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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1219460
審判番号 不服2007-11048  
総通号数 128 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-08-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-17 
確定日 2010-06-09 
事件の表示 平成10年特許願第506268号「アルキル置換されたメタロセンでのオレフィン重合法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年1月22日国際公開、WO98/02470、平成12年10月31日国内公表、特表2000-514494〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成9年7月16日(優先権主張 1996年7月16日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年7月16日に手続補正書が提出され、平成18年2月21日付けで拒絶理由が通知され、平成18年8月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年12月27日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、平成19年4月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成19年5月17日に手続補正書が提出され、平成19年7月12日に手続補正書(方式補正)が提出されたが、平成19年8月13日付けで前置報告がなされた後、平成20年9月29日付けで当審において審尋がなされ、平成21年1月6日に回答書が提出されたものである。

II.補正却下の決定
[結論]
平成19年5月17日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.手続補正の内容
平成19年5月17日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)の内容は、明細書の特許請求の範囲の記載を補正するものであって、平成18年8月28日付け手続補正書により補正された、
「1.エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、Mは第4族遷移金属であり、L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであるか、又は、L^(B)はMにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであり、L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0乃至3であり、及びA及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
少なくとも1つのL^(A)又はL^(B)は、一級炭素原子を介して環に結合した、少なくとも1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換体を有し、かつ、
L^(A)及びL^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及びL^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に、適した重合条件下で、接触させる工程を含むオレフィン重合方法。
2.前記L^(A)及び前記L^(B)のいずれかが、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子、置換されたヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rで置換されたシクロペタジエニル基を含有する環であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
3.前記L^(A)及び前記L^(B)が相互いに共有結合により架橋しておらず、前記L^(A)が4又は5のメチル置換基を含み、及び前記L^(B)がC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
4.前記L^(A)及び前記L^(B)が相互に共有結合により架橋しており、架橋に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(A)及び前記L^(B)のうちの一つの環の3又は4位にC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
5.前記L^(A)が4のメチル基を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
6.前記L^(B)がC_(3)かまたはこれより大きい置換基を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
7.接触を気相条件で行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
8.接触をスラリー条件で行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
9.MIR≦35、MWD=2-5、CDBI≧60、及び溶融強度≧
6.0-6.0×log(MI)を有し、
エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、Mは第4族遷移金属であり、L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドである、又は、L^(B)はMにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであり、L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0乃至3であり、及びA及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
少なくとも1つのL^(A)又はL^(B)は、一級炭素原子を介して環に結合した、少なくとも1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換体を有し、並びに、
L^(A)及びL^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及びL^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に接触させる工程を含む方法により製造される、エチレンホモポリマー又はコポリマー。
10.溶融強度が、8.0-6.0×log(MI)である、請求項9記載のエチレンポリマー又はコポリマー。
11.MIが0.3乃至1.2である、請求項9記載のポリマー。
12.MIRが25以下である、請求項9記載のポリマー。
13.エチレンからなる、請求項9、11又は12のいずれかに記載のポリマー。
14.エチレン及び一つ以上のC_(3)乃至C_(8)α-オレフィンを含む、請求項9、11又は12のいずれかに記載のポリマー。」
を、
「【請求項1】
エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、4又は5のメチル置換基を含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
Mは第4族遷移金属であり、
L^(B)は、1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
L^(A)及びL^(B)は相互いに共有結合により架橋しておらず、
L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0であり、
A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
前記L^(A)及び前記L^(B)環上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に、適した重合条件下で、接触させる工程を含むオレフィン重合方法。
【請求項2】
エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子を有する、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rを含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
Mは第4族遷移金属であり、
L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
前記L^(A)及び前記L^(B)は第14族元素架橋基を介して互いに共有結合しており、
前記架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(B)は3位又は4位に1つのC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有し、
L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0であり、
A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
前記L^(A)及び前記L^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に、適した重合条件下で、接触させる工程を含むオレフィン重合方法。
【請求項3】
前記L^(A)が4のメチル基を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記L^(B)がC_(3)かまたはこれより大きい置換基を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
接触を気相条件で行うことを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
接触をスラリー条件で行うことを特徴とする請求項1及び2のいずれか1項に記載の方法。」
と補正するものである。

2.本件手続補正の目的の適否について
本件手続補正は、以下の補正事項を含むものである。
イ)補正前の請求項1?2及び9?14を削除し、請求項3?8を2項ずつ繰り上げて、新たに請求項1?6とする補正事項
ロ)補正後の請求項1において、L^(B)について、「Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであるか、又は、Mにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであり」から、「Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」とする補正事項
ハ)補正後の請求項1において、L^(C)_(i)のiの数値範囲を、「0乃至3」から、「0」とする補正事項
ニ)補正後の請求項1において、「少なくとも1つのL^(A)又はL^(B)は一級炭素原子を介して環に結合した、少なくとも1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換体を有し」から、「L^(B)は、1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を含む」とする補正事項
ホ)補正後の請求項2において、L^(A)の置換基を「L^(A)は、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子を有する、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rを含む」とする補正事項
へ)補正後の請求項2において、L^(B)について、「Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであるか、又は、Mにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであり」から、「Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」とする補正事項
ト)補正後の請求項2において、L^(A)とL^(B)との結合について、「相互に共有結合により架橋」から、「第14族元素架橋基を介して互いに共有結合」とする補正事項
チ)補正後の請求項2において、L^(C)_(i)のiの数値範囲を、「0乃至3」から、「0」とする補正事項
リ)補正後の請求項2において、「前記L^(A)及び前記L^(B)のうち一つの環の3位又は4位にC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有する」から、「前記L^(B)は3位又は4位に
1つのC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有し」とする補正事項

上記補正事項イ)は請求項を削除するものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされた同法による改正前の特許法(以下、単に「特許法」という。)第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。また、上記補正事項ロ)?リ)は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3.独立特許要件について
上記のとおり、本件手続補正には、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正が含まれているので、次に、本件手続補正が、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満足するか否かについて、以下に検討する。

3-1.補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明の認定
補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)は、補正後の明細書(以下「補正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子を有する、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rを含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
Mは第4族遷移金属であり、
L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、
前記L^(A)及び前記L^(B)は第14族元素架橋基を介して互いに共有結合しており、
前記架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(B)は3位又は4位に1つのC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有し、
L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0であり、
A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
前記L^(A)及び前記L^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に、適した重合条件下で、接触させる工程を含むオレフィン重合方法。」

3-2.先願明細書の記載事項
本件出願の日(国際出願におけるパリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年7月16日)前の特許出願(優先権主張1:優先権主張番号;特願平8-10803、優先日;平成8年(1996年)1月25日/優先権主張2:優先権主張番号;特願平8-334312、優先日;平成8年(1996年)12月13日)であって、本願の出願後に出願公開(特開平10-226694号公報、以下、「先願公報」という。)された特願平9-8531号の上記優先権主張1の基礎となる特願平8-10803号の願書に最初に添付した明細書(以下、「優先権基礎明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。
[摘示ア]
「実施例6
[エチレン/ヘキセン-1の溶液重合]
溶媒として脂肪族系炭化水素(IPソルベント1620(出光石油化学(株)製)600mlおよびヘキセン-1 20mlを1l反応器に加え、反応器の温度を170℃に設定した。そして、この反応器に圧力が20kg/cm^(2)となるようにエチレンを供給した。
一方、別の容器においてジフェニルメチレン(3-メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド 0.5μmolをトルエンに溶解し、そこにトリイソブチルアルミニウムのトルエン溶液(トリイソブチルアルミニウム20wt%)をアルミニウム換算で125μmol加えて1時間攪拌した。次に、この混合物をN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート 0.6μmolをトルエン1mlに溶解した溶液に加え、10分間攪拌し、ここで得られた混合物を窒素圧で前記反応器に供給した。
混合物を反応器に供給した後、170℃まで昇温し、この状態で反応器を1500rpmで20分間攪拌し、重合反応を行った。得られた重合体を真空下100℃で6時間乾燥した。その結果、35.2gの共重合体を得た。得られた重合体のMFR等の測定結果を表1に示す。」(優先権基礎明細書段落【0082】?【0084】、先願公報段落【0090】?【0092】参照)

[摘示イ]
「実施例7?13
実施例6において、実施例6の重合条件の代わりに表1に示す重合条件にてエチレン/ヘキセン-1の溶液重合を行った。同じく結果を表1に示す。」(優先権基礎明細書段落【0085】、先願公報段落【0093】参照)

[摘示ウ]
「実施例15?18
実施例12において、実施例12の重合条件の代わりに表2に示す重合条件にてエチレン/ヘキセン-1の溶液重合を行った。同じく結果を表2に示す。
【表2】

」(優先権基礎明細書段落【0091】?【0092】、先願公報段落【0099】?【0100】参照)

[摘示エ]
「【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の技術に鑑み、特に、工業的な重合条件での欠点を回避し、高い重合活性で、高分子量のポリオレフィンを製造することのできる触媒系を提供することを目的とするものである。また、そのための新規な遷移金属化合物、および該遷移金属化合物の効率的な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、置換基を有するシクロペンタジエニルとフルオレンとがジアリールメチレン基を介して結合してなる化合物を配位子とする遷移金属化合物を合成し、これを触媒成分とすることによって、高分子量のポリオレフィンを生産性良く製造することが可能であることを見い出すに至った。」(優先権基礎明細書段落【0011】?【0012】、先願公報段落【0011】?【0012】参照)

[摘示オ]
「本発明におけるオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合は、通常の重合方法、すなわちスラリー重合、気相重合、高圧重合、溶液重合、塊状重合のいずれでも使用できる。」(優先権基礎明細書段落【0059】、先願公報段落【0067】参照)

[摘示カ]
「重合時、溶媒を用いるときは、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、塩化メチレン等が挙げられ、また、プロピレン、ブテン-1、オクテン-1、ヘキセン-1などの重合時に供されるオレフィンそれ自身を溶媒として用いることもできる。」(優先権基礎明細書段落【0061】、先願公報段落【0069】参照)

[摘示キ]
「本発明の方法を用いてポリオレフィンを製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、重合温度は-100?300℃、重合時間は10秒?20時間、重合圧力は常圧?3500kg/cm^(2)Gの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるポリオレフィンは、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥してポリオレフィンを得ることができる。」(優先権基礎明細書段落【0063】、先願公報段落【0071】参照)

上記[摘示ウ]の実施例17の記載から、優先基礎明細書には、
「エチレン及びヘキセン-1を、触媒化合物であるPh_(2)C(3-PhCH_(2)Cp)(Flu)ZrCl_(2):ジフェニルメチレン(3-ベンジルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドに接触させる工程を含むオレフィン重合方法」の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。

3-3.対比・判断
(1)補正発明の「1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマー」について
先願発明においては、「エチレン及びヘキセン-1」が重合されており、この重合対象モノマーは補正発明の「1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマー」に含まれる。

(2)補正発明の「L^(A)は、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子を有する、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rを含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」について
補正明細書8頁8?13行には「縮合環が環置換のパターンの一部である場合、このような縮合環の各々は、対応するシクロペンタジエニル環上の2つの置換基として数えられる。つまり、・・・フルオレニルリガンドは、4つの置換基を有するシクロペンタジエニル環と見なされる」と、リガンドが縮合環で置換されている場合の置換基の数え方の定義が記載されている。
先願発明の触媒化合物はFlu:フルオレニルを有しており、これは上記補正明細書の定義によれば、「1個以上の炭素原子を有するヒドロカルビルを有する、4つの置換基を有するシクロペンタジエニル環」と見なすことができ、また、このFlu:フルオレニルは、Mに相当するジルコニウムにπ-結合していることは明らかであるので、先願発明のFlu:フルオレニルは、補正発明の「L^(A)は、1乃至20の炭素を有するヒドロカルビルを有する、2乃至5の置換基Rを含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」に含まれる。

(3)補正発明の「Mは第4族遷移金属であり」について
「第4族遷移金属」にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムが含まれることは元素周期律表から明らかである。
一方、先願発明の触媒化合物も遷移金属成分として、Zr:ジルコニウムを有しており、これは、補正発明の「Mは第4族遷移金属であり」に含まれる。

(4)補正発明の「L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」について
先願発明の触媒化合物は、Zr:ジルコニウムにπ-結合した、(3-PhCH_(2)Cp):3-ベンジルシクロペンタジエニルを有しており、これは、補正発明の「L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり」に含まれる。

(5)補正発明の「前記L^(A)及び前記L^(B)は第14族元素架橋基を介して互いに共有結合しており」について、
第14元素には炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛が含まれることは元素周期律表から明らかであり、さらに、補正明細書7頁20?21行には、好ましい触媒化合物として「(インデニル)イソプロピリデン(3-nープロピル-シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド」が例示されていることからみても、補正発明の「第14族元素架橋基」には炭素を架橋基元素とするものが含まれている。
一方、先願発明の触媒化合物であるPh_(2)C(3-PhCH_(2)Cp)(Flu)ZrCl_(2):ジフェニルメチレン(3-ベンジルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドにおいては、補正発明のL^(A)に相当する「Flu:フルオレニル」と、補正発明のL^(B)に相当する「(3-PhCH_(2)Cp):3-ベンジルシクロペンタジエニル」とが、「Ph_(2)C:ジフェニルメチレン」によって架橋されているので、先願発明の触媒化合物の架橋構造は、補正発明の「前記L^(A)及び前記L^(B)は第14族元素架橋基を介して互いに共有結合しており」に含まれる。

(6)補正発明の「前記架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(B)は3位又は4位に1つのC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有し」について
上記(4)に記載したように、先願発明の触媒化合物は、補正発明のL^(B)に相当する(3-PhCH_(2)Cp):3-ベンジルシクロペンタジエニルを有することから、これは、架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、3位に1つのベンジル基(ベンジル基はC^(7)のヒドロカルビル置換基に相当する)を有するものである。したがって、先願発明の触媒化合物は、補正発明の「前記架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(B)は3位に1つのC^(3)以上のヒドロカルビル置換基を有し」に含まれる。

(7)補正発明の「L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0であり」について
補正発明においてはL^(C)_(i)におけるiが0であることから、結局、補正発明にはL^(C)は存在しないこととなる。そして、先願発明においても、L^(C)に相当するリガンドは存在しない。

(8)補正発明の「A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し」について
補正明細書に記載された全ての実施例では、触媒化合物におけるM及び2つのリガンドの構造は「ジルコニウムジクロライド」であることから、「ジルコニウムジクロライド」は、補正発明の「A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し」という規定を満足するといえる。
そして、先願発明の触媒化合物は、ZrCl_(2):ジルコニウムジクロライドの構造を有していることから、先願発明の触媒化合物は、補正発明の「A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し」に含まれる。

(9)補正発明の「前記L^(A)及び前記L^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている」について
上記(2)及び(6)で述べたように、先願発明の触媒化合物は、補正発明のL^(A)に相当するFlu:フルオレニル及び補正発明のL^(B)に相当する(3-PhCH_(2)Cp):3-ベンジルシクロペンタジエニルを有している。
そして、上記(2)にも記載した補正明細書に記載された置換基の数え方の定義によれば、先願発明の触媒化合物の「フルオレニル」は「4つの置換基を有するシクロペンタジエニル環」と見なされ、また、先願発明の触媒化合物の「3-ベンジルシクロペンタジエニル」は「1つの置換基を有するシクロペンタジエニル環」であることから、これらの置換基の総数は5となる。
したがって、先願発明の触媒化合物は、「前記L^(A)及び前記L^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている」に含まれる。

そこで、補正発明と先願発明とを対比すると、両者は、
「エチレン及びヘキセン-1を、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)MAB
(式中、L^(A)はフルオレニルであり、L^(B)は3位にベンジル基を有するシクロペンタジエニルであり、Mはジルコニウムであり、A、Bハクロライドからなり、L^(A)のフルオレニルとL^(B)のシクロペンタジエニルが炭素元素架橋基を介して共有結合している。)
で表される触媒化合物に接触させる工程を含むオレフィン重合方法」の点で一致し、モノマーを触媒化合物に接触させる工程を、補正発明では「適した重合条件下で」行うとしているのに対し、先願発明では、これが明記されていない点で両者は一応相違している。
そこで、この相違点について検討する。
補正明細書には、補正発明の「適した重合条件」が具体的にどのような条件を意味するのかについての説明あるいは定義はなされていない。
一方、先願発明は、[摘示エ]記載のように、高分子量のポリオレフィンを生産性良く製造することを目的とするものであり、[摘示オ]?[摘示キ]に記載のように、重合方法、重合時に用いる溶媒、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件が例示され、さらに、[摘示ア]?[摘示ウ]には、Ph_(2)C(3-PhCH_(2)Cp)(Flu)ZrCl_(2):ジフェニルメチレン(3-ベンジルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドの触媒化合物を用いて、エチレン及びヘキセン-1の重合が行われることが記載されている。
このように、優先権基礎明細書には触媒化合物を用いて、エチレン及びヘキセン-1の重合が支障なく行われていることが記載されており、また、重合を敢えて適切でない重合条件下で行うことは考えられないことから、先願発明においても、モノマーを触媒化合物に接触させる工程は「適した重合条件下で」で行われていると解するのが相当である。
したがって、補正発明は、優先権基礎明細書に記載された発明と同一である。

3-4.小括
以上のとおり、本件出願の請求項2に係る発明は、本件出願の日(国際出願におけるパリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年7月16日)前の特許出願(出願日:平成8年(1996年)1月25日)であって、本願の出願後に、特許法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる特願平8-10803号の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が本件出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、本件出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、出願の際独立して特許を受けることができない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明の認定
平成19年5月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成18年8月28日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?14に記載されたとおりのものであり、請求項1、2及び4には、次のとおり記載されている。
「1.エチレンのみを、又はこれを1つ以上のオレフィン性不飽和コモノマーとともに、以下の式:
(1)L^(A)L^(B)L^(C)_(i)MAB
(式中、L^(A)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであり、Mは第4族遷移金属であり、L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであるか、又は、L^(B)はMにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであり、L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0乃至3であり、及びA及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有し、
少なくとも1つのL^(A)又はL^(B)は、一級炭素原子を介して環に結合した、少なくとも1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換体を有し、かつ、
L^(A)及びL^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及びL^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。)
であらわされる触媒化合物に、適した重合条件下で、接触させる工程を含むオレフィン重合方法。」
「2.前記L^(A)及び前記L^(B)のいずれかが、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子、置換されたヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rで置換されたシクロペタジエニル基を含有する環であることを特徴とする請求項1に記載の方法。」
「4.前記L^(A)及び前記L^(B)が相互に共有結合により架橋しており、架橋に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(A)及び前記L^(B)のうちの一つの環の3又は4位にC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。」

IV.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由とされた平成18年2月21日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶理由3の概要は以下のとおりである。
「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

・請求項 1,2,4,6?14
・引用文献等 3
・備考
先願3(優先日平成8年1月25日)の願書に最初に添付された明細書には、「ジフェニルメチレン(3-ベンジルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド」を用いて、エチレンとヘキセン-1とを共重合することが記載されている(実施例17)。
この共重合体は、本願請求項1,2,6で定義される触媒によって製造されたものであるから、本願請求項9-14で定義される物性条件を満足するものと認められる。
また、当該事項は、先願3の優先権主張の基礎とされた、特願平8-10803号の願書に最初に添付された明細書にも記載されている。

引用文献等一覧
3.特願平8-10803号(特開平10-226694号公報)」
【審決注】
上記II.3.3-2.においても述べたように、特願平9-8531号は、1)優先権主張1:優先権主張番号;特願平8-10803、優先日;平成8年1月25日及び2)優先権主張2:優先権主張番号;特願平8-334312、優先日;平成8年12月13日を伴うものであり、このうち優先権主張1の基礎出願である特願平8-10803号を以下において「先願」という。また、この先願の願書に最初に添付した明細書を以下において「優先権基礎明細書」という。
なお、特許法第41条第3項の規定により、同法第29条の2本文の規定の適用においては、特願平9-8531号の願書に最初に添付した明細書のうち、優先権基礎明細書に記載された発明については、特開平10-226694号公報により出願公開がなされたものとみなされる。

V.原査定の拒絶理由の妥当性についての検討
1.本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について
本願発明1は、上記III.で認定したとおりのものであり、次の事項を、発明を特定するために必要な事項(以下、「発明特定事項」という。)として含むものである。
1)「L^(A)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであ」ること
2)「Mは第4族遷移金属であ」ること
3)「L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであるか、又は、L^(B)はMにσ-結合したヘテロ原子補助リガンドであ」ること
4)「L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0乃至3であ」ること
5)「A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有」すること
6)「少なくとも1つのL^(A)又はL^(B)は、一級炭素原子を介して環に結合した、少なくとも1つのC_(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミル置換体を有」すること
7)「L^(A)及びL^(B)上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及びL^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている」こと
そして、上記本願発明1の発明特定事項は、それぞれ、補正発明の次の発明特定事項に相当している。
1’)「L^(A)は、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子を有する、ヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rを含む、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであ」ること
2’)「Mは第4族遷移金属であ」ること
3’)「L^(B)は、Mにπ-結合した置換されたシクロペンタジエニル又はヘテロシクロペンタジエニルの補助的なリガンドであ」ること
4’)「L^(C)_(i)は、Mに対する供与結合を有する任意の中性、非酸化リガンドであり、iは0であ」ること
5’)「A及びBは、それぞれ独立してモノアニオン性の不安定な(labile)リガンドであって、Mに対してσ-結合を有」すること
7’)「前記L^(A)及び前記L^(B)環上の置換基の総数は、3乃至10の数に等しく、前記L^(A)及び前記L^(B)置換基の数が3又は4の場合、非対称に置換されている。」こと
本願発明1の発明特定事項2)、5)、7)は、それぞれ、補正発明の発明特定事項2’)、5’)、7’)と実質的に同じであること、また、本願発明1の発明特定事項1)、3)、4)は、それぞれ、補正発明の発明特定事項1’)、3’)、4’)の上位概念に相当することから、上記II.3-3.対比・判断で述べたとおり、本願発明1の発明特定事項1)?5)及び7)は優先権基礎明細書に記載された事項である。
さらに、本願発明1の発明特定事項6)については、上記II.3-3.対比・判断.(6)で述べたとおり、先願発明の触媒化合物は、シクロペンタジエニル環にベンジル基が結合した構造を有しており、これは、一級炭素原子(メチレン基)を介して環(シクロペンタジエニル環)に結合したC_(3)以上のヒドロカルビル置換体(フェニル基)であることから、本願発明1の発明特定事項6)は優先権基礎明細書に記載された事項である。
したがって、本願発明1は優先権基礎明細書に記載された発明と同一である。

2.本願明細書の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)について
本願発明2は、上記III.で認定したとおりのものであり、上記V.1.において検討した本願発明1の1)?7)の発明特定事項に加え、次の事項を発明特定事項として含むものである。
8)「前記L^(A)及び前記L^(B)のいずれかが、1乃至20の炭素、シリコン、又はゲルマニウム原子、置換されたヒドロカルビル、ヒドロカルビルシリル、又はヒドロカルビルゲルミルラジカルを有する、2乃至5の置換基Rで置換されたシクロペタジエニル基を含有する環である」こと
しかしながら、本願発明2の発明特定事項8)については、上記II.3-3.対比・判断.(2)で述べたとおり、先願発明の触媒化合物は、Flu:フルオレニルを有しており、本願明細書に記載された置換基の数え方の定義によれば、この「フルオレニル」は「1以上の炭素を有する、4つの置換基で置換されたシクロペンタジエニル環」と見なされることから、本願発明2の発明特定事項8)は優先権基礎明細書に記載された事項である。
したがって、本願発明2は優先権基礎明細書に記載された発明と同一である。

3.本願明細書の特許請求の範囲の請求項4に係る発明(以下、「本願発明4」という。)について
本願発明4は、上記III.で認定したとおりのものであり、上記V.1.において検討した本願発明1の1)?7)の発明特定事項に加え、次の事項を発明特定事項として含むものである。
9)「前記L^(A)及び前記L^(B)が相互に共有結合により架橋しており、架橋に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(A)及び前記L^(B)のうちの一つの環の3又は4位にC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有する」
そして、上記本願発明4の発明特定事項は、補正発明の次の発明特定事項に相当している。
9’)「前記L^(A)及び前記L^(B)は第14族元素架橋基を介して互いに共有結合しており、前記架橋基に共有結合する環の炭素を1位として数える場合、前記L^(B)は3位又は4位に1つのC^(3)以上のヒドロカルビル、ヒドロカルビルリシル、又はヒドロカルビルゲルミル置換基を有」する
本願発明4の発明特定事項9)は、補正発明の発明特定事項9’)の上位概念に相当することから、上記II.3-3.対比・判断で述べたとおり、本願発明4の発明特定事項9)は優先権基礎明細書に記載された事項である。
したがって、本願発明4は優先権基礎明細書に記載された発明と同一である。

4.小括
以上のとおりであるから、本願発明1、2及び4は、本件出願の日(国際出願におけるパリ条約による優先権主張外国庁受理:1996年7月16日)前の特許出願(出願日:平成8年(1996年)1月25日)であって、本願の出願後に、特許法第41条第3項の規定により出願公開されたものとみなされる特願平8-10803号の願書に最初に添付した明細書に記載された発明と同一であり、しかも、本件出願の発明者が本件出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件出願の時において、本件出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。

VI.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1、2及び4に係る発明についての原査定の拒絶の理由は妥当なものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、この理由により拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-01-08 
結審通知日 2010-01-12 
審決日 2010-01-25 
出願番号 特願平10-506268
審決分類 P 1 8・ 16- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 121- Z (C08F)
P 1 8・ 536- Z (C08F)
P 1 8・ 537- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小出 直也  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 松浦 新司
前田 孝泰
発明の名称 アルキル置換されたメタロセンでのオレフィン重合法  
代理人 山崎 行造  

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