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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M |
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管理番号 | 1219432 |
審判番号 | 不服2008-28476 |
総通号数 | 128 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-11-06 |
確定日 | 2010-07-01 |
事件の表示 | 特願2002-370778「スイッチング電源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-201479〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年12月20日の出願であって、平成20年9月29日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成20年10月7日)、これに対し、平成20年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成20年12月5日付で手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 平成20年12月5日付で手続補正書が提出されたが、独立項である請求項3のみが補正がなされ、独立項である請求項1は補正がなされなかったので、請求項1は補正の適否の判断の対象ではなく、請求項1について特許性を判断する。本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「一次側に配置されパルス幅変調制御のためのパルス信号を生成するパルス幅変調制御回路と、 一次側に配置され直流電源の出力を前記パルス幅変調制御回路からのパルス信号に応じて断続させて第1交流電圧を生成するスイッチング回路と、 前記一次側と電気的に絶縁された二次側に配置され、前記スイッチング回路で生成された第1交流電圧の印加により誘起された第2交流電圧を整流及び平滑化して直流電圧を生成する整流平滑回路と、 一次側に配置され、外部から第2絶縁手段を介して入力される外部信号を前記パルス幅変調制御回路で生成される基準電圧に加算する電圧加算回路とを備え、 前記整流平滑回路で生成された直流電圧は第1絶縁手段を介して前記パルス幅変調制御回路に送られ、 前記パルス幅変調制御回路は、前記整流平滑回路で生成された直流電圧と前記電圧加算回路から出力される電圧との差に応じたパルス幅を有する前記パルス信号を生成するスイッチング電源装置。」 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-289548号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 1-a「図2はこの様な電源装置の例を示すブロック図であり、n+1個の安定化電源ユニット10-1?10-n+1が設けられており、これ等n+1個の安定化電源ユニットの安定化出力電圧が並列とされて図示せぬ共通負荷へ供給されている。 各電源ユニットの構成は全て同一であり、図では簡単化のために電源ユニット10-1のみについて示している。この電源ユニットはAC入力電源を安定化DC出力に変換するものであり、スイッチング電源方式となっている。 AC入力電源は入力端子32a-32b間に供給され、整流ダイオード回路23により全波整流され、平滑コンデンサ24にて平滑化される。この平滑出力はトランス26の一次側へスイッチングトランジスタ27を介して印加される。このトランス26の二次側出力はダイオード28,29により整流され、チョークコイル31,コンデンサ25による平滑回路により再び直流とされ、逆流阻止ダイオード30を介してDC出力端子33a-33b間から負荷へ導出されるようになっている。 DC出力電圧の安定化のために、この出力電圧がコンパレータ18の一入力13へ印加されて基準電圧源14の電圧Vref と比較され、誤差出力が安定化制御回路21へ入力される。この安定化制御回路21では、この誤差出力に応じたデューティを有するパルス(PWMパルス)が生成され、ドライブ回路22を介してスイッチングトランジスタ27のオンオフ制御がなされる(PWM制御)。」(【0003】-【0006】) 1-b「安定化電源ユニットの挿抜時における挿抜予告信号の発生に応答して、出力電圧との比較をなす基準電圧を可変制御する構成とする。挿入時には、出力電圧が高くなるので、これを抑止すべく基準電圧を低くし、抜去時には逆になるので、基準電圧を高くするよう制御する。」(【0011】) 1-c「図1は本発明の実施例のブロック図であり、図2と同等部分は同一符号にて示している。図1と異なる部分につき述べると、活線挿抜予告信号発生部40が設けられており、電源ユニット10-1?10-n+1のいずれかが活線状態で挿抜されると、挿抜予告信号を生成するものである。 詳述すると、電源ユニットの挿入開始からその終了までの間、例えばスイッチ41がオンとなり、ローレベルの挿入予告パルスが各電源ユニットの端子11へ供給される。また、電源ユニットの抜去開始からその終了までの間、スイッチ42がオンとなり、ローレベルの抜去予告パルスが各電源ユニットの端子12へ供給される。 この活線挿抜予告信号発生部40はスイッチ41,42からなるものと等価的に示しているが、実際には、電子素子や上位装置(図示せず)等により、電源ユニットの挿抜操作開始時から終了時までパルス状信号を生成する構成であれば良く、周知のものを使用することができる。」(【0013】-【0015】) 1-d「挿入予告信号は電源ユニット内のアンプ19へ入力され、このアンプ19の出力は抵抗15,16により基準電源14の電圧Vref と加算され、コンパレータ18の基準入力となっている。抜去予告信号は電源ユニット内のアンプ20へ入力され、このアンプ20の出力は抵抗15,17により基準電源14の電圧Vref と加算され、コンパレータ18の基準入力となっている。 他の構成は図2のそれと同等であってその説明は省略するものとする。 活線状態で電源ユニットを抜去する場合には、他の電源ユニットは、抜去された電源ユニットが供給していた電流分を負荷へ供給する様動作するために、安定化制御が応答する時間の間には出力電圧が低下することになる。 そこで、この出力電圧低下を出力電圧規格内に抑えるために、抜去予告信号の入力に応答してアンプ20の出力を抵抗17を介して基準電圧Vref に加算して、この電圧Vref よりも高い電圧をコンパレータ18の基準入力とするのである。こうすることで、電源ユニットの各出力電圧Vout はこの高い基準電圧になる様動作することになる。」(【0017】-【0020】) 1-e「以上述べた如く、本発明によれば、電源ユニットの活線挿抜時に、電圧変動を含めて出力電圧規格の範囲内に抑止する様に出力電圧を増減することにより、電圧変動を最小限に抑止することができるという効果がある。 また、各電源ユニットには簡単な構成の回路を付加するのみで良いので、装置の大型化が抑止できるという効果もある。」(【0023】-【0024】) 上記記載及び図1に基づけば、トランス26の一次側に、PWM制御のためのコンパレータ18とパルスを生成する安定化制御回路21が配置されている。 上記記載及び図1に基づけば、トランス26の一次側に、安定化制御回路21が生成するパルスに応じてスイッチングトランジスタ27をオンオフ制御して第1交流電圧を生成する回路が配置されている。 トランス26の二次側には、一次側電圧に基づく二次側電圧が誘起されるから、上記記載及び図1に基づけば、トランス26の二次側に、第1交流電圧を生成する回路で生成された第1交流電圧の印加により誘起された第2交流電圧を整流及び平滑化して直流を生成する整流平滑回路が配置されている。 上記記載及び図1に基づけば、トランス26の一次側に、活線挿抜予告信号発生部40からの挿抜予告信号をコンパレータ18の基準電圧に加算する回路が示されている。 上記記載事項からみて、引用例1には、 「トランスの一次側に配置されたPWM制御のためのコンパレータとパルスを生成する安定化制御回路と、 トランスの一次側に配置され平滑出力を安定化制御回路が生成するパルスに応じてスイッチングトランジスタをオンオフ制御して第1交流電圧を生成する回路と、 トランスの二次側に配置され、前記第1交流電圧を生成する回路で生成された第1交流電圧の印加により誘起された第2交流電圧を整流及び平滑化して直流を生成する整流平滑回路と、 トランスの一次側に配置され、活線挿抜予告信号発生部からの挿抜予告信号をコンパレータの基準電圧に加算する回路とを備え、 整流平滑回路で生成された直流はコンパレータの一入力へ印加され、 コンパレータは、整流平滑回路で生成された直流と前記基準電圧に加算する回路から出力される電圧を比較して出力される誤差出力を安定化制御回路に入力し、この誤差に応じたデューティを有するパルスを生成する電源装置。」 との発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されているものと認められる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平2-14356号(実開平3-106874号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 2-a「第6図は、従来のこの種のスイッチング電源装置の構成概念図である。 図において、1は交流電源であり、整流平滑回路2で直流に変換され、DC/DCコンバータ部3に印加される。DC/DCコンバータ部3において、4は整流平滑回路2からの直流電圧Eiが、スイッチング素子5によりオン/オフされて1次側巻線に印加されるトランス、6はトランス4の2次側巻線に誘起した交流信号を整流平滑する整流平滑回路で、ここからの直流電圧Voが負荷に供給される。 7は負荷に供給される出力電圧信号を絶縁して1次側に伝送するアイソレータ、8はアイソレータ7を介して印加された出力電圧に関する信号が、基準電圧に対応する一定値に維持されるように、スイッチング素子5に与えるオン/オフ駆動信号のデューティレシオを制御するコントロール回路である。 SWは外部スイッチで、電源のオン,オフを行うためのもので、コントロール回路8にその信号が印加され、スイッチング素子5を非導通にすることで、電源をオフにするように構成してある。」(明細書第3頁第2行?第4頁第3行) 2-b「しかしながら、この様な構成の従来装置によれば、コントロール回路8がトランス4の1次側に設けてあるために、外部スイッチSWに高い電圧が印加される恐れがあり、安全規格上から問題がある。 外部スイッチを破線に示すように絶縁用のトランスを介して接続すれば、この点の問題は解決される」(明細書第4頁第5?12行) 第6図には、外部スイッチSW1を介して入力される信号が絶縁用のトランスを介してコントロール回路8に入力される態様が、破線で示されている。 4.対比 そこで、本願発明と引用例1発明とを比較すると、引用例1発明の「トランスの一次側」、「PWM制御」、「平滑出力」、「パルス」、「トランスの二次側」、「直流」、「基準電圧に加算する回路」、「電源装置」は、各々本願発明の「一次側」、「パルス幅変調制御」、「直流電源の出力」、「パルス信号」、「一次側と電気的に絶縁された二次側」、「直流電圧」、「基準電圧に加算する電圧加算回路」、「スイッチング電源装置」に相当する。 その機能をも考慮すると、引用例1発明の「コンパレータとパルスを生成する安定化制御回路」は、本願発明の「パルス幅変調制御回路」に相当し、引用例1発明の「スイッチングトランジスタをオンオフ制御して第1交流電圧を生成する回路」は、本願発明の「断続させて第1交流電圧を生成するスイッチング回路」に相当し、引用例1発明の「活線挿抜予告信号発生部からの挿抜予告信号」は、本願発明の「外部から」「入力される外部信号」に相当し、引用例1発明の「電圧を比較して出力される誤差出力を安定化制御回路に入力し、この誤差に応じたデューティを有するパルスを生成する」は、本願発明の「電圧との差に応じたパルス幅を有するパルス信号を生成する」に相当する。 また、引用例1発明の「整流平滑回路で生成された直流はコンパレータの一入力へ印加され」と、本願発明の「整流平滑回路で生成された直流電圧は第1絶縁手段を介してパルス幅変調制御回路に送られ」は、「整流平滑回路で生成された直流電圧はパルス幅変調制御回路に送られ」との概念で共通している。 したがって、両者は、 「一次側に配置されパルス幅変調制御のためのパルス信号を生成するパルス幅変調制御回路と、 一次側に配置され直流電源の出力を前記パルス幅変調制御回路からのパルス信号に応じて断続させて第1交流電圧を生成するスイッチング回路と、 一次側と電気的に絶縁された二次側に配置され、前記スイッチング回路で生成された第1交流電圧の印加により誘起された第2交流電圧を整流及び平滑化して直流電圧を生成する整流平滑回路と、 一次側に配置され、外部から入力される外部信号を基準電圧に加算する電圧加算回路とを備え、 前記整流平滑回路で生成された直流電圧は前記パルス幅変調制御回路に送られ、 前記パルス幅変調制御回路は、前記整流平滑回路で生成された直流電圧と前記電圧加算回路から出力される電圧との差に応じたパルス幅を有するパルス信号を生成するスイッチング電源装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 〔相違点1〕 本願発明は、外部から入力される外部信号は第2絶縁手段を介しているのに対し、引用例1発明は、外部から入力される外部信号は第2絶縁手段を介していない点。 〔相違点2〕 本願発明は、基準電圧がパルス幅変調制御回路で生成されるのに対し、引用例1発明は、基準電圧が生成される回路が特定されていない点。 〔相違点3〕 本願発明は、整流平滑回路で生成された直流電圧はパルス幅変調制御回路に送られるのに第1絶縁手段を介しているのに対し、引用例1発明は、整流平滑回路で生成された直流電圧はパルス幅変調制御回路に送られるのに第1絶縁手段を介していない点。 5.判断 〔相違点1〕について 引用例2にも示されるように、外部から入力される外部信号(「外部スイッチSW1を介して入力される信号」が相当)を絶縁手段(「絶縁用のトランス」が相当)を介することで、安全規格上の問題を解決することは、一次側にパルス幅変調回路(「コントロール回路8」が相当)を配置したスイッチング電源装置の分野における周知の技術(必要が有れば、実願昭61-74928号(実開昭62-188984号)のマイクロフィルム参照)であり、引用例1発明において、安全規格上の問題を解決することは、当然に要求されるべき課題であるから、かかる課題の下に、外部から入力される外部信号(活線挿抜予告信号発生部40からスイッチ42を介して入力される抜去予告信号)に対し上記周知の技術を採用し、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。 〔相違点2〕について 基準電圧を如何なる手段により生成するかは、当業者が必要に応じて適宜設計し得る程度の事項(必要が有れば、特開平11-41928号公報参照)であるから、引用例1発明において、基準電圧をパルス幅変調制御回路で生成されるようにすることは当業者が適宜なし得る事項であり、しかもそれにより格別顕著な効果が奏されるとも認められない。 〔相違点3〕について 引用例2にも示されているように、二次側に配置した整流平滑回路で生成された直流電圧(「直流電圧Vo」が相当)を絶縁手段(「アイソレータ7」が相当)を介して一次側に配置したパルス幅変調制御回路に送るようにすることは、スイッチング電源装置の分野における周知の技術(必要が有れば、特開平6-86545号公報参照)であるから、引用例1発明において、二次側に配置した整流平滑回路で生成された直流電圧を一次側に配置したパルス幅変調制御回路に送るに際し、上記周知の技術を採用して相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に考えられることと認められる。 そして、本願発明が奏する効果も、引用例1発明及び上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用例1発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-19 |
結審通知日 | 2010-04-20 |
審決日 | 2010-05-17 |
出願番号 | 特願2002-370778(P2002-370778) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉浦 貴之 |
特許庁審判長 |
堀川 一郎 |
特許庁審判官 |
仁木 浩 槙原 進 |
発明の名称 | スイッチング電源装置 |
代理人 | 濱田 初音 |
代理人 | 田澤 英昭 |