発生した場合も同様に空き両方向トランクBWTBを選択し、その番号情報をA局へ転送する。空き両方向トランクBWTの選択はそれぞれの局で独立して行なわれるため両方の局で同じ回線を選択、捕捉することがおこる。
そこで両方向回線の選択順序を第2図に示すようにA局は(1)(2)・・・(20)の順に、B局では(20)・・・(2)(1)の順とし互いに優先順位を逆にすることで両方向回線が二重捕捉される確率を小さくしかつそれぞれの局で相手局から両方向回線番号情報を受信したとき、自局で既に両方向トランクを補足している両方向回線かどうかをチェックし、二重捕捉になることを検出した場合はその両方向回線の選択順序が相手局より優先のときには相手局に対して両方向回線の再選択指示情報を返送し、自局の接続を進め、また、逆に選択順序が相手局より非優先になっているときには、相手局からの接続を進め、自局では両方向トランクの再選択をすることで二重接続を防ぐことが行われている。」(第1頁左下欄最下行?第2頁右上欄第4行)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
・上記「A局」、「B局」は電話ネットワークの中の隣接する局であり、
・上記「両方向回線の選択方法」はA局およびB局で使用される方法であることは自明であり、
・第2図のMA,MBの「選択順序」はそれぞれA局、B局が自局での呼の発生に基づいて用いる両方向回線の選択順序であって、両者が異なる選択順序であることは明白であるから、
上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「電話ネットワークの局で使用される方法であって、
呼が発生するステップと、
所定の選択順序で隣接する局間を接続する両方向回線を選択するステップとを含み、前記選択順序は、隣接する局が用いる選択順序とは異なる選択順序である、方法。」

(3)対比・判断
上記引用発明において、
・「電話ネットワーク」が「双方向ネットワーク」であることは技術常識であり、
・「A局」および「B局」は電話ネットワークの交換局であり、これらの交換局のことを「ノード」と称することは普通に行われていることに過ぎず、
・交換局における「呼」の発生は当該交換局が「接続要求を受領する」ことに他ならず、
・回線の「選択順序」は「シーケンス(順序)」と言い得るものであり、
・「両方向回線」は電話ネットワークの中の隣接するA局、B局間を接続する回線であり、このような回線を「ネットワークリンク」と称することは普通に行われていることに過ぎず、また、数に限りがある局間回線のことを「資源」と称し、そのような局間回線を「選択する」ことを「割り当てる」ことと称することも普通に行われていることに過ぎないから、上記「両方向回線を選択する」とは「ネットワークリンク資源を割り当てる」と言い得るものであり、

以上を総合すれば、両者は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「双方向ネットワークのノードで使用される方法であって、
接続要求を受領するステップと、
少なくとも1つの所定のシーケンスを用いて、隣接するノードに接続するネットワークリンク資源を割り当てるステップとを含み、前記少なくとも1つの所定のシーケンスは、隣接するノードが用いるシーケンスとは異なるシーケンスである、方法。」

(相違点1)
「ネットワーク」に関し、補正後の発明は「単一方向ネットワークまたは双方向ネットワーク」であるのに対し、引用発明は「双方向ネットワーク」である点。
(相違点2)
「ネットワークリンク資源」に関し、補正後の発明は「光ネットワークリンク資源」と限定しているのに対し、引用発明ではそのような限定がない点。
(相違点3)
「所定のシーケンス」に関し、補正後の発明は「近隣のノードとの折衝により得られる」のに対し、引用発明ではどのようにして得られるのかが不明な点。

以下に、上記各相違点につき検討する。

(相違点1)について
「単一方向ネットワークまたは双方向ネットワーク」が引用発明のような「双方向のみの」通信が可能なネットワークを含むことは自明であるから、上記相違点1は補正後の発明と引用発明との間の格別の相違ということはできない。
(相違点2)について
光ネットワークは周知のネットワークであり、また、電話ネットワーク回線としてとして光回線を用いることも周知技術に過ぎないから、引用発明のネットワークリンク資源として光ネットワークリンク資源と限定することは、上記周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(相違点3)について
通信ネットワークにおいて、ノード間接続設定などのネットワーク管理機能をノード間のシグナリングにより分散方式で行うこと、すなわち、隣接ノード間の折衝によるネットワーク管理は周知技術である。
一方、上記「(2)引用発明」の項に記した摘記事項によれば、A局の中央処理装置CPUAは記憶装置MAにアクセスしたり、共通信号線SLを通してB局に情報を転送したりできるものであるから、A局とB局の回線選択順序(シーケンス)を互いに逆にする目的で上記周知技術を採用して、近隣のノードであるA局とB局との間の折衝により両局のシーケンスをそれぞれ得るようにすることは当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、補正後の発明の作用・効果も引用発明および周知技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

4.結語
以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成19年10月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用例の記載および周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例の記載および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-04 
結審通知日 2010-02-08 
審決日 2010-02-19 
出願番号 特願2002-214155(P2002-214155)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 稔  
特許庁審判長 竹井 文雄
特許庁審判官 高野 洋
新川 圭二
発明の名称 ネットワークのノードとそのノードで使用される方法。  
代理人 岡部 正夫  
代理人 越智 隆夫  
代理人 朝日 伸光  
代理人 臼井 伸一  
代理人 加藤 伸晃  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ