• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1219423
審判番号 不服2008-2067  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-25 
確定日 2010-07-01 
事件の表示 特願2002-544615「フローセンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月30日国際公開、WO02/42723、平成16年 5月13日国内公表、特表2004-514153〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は,平成13年10月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年11月23日、ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成19年10月24日付け(送達日:平成19年11月02日)で拒絶査定がなされ、これに対し平成20年01月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

その請求項1に係る発明は、平成19年10月3日付け手続補正によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)

「【請求項1】 特にガス流れを分析するためのフローセンサであって、支持体と、媒体の流れに対して敏感な少なくとも1つのセンサ構成素子とが設けられており、該センサ構成素子が、少なくとも部分的に支持体から、該支持体に比べて劣熱伝導性の領域によって分離されている形式のものにおいて、劣熱伝導性の領域(11,11′,14)が、多孔質のシリコン領域(11)または多孔質の酸化シリコン領域(11′)であるかまたは劣熱伝導性の領域(11,11′,14)が、支持体(10)の表面に設けられた切欠き(14)であり、該切欠き(14)の上方でセンサ構成素子(15)が、切欠き(14)にわたって延びる少なくとも十分に片持ち式の少なくとも1つのウェブ(13)に配置されており、センサ構成素子が、劣熱伝導性の領域の上方に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする、フローセンサ。」

2.刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭61-170618号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の記載がある。

a)「[産業上の利用分野]
本発明は流速検出用半導体センサ、特に流体の流速を電気的に検出するセンサの改良に関する。
[従来技術]
流体の流速を検出するセンサとして、従来より半導体基板上に発熱体を設けた流速検出用半導体センサが周知であり、このセンサは、流体の流速に応じて変化する発熱体からの放熱量を電気的に測定し流速を検出することができることから、気体または液体等の流速測定に幅広く用いられている。」(第1頁右欄8-19行)

b)「第1図及び第2図には本発明にかかる流速検出用半導体センサの好適な第1実施例が示されており、実施例のセンサは、厚さ400ミクロンのP型シリコン半導体基板10の表面中央部に通電発熱体12を設け、更にこの発熱体12と基板10との間に厚さ50ミクロンの熱絶縁体14を設けている。
実施例において、前記熱絶縁体14は、P型シリコン半導体基板10を選択的に多孔質化した後これを酸化して多孔質シリコン酸化膜とすることにより基板10内に形成される。
また、本実施例において、前記通電発熱体12は、この熱絶縁体14の表面中央に設けられた多孔質化されていないN型シリコンをもって形成されている。」(第3頁右下欄3-17行)

c)「まず、本発明の検出センサを流体内に設置し、発熱体12の表面における温度が一定になるように発熱体12を通電加熱する。
この時、発熱体12から奪われる熱量は流体100の流速Vの1/n乗に比例するため、この発熱体12から発生するジュール熱Qを電気的に演算測定することにより流速Vを測定することができる。なお、nはセンサの形状等によって決まる定数である。
ここにおいて、本発明のセンサは、発熱体12から半導体基板10へ向け伝達する熱が熱絶縁体14により効果的に遮蔽されているため、発熱体12の熱負荷は極めて軽くその発熱量は流体100の流速Vに敏感に反応して変化する。従って、本発明のセンサによれば、流体100の流速Vを極めて応答性良く正確に測定することができる。」(第4頁左下欄7行-右下欄3行)

上記a)の記載からみて、引用例の「流速検出用半導体センサ」は、気体または液体等の流速測定に用いることが読み取れる。

また、上記c)の記載からみて、「発熱体12」は「その発熱量は流体100の流速Vに敏感に反応して変化する」ものであり、かつ、当該発熱量を電気的に演算測定して流速Vを測定することから、「発熱体12」が「流体100の流速Vに敏感に反応する」ものであることが読み取れる。

さらに、上記b)の記載及び第1図からみて、「発熱体12」はその全体が「熱絶縁体14」を介して「基板10」上かつ「熱絶縁体14の表面中央」に配置されているので、「発熱体12」が「少なくとも部分的に」「基板10」から、熱絶縁体14によって分離されていること、かつ、「発熱体12」が「熱絶縁体14」の「上方に少なくとも部分的に配置」されていることが明らかである。

また、上記b)の記載及び第1図からみて、「熱絶縁体14」が「多孔質シリコン酸化膜」からなることが読み取れる。
以上の記載及び図面を勘案すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。

「気体または液体等の流速測定に用いる流速検出用半導体センサであって、基板10と、流体100の流速Vに敏感に反応する発熱体12とが設けられており、該発熱体12が、少なくとも部分的に基板10から、多孔質領域によって分離されているものにおいて、該多孔質領域が多孔質シリコン酸化膜からなる多孔質領域であり、発熱体12が多孔質シリコン酸化膜からなる多孔質領域の上方に少なくとも部分的に配置されている流速検出用半導体センサ」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「気体または液体等の流速測定に用いる流速検出用半導体センサ」、「基板10」、「該発熱体12が、少なくとも部分的に基板10から、多孔質領域によって分離されているもの」、「多孔質領域」、「シリコン酸化膜からなる多孔質領域」、「流速検出用半導体センサ」は、本願発明の「特にガス流れを分析するためのフローセンサ」、「支持体」、「少なくとも部分的に支持体から、該支持体に比べて劣熱伝導性の領域によって分離されている形式のもの」、「劣熱伝導性の領域(11,11′,14)」、「多孔質の酸化シリコン領域(11′)」、「フローセンサ」にそれぞれ相当する。

また、上記記載c)における「発熱体12から奪われる熱量は流体100の流速Vの1/n乗に比例するため、この発熱体12から発生するジュール熱Qを電気的に演算測定することにより流速Vを測定することができる。」という記載からみて、引用発明の「発熱体12」は流速検出用のセンサとして機能する素子といえ、引用発明の「発熱体12」は本願発明の「センサ構成素子」に相当する。

してみると、引用発明の「流体100の流速Vに敏感に反応する発熱体12」、「発熱体12がシリコン酸化膜からなる多孔質領域の上方に少なくとも部分的に配置されている」は、本願発明の「媒体の流れに対して敏感な少なくとも1つのセンサ構成素子」、「センサ構成素子が、劣熱伝導性の領域の上方に少なくとも部分的に配置されている」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「特にガス流れを分析するためのフローセンサであって、支持体と、媒体の流れに対して敏感な少なくとも1つのセンサ構成素子とが設けられており、該センサ構成素子が、少なくとも部分的に支持体から、該支持体に比べて劣熱伝導性の領域によって分離されている形式のものにおいて、劣熱伝導性の領域が、多孔質の酸化シリコン領域であり、センサ構成素子が、劣熱伝導性の領域の上方に少なくとも部分的に配置されていることを特徴とする、フローセンサ。」である点において一致し、本願発明では「劣熱伝導性の領域(11,11′,14)」に関して、「多孔質のシリコン領域(11)または多孔質の酸化シリコン領域(11′)であるかまたは劣熱伝導性の領域(11,11′,14)が、支持体(10)の表面に設けられた切欠き(14)であり、該切欠き(14)の上方でセンサ構成素子(15)が、切欠き(14)にわたって延びる少なくとも十分に片持ち式の少なくとも1つのウェブ(13)に配置されて」いるのに対して、引用発明では「多孔質の酸化シリコン領域(11′)」のみである点において一応相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
本願発明は、「劣熱伝導性の領域(11,11′,14)」を、「多孔質のシリコン領域(11)」、「多孔質の酸化シリコン領域(11′)」、及び、「支持体(10)の表面に設けられた切欠き(14)であり、該切欠き(14)の上方でセンサ構成素子(15)が、切欠き(14)にわたって延びる少なくとも十分に片持ち式の少なくとも1つのウェブ(13)に配置」するものの三つから択一的に選択するものであり、「劣熱伝導性の領域(11,11′,14)」に係る当該三つの選択肢は、互いに自らと他の二つの選択肢との間で排他的な関係にあり択一的に選択される。

一方、引用発明は「劣熱伝導性の領域(11,11′,14)」として、上記三つの選択肢のうちの「多孔質の酸化シリコン領域(11′)」を選択するものである。

したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。

4.当審の判断
したがって、本願発明は,引用例に記載された発明であるから、本願は特許法29条1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-02-04 
結審通知日 2010-02-05 
審決日 2010-02-17 
出願番号 特願2002-544615(P2002-544615)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 古屋野 浩志
下中 義之
発明の名称 フローセンサ  
代理人 二宮 浩康  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 杉本 博司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ